参照:英国サステイナブル・レストラン協会 エマ・キャロル・モンティル氏より

2021年、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、IPCC第6次評価報告書の第1作業部会報告書(自然科学的根拠)を発表しました。

そして、2022年2月28日、待ち望んだ第2作業部会報告書が発表されました。そこでは気候変動の影響の評価を行うとともに、生態系、生物多様性、人間社会について、地球レベルおよび地域レベルで考察しています。また、地球が気候変動に適応するための能力についても検討されました。報告書の主執筆者であるヘレン・アダムス博士によると、「報告書の中で明確なことの一つは、状況は確かに悪いけれど、実際のところ未来は気候ではなく、私たちにかかっているということ」を示しています。そこで、本レポートでは、その見出しを簡単にまとめるとともに、なぜ私たちは希望を持ち続けるべきなのか、そしてより重要なこととして、私たちはどのように、そしてなぜ気候変動への対応を積極的に行い続けるべきなのかについてご紹介します。

主な見出し

調査結果は、3つの主要な分野に分類されています。

・観測・予測される影響とリスク

・現在の適応策とその効果

・気候変動に強い開発

観察・予測される影響とリスク

ビリー・ジョエル氏の言葉とは対照的に、この危機を起こしたのは、間違いなく私たち人間なのです。

本報告書では、気候危機が人間活動によって引き起こされていることは明らかであることを強調しています。その結果、異常気象がより頻繁に発生し、自然や人々に広範な被害をもたらしています。分野や地域を問わず、最も脆弱な人々やシステムが、最も不当な影響を受けています。気候変動に対する生態系と人々の脆弱性は、地域間および地域内で大きく異なり、この格差は、社会経済的発展、持続不可能な資源利用、不公平、ガバナンスなどの要因によって引き起こされます。

本報告書では、1.5℃の気温上昇をめぐる警告は依然として残っています。今後数十年以内に地球温暖化が1.5℃の気温上昇を超えた場合(オーバーシュート)、我々の地球はさらなる深刻なリスクに直面することになります。オーバーシュートの大きさと期間によっては、その影響の多くが取り返しがつかなくなり、自然および人間のシステムの両方に重大なリスクをもたらすことになります。さらに、気候変動の影響とリスクはますます複雑化し、緩和することが難しくなっています。

現在の気候変動の適応策とその効果

このセクションは、より「良いニュース」側に寄ったものです。この報告書では、気候変動の適応策の計画と実施において、部門や地域を問わず大きな進展があったことを認めています。しかし、この進展は偏在しており、多くのギャップがあります。さらに、著者らは、人と自然に対するリスクを軽減することができる、実現可能で効果的な適応策があることを概説しています。また、「人間のシステムと生態系において適応策を実施、加速、維持するためには、それを可能にする条件が重要である」ことも強調しています。これには、政治的行動、制度的枠組み、政策、教育の改善などが含まれます。

気候変動に強い開発(気候変動の影響に対処するための能力構築)

このセクションもまた、良いニュースっぽく語られることがあります。この報告書では、これまで取り組まれてきた以上に、実証可能な気候変動の回復力(レジリエンス)がある開発が急速に世界中で行われてきたことを認めています。

しかし、これはまだ十分なものではありません。著者らは、政府や組織体がリスク軽減、公平性、正義を優先した包括的な開発選択をすることで、気候変動に対する回復力を生み出すことができると説明しています。

さらに、政府とコミュニティ、教育機関、科学その他の機関、メディア、企業との協働や、従来疎外されてきたグループとのパートナーシップの構築により、気候変動への回復力を実現することができます。

また、著者らは、今後10年間の私たちの選択と行動が地球の将来を決定すると主張しています。IPCCの共同議長であるデブラ・ロバーツ教授は「今が本当に重要なときです。私たちの報告書は、事態を好転させるためには、この10年間が行動のときであることを明確に指摘しています。」と述べています。

つまり、この報告書は私たちの不安が確かなものになったと同時に、最悪の事態を回避するためのわずかな時間的猶予を与えてくれているのです。

SRAとして何をしていくのか?

不思議なことに、この報告は恐るべきものではありますが、驚く内容ではなく少し安心しています。確かに状況は悪いのですが、悪いということは既にわかっていました。しかし、希望が残されているかどうかは分かりませんでした。でも実際には、希望は残っているのです。このこと自体が、人々が行動を変え、より持続可能な方法で行動するための勢いと動機付けになることを期待しています。

気候変動の原因が人類にあるということ、そしてその問題において食料が大きな割合を占めていることは明らかですが、人類と私たちのフードシステム両方が解決策の一部になりうる、そしてならなければならないこともまた明らかです。ホスピタリティ産業は、そのためにユニークな役割を担っています。食料は非常に影響力の大きいセクターであり、世界の温室効果ガス排出量の大きな割合を占めているだけでなく、食料が私たちの生活のあらゆる側面と交錯しているからです。

SRAの目標は、環境的に修復可能で、社会的に進歩的なホスピタリティ産業への変革を促進することです。英国内のホスピタリティ産業のサステナビリティを向上させるだけでなく、世界的にサステナビリティを加速することができるよう、世界的な拡大にも取り組んでいます。私たちは、グローバル・パートナーシップ・プログラム(香港と日本の拠点を含む)、国際企業とのパートナーシップ(フロール・デ・カーニャやヴァローナなど)、そしてグローバル・キャンペーンを通じて、これを実現することを目指しています。例えば、最近リニューアルした「One Planet Plate」キャンペーンでは、地球全体で500万食の持続可能な食事を提供することを目指しています(詳しくはこちらをご覧ください)。

また、Net Zero Nowの友人や同僚とともに、レストラン、パブ、バーのプロトコルに取り組み、これらの施設がネットゼロ(温室効果ガスの排出量を正味ゼロにするという意味)に移行できるよう支援しています。Net Zero Nowは、企業が気候変動という緊急事態に取り組む必要があること、そしてこのプロセスをできるだけ身近なものにすることが必要であることを認識しています。Net Zero Nowは、中小企業がバリューチェーン全体の気候変動への影響を計算し、削減するためのセクター別のツールや有用なガイダンスを提供することによって、これを実現しようとしています。

私たちのFood Made Goodのレーティングは、今後も外食産業全体のサステナビリティを評価するための代表的なものであり続けるでしょう。この評価ツールは、企業の行動へのコミットメントを示し、さらにサステナビリティを高めるためのサポートとガイダンスを提供しています。

あなたはどうすればいいのでしょうか?

サステナビリティに関心のある個人として、あるいは変化を起こそうとしている企業の従業員としてこれを読んでいるのであれば、気候危機と戦うために必要な地球規模の変化に向けて、誰もができることがたくさんあります。

まずは個人の生活を変えてみましょう。食生活、交通手段、買い物の仕方や場所など、さまざまなことを変えてみましょう。自分にはどのような変化の可能性があるのか、まずは自分の興味やモチベーション、そして現実的に可能なことから考えてみてください。

同様に、あなたがビジネスをしているのなら、サステナビリティの実践を振り返り、改善できる点を確認することが重要です。例えば、再生可能エネルギーへの転換、地元のサプライヤーの利用、メニューに載せる野菜の数を増やすなどです。これは地球への影響を減らすだけでなく、従業員の定着やビジネスのインセンティブにも大きな影響を与えます。Food Made Goodのレーティングは、あなたの会社の実践を評価し、よりサステナブルであるためのステップを称賛し、改善すべき点を明らかにするのにも役立ちます。また、Net Zero Nowと連携して、温室効果ガス排出量を削減することも可能です。

個人または企業として、他の企業や政府機関に圧力をかけ、組織的な変化をもたらすことができます。地球を守るためには、個人の行動でもかなりの違いがありますが、大規模な変化を起こすためには、最も権威のある人たちの行動が必要です。地元でどのような変化を起こすべきか、地元の議員に手紙を書いたり、請願書に署名したり、キャンペーンに参加したり、色々なことをやってみましょう。

私たちは今、重大な局面に立たされているのです。だからこそ、私たちの行動は今までになく重要です。コラボレーションとイノベーションを通じて、私たちが協力し、緑豊かな未来を維持できることを願っています。

報告書の全文と各テーマの最終章(案)はこちらからご覧いただけます:

英語:https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/

日本語:http://www.env.go.jp/press/109850.html