FOOD MADE GOOD フィールドワーク in 船橋開催レポート

FOOD MADE GOOD フィールドワーク in 船橋開催レポート

2026年10月8日、SRAジャパンは、千葉県船橋市の海光物産株式会社のご協力のもと、東京湾の漁業について学ぶ「FOOD MADE GOOD フィールドワーク in 船橋」を開催しました。

今回のフィールドワークのきっかけとなったのは、2026年4月、SRAジャパンの生産者パートナーである海光物産の大野和彦社長が取り組むクラウドファンディングのプロジェクトに、SRAジャパン代表の下田屋が参加したことでした。

プロジェクトのテーマは、「地元の漁業を守り、コノシロの絵本を作り、子どもたちに自分らしく生きることの大切さを伝えること」。

「孫が生まれたことがきっかけ。子どもたちに、豊かで明るい未来を残してやりたい」大野社長は優しい笑顔で語ります。

海光物産は、「瞬〆すずき」のブランド化を進め、全国の有名ホテルや飲食店にスズキを届けている水産会社です。また、東京湾の水産資源を次世代に残すため、資源管理に取り組み、持続可能な漁業の実現に向けて、さまざまな活動や働きかけを行う、サステナビリティを重視した先進的な取り組みを展開しています。

今回のフィールドワークの目的は、江戸前の豊かな水産資源と漁業を未来につなぐために、海光物産がどのような取り組みを行っているのか、実際の漁業の現場を訪ね、体験を通じて学ぶことでした。

なぜコノシロなのか

コノシロは、江戸前寿司の人気のネタである「コハダ」の成魚の名前で、イワシと同じニシン目ニシン科の魚です。成長に伴って呼び名が変わる出世魚として知られ、幼魚のシンコは、旬の夏には1キロ当たり数万円の値がつくこともある高級魚です。若魚のコハダも1キロ当たり数千円で取引される一方、成魚のコノシロになると、小骨が多く調理に手間がかかることなどから需要が限られ、1キロ当たり数十円程度にしかならないこともあるそうです。そのため、低利用魚とされています。

スズキのブランド化を進める海光物産が、なぜコノシロ漁にも力を注ぐのでしょうか。

東京湾の特徴

その背景を理解するために、まずは船橋漁港から見た東京湾の地形を確認してみます。

地図の赤い丸印が、今回の出発地点となった船橋漁港です。

船橋市を中心に一体に広がるこのあたりの浅瀬は「三番瀬(さんばんぜ)」と呼ばれ、古来から多様な生き物が生息する豊かな海域として知られています。東京湾は、江戸前寿司に代表される江戸の食文化を支えてきた海でもあります。なかでもコハダは、冷蔵技術がなかった時代に、酢で締めることで保存性を高めた、江戸前寿司を代表する魚のひとつです。

東京湾には、多摩川、荒川、隅田川、江戸川など、多くの河川が流れ込み、陸域からさまざまな栄養分が運ばれてきます。こうした栄養分が、東京湾の豊かな生態系を支える要因のひとつとなっています。

そのため、この海域は水深が浅く、河川から運ばれた土砂が堆積する場所でもあります。海上では、海底にたまった土砂を取り除く作業船も見られました。船舶の航行に必要な水深を確保し、座礁を防ぐための作業とのことで、東京湾で見られる独特の光景だそうです。

この漁が行われているのは、こうした閉鎖性が高く水深が浅い海域です。沿岸の多くは埋め立てや開発によって人工的な護岸となり、商業施設や工業地帯が広がっています。都市活動や工場排水などが海の環境に与える影響も気になるところですが、国や自治体による排水規制など、さまざまな対策が講じられ、水質は保たれているのだといいます。

船は船橋漁港を出発し、左手に陸地を見ながら千葉方面へと向かいました。航路は岸からわずか数百メートルほどしか離れておらず、都市のすぐそばに漁場が広がっていることがわかります。

地図の矢印の方向へ進み、約1時間で漁場に到着しました。地図上では、長方形で赤く示したあたりです。

そして巻き網漁の現場へ

そして、巻き網漁船と合流。まき網漁法は、1隻の網船が中心となって円を描くように網を投入する1隻巻き(いっそうまき)と、2隻の漁船が息を合わせ、ひとつの大きな網で魚群を囲い込む2隻巻き(にそうまき)の2通りの方法があり、海光物産が行うのは2隻巻きです。さらに、パワーのあるエンジンを詰んだ小さな補助船(デブネ・伝馬船・テンマなどど呼ばれる)が、2隻の位置を修正したり、全ての業務を効率よく、迅速に行えるよう、調整している様子も見ることができました。

巻き網漁は、魚の群れを見つけ、その周囲に網を展開して漁獲する漁法です。遠くから見ると、直径百メートル以上の巨大な網が海面に広がっている様子が、はっきりとわかります。写真の赤い線で囲んだ部分が、その網です。

魚は昼夜で行動を変え、日中に群れを形成して活動する魚種も多いそうです。漁師たちは魚の習性や潮の流れなどを見極めながら、魚群を探して網をかけていきます。

続いて、2隻の漁船は、互いの動きを合わせながら徐々に距離を縮め、きんちゃく袋のひもをしばるような要領で、網を少しずつ手繰り寄せるように巻き上げていきます。海鳥が海面に浮かんでくる魚を狙って集まってきています。

2隻の漁船がさらに距離を縮めると、網の中に集められた魚が海面に姿を現し始めました。

そこへ3隻目となる、私たちが乗船していた「運搬船」が横付けされました。運搬船と漁船をロープでつなぎ、3隻が一体となって、網の中の魚をすくい上げる作業が始まりました。

運搬船に次々と引き上げられる魚たち。そのほとんどはコノシロですが、網を引き上げるたびに、数匹のスズキやクロダイも混ざっていました。

スズキとクロダイは手作業で選別され、生きたまま船内の生簀へ移されます。一方、コノシロは氷水を張った船底の貯蔵庫に収められていきます。

この作業は、網の中の魚を引き上げ終えるまで何度も繰り返されます。最後には、エイやサメなど、食用としての流通が限られる魚種も見られました。これらは一度船上に引き上げられた後、船体側面の排出口から海へと戻されていました。

巻き網漁は、魚群を効率よく漁獲できる一方で、対象とする魚以外の生き物を捕獲する「混獲」や、過剰漁獲のリスクもある漁法とされています。今回の見学でも、サメやエイが混獲されていましたが、速やかに放流される様子を確認することができました。

海光物産では、こうした巻き網漁の課題を回避するために、漁獲量や混獲魚種の記録、産卵期の魚をとらないことや、不要な漁獲物の放流なども行い、漁業を資源の確保の面から持続可能なものにすることを実践しています。

漁港での水揚げ

漁を終えて港に戻ると、水揚げ作業が始まります。氷水で冷やされたコノシロは、そのままコンテナへと移されていきました。

大野社長によると、取引先の冷凍加工会社では、1回当たり40トンの受け入れ体制があるため、その処理能力に合わせて漁獲量を調整しているそうです。受け入れ能力がさらに大きければ、さらに多く漁獲することも技術的には可能とのことでした。

一度の操業で大量の魚を漁獲できる巻き網漁の特徴を知ると同時に、漁獲能力の高さゆえに、資源の状態を把握し、適切な漁獲量を管理することの重要性も見えてきます。また東京湾の食資源の可能性も知ることができました。

一方、スズキは生きたまま海水を満たした生簀へと移されます。

ここから、漁師のみなさんが生簀のまわりに出刃包丁を持って集まり、鮮度を保つための処理が始まります。まず、尾の付け根とエラの部分に包丁を入れ、氷水の中で血抜きを行います。血を適切に取り除くことで、魚の臭みや品質の低下を抑えることができます。

約20分間、氷水の中で血抜きをした後、次の工程である神経締めへと進みます。

数百匹ものスズキが、スピーディに処理されていく様子は圧巻でした。巻き網漁での操業から、水揚げ後の鮮度管理に至るまで、漁師のみなさんの熟練した技術と、信頼関係にもとづくチームワークが、魚の品質を支えていることがよくわかります。

コノシロの可能性

海光物産の大野社長は、コノシロの可能性について、次のように語ります。

「コノシロは、東京湾の貴重な資源です。骨が多くて食べにくいため、一般家庭や飲食店ではあまり利用されず、漁業用の餌などとして、1キロ当たり数十円程度の価格しかつきませんでした。

それが、加工や流通の工夫によって、最近では100円程度まで上がってきました。さらに価値を高めることができれば、漁師は全体の魚を獲る量を減らしても、収入を確保できるようになります。

また、地元の子どもたちに学校給食を通じてコノシロを食べてもらうための活動にも取り組んでいます。コノシロの安定的な需要を生み出すとともに、子どもたちに自分たちが暮らす地域の海や漁業について、もっと知ってもらいたい。そんな思いから、行政にも働きかけながら、志を同じくする仲間たちと活動を進めています。

コノシロの価値が上がれば、漁師の収入も上がります。今は漁師になりたいという若者が減っていますが、収入が安定すれば、漁業を志す人も増えるかもしれません。それは、江戸前の伝統的な食文化を守ることにも、地域の食料供給を支えることにもつながります。

だからこそ、コノシロの活用に取り組むことには、大きな意義があるのです」

千葉県は、全国有数のスズキの産地として知られています。なかでも船橋は全国トップクラスの漁獲量を誇り、船橋産のスズキは市場でも高く評価され、地域の漁業者にとって重要な収入源となっています。

しかし、高い値がつく魚ばかりを狙い、過剰に漁獲することになれば、将来の水産資源に影響を及ぼす可能性があります。

そこで重要になるのが、コノシロの価値を高め、有効活用していくという考え方です。

これまで十分に食用として利用されてこなかったコノシロに新たな需要を生み出すことは、漁業者の収入源を多様化し、スズキなど特定の魚種への漁獲集中を抑えることにもつながる可能性があります。

ここにあるのは、単に「未利用魚 / 低利用魚を活用することがサステナブル」という考え方ではありません。

海の生態系を守り、漁業者の暮らしを支え、地域の食文化を次世代へつなぐ。そのすべてを結びつけながら、持続可能な漁業を実現しようとする取り組みです。

最後に、クラウドファンディングによって出版された絵本『ふなばしの海のおはなし コノシロさんちのハルちゃん』が参加者に配られました。

この絵本は、大野社長が代表を務める一般社団法人「伝統江戸前漁業を未来につなぐ会」が制作したもので、300冊が船橋市に寄贈され、市内の小学校にも配布されました。

この絵本が子どもたちと地元の海をつなぎ、東京湾の豊かな恵みと江戸前の漁業を未来へ受け継ぐきっかけになることをわたしたちも心から願っています。

追記:

船橋漁業協同組合 直売所「三番瀬みなとや」
コノシロのフライをおいしくいただきました。
骨も気にならず、ふっくらおいしかったです。

サステナブル・レストランサミット2026 「サミットパートナー」のご案内

サステナブル・レストランサミット2026 「サミットパートナー」のご案内

一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会(SRAジャパン)は、2026年11月24日、初となるサステナブル・レストランのカンファレンス「サステナブル・レストランサミット2026」を開催いたします。

今回のテーマとして設定したのは、
「HOSPITALITY RISING ― 地球規模の課題、地域での解決策」。

現在、気候変動、生物多様性の損失、食料システムの持続可能性、働く人々を取り巻く課題など、私たちの食や飲食業を取り巻く環境は、大きく変化しています。その一方で、日々お客様と向き合い、食材を選び、生産者とつながり、料理をつくり、地域に根ざして事業を営むレストランの現場には、こうした地球規模の課題を解決していくための多くのヒントと可能性があります。私たちSRAジャパンは、これまで全国のレストラン、シェフ、生産者、企業、教育機関、地方自治体、NGO/NPOなどさまざまなパートナーの皆さまとともに、「食」を起点に、より良い未来をつくるための取り組みを進めてまいりました。その一つひとつの実践と、これまで活動を支えてくださった皆さまへの感謝を大切にしながら、今回初めて、全国の食のサステナビリティの実践者が集い、互いの経験や知恵を共有し、次の行動へとつなげる場として、このサミットを開催することといたしました。

本カンファレンスは、英国のサステナブル・レストラン協会が2026年に発表した、飲食業のサステナビリティに関するインサイトレポート『HOSPITALITY RISING』をベースに構成しています。『HOSPITALITY RISING』は、世界各地のフードサービスの現場で生まれている創造性、リーダーシップ、そして具体的な実践を可視化し、それらを特別な事例として終わらせるのではなく、世界中の事業者が学び、それぞれの地域やビジネスの中で実行可能な行動へとつなげていくことを目的としています。

当日は、このレポートの内容や海外における先進的な取り組みをご紹介するとともに、日本各地でサステナビリティの実践を続けるレストランのシェフをはじめ、生産者、企業、地域など、さまざまな立場の実践者の皆さまにもご登壇いただく予定です。
成功事例だけではなく、試行錯誤や課題も含めた現場のリアルな経験を持ち寄り、「自分たちの地域や現場であれば、どのようにできるだろうか」と、ともに考え、学び、次の一歩を見つける一日にしたいと考えています。

大きな課題も、一つのレストラン、一人のシェフ、一人の生産者、一つの企業、そして一つのそれも小さな地域から始まる小さな行動が少しずつ繋がることで、社会を動かす大きな力になると私たちは信じています。そして、このサミットを「話を聞いて終わる場」ではなく、新しい出会いや連携が生まれ、翌日からの具体的な行動につなげていくきっかけの場にしていきたいと思っています。

そして、この一日の最後には、これまでレストランのサステナビリティの推進の活動をともにつくり、支えてくださった皆さまへの感謝を込めて、グローバルな基準であるFOOD MADE GOODスタンダードを中心として推進するコミュニティの成長をともに祝い、実践者同士がお互いの取り組みを讃え、学び合い、新たなつながりを育む食事とネットワーキングの時間も設けます。

また当日は、第6回となる「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2026 特別賞」、ならびに次世代の料理人たちと食の未来を考える「未来のレシピコンテスト2026」の授賞式も同時開催いたします。

改めまして、これまで活動をともにしてくださった皆さま、支えてくださった皆さまに、改めて心より感謝申し上げます。そして今回初めてご参加いただく皆さまにも、ぜひこの場を、新しい仲間やアイデア、そして次の行動と出会う機会としていただけたら幸いです。

飲食業から社会を変えていく。日本の各地域から、地球規模の課題に対応し変化を生み出していく。

そんな「FOOD MADE GOOD」のムーブメントを、皆さまとともに、この機会からさらに大きく育てていきたいと考えています。本カンファレンスの趣旨に是非ご賛同いただき、ご参加いただくとともに、温かいご支援とご協力についても賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

それでは、2026年11月24日、皆さまと会場でお会いできることをとても楽しみにしております。

一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会

代表理事 下田屋 毅

 

The World’s 50 Best Barsの「Sustainable Bar Award 2025」を受賞したのは?

The World’s 50 Best Barsの「Sustainable Bar Award 2025」を受賞したのは?

The World’s 50 Best Bars(およびその他すべての50 Bestアワードポートフォリオ)のサステナビリティ監査パートナーとして、昨夜香港で発表されたSustainable Bar Award 2025を、「The Cambridge Public House」が受賞したことをご報告いたします。

パリのMarais地区に位置するThe Cambridge Public Houseのチームは、高級カクテルバーが持つ質の高いサービスと、近所の居心地の良いパブが持つリラックスしたフレンドリーな雰囲気と融合させることを目指しています。

この独特の雰囲気の裏には、良心的な方法でビジネスを行うという強い意志があります。季節感を大切にし、責任ある調達を行うこと、スタッフの育成や地域社会との関わりに多大な投資をすること、そして環境目標を達成するために具体的な行動を起こすこと。これらの取り組みは、サステナビリティを日々の業務に組み込み、より広い世界に積極的に貢献しているビジネスであることを示しています。彼らがこの賞を受賞するにふさわしい理由を、もう少し詳しく見ていきましょう。

The Cambridge Public Houseにおける持続可能な調達

The Cambridge Public Houseの調達戦略は、明らかにサステナビリティを念頭に置いて策定されています。メニューは季節感を非常に大切にしており、これまでに季節の食材を85%使用した71種類のカクテルを考案してきました。専任のバイヤーを置くことで、サプライヤーの取り組みを評価する能力を強化し、環境や社会への負荷が低い産物を優先的に仕入れることを可能にしています。

アルコール飲料もノンアルコール飲料も生産者から直接購入し、チームは可能な限りまとめ買いをすることで、生産者の生活を支え、輸送に伴う排出ガスを削減しています。仕入れ以外でも、The Cambridge Public Houseはフェスティバルやイベントで生産者を紹介するなど、積極的に支援しています。

The Cambridge Public Houseにおける社会的なサステナビリティ

The Cambridge Public Houseは、チーム、業界、そして地域社会との関わり方について、意識的かつ慎重に取り組んでいます。

従業員は年に4回、能力開発のための面談を受けます。そこでは、マネージャーが業績や目標を確認するだけでなく、個人の成長やウェルビーイング、より広い社会との関わりについても話し合います。また、このパブはウェブサイト「Shaken Leaf」を通じて、ホスピタリティ業界全体をサポートしています。これは、業界のアドバイスやレシピ、インタビューなどを集めた無料のオープンソースで、他の事業者がサステナビリティへの取り組みを進めるのを助け、ポジティブな変化をさらに広げることを目的としています。業界全体のメンタルヘルスの課題に取り組む必要性を認識し、パリ中のバーに依存症に関する啓発資料を作成・配布しました。

ノンアルコールドリンクの提供を増やすこと(今年は25%増加)で、健康的な飲酒文化をサポートしています。ノンアルコールボトルを目立つ場所に配置したり、週替わりの「Cocktail of the Week」としてスポットライトを当てたりするなどの工夫もしています。The Cambridge Public Houseの社会的な影響は、年間収益の1%を地元の慈善団体に寄付する「1%イニシアチブ」を通じて、地域社会にも及んでいます。同時に、チャリティマラソンクラブや、学校でのイベント、慢性疾患を持つ子どもたちのためのクリスマスイベントといった活動を通じて、スタッフが直接地域社会と関わることを奨励しています。

The Cambridge Public Houseの環境への貢献

野心的でありながら達成可能な目標を設定することは、あらゆる環境への取り組みにおいて重要な要素です。The Cambridge Public Houseは、2025年に向けて設定された、エネルギー使用量、顧客一人当たりの炭素排出量、そして廃棄物全体の削減という明確な目標に取り組んでいます。廃棄物管理は中心的な課題であり、2024年には35%の堆肥化を達成し(食品廃棄物の95%、合計約2,000kgを含む)、2025年にはこれを40%に引き上げることを目指しています。

チームは、バーの環境負荷を最小限に抑えるための重要な手段として、創造性を活用しています。食材は複数の工程で余すところなく使い切り、アボカドの種やバニラビーンズ、コーヒーなど、他の事業者から出る廃棄物をカクテルのデザインに取り入れることもよくあります。さらに、堆肥化可能な真空調理用の袋、環境に優しい包装材、メニュー以外の紙の使用をなくすための電子チケット発券機などを通じて、さらなる削減を達成しました。これらの取り組みにより、事業活動における経済的な炭素集約度を22%、カクテルの炭素への影響を21%削減することに成功しています。

【参照サイト】https://thesra.org/news-insights/news/this-years-sustainable-bar-award-at-the-worlds-50-best-bars-goes-to/



North America’s 50 Best RestaurantsにおいてSustainable Restaurant Awardを受賞したのは?

North America’s 50 Best RestaurantsにおいてSustainable Restaurant Awardを受賞したのは?

この度、カリフォルニア州Healdsburgのレストラン「SINGLETHREAD」が、記念すべき第1回North America’s 50 Best Restaurantsにおける「Sustainable Restaurant Award」の受賞者に選出されたことを、喜んでお知らせします。授賞式は昨夜、ラスベガスのWynn Las Vegasで開催されました。

「土地との調和」を理念に掲げるSINGLETHREAD。その運営の中心は、24エーカーの自社農園です。ここで厨房で使われる食材の大半を生産しています。サステナビリティ(持続可能性)は彼らの哲学の核であり、農園とレストランの双方で、環境再生型農業、倫理的な食材調達、循環型の実践、そして季節や土壌の健康、生物多様性への深い敬意が払われています。食材の産地を第一に考え、すべての一皿がその土地の真の味わいを届けています。

この特別なレストランで、サステナビリティが運営の隅々にまで、どのように息づいているのかをご紹介します。

SINGLETHREADの食材調達

SINGLETHREADのメニューは、農園で何が採れるかによって決まります。レストランで使われる食材の約70%は、年間を通してこの農園から供給されています。これにより、最高の鮮度を保ち、フードマイレージ(食料の輸送距離)を最小限に抑えています。同時に、農園チームは食材の生産方法を自ら管理し、堆肥作りや被覆作物の活用、生物多様性の保護を通じて、土壌の健康を丁寧に育んでいます。

農園の外でも、SINGLETHREADは志を同じくする多くの生産者と関係を築いています。例えば、カリフォルニアのアワビ生産者、生態系修復プロジェクトに取り組むウニ漁師、そして動物福祉と再生可能な土地管理を重視し、100%牧草で育てられた伝統品種の和牛を生産するKnights Valley Wagyuなどです。

SINGLETHREADのメニューは、その地域で歴史的、農業的、生態学的に重要な意味を持つ食材を大切にしています。伝統的な品種や希少な作物を使い、日本の食文化から得たインスピレーションをカリフォルニアの食材を通して表現しています。季節によっては、Gravenstein種のリンゴ、Bodega Red種のジャガイモ、Sonoma Coast産の黒タラ、Luna Koshihikari米、California産のプルーンなどが登場します。

SINGLETHREADが考える「社会的なサステナビリティ」

SINGLETHREADは、体系的な研修やメンター制度、長期勤続表彰などを通じて、スタッフの成長を支えています。また、定期的な面談、メンタルヘルスサポートの提供、農園での収穫祭といったチーム全体のイベントを通じて、スタッフの心身の健康(ウェルビーイング)を大切にしています。

地域社会への貢献にも積極的で、Russian RiverkeeperやSonoma Family Meal、the Chill Foundationといった団体を支援しています。さらに、Culinary Institute of Americaと協力し、料理芸術分野における無料の修士課程プログラムの設立を支援しました。地元の職人が作る陶器やナイフ、布製品などを積極的に取り入れることで、伝統技術とその担い手の暮らしを守ることにも貢献しています。

SINGLETHREADの環境への取り組み

環境への責任は、SINGLETHREADの運営全体を貫く重要なテーマです。レストラン、宿泊施設、農園はすべてLEED(環境性能評価システム)認証を取得しており、エネルギーと水の効率を重視して設計されています。スマートシステムや自然の力を利用した空調、そして干ばつの多いカリフォルニアでは特に重要な、灌漑用水をすべて井戸水でまかなうなどの工夫が凝らされています。

厨房では資源を無駄なく使うことが徹底されており、食材の切れ端や副産物はすべて堆肥にするか、レストランや農園で再利用されます。例えば、果物の種や皮は飲み物の香りづけに、ニンニクや玉ねぎの切れ端は発酵させて自然の害虫忌避剤に生まれ変わります。実際に、チームは過去1年で有機物以外の廃棄物を20%削減し、保存容器を再利用可能なものに切り替えることで、使い捨てプラスチックへの依存を大幅に減らしました。バックヤードでは100%堆肥化可能な紙を使用しており、今後はデジタルメニューシステムを導入して、さらなる紙ごみの削減を目指しています。

この素晴らしい功績を達成されたSINGLETHREADのチームの皆様に、心からお祝いを申し上げます。

【参照サイト】SingleThread Wins North America’s 50 Best Restaurants Sustainability Award

最新のEAT-Lancetレポートから、ホスピタリティ業界が学べること

最新のEAT-Lancetレポートから、ホスピタリティ業界が学べること

食の「健康、持続可能性、公正さ」を考えるEAT–Lancet Commissionが、画期的な第2次報告書を発表しました。ここでは、ホスピタリティ業界にとって重要なポイントを解説します。

本日、SwedenのStockholmで開催されたEAT Forumにて、EAT–Lancet Commissionが第2次となる画期的な報告書を発表しました。この報告書は、6大陸70名以上の専門家による厳密な科学研究に基づいており、前回の内容をさらに発展させたものです。すべての人に健康的で栄養価の高い食事を提供し、かつ気候目標の達成にも貢献する、より良く、より公正な食料システムをいかにして構築できるか、最新の提言が盛り込まれています。

報告書は、健康、気候、生物多様性、そして「公正さ」の観点から食料システムに関する新たな証拠を検証し、「Planetary Health Diet(地球と人の健康を考えた食事)」を更新。文化に合わせて調整可能で、植物性食品が豊かな食事が、いかに人々と地球の両方に利益をもたらすかを示しています。委員会によると、世界的に食生活を計画的に転換することで、年間約1500万人の早すぎる死を防ぎ、食料システムからの年間温室効果ガス排出量を半分以上削減できる可能性があるとのことです。

Potsdam Institute for Climate Impact Research所長で委員会の共同議長を務めるJohan Rockström氏は、「この報告書は、健康と気候に関する最新科学を結びつけることで、私たちの食事が何百万人もの命を救い、何十億トンもの排出ガスを削減し、生物多様性の損失を食い止め、より公正な食料システムを創造できる可能性を示しています。今や私たちには、食料システムの世界的な指針があり、政策立案者、企業、そして市民が共に行動するための基準が示されました。証拠は明らかです。食料システムの変革は、可能なだけでなく、すべての人にとって安全で公正、かつ持続可能な未来を確保するために不可欠なのです」と語りました。

食の「公正さ」をテーブルに

今回の報告書で特に重要なのは、食料システムにおける「公正さ」への焦点が強まった点です。Lancaster Universityの環境社会科学者、Christina C. Hicks教授が指摘したように、これまで食料システムにおける人権の基準は、信じられないほど低いものでした。驚くべきことに、食料システムで働く人々の3分の1は、生活に必要な賃金すら得られていません。その一方で、最も裕福な30%の人々が、食に関連する環境負荷の70%以上を生み出しています。世界全体では十分なカロリーが生産されているにもかかわらず、10億人以上が栄養不足に苦しんでいます。

報告書は、より公正な食料システムを築くことが、健康や社会の発展に不可欠であると示しています。食料システムを持続可能なものにするためには、資源、利益、そしてコストをより公平に分配する必要があります。これには、人々が食料を得る権利、尊厳ある労働(ディーセント・ワーク)、そして健康的な環境を享受できるような社会基盤の整備も含まれます。

真に効果的な変革のためには、社会的な基盤と地球環境の限界の両方を考慮し、すべての人にとって安全で公正な未来を創造しなければなりません。委員会の共同議長で、CGIARのShakuntala Haraksingh Thilsted氏は、「食は、人の幸福と地球の健康、その両方の中心にあります。今、私たちの食料を生産・加工する多くの人々が、不当に低い賃金で働き、基本的な保護から取り残されています。その一方で、環境や健康への負担は、最も弱い立場の人々に重くのしかかっています。私たちの調査結果は、変革が単に十分なカロリーを生産するだけでは不十分であることを明確にしています。すべての人に、食料への権利、公正な労働、そして健康的な環境を保証しなければなりません。利益と負担をより公平に分かち合って初めて、食料システムを地球の限界内に収め、誰もが豊かに生きられる、安全で公正な社会を築くことができるのです」と述べました。

「Planetary Health Diet」とは?

2025年委員会は、既存のデータを基に、「Planetary Health Diet」の有効性を裏付ける証拠をさらに強化しました。この食事法は、十分な栄養を確保し、健康を最大限にサポートするもので、様々な文化や環境に適応可能です。植物性食品を中心とし、動物性食品は適量に抑え、砂糖や飽和脂肪、塩分は控えめにすることを推奨しています。この食事法が世界に広まれば、現在の多くの食生活が環境に与える負荷を低減できるという確かな証拠があります。

Harvard T.H. Chan School of Public HealthのWalter C. Willett教授は、「委員会の調査結果は、この食事法が人と地球の両方にとって有益であることを改めて示しています。全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、豆類の生産と消費を増やすことで、地域の文化や伝統を尊重しながら、世界中の人々の健康を改善できます。しかし、食事は全体像の一部にすぎず、システム全体の変革が必要です」と語ります。

食事は、パズルの一片にすぎない

この研究は、単なる食事の推奨にとどまりません。環境や食料システムで働く人々に害を与えることなく、持続可能な方法で増え続ける人口を養うにはどうすればよいかを探求しています。Cornell UniversityのMario Herrero教授は、「食事を変えるだけでは、目標には届きません。食事の変革に加えて、持続可能な農業への転換、そして食品ロスと廃棄物の削減。これらすべてを組み合わせることで、初めて私たちは前進できるのです。これがEAT-Lancetが提唱する『包括的な解決策』です」と説明しました。

最新のデータとモデル分析に基づき、報告書は2050年までに世界人口96億人が、地球環境の限界内で、栄養価が高く公平な食事を摂ることが可能であると示しています。これは、世界の健康状態を改善し、食料と栄養の安全保障を確立し、社会の安定と回復力を高め、食料システムにおける公平性と労働条件の改善に貢献するでしょう。

実行可能な8つの解決策

委員会は、報告書に基づき、以下の8つの解決策を提案しています。

1.伝統的で健康的な食文化を守り、推進する。

2.誰もが健康的な食事を選びやすい、手頃な価格の食環境を作る。

3.炭素を土壌に貯留し、生物の生息地を創出し、水質を改善する持続可能な農業を実践する。

4.手つかずの自然を農地に転換することをやめる。

5.食品ロスと廃棄物を削減する。

6.食料システム全体で、尊厳ある労働条件を確保する。

7.食料システムで働く人々の意見が反映される仕組みを作る。

8.社会的に疎外されがちな人々を認識し、その権利を守る。

これらの解決策は、それぞれ具体的な行動計画によって支えられています。例えば、国の食事ガイドラインに伝統的で健康的な食品を取り入れる、地域の在来種を保護する、食品ロスを削減する、生態系を守るための農業生態学的な手法を改善するなどです。

Walter C. Willett氏は、「私たちが示した8つの解決策は、大規模な変革を実現するための実践的なロードマップです。私たちは世界的な岐路に立っており、政府、企業、市民社会、そして私たち一人ひとりが、人と地球の利益のために食料システムを再構築する役割を担っています」と結論づけました。

ホスピタリティ事業者にできること

これは、ホスピタリティ業界への行動喚起です。Christina C. Hicks教授が述べたように、「公正な食料システムは、権利の問題であると同時に、責任の問題でもあります」。

ホスピタリティ業界の購買力は、生産者に対して「何を、どのように育て、作り、獲ってほしいか」を伝えることで、食料システム全体に変化を促す力を持っています。また、レストランは、消費者の食に対する考え方や選択に大きな影響を与えます。それは、お客様が店でメニューを手にしている時だけでなく、日々の買い物や料理をする時にも及ぶのです。

報告書に示された目標は、誰もが豊かに暮らせる未来のために不可欠であり、ホスピタリティ業界の協力なしには達成できません。つまり、栄養価が高く、持続可能で、そして何よりも「心から美味しい」と感じる料理を提供し、人々が正しい選択をできるよう導くことが求められます。メニューでは、果物、野菜、ナッツ、豆類、全粒穀物を主役に据え、責任を持って生産された肉や乳製品は脇役として少量添える。誰もが公正に扱われ、正当な対価を得られる透明なサプライチェーンを築き、その基準をすべての関係者が守るよう努める。そして、厨房からお客様の皿の上、さらにはサプライチェーン全体で、食品廃棄物を一切許さない姿勢が必要です。

これらは大きな挑戦に思えるかもしれませんが、完璧であることよりも、進歩し続けることが重要です。昨日より今日、今日より明日、少しでも良くなることを目指すのです。SodexoのGlobal Chief Sustainability OfficerであるMouna Daoudi氏は、「特効薬はありません。一つ一つの歩みが大切なのです。小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな違いを生みます。サステナビリティは短距離走ではなく、マラソンです。皆さんに伝えたいのは、『決してあきらめないで』ということです」と語りました。

【参照サイト】WHAT HOSPITALITY CAN LEARN FROM THE LATEST EAT-LANCET REPORT