未来のレシピコンテスト2025 ファイナリスト
橋本夏帆 はしもとなつほ (Entoダイニング)

鳥取県出身。食材や市場が好きで、料理を学びたいという思いから島根県海士町へ。料理学校「島食の寺子屋」で地域の食材や食文化に触れながら和食を学ぶ。生産者の方々が届けてくれる食材や季節の恵みを大切にしながら、現在は隠岐・海士町の宿泊施設ENTŌダイニングで料理に携わっている。

 橋本夏帆さんは、隠岐諸島・海士町の宿泊施設 Ento(エント) のダイニングで料理を担当している。現在は主に朝食を担当し、日々の調理に加え、季節の食材に合わせたメニューのアレンジや食材の選定などにも関わっている。

料理の軸にしているのは、海士町の「地のもの」を使うことだ。野菜は自ら畑を訪れて仕入れ、魚も可能な限り現場で確認する。生産者の顔を見て食材を選ぶことを大切にしながら、島の自然と暮らしを料理で表現している。

出身は鳥取県。もともと旅行関係で働いていたが、料理への興味もあり転身、コロナ禍明けのタイミングで海士町の料理学校「寺子屋」に入塾し、その後Entoに就職。現在も島に暮らしながら、食に関わる仕事を続けている。

サステナビリティとの関わり

橋本さんにとってサステナビリティは、もともと強く意識していたテーマではなかった。しかし海士町で料理を続ける中で、地域の課題や食材の背景に自然と目が向くようになったという。

以前のコンテストテーマがシーフードだった際には、海士町周辺の海で起きている「磯焼け」の問題を知るきっかけになった。今回の肉のテーマでは、Entoの夕食で使用する隠岐牛の切り落としや脂身の活用について考えるようになった。

現在Entoでは若いスタッフが主体となり、現場で食材を見つけ、料理を作っている。橋本さん自身も、そうした環境の中で自然と食材の背景を考えるようになっていったという。 

 

■ レシピ制作でぶつかった壁

今回橋本さんが考案したレシピは「隠岐牛と海士の恵みのミルフィーユ」。

島の恵みを無駄なく生かしたいという思いから生まれた一皿だ。隠岐牛の端材に、地元の野菜や摘果みかん、完熟赤山椒などを重ね、秋の海士町を感じるミルフィーユに仕立てた。

レシピ作りでは、まず食材選びから始めた。隠岐牛を軸に、その脂身を食べやすくする柑橘やスパイスを組み合わせ、全体の構成を整えていったという。

同時に「プラントベース」や「ベターミート」といったコンテストのテーマを改めて調べ、隠岐牛が放牧で育てられている背景なども確認しながら、自分の料理がテーマにどう関わるのかを考えていった。

新しく食材を買うのではなく、現場で余っているものや、捨てられがちな部分をどう生かすか。橋本さんにとってレシピ制作は、日々の現場で感じていることを一皿に整理する作業でもあった。

 

コンテストを通じて得た学び

今回の挑戦は、前年の参加とは大きく違っていた。

2024年の未来のレシピコンテストの際は、盛り付けや撮影を寺子屋の先生に手伝ってもらったが、今回はレシピ制作から撮影まですべて一人で完結させた。普段の朝食業務では効率を重視するが、コンテストでは自分が作りたい料理に集中して取り組むことができた。

「食材とじっくり向き合う時間が持てたことが楽しかった」

と橋本さんは振り返る。

また、ファイナリストに選ばれたことで地域の方から声をかけられることも。料理が写真やレシピとして可視化されたことで、「こういう料理を作る人なんだ」と周囲に伝わりやすくなり、それが新しい仕事の機会にもつながったという。

■ 今後の展望

海士町での生活も3年目を迎え、生産者や地域の人たちとのつながりはより深くなった。

今後はその関係性を生かしながら、島の食材や文化を料理として届けていきたいと考えている。町内に新しくできる飲食店などで、現場に立ちながらレシピ開発や料理づくりを支える仕事にも関わっていきたいという。

海士町の食材と人のつながりを、料理を通して伝えていくこと。それが橋本さんのこれからのテーマだ。

「未来のレシピコンテスト」の参加を考えている人へ

橋本さんは、このコンテストを「自分を客観的に見つめる機会」だったと語る。

忙しい日常の中で、食材や料理にじっくり向き合う時間は意外と少ない。外部の料理人に評価してもらう経験もまた、普段の仕事ではなかなか得られないものだ。

「自分の料理を見直すきっかけとして、参加する価値はあると思います」

料理を始めたタイミングが違っても、真剣に取り組む人が挑戦できる場であってほしい。そんな思いも、このコンテストに参加したからこそ見えてきたものだった。

島根県・隠岐諸島の海士町で育つ隠岐牛と、島の海や大地の恵みを重ね合わせた一皿。放牧で育てられる隠岐牛の旨味に、海士町で採れる海藻や野菜などの食材を重ね、ミルフィーユ仕立てにした。島の自然環境と生産者の営みに目を向け、地域の食材を組み合わせることで、海と大地が育む食の循環と豊かさを表現している。