アジアのベストレストラン50にて、サステナブル・レストラン賞を受賞したバリの「Locavore NXT」の取り組み

アジアのベストレストラン50にて、サステナブル・レストラン賞を受賞したバリの「Locavore NXT」の取り組み

私たちは「世界のベストレストラン50」すべてのリストのサステナビリティ・アワードの審査員として、世界中でコミュニティに素晴らしい貢献をしているホスピタリティ事業を発見するたびにワクワクします。
今回、ソウルで発表された「アジアのベストレストラン50」にて、今年のサステナブル・レストラン賞を受賞したバリの「Locavore NXT」の取り組みについてご紹介します。

「Locavore NXT」は“レストラン以上の存在。ローカルな反逆”と自らを称する、バリ島ウブドにある超ローカル志向のレストランです。

熱帯雨林と棚田に囲まれたこの町で、2023年12月のオープン以来、「環境と社会にポジティブな影響を与えること」を理念として、持続可能性を運営の中心に据えています。

施設内には、自家栽培のためのスペースや、廃棄物の分別エリア、発酵に特化した専用キッチンも設けられ、最初からサステナブルな仕組みが組み込まれています。
メニューは植物中心で、地元のバリ島・ジャワ島の伝統的な農家から仕入れた食材を使用。
特に誇りに思っているのは、専用の「サーキュラー・ウェイスト・センター(循環型廃棄物センター)」により、廃棄物の98.4%を埋立処理から回避できたことです。

Locavore NXTの責任ある食材調達

Locavore NXTは、地元コミュニティの支援、バリ料理の伝統の尊重、環境負荷の軽減を軸に食材を調達。
小規模農家や漁師、生産者をサポートし、直接的な関係を築いています。

伝統的なバリ・ジャワのパーマカルチャー農法を採用する農家と連携し、自生の食材や野草も積極的に活用。
また、伝統的なバリの黒豚などの在来種も取り入れています。

建物の屋上には“フードフォレスト(食の森)”を設置し、ハチミツ採取用の巣箱も設置。地下ではキノコの栽培も行い、空間を最大限に活用しています。

メニューの75%以上はビーガンまたはベジタリアンに対応し、牛肉・乳製品・白砂糖・小麦・精製食品は一切使っていません。

Locavore NXTの社会的サステナビリティ

地域との共生にも重点を置いており、スタッフの少なくとも20%は周辺地域の住民を採用する目標を掲げています。
ほとんどのスタッフは正規雇用で、インターンもきちんと報酬を受け取ります。

チームのために食堂、ロッカー、シャワー付き更衣室、運動・健康プログラム、外部研修、サステナビリティ研修、野草採取体験など、多彩な機会を提供。

地元の不法投棄地や公共スペースでのクリーンアップ活動も定期的に実施しており、Sungai Watchと協力して河川や海岸のプラスチックごみ除去にも取り組んでいます。

また、レストランではゲストに**「今日の食事によってもたらされたサステナブルな効果」を明記したレシート**を発行し、意識向上にも貢献しています。

Locavore NXTが環境保護に取り組む方法

今年最大の成果は、「サーキュラー・ウェイスト・センター」の稼働です。
設立初年度にして、埋立廃棄を98.4%削減したこの施設には、プラスチック粉砕機、ホットコンポスター、バイオシュレッダーを備え、紙・プラスチック・金属を地元業者と連携してリサイクルしています。
今後は地域住民にも開放予定です。

また、2025年までに非有機廃棄物の5%削減も目指しており、分別強化、仕入先との連携、持続可能な調達方法の見直しを行っています。

発酵専用キッチンでは、食品廃棄物を新たな調味料などに再利用。
さらに、地元の陶器会社「Kevala」と提携し、店舗改装時の廃材を用いた「Made From Waste」シリーズの食器を制作し、スタッフ食堂や店舗で使用しています。

雨水回収、排水ろ過、コンポストトイレを組み合わせた閉ループ型水循環システムも導入し、冷房不要な**自然換気設計と太陽光発電(172枚のパネルで電力の約30%)**も実現しています。

「2025年アジアのベストレストラン50」にて、「Locavore NXT」をサステナブル・レストラン賞に選出できたことを大変光栄に思います。
私たちは、地元産・伝統的・オーガニックな素材を中心に植物重視のメニューを展開し、小規模な農家や漁師を支援する姿勢をとても高く評価しています。
特に感銘を受けたのは、廃棄物の98.4%を埋立回避した「サーキュラー・ウェイスト・センター」の設立と、その取り組みを地域にも広げようとしている点です。

Juliane Caillouette Noble(SRAマネージング・ディレクター)





Sustainable Brands OPEN SEMINAR レポート  「Nature Positive(ネイチャー・ポジティブ)で築く持続可能な未来:自然と調和する農業の可能性」

Sustainable Brands OPEN SEMINAR レポート  「Nature Positive(ネイチャー・ポジティブ)で築く持続可能な未来:自然と調和する農業の可能性」

2025年3月18日、19日の2日間、東京・丸の内で開催された、持続可能な社会の実現に向けてサステナビリティのリーダーが集うアジア最大級のコミュニティイベント、サステナブル・ブランド国際会議2025。日本サステイナブル・レストラン協会は、フードサステナビリティパートナーとして、同イベントで提供される食事のサステナビリティの監修を行うとともに、サステナビリティに配慮された食事のとり方を体験する「FOOD MADE GOODダイニング」キャンペーンの企画と、運営協力を行いました。

そして、同イベントに合わせて行われた、Sustainable Brands OPEN SEMINAR(オープンセミナー)の中で、食に関する2つのセッションを企画。料理人や食関連メディアの編集者、農家などのみなさんと登壇しました。

初日は、「自然と調和する農業、ネイチャー、ポジティブで築く持続可能な未来」をテーマにセミナーが開催されました。

ファシリテーターを務めた同協会代表理事の下田屋氏は冒頭で、生物多様性の損失を食い止め、回復傾向に向かわせる必要性を強調し、本セミナーがそのための解決策を探る場となることを示唆しました。3名のパネリスト、料理通信編集長の曽根清子氏、東京練馬区のレストラン「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO」オーナーシェフの岩澤正和氏、一般社団法人シゼンタイ全国循環型社会協議会代表理事の佐伯康人氏を迎え、それぞれの立場から自然と調和する農業への取り組みや、食の現状や未来への展望について活発な議論が交わされました。

食のつながりを紡ぐメディアの使命

料理通信の曽根清子氏は、料理通信が2006年の創刊以来、「生産者、料理人、食べる人を結ぶ」ことをミッションとしてきたと紹介しました。料理通信は、食べるという行為を365日実践するアクションと捉え、「地球にも人にもより良い食べ方」を探求する「Eating with Creativity(イーティングウィズクリエイティビティ)」というテーマを掲げ、食の世界で新しい価値観を生み出す人やムーブメントをフィーチャーしてきました。

特に、「生産者や料理人の価値観を掘り下げることで、読者が自ら食を選択できるような情報発信を重視している」と語ります。また、茨城県との6年間続く取り組みとして、都内のシェフを生産地に連れて行き、食材との出会いを創出し、その食材を使った料理をフェアとして展開する場づくり活動を紹介しました。

生物多様性の重要性については、千葉県木更津市にあるクルックフィールズとのミツバチ目線で森を巡るツアーを通じて、生態系の相互依存性と人間にとっての不可欠性を体験する企画も実施したり、近年注目されるリジェネラティブ農業についても、パタゴニアの事例や、西麻布にあるフレンチレストラン「レフェルヴェソンス」のインパクトレポートなど、日本におけるサステナビリティのリーダー的な取り組みを記事でも取り上げ、食を通じた地球課題解決への可能性を示唆しました。

曽根氏は食を取り巻く社会を客観的に捉えて発信し続ける食の編集者としての視点から、在来種への注目の高まりや、国産小麦の進化にも触れ、食の多様性と持続可能性への関心の高まりを伝えました。また、ネイチャーポジティブの活動を通じて、「消費者の選択が農家の行動を左右する」と強調し、メディアとしてこうした視点を消費者に発信し続ける必要性を感じさせてくれました。

人も地域も元気になるレストランづくり

PIZZERIA GTALIA DA FILIPPOの岩澤正和氏は、「愛媛県の限界集落にある田んぼでの農業体験を通じて、農家の課題を理解し、食材を通して物語を皿の上に表現することで、新たな料理感覚が生まれた」といいます。

特に、人材育成の観点からスタッフ全員を農場に連れて行くことが大切で、自社の成功事例を共有しました。「一緒に従業員を農場に連れていき、食の大切さを学び、従業員の意識を高めるような心を育てることにより、料理の価値を高めることにつながり、結果的にレストランの売上が向上したんです」と、岩澤氏は語ります。

PIZZERIA GTALIA DA FILIPPOは、今後、環境保護と災害への備えを両立するレストラン経営を目指しているといいます。自然の熱源である薪の使用や、国産小麦、里山で採れたよもぎなどの地元食材の活用した実績も数多くあります。地域の農家とのパートナーシップの重要性を強調し、遺伝子組み換え作物を作らない農家との連携や、能登の被災した農家から農作物の全量買い取り支援などの具体的な活動も紹介。そして消費者の理解が農家を支え、未来の農業を決定すると訴えました。

また、今年の春、一般社団法人ロングテーブルジャパンを立ち上げた岩澤氏。3月には実際に、練馬区の学校でロングテーブルのイベントを実施しました。イベントを通じて、食事が社会を豊かにする“対話”を生む場となる可能性を語り、未来を変える食体験を提供する場としてのレストランの役割を再考する必要性を提唱しました。日本の豊かな自然と食文化を活かし、世界の手本となることを目指し、レストランの語源である「回復させる、元気づける」という言葉に立ち返り、食を通じてより良い社会を創造していくと力強く語りました。

誰もが農業に参加できる環境づくり

シゼンタイの佐伯康人氏は、自分自身のお子さんが障害を持って生まれたことをきっかけに、障害者が働く場があまりにも限られていることに疑問を感じ、障害を持つ子供たちのために農業の道へと進みました。農業未経験ながら無農薬・有機農業を開始するも、虫害に悩まされた失敗談も赤裸々に明かします。

福岡正信氏著作の「わら一本の革命」に出会い、「何もしない」農法に触発され挑戦するも幾度とない失敗を経験しましたが、師である木村秋則氏との出会いをきっかけに自然栽培の可能性を確信し、実践を重ねてきたと言います。

そして、その後肥料や農薬を使わない農法で稲が力強く成長する様子や、田んぼの裏作での無肥料栽培の成功事例を紹介し、自然農法の驚くべき可能性を伝えました。全国の福祉施設と共に耕作放棄地を再生する「農福連携自然栽培パーティー」を設立し、自然栽培が環境回復や精神疾患の改善にも繋がる事例を紹介。そしてコロナ禍で食の危機を感じた佐伯氏は、『シゼンタイ』という団体を設立し、「今は障害者だけではなく誰もが農業に参加できる環境づくりを目指しています」と語りました。

若者や企業が自然栽培に関心を寄せ始めている現状を紹介し、自然栽培の高い収益性や種の自給自足の可能性を示唆。日本の食料自給率向上への貢献や、自然栽培を通じた日本再生への熱い想いを語り、自然と調和した持続可能な社会の実現に向けて力強くメッセージを送りました。

暮らしに根づくネイチャー・ポジティブ

セミナー全体を通して、ネイチャーポジティブという概念は、単なる環境保護の取り組みではなく、私たちの食生活、経済活動、そして社会全体に関わる重要なテーマであることが浮き彫りになりました。今までの農薬や化学肥料を使用してきた慣行農法による環境への負荷を認識し、生物多様性の回復を目指すためには、生産者だけでなく、料理人、そして消費者の意識改革と行動が不可欠です。

自然栽培をはじめとする自然と調和した農業の実践例は、持続可能な食料生産の可能性を示唆し、地域社会の活性化や新たなビジネスモデルの創出にも繋がります。参加者一人ひとりが「何を食べるか」という選択を通じて、より良い未来を築いていくことの重要性を再認識する時間となりました。

Sustainable Brands
OPEN SEMINAR

Session 3 食と循環

日時:3月18日(火) 15:00-16:00
会場:明治安田ヴィレッジ丸の内 明治安田ギャラリー
主催:サステナブル・ブランド ジャパン(WEB

※本セミナーは[Sustainable Brands OPEN SEMINAR & EXHIBITION]の内の1つのプログラムです。
[Sustainable Brands OPEN SEMINAR & EXHIBITION]の詳細はこちら
https://www.sb-os-ex2025.com/

Sustainable Brands OPEN SEMINAR レポート  「持続可能な未来への道:料理人が育む サステナブルな基準」

Sustainable Brands OPEN SEMINAR レポート  「持続可能な未来への道:料理人が育む サステナブルな基準」

2025年3月18日、19日の2日間、東京・丸の内で開催された、持続可能な社会の実現に向けてサステナビリティのリーダーが集うアジア最大級のコミュニティイベント、サステナブル・ブランド国際会議2025」。日本サステイナブル・レストラン協会は、フードサステナビリティパートナーとして、同イベントで提供される食事のサステナビリティの監修を行うとともに、サステナビリティに配慮された食事のとり方を体験する「FOOD MADE GOODダイニング」キャンペーンの企画と、運営協力を行いました。

そして、同イベントに合わせて行われた、Sustainable Brands OPEN SEMINAR(オープンセミナー)の中で、食に関する2つのセッションを企画。料理人や食関連メディアの編集者、農家などのみなさんと登壇しました。

2日目のセッションのタイトルは、「持続可能な未来への道:料理人が育む サステナブルな基準」。

「持続可能な未来への道:料理人が育む サステナブルな基準」とは

消費者がサステナビリティを基準にレストランを選ぶ状況を作るための仕組みが必要であるという背景から、日本サステイナブル・レストラン協会のサポートの下、2023年9月〜2024年7月の1年間、フードテック官民協議会の消費者アプローチ勉強会が、消費者の選択基準を調査しました。レストランやシェフがどのようにサステナビリティを推進しているかを調査し、消費者がサステナビリティを基準に選んでいるかをアンケートで確認。フードテックの文脈を含めた消費者の選択基準をまとめた本報告書は、2024年12月に農水省に提出されました。

下田屋氏は、本セミナーのファシリテーターとして、冒頭でレストランにおけるサステナビリティ推進の重要性と消費者の理解促進という、セミナーの主要な目的を明確に示しました。そして、消費者がサステナビリティを基準としてレストランを選択する状況を作り出す仕組みと、料理人がサステナビリティの本質を理解し、行動することを支援する必要性を強く訴えかけました。

その中心となる概念として提示されたのが、「持続可能な食の未来へ 日本の料理人・シェフのサステナビリティ・マニュフェスト:2030年へ向けた17の指針」です。

これらのマニフェスト作成に至った背景には、デンマークのコペンハーゲンを世界に冠たる美食都市に変貌させたレストラン、「noma」の創業者であるクラウス・マイヤー氏が、2004年に提唱した「新しい北欧料理(ニュー・ノルディック・キュイジーヌ)のためのマニフェスト」があります。

「持続可能な食の未来へ

日本の料理人・シェフのサステナビリティ・マニュフェスト:2030年へ向けた17の指針」

(The Japanese Chef’s Manifesto for a Sutainable Future)

食文化の継承と多様性

1. 日本の食文化や伝統料理を理解し表現する。

2. 世界の伝統料理との融合を模索する。

3. 料理を通じて会話と笑顔を生み出し、人々の心を結びつける。

調達

4.生産者を支援し、地元産と旬の食材を使用する。

5.  健康な土壌で生産された農産物を使用する。

6.絶滅危惧種や数が減少傾向にある魚の使用を避け、追跡が可能な水産物を使用する。

7.アニマルウェルフェアと環境に配慮した畜産物を使用する。

8.植物性食品を積極的に取り入れる。

9.食物サプライチェーンに関わるすべての人権を尊重し、環境にも配慮した調達を行う。

環境

10.エネルギーの使用を減らし、カーボンフットプリントを削減する。

11.食品ロスを削減し、食材を無駄なく活用する。

12.資源の使用を削減し、再利用やリサイクルを通じて無駄をなくす。

13.生産者と連携して生物多様性の保全と自然環境の回復に貢献する。

社会

14.誰もが公平に評価され、安心して働ける職場環境をつくる。

15.健康と地球環境に配慮した食事を提供する。

16.栄養バランスの取れた食事を提供する。

17.リーダーシップを発揮し、パートナーシップを締結して、サステナビリティの意識啓発を行う。

持続可能な食料政策:政府のアクションとその意義

農林水産省の村上氏からは、地球温暖化による様々な地球課題に対応するため、政府が決定した「みどりの食料戦略システム」(令和三年決定)と、その具体化を図る「みどりの食料システム法」(令和四年七月成立)を紹介し、環境と調和のとれた食料システムの確立と環境負荷低減の促進を目指す政府の取り組みを説明しました。

 環境配慮型農産物の不明確さが消費者の購買に繋がっていない可能性を示す調査結果を紹介し、そうした取組の見える化の課題にも触れました。そのために、農林水産省では、食と農林水産業のサステナビリティを考えるイベントやSNSでの情報提供を実施したり、そして「緑の食料戦略」の認知度向上を目指した活動を展開しています。

さらに、フードテックの推進の背景として、持続可能な食料供給、労働人口不足への対応、ウェルビーイングの実現という三つの柱で捉え、様々なサステナブルなフードテックの事例をウェブサイトで公開。官民連携の取り組みとしては、「フードテック官民協議会」(令和2年10月設立)を立ち上げ、1430人以上が参加する無料の協議会を運営し、プレイヤーの育成とマーケットの創出を推進しています。

 近年では、新しいワーキンググループの立ち上げや地方自治体や民間企業を発信とした地域活動が活発化しており、令和六年度から地方でのイベント開催、来年度以降は地域活動との連携を強化する予定であること、そしてフードテックビジネス実証事業を実施しています。また、消費者アプローチ勉強会については、今後ワーキングチームとして活動する予定であることを述べ、消費者の理解促進に向けた具体的な動きを示しました。

レフェルヴェソンスの挑戦:食とエネルギーの未来を切り拓く

レフェルヴェソンスのエクゼクティブ・シェフである生江史伸氏は、「持続可能なレストラン経営には、食材の調達から調理、提供までの全過程において環境負荷を考慮する視点が不可欠です」といいます。

レフェルヴェソンスでは昨年9月から使用電力をすべて再生可能エネルギーに移行したことや、電気に関しては来年度からCO2排出がゼロになる予定であることを明言しました。

レストラン経営においては、技術的な情報や仕入れ先、運営企業などの情報を隠す文化がある一方で、透明性を高めるために努力の成果や課題を公開し、批判を受け入れつつ改善を図ることが重要だといいます。

2022年度から発行しているレフェルヴェソンスのインパクトレポートでは、使用する食材の産地や生産者の情報、食材の輸送距離、廃棄物の削減率、エネルギー使用量などが詳細に記録されています。

「数値で見える化することで、改善点が具体的に分かります。持続可能な取り組みは小さな積み重ねの結果。データを通じてその成果を確認し、次のアクションに活かしています」と生江氏は説明します。また、作成においては外部に任せるのではなく、レストランのスタッフが自主的に作成しているのだそう。

さらに、生江氏は自然資本(ネイチャーキャピタル)の考え方を紹介し、自然から資源を借りて社会を成り立たせている以上、返すべき責任があると述べ、自然からの搾取には罰則を設け、再生力に貢献する活動への補助金投入を提案しました。続けて「日本的な自然への感謝の念が、サステナビリティに通じるかもしれない」と日本の料理業界の未来に期待も込めて語りました。

シェフの物語が変える、持続可能な未来

料理王国の柴田氏は、メディアとして「持続可能な食」を広めるための役割に言及しました。「消費者がサステナブルな食の価値を知るためには、情報発信だけでなく、体験や感動が欠かせません」と強調します。シェフやレストランがサステナブルな取り組みを行うだけではなく、そのストーリーを伝えることが鍵だと柴田氏。「シェフが生産者の思いを伝え、それを消費者が実感することで、サステナブルな食が広がっていく」と語りました。

一方で、サステナブルな取り組みには課題やジレンマも存在すると指摘しました。シェフたちの必要性の理解不足や、労働時間短縮とサステナブルな取り組みの両立の難しさ、日本特有の「もったいない」精神と欧米のサステナブルな食文化の違いなどを挙げました。

シェフたちへのアンケート調査の結果、2024年のキーワードとしてSDGsの重要性が認識されている一方で、実際に行動に移しているシェフはまだ少ないという現状を示し、2025年に向けた取り組みの必要があるといいます。

メディアの役割としては、料理人は生産者と消費者をつなぐハブのような存在であり、日々の料理を通じてサステナビリティを伝えることが重要であるといいます。イベントを通じてサステナビリティを広めることの効果性を伝え、さらに食の雑誌やライフスタイル雑誌と連携することで、より大きなインパクトを生み出すことができるとしました。

サステナブルな未来へ:料理人、政策、メディアが描く次の一歩

後半のパネルディスカッションでは、各登壇者がそれぞれの立場から、サステナブルな食の未来について熱く語り合いました。村上氏は「政策だけではなく、料理人が現場で具体的なアクションを起こすことが重要です」と話します。生江氏は「料理人が地域の食文化の担い手として役割を果たすことで、持続可能な社会に貢献できる」と続けました。柴田氏は「消費者がサステナブルな選択をするための情報発信が、飲食業界全体の流れを変える」と提言。

3者の話を受け、最後に下田屋氏が「それぞれの立場が連携し、行動を積み重ねることで、持続可能な未来が築かれることになるでしょう。」と述べ、会を締めくくりました。

Sustainable Brands
OPEN SEMINAR

Session 10 サステナブルレストラン

日時:3月19日(水) 17:30-18:30
会場:明治安田ヴィレッジ丸の内 明治安田ギャラリー
主催:サステナブル・ブランド ジャパン(WEB

※本セミナーは[Sustainable Brands OPEN SEMINAR & EXHIBITION]の内の1つのプログラムです。
[Sustainable Brands OPEN SEMINAR & EXHIBITION]の詳細はこちら
https://www.sb-os-ex2025.com/