2022年2月24日にロシアとウクライナとの戦争が始まってから約1か月が経ちます。今回のロシアとウクライナとの戦争により、「世界的な食料危機が起こるのではないか」ということが危惧されています。

農林水産省の発表によるとここ数年の日本の食料自給率は40%を下回り、2020年度は37%となっています。(※カロリーベースによる試算)これは、現在、日本で食べられているものの内、37%が国内生産で、残りの63%は海外からの輸入に頼っているということを意味します。今回のロシアとウクライナの戦争のような国際情勢次第で、食料の輸入ができなくなり、日本も食料危機に陥る可能性が十分にあります。今回の戦争を通じて、「食のつながりと平和構築」について考えていきませんか?

 

*以下SRAの記事を翻訳して抜粋したものです

現在のロシアとウクライナとの戦争は、国を破壊し、荒廃させ、何百万人もの人々を避難させ、生活を破綻させています。しかし、この危機の影響はそれだけではありません。この戦争が世界の食料安全保障の危機を生み出していることが、ますます明らかになってきているのです。ロシアとウクライナは、農業と食料の世界的な最大生産国であり、食料生産、安全保障、価格に世界的な影響を及ぼすことになります。

 

ウクライナ

ウクライナは世界の穀倉地帯と呼ばれ、世界の小麦の約4分の1、ひまわり製品(種子や油など)の約半分を輸出しているほどです。ウクライナでは、3月の最初の10日間が種まきの時期で、4月の最終週までに種まきを完了させなければなりませんでした。ウクライナの中でも農業生産性の高い地域で農作業ができなくなったら地域的にも世界的にも、栽培や流通の量が少なくなってしまうのです。

 

ロシア

ロシアは小麦、トウモロコシ、ヒマワリ油の世界輸出の大部分を担っています。また、作物の成長に欠かせないカリやリン酸といった肥料の主要原料の生産国でもあります。

 

2つの国

ロシアとウクライナは、輸出されるトウモロコシの19%、小麦の3分の1、ヒマワリ油の80%を生産しています。これらの数字を並べると、非常に厄介なことが見えてきます。
その穀物の多くは、動物飼料やパンの生産にも使用されています。つまり、パンの生産だけでなく、タンパク質やその他多くのサプライチェーンに影響を及ぼすことになります。

 

世界的にはどのような影響がでるのでしょうか?

まだ世界的に小麦の供給に支障は出ていませんが、戦争が始まってわずか1週間で、すでに価格は55%も急騰しています。戦争が長引けば、ロシアやウクライナから安価に輸出される小麦に頼っている国々は、7月には品薄になることが予測されます。特にエジプトやレバノンなどでは、人々の食生活の大部分が政府補助金で安価にパンが販売されており、その原料となる小麦はウクライナから輸入されているため、食料不安が生じ、人々が食料難に陥る危険性があります。また、ウクライナやロシア産の製品は大量の家畜の飼料となるため、家畜の飼料価格の上昇につながり、それにより世界的に肉や乳製品の価格が上昇する可能性があります。

 

ポジティブに捉える余地はあるのでしょうか?

では、なぜ私たちは戦争から、1%でも何か良いものが生まれるものがあるかもしれないという感情にしがみついているのでしょうか?
それは、人間の本性の裏返しです。ロシアとウクライナの戦争を背景に、善意の力が表面に出てきているからです。料理人、パン職人、シェフたちが、ウクライナ国内だけでなく、イギリス国内でも先導して動いているというニュースもあります。

人々の食事を確保するために、食のプロが大規模な活動を行う素晴らしい事例も紹介されています。

ネイト・ムック氏は、ワールド・セントラル・キッチンの仲間とともに、ウクライナとポーランドの国境にいる人々に必要な温かい食事を提供し、スペインの郵便局が貨物機を貸し出して食料を届けたことを語っています。

ウクライナのテレビシェフ、ダーシャ・マラホヴァ氏は、逃亡した国中のレストランやパン屋が、兵士、病院スタッフ、ボランティア、年金生活者のために、体を張って料理を作っていることをフードプログラムのプレゼンターダン・サラディノ氏に伝えました。港町オデッサでは、市場の商人たちは自分たちの農産物をすべて配り、市民に食料として与えていました。

一方、英国では、「#CookforSyria」の活動を行った素晴らしい人たちが、再び立ち上がりました。現在、レストランは特別ディナーを開催し、請求書に寄付を載せており、本稿執筆時点でユニセフに11万5千ポンドを寄付しています。
この2年間、私たちはパンデミックに苦しみましたが、それ以上に戦争には明るい兆しがありません。しかし、食を通じた平和構築の働きかけは、1%の希望と言えるかもしれません。