10月16日は「世界食料デー」。「もったいない」の先を考えてみませんか?

10月16日は「世界食料デー」。「もったいない」の先を考えてみませんか?

10月16日は、国連が定めた世界の食料問題を考える日、「世界食料デー」です。世界人権宣言に明記されているように、「食料への権利」はすべての人が生まれながらに持っている権利です。10月は、10月16日の世界食料デーをきっかけに、飢餓や食料問題について考え、解決に向けて一緒に行動する1か月となっています。

ユニセフ(国連児童基金)、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連世界食糧計画(国連WFP)、世界保健機関(WHO)が共同で発表した2022年版の『世界の食料安全保障と栄養の現状(原題:The State of Food Security and Nutrition in the World)』報告書では2021年には、飢餓人口は最大8億2800万人に上り、前年比4600万人、新型コロナウィルス感染症のパンデミック開始以降1億5000万人増加したことがわかっています。

また、2022年の2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻以来、戦闘で港が封鎖され輸出が困難になったことで貿易が滞り、主要な食料(穀物、食肉、砂糖、乳製品、油糧種子)の国際価格が高騰しています。ウクライナのソルスキー農業政策・食料相は、同国の主要輸出ルートが遮断されたままであれば、2022年後半に作付けされる小麦は最大で3分の2減少し、世界的な食料危機を長引かせる恐れがあるとみています。

多くの人が飢餓に苦しんでいる一方で、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されています。農林水産省によると日本でも1年間に約522万トンもの食料が捨てられており、これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当します。

混沌とする世界情勢の中で、食の安全保障が揺らいでいる中で、私たちに何ができるでしょうか?SRA-Jも賛同し、「世界食料デー」に向けてハンガーフリーワールド主催のもと実施されるキャンペーンでは、「フードロス~「もったいない」の先を考えよう」をテーマに、10月7日(金)19:00〜20:30にオンラインイベントを開催されるそうです。

フードロスをめぐる社会・環境の課題を知り、一緒に「もったいない」の先を考えてみませんか?

 

30年先の農業の未来を考えた「みどりの食料システム戦略」とは?

30年先の農業の未来を考えた「みどりの食料システム戦略」とは?

現在、気候変動による異常気象、森林破壊、水資源の枯渇、農薬や化学肥料による土壌への悪影響、水産資源の減少、さらには海洋プラスチックなど、数多くの環境問題が発生しています。

このように地球環境が悪化している状況下で、EU、米国では食と生物多様性に関わる戦略が策定され、具体的な数値目標も提示しています。アメリカでは、2020年2月に、「農業イノベーションアジェンダ」を公表し、2030年までに食品ロスの50%削減、また2050年までの農業生産量の40%増加と環境フットプリント50%削減の同時達成などを目標に掲げています。

また、EUでは、2020年5月に「ファーム to フォーク」(農場から食卓まで)戦略を公表し、2030年を目標年と設定し、農薬の使用及びリスクの50%削減、一人当たり食品廃棄物を50%削減、化学肥料の使用を少なくとも20%削減、畜産及び養殖に使用される抗菌剤販売の50%削減、農地を少なくとも25%に有機農地へ転換などの目標を掲げる戦略を出しています。

このような世界の流れを受け、日本では2021年5月、農林水産省から、日本の農業が目指す姿を示した「みどりの食料システム戦略」が発表されました。

「みどりの食料システム戦略」とは、生産から消費までのサプライチェーンの各段階において、新たな技術体系の確率と、更なるイノベーションの創造によって、日本の食料安定供給、農林水産業の持続的発展と地球環境を両立させるために策定したものです。

中長期的な観点から戦略的に取り組むことを政策方針とし、2030年、2040年までと10年毎に取り組みが設定されて、最終的には30年後の2050年の目標が示されています。

その内容は以下の通りです。

1. 農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現
2.化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減
3.化学肥料の使用量を30%低減
4.耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万haに拡大
5.2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現
6.エリートツリー(従来のスギと比べて成長スピードが1.5倍となる上、花粉量は少ない木)等を林業用苗木の9割以上に拡大
7.ニホンウナギ、クロマグロ等の養殖において人工種苗比率100%を実現 等

例えば、有機農業については「2040 年までに、主要な品目について農業者の多くが取り組むことができるよう、次世代有機農業に関する技術を確立する」「2050 年までに、オーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万 ha)に拡大することを目指す」ことが掲げられています。

最近では、一般の消費者の環境意識が高まっているということもあり、今後有機食品の消費がさらに拡大していくことが予想されます。

さらに具体的な取り組みについては以下をご参考ください。

 

日本サステイナブル・レストラン協会も実行委員として参加している日本オーガニック会議では、このみどりの食料システム戦略についてのパブリックコメントで以下のポイントを提言しており、今後の改善を求めています。

① 公共調達における有機農産物の取り扱いを優先させる制度の作成
② 良質な堆肥生産のための技術開発とガイドラインの作成
③ みどり戦略の担い手確保対策
④ 2030年目標達成のために2025年に中間の見直しを実施
⑤ 環境負荷軽減のための技術指針の作成
⑥ 基盤確立事業の内容で、ゲノム編集による新品種の育成は、環境負荷軽減を目的として有機JAS規格へのゲノム編集導入と同一ではないことを明記するべき。
⑦ 地球温暖化対策として、土壌炭素貯留効果の一層の認知向上、また 生物多様性の保全効果として、「生物多様性保全に資する事業を支援すべき」と明記を追加すべき。

SRAのフレームワークの中の「調達」との関わりも大きい「みどりの食料システム戦略」。ぜひ今後の流れに注目してみてください。

詳しくはみどりの食料システム戦略トップページをご覧ください。

農林水産省ウェブサイト: https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/

みどりの食料システム戦略 説明動画:https://youtu.be/CSLH0QQGMLw

 

グラウンズウェル:「リジェネラティブ農業」の事例を作る

グラウンズウェル:「リジェネラティブ農業」の事例を作る

 

「リジェネラティブ農業」という言葉を耳にされたことはありますか?

海外では普及していっていますが、日本ではまだまだメジャーではないのが現状です。「リジェネラティブ農業」は、日本語で「環境再生型農業」とも呼ばれ、農地の土壌をただ健康的に保つのではなく、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復に繋げることを目指す農業を指しています。土壌が健康であればあるほど多くの炭素を吸収(隔離)するため、リジェネラティブ農業は気候変動を抑制するのに有用な手法だと考えられています。

日本でも話題になった動きとしては、世界最大の食品・飲料メーカーの「ネスレ」やアウトドアブランド「パタゴニア」がその可能性にいち早く着目し、それぞれ独自のアクションを起こしています。

ネスレは、2020年12月に気候変動対策に向けたロードマップを発表しました。その中には、ネスレが世界中の支店でリジェネラティブ農業の拡大を推進すること重点におき、約44億スイスフラン(日本円で約5,200億円)を投資し、リジェネラティブ農業の実践にあてるとしています。また、2030年までに商品に使われる原料の50%(1,400万トン以上)をリジェネラティブ農業で調達することを目指しています。

また、パタゴニアでは、「リジェネラティブ農業」の可能性にいち早く着目した企業のひとつです。1996年に自社製品に使用するコットンの100%をオーガニックコットンに移行し、次のステップとして「リジェネラティブ・オーガニック」への移行に取り組んでいます。2020年からは「リジェネラティブ・オーガニック認証」のパイロットコットン栽培の拡大に向けて、150以上のインドの農家と提携しています。

日本企業でも「リジェネラティブ農業」の動きは少しずつ増えています。
北海道に拠点を置く、ユートピアアグリカルチャーもそのひとつです。「リジェネラティブ農業」によってつくられた乳製品や卵などを使用した製菓製造に取り組んでいる企業で、北海道の広大な大地を活用した牛や鶏の放牧に取り組みながら、北海道大学と共同で「循環型酪農によるCO2の吸収・隔離」に関する研究を行っています。「リジェネラティブ農業」によって作られたこだわりの素材を用いたチーズケーキ「チーズワンダー」は、完売続出で中々手に入らない人気商品となっています。

 

以下SRA本部のブログより翻訳
https://www.foodmadegood.org/groundswell-making-the-case-for-regenerative-agriculture/

著者:ルイーザ・ドット, SRA シニアプロジェクトマネージャー

SRAは、Food Made Goodに関連する企業の代表者を連れて、グラウンズウェルフェスティバル(リジェネラティブ農業の会議とショー)に行き、リジェネラティブ農業の原理、課題、解決策について学びました。

SRAをはじめ訪問者は下図を手にもち、一連のセッションと屋台を訪ねました。
土づくりを中心とした農業が、いかにして、荒廃した広大な土地の回復、生物多様性の向上、炭素の隔離(二酸化炭素の大気中への排出を抑制する手段)、気候変動対策、土壌侵食に対する回復力を構築するかを探りました。生産性の向上、そして何より美味しく栄養価の高い食料の提供につながることも示していました。これらの原則を包含するリジェネラティブ農業(環境再生型農業)という言葉は、ここ数年、人気を博してきました。

ここでは、その中からいくつかを紹介しましょう。

オネストバーガー(イギリス国産の食材にこだわったバーガーショップ)は、「グラスルーツ」の農家グループと協力して、リジェネラティブ農業を実践する農場から牛肉を調達しています。農家側にとっては、牛肉の市場につながり、オネストにとっては、牛肉を丸ごと手に入れられることになります。

ホームドッツ(2012年に設立され、サフォークのブランプトンに拠点を置く英国の食品小売および製造会社)は、自らを「誇り高き仲買人」と表現し、約35の農家で栽培された英国産の豆類や穀物を全国のレストランに供給するマーケットをつくりました。。
ワハカ(メキシコスタイルの屋台の食べ物を販売する英国のレストラングループ)やケンブリッジ公爵のメニューに、植物の力で作られた豆類を提供し続けているのです。

アビー・ローズさんは、アニマルウェルフェアに配慮した食肉生産者であるパイパーズ・ファームのチームの一員として、デボンシャー(イングランド南西部の地域) にある44の農場と協力して、同レベルのアニマルウェルフェアと農業原則に基づいた食肉生産を行っています。討論の多くは、「リジェネラティブ農場」の認証と、合意された基準をめぐり、繰り返し話し合いが持たれました。

この日の基調講演はヘンリー・ディンブルビー氏(英国のビジネスマン兼料理作家。2018年3月に環境食糧農村地域省の非常勤取締役に任命)によるもので、政府が国家食糧戦略を却下したことを受けてのものでした。ディンブルビー氏は、政府が国家食糧戦略を却下した場合でも、レストランは、彼の塩と砂糖の削減に関する勧告に従い続けるべきだと示唆しました。政府の対応(あるいはその欠如)についての英国SRAの見解は、こちらをご覧ください。

この日は、シャンテル・ニコルソンと、彼女が新しくオープンしたアプリシティのサプライヤーで構成される豪華なホスピタリティ・パネルで幕を閉じました。シュラブプロビジョン はイギリス中のリジェネラティブな生産者から野菜や果物を調達しており、ニールズヤードデイリー(イギリスのチーズメーカー)とそのチーズ生産者であるウエストクームチェダーは、そのうちの一社です。シュラブとニールズヤードはそれぞれ、「リジェネラティブ農法」で生産された食材を手作業で加工し、より高い値段で提供していることに触れ、食材の真の価値について語り合いました。そして、食の真の価値を認識し、おいしい食事にもっとお金をかけるよう、より多くのホスピタリティ企業や消費者のコミットが必要であるという意見で一致しました。

気温27度の夏の日陰で、「アニマルウェルフェア(動物福祉に高く配慮した)・ソフトクリーム」を食べながら、私たちは他の接客業の人たちと一緒に、サプライチェーンにもっと再生可能な生産者を取り込むにはどうすればいいかについて話し合いました。大企業に勤める人々は、既存の卸売業者、流通業者、サプライヤーとの間に、特にリジェネラティブな手法などの問題に関して、つながりと透明性が欠けているという問題点が上がりました。

私たちは、何を探すべきか、どのように調達やマーケティングの同僚に伝えるべきかについて、知識を深める必要があることに同意しました。農業の専門家ではないものの、サステナビリティの利点については意見が一致しました。しかし、「リジェネラティブ農業」についての知識があっても、この農法についての定義や認証がない以上、何を基準にすればいいのか分からないという問題があります。さらに、費用やロジスティックスもこれまでと同様、障壁となっているようです。例えば、ある企業は、自分たちの調達ニーズを満たせるチーズ生産者は世界に2社しかなく、そのうちの1社は、よりリジェネラティブな原則に基づいた実験を農場内で始めているという前向きな話をしてくれました。

大規模な外食産業が取ることのできる実践的なステップをいくつか紹介します。

ファーマラマなどの読書やポッドキャストに参加し、サプライヤーのひとりとしてとボランティア活動をする。
・最も購入している食材を特定し土壌の健全性を高めるような活動をしているかどうかを尋ねる。
・小規模のリジェネラティブな生産者を見つけるのは簡単です。土壌の健全性を中核として小麦を栽培しているワイルドファームドグレインや、リジェネラティブな倫理を持つ英国の農家から果物や野菜を調達して供給しているシュラブプロビジョンズなどを試したり、試験的に導入してみてください。
・卸売業者や供給業者に、農場単位の原産地情報を提供するよう求め続けましょう。更新された契約や入札にこれを組み入れてください。
グローバルファームメトリック: サステナブルフードトラストが現在農場で試みている農場での持続可能性のための総合的な評価を試してみてください。

【プレスリリース】次世代の料理人たちが、食の未来を「問う」! 世界食料デーに向け、未来のレシピを考えるコンテスト

【プレスリリース】次世代の料理人たちが、食の未来を「問う」! 世界食料デーに向け、未来のレシピを考えるコンテスト

 2022年7月27日(水)から、世界食料デーの10月16日(土)にかけて、一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会(代表理事:下田屋 毅、以下:SRA-J)は、ミレニアル世代以下のシェフまたは、調理師専門学校の学生を対象に、「未来のレシピを考える」コンテスト「Creative Chefs Box 2030」をオンラインで開催します。

【開催目的】
 サステナブルな未来の分岐点といわれる2030年。日本政府が温室効果ガスの46%削減を掲げた達成期限の年であり、国連が採択した持続可能な開発目標「SDGs」の最終年でもあります。
さらに、2022年のロシアのウクライナ侵攻により混沌とする世界情勢の中で、食の安全保障が揺らいでいる中で、私たちに何ができるでしょうか?
2回目の開催となる「Creative Chefs Box 2030」では、次世代の料理人たちが、食材や、それらを取り巻く環境や社会に対して「問い」を立て、未来のレシピを考えていただきます。

【企画内容】
[1] 持続可能な食を学び、「問い」を立てるワークショップ
[2] 未来の食のスタンダード?レシピのCO2排出量も測定
[3]「Creative Chefs Box 2030」未来のレシピ公募・審査発表

[1] 持続可能な食を学び、「問い」を立てるワークショップ

 2030年の飲食店のメインプレイヤーとなり得る調理師学校の学生と、若手シェフ、それぞれで「2030年の食のあり方」を考え、議論を深めていきます。

SRA-Jは「調達」「社会」「環境」の3つを柱に、飲食店・レストランのサステナビリティを包括的に評価しています。それらの概要を学んだ後、学生や若手シェフが今、「食の未来」に対して抱いている疑問や課題を掘り下げ、そこから「問い」を立て、レシピの考え方を模索します。

【辻調理師専門学校 ワークショップ】
・日時:7月27日(水)16時30分〜18時00分
・会場:オンライン
・参加者:辻調理師専門学校 学生
・申し込み方法:プレスのみ受付

【若手シェフ向けワークショップ】
・日時:8月17日(水)14時30分〜16時30分
・会場:オンライン
・参加者:ミレニアル世代(1980年生まれ)以下のシェフ
・申し込み方法:右記Peatixページから⇨ https://220817-ccb.peatix.com/view
・企画協力:株式会社イートクリエーター

【学校法人村川学園 ワークショップ】
・日時:8月26日(月)13時00分〜14時30分開催
・会場:オンライン
・参加者:学校法人村川学園(大阪調理製菓専門学校/東京山手調理師専門学校)学生
・申し込み方法:プレスのみ受付

 

[2] 未来の食のスタンダード?レシピのCO2排出量も測定

 カーボンニュートラルの実現に向け、2030年までに「カーボン価値(良好なる炭素循環)を実感できる社会の実現」を目指す、一般社団法人サステナブル経営推進機構(以下「SuMPO」)の協賛のもと、LCA手法を用い、ファイナリストのレシピのCO2排出量を測定します。

コンテストを通じて、人間の健康バロメータとして開発された食物カロリー同様、地球の健康バロメータとして「炭素(CO2の排出)」を一般生活者の生活の中で触れ、実感し、意識できる機会を提供します。

【CO2を見える化!未来のレシピのあり方を考えるウェビナー】
・日時:9月5日(月)15時00分〜16時00分
・会場:オンライン
・登壇者:一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO) 理事長 石田秀輝氏(東北大学名誉教授)
・申し込み方法:右記Peatixページから⇨ https://foodmadegood-webinar-no17.peatix.com/
・協賛・企画協力:一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)

 

[3] 「Creative Chefs Box 2030」未来のレシピ公募・審査発表

  ミレニアル世代以下のシェフまたは、調理師専門学校の学生を対象に、料理人としての「問い」から、未来のレシピを考えて、全オンラインでコンテストを実施します。
①サステナビリティ、②クリエイティビティ、③見た目 の3つの指標をもと、SRAのOne Planet Plate*の項目に基づいて審査し、ファイナリストのレシピはSuMPOによるLCAの測定も参照します。

[特設サイト]https://foodmadegood.jp/creative-chefs-box-2030-vol2/

・レシピ公募期間:9月16日〜9月30日
・ファイナリスト審査:10月2日〜10月15日
・ファイナリスト発表:2022年10月16日(世界食料デー)
・アワード発表:2022年10月24日(世界開発情報の日)
・発表方法:特設サイト
・公募対象:ミレニアル世代(1980年生まれ)以下の、シェフまたは調理師専門学校生
・副賞:最優秀賞受賞者への研修旅行、メディア掲載
・審査員:SRA-J、FOOD MADE GOODアンバサダー
・特別審査員:
 unis(ユニ)エグゼクティブシェフ 薬師神陸氏
 FARO(ファロ)エグゼクティブシェフ 能田耕太郎氏
 日本料理 富成(とみなり)オーナーシェフ 冨成寿明氏

 

■ One Planet Plateとは

サステナビリティに配慮したスペシャル・ディッシュをレストランが紹介し、レシピを投稿するグローバルキャンペーン「One Planet Plate(ワン・プラネット・プレート)」。
料理は、次の6つの基準の1つ以上を満たす必要があります。

より多くの野菜を使用
低カーボンフットプリント
ベターミートの使用
地産地消と旬の食材の推進
水産資源と生態系の保全に配慮した魚介類の使用
食料の無駄をなくす

2022年「世界のベストレストラン50」サステナブル・レストラン賞 受賞者のサステナブルシーフードに関する取り組みとは?

2022年「世界のベストレストラン50」サステナブル・レストラン賞 受賞者のサステナブルシーフードに関する取り組みとは?

参照:https://www.theworlds50best.com/stories/News/worlds-50-best-restaurants-2022-no-1-geranium-copenhagen.html
https://www.theworlds50best.com/awards/sustainable-restaurant-award

2022年「世界のベストレストラン50」が英国ロンドンで開催されました。今年の1位に選ばれたレストランは、デンマーク、コペンハーゲンにあるラスマス・コフード氏とセーレン・レデット氏のレストラン「Geranium:ゼラニウム」です。「ゼラニウム」は、2022年の1月から肉料理の提供を停止し、バイオダイナミック農法や有機農法による地元野菜や、デンマークやスカンジナビアの海でとれる魚介類を優先して提供していくという決断を下しました。これは、「50 ベスト」の3つの国際ランキングで、肉料理を提供しないレストランが世界のベストレストラン50の1位を獲得した初めてのケースです。

さて、本題ですが、今年の世界のベストレストラン50の サステナブル・レストラン賞を受賞したレストランは、スペインの「Aponiente:アポニエンテ」です。アポ二エンテは、スペインのカディス近郊にある、陽光降り注ぐエル・プエルト・デ・サンタ・マリアの大西洋河口に位置しており、環境に配慮したガストロノミーの代表例として長い間知られてきました。世界的に有名なシェフ、アンヘル・レオン氏が厨房で指揮をとり、さまざまな海の幸をふんだんに使った料理を生み出しています。サステナブルな漁法、湿地帯の管理、水の保全といった強い理念があり、サステナブル・レストラン賞のアンケートで88%という素晴らしいスコアを獲得していることから、このレストランが2022年の「フロール・デ・カーニャ・サステナブル・レストラン賞」を受賞するのも納得です。

「アポニエンテ」は、魚介類を中心とした料理が特徴で、コースには、サバのソブラサーダ、スズキのモルタデラ、フェットチーネに見立てたメルルーサの料理などがあります。「ウォーター・プラネット」と名付けられたテイスティング・メニューは、常に更新され、その日最も新鮮な魚介類が提供されます。珍しいペスカトーレ料理を引き立てるために、野菜、卵、ワインは、同じ志を持つ地元の生産者からだけを調達しています。酪農家も、自分たちの廃棄予定の農作物をヤギの餌にして、サーキュラーエコノミーを実現しています。
レオン氏にとってレストランの食料庫は、他のレストランにあるような普通の食材に限られたものではありません。実際、彼は大西洋からインスピレーションを受け、「海のコメ」(アマモ(甘藻)の総称。コメよりプロテインを50%以上多く含み、また、オメガ6と9を多く含むため、グルテンフリーのスーパーフードとして期待されています)やプランクトンなどの秘密の植物や野菜をストックした、まさに「海の食料庫」と考えています。

どのコースも、食生活や気候に影響を与える海の無限の可能性を示すようにデザインされています。「アポニエンテ」では、10年以上前から、海という偉大な食料庫から生まれる新しい食品やその他の製品を観察し、研究してきました。いつの日か海産物だけで食事を提供することができるようになるかもしれないという夢を抱いているのです。
才能あふれるレオン氏は、さまざまな仕事をこなしています。アポニエンテの厨房に立っていないときは、レストランの研究室で、深刻な絶滅の危機に瀕している忘れ去られた海産物を育てるプロジェクトに取り組んでいます。カディス大学や地元の漁業会社と協力し、絶滅の危機に瀕している海産物の穀物やアマモ(甘藻)など、多くの水生生物を回復させました。
また、カディス市のビーチの清掃活動や、学校での健康的な食事の提唱、パンデミック時には著名なシェフ、ホセ・アンドレス氏の「ワールド・セントラル・キッチン」でのキャンペーンに参加し、市内の貧困者に食事を提供することでも知られています。「アポニエンテ」のチームにとって、サステナビリティは料理だけでなく、生活のあらゆる側面に浸透しています。

「50 ベスト」の「サステナブル・レストラン賞」は、サステイナブル・レストラン協会の評価指標を元に選定されています。ぜひレーティングを通じて、自己評価してみませんか?

 

本質的な「良さ」- 第10回ナショナル・レストラン・アワード サステナビリティ賞 受賞者決定

本質的な「良さ」- 第10回ナショナル・レストラン・アワード サステナビリティ賞 受賞者決定

*この記事は英国SRAのニュースを翻訳し抜粋したものです。

今年で10年目を迎える英国のナショナル・レストラン・アワード(NRA)では、エストレラ・ダム(スペインのビール会社)がスポンサーを務めるサステナビリティ賞の受賞者を審査しています。NRAのサステナビリティ賞に関して、英国のサステナブル・レストラン協会(SRA)も協力しています。

過去10年の受賞者の中には、「The PIG:ザ・ピッグ」、「Grain Store:グレインストア(閉店)」、「Silo:サイロ」など、輝かしい多彩な顔ぶれが揃っています。
過去の受賞者はいずれも、説得力のあるサステナビリティ・ストーリーと、それを裏打ちする信頼性を備えていました。「ザ・ピッグ」は、地元産の農産物、それも自家栽培の農産物を推奨しています。ロンドンのキングスクロス地区にあるブルーノ・ルーベ氏の「グレインストア」は、野菜を主役にしながらも、肉や魚も楽しめるという、まさにプラントベース・フードのパイオニアと呼ぶにふさわしいレストランでした。昨年優勝した「サイロ」は、食品ロスをすることに「NO」を突きつけ、世界中のシェフに食品ロスをゼロにすることが、おいしい料理作りの障壁にならないことを示したことなどから、評価を得ています。

ハードルは高くなっています。2022年の優勝者は誰でしょうか?最終選考に残ったレストランは、過去12ヶ月間にインパクトのある新しい取り組みを導入したレストランです。ここには、本質的かつ包括的なサステナビリティに配慮した、新規オープンのレストランも含まれます。中には、シャンテル・ニコルソンの「Apricity:アプリシティ」、「Field by Fortnums:フォートナムによるフィールド」、そしてカーディフの「Kindle:キンドル」もノミネートされました。この3店舗と、「Where the Light Gets In:WTLGI」、スコットランドの農場レストラン「The Free Company:ザ・フリーカンパニー」を選び、専門家の審査員が各レストランのオーナーやシェフに詳細なインタビューを行い、彼らの新しい取り組みやサステナビリティの信憑性についてさらに深く掘り下げていきました。

このコンペティションは非常に接戦で、5店舗すべてが説得力のあるストーリーとそれを支える信用性を備えていました。しかし、勝者になれるのは一人だけです。食卓の向こう側を見つめ、スタッフ、顧客、サプライヤー、そしてより広いコミュニティを巻き込んで、食糧システムの問題に対する創造的かつ革新的な解決策を見出した「WTLGI」が、他のレストランを抑えて表彰台に上りました。

 

「WTLGI」(Where the Light Gets In)のチームは、レストランの運営、自社農場と屋上の栽培スペース「The Landing:ザ・ランディング」での作業、そして新しいベーカリー「Yellowhammer:イエローハンマー」のオープンに加え、今年から新しい取り組みとして「The Residencies:ザ・レジデンシー」を立ち上げました。

 

レストラン、ベーカリー、栽培スペース「ザ・ランディング」を横断するこの「レジデンシー」は、食と環境、そして経済や社会との関係について、議論や討論を巻き起こすことを目的とした一連のイベントです。このイベントは、食、農業、環境に関する問題を取り上げ、地元のコミュニティ、アーティスト、農家、生産者間のコラボレーションの機会を提供するために企画されています。

これらの「レジデンシー」の中心にあるのは、レストランの厨房から出る端材などを活用し、栽培スペースの「ランディング」や自社のベーカリー、その他のサプライヤーを通じて新しい命を与えることにより、食品ロスを最小限に抑えることの重要性です。

例えば、羊の毛は近年価格が大幅に下落しており、農家の収入源になるどころか、羊毛の生産にコストがかかってしまうため、市場は苦戦しています。そのため、豊富にある英国産の羊毛を使うのではなく、建物の断熱材などに使用する場合はメリノ種で出荷するのが一般的です。
そこで「WTLGI」はレジデンシー(イベント)の一環として、羊の生産者と協力し、羊の毛を糸に紡ぎ、織物の毛にし、レストランから出る生ゴミなどの自然素材を用いて染色する一連のワークショップを開催したのです。
また、「WTLGI」はこの羊毛を使って、冬の間、栽培スペースである「ランディング」の栽培用ベッドを断熱することで、寒さから植物を保護するための巨大なフリースブランケットを作ることに成功しました。

その他にも、「WTLGI」はFOOD MADE GOODに取り組んでいます。

肉:肉は一頭買いし、最後の一切れまで使い切る。

魚:地元の日帰り漁船から直接仕入れる

紅茶:「ランディング」で栽培されたもの

スタッフの福利厚生:週1回のヨガセッション、毎日の朝食、週3日の休日、7週間の休日

プラスチック: 石油由来のラップフィルムを使わず、堆肥化できる再利用可能真空フードシーラーバッグ( 例:Stasher)のみを使用。

お皿:廃棄された骨を使って地元で作られたもの。

サム・バックリィシェフ氏率いる「WTLGI」は、料理だけでなく業界をリードする取り組みをしているという点で、この賞の第10回目の受賞者にふさわしいチームです。来年に向け11人目の受賞者を探すのが楽しみです。