ストリートフードの鹿肉は、サステナビリティのゲームチェンジャーになりうるか?

ストリートフードの鹿肉は、サステナビリティのゲームチェンジャーになりうるか?

英国サステイナブル・レストラン協会 トム・タナー氏

元高級レストランのシェフ2人と猟師が、英国で最も利用されておらず、かつ最も環境に配慮されているお肉と屋台を手に入れたらどうなるでしょうか?

答えは、「サステナビリティ・アワード」です。SRAが審査する英国ストリートフードアワード2022のサステナビリティアワードの受賞者になりました。

コッツウォルズのドーミーハウスで一緒に働いていたときに出会ったワーウィック・キッド氏とザック・ハーモン氏は、最初のテストイベントからわずか6カ月で、ワイルド・ストリート・キッチンの成功を祝うことになったのです。

多くのベンチャー企業がそうであるように、彼らは立ち上げからずっと多忙な日々を過ごしています。ハックニーブリッジで行われた今年のファイナルで優勝が発表されたときでさえ、彼らはラドロー・フードフェスティバルで忙しくしていました。この日は、元同僚のハリー・ベヴィス氏が代理で表彰式に出席し、二人の喜びはひとしおとなりました。

ワイルドストリートキッチンを代表して賞を受け取るハリー・ベヴィス氏

「私たちは本当に興奮しています。私たちにとって、本当に大きな意味を持ちます。ザックと私がこのコンセプトを考えたとき、その中心にあったのはサステナビリティでした。もちろん、おいしさは第一ですが、地球を犠牲にするようなものではありません」。とワーウィック氏は話します。

では、ワイルドストリートキッチンのコンセプトはどのようなもので、どのようにして審査員を魅了したのでしょうか?

ワーウィック氏はそのコンセプトをこう説明します。「私たちは、狩猟肉、特に鹿肉に対する人々の考え方や接し方を変えたいと思いました。鹿肉は非常に繁殖力が強く、生態系を維持するために淘汰される必要がありますが、このことを知る人は少なく、多くの人が鹿肉は高級品で、動物は腐敗するまでぶら下がっているというネガティブな概念を持っています。」

世界資源研究所が発表した英国の養殖牛肉の数値と、ネイチャー・スコットランドが発表した野生の鹿の数値を用いると、野生の鹿肉のバーガーは、牛肉のバーガーと比較すると、1kgあたり3分の1のCO2排出量で済む可能性があるそうです。

ゲームチェンジャー・バーガーと名付けたこのバーガーは、この店の看板メニューです。ワーウィックとザックは、ラビーエステイトのティム・ハリソン氏という唯一の猟師から鹿を丸ごと1頭仕入れます。そして、皮を剥いで精肉し、ハンバーガー用に肩肉を塩水で冷やしスモークします。2022年以降に開催されるイベントでは、顧客の味覚をさらに幅広く教育する予定です。

ザ・ワイルドストリートキッチンの作品

「鹿肉を初めて食べてもらうのは難しいことですが、これまでで一番おいしいハンバーガーだと言ってくれる人がいて、本当に驚いています。私たちは、高級レストランのような気負いはなく、素晴らしい食材を使って、質の高い料理を人々に提供しているのだと考えています。次は、内臓のケバブを出す予定です。個人的には、特に内臓と心臓が最高だと思っています」。

英国のベルモンド ル・マノワール・オ・キャトル・セゾンムーアホールなどの高級レストランで経験を積んできた2人にとって、これは大変な転機となりました。しかし、ワーウィック氏は、サステナビリティを重視しないレストランが多い中、ル・マノワールのようなレストランでの経験から、使い捨てのプラスチックを使用しない真空調理法など、サステナビリティを前面に打ち出すことで、何が可能なのかを学んだと言います。

鹿肉のハンバーガーだけでなく、ワイルド・ストリート・キッチンではシーフードも提供しており、コーンウォール(イングランド南西)の日帰り漁船やアングルジーのロブスターやカニの漁師とのコネクション作りには多大な注意を払っています。

ストリートフードの屋台にはつきものの、ワーウィック氏とザック氏に有利な点があります。「注文に気を配る必要はありますが、屋台の場合は売り切れるまで準備します。高級レストランでは、料理がなくなったことをお客様に伝えることは許されませんが、ストリートフードの良さはそこにあります。そのおかげで、食材の無駄を省くことができます。まれに余った場合は、寄付しています」。

ワーウィック氏とザック氏は、自分たちもまだまだ勉強中だといいます。食用油をバイオディーゼル燃料としてリサイクルし、100%生分解性のパッケージを使用しています。しかし、お客様が廃棄物をどのように処理するか、また、フードフェスティバルなどで働く人々がどのように処理するかは、自分たちの手に負えない部分が多いことを十分承知しています。

「お客様が廃棄物をどのように処理するか、また、フードフェスティバルなどで廃棄物をどのように処理するかは、自分たちの手には負えないことだと認識しています。例えば、いずれは電気自動車を導入したいと考えています。生計を立てながら持続可能な経営を目指すビジネスには、常に乗り越えなければならない壁があります」。

ワイルド・ストリート・キッチンは、文字通り、サステナビリティを経営の中心に据えて、順調な滑り出しを見せているようです。

今年のBritish Street Food AwardsのSustainability Awardファイナリストについては、こちらをご覧ください。

飲み物の注文方法を見直すべき時

飲み物の注文方法を見直すべき時

*この記事は英国SRAのニュースを翻訳し抜粋したものです。

ワインが環境に与える影響は大きいです。土地の使用、発酵中に放出されるCO2、輸送や貯蔵に至るまで、コストがかかります。しかも、全世界で約730万ヘクタール(OIC, 2020年)という広大な規模であり、その影響はとても大きいです。

ワインは8000年前から存在しており、その起源はジョージアにあるため、ワインを飲む文化は無くしてしまっていいものではありません(無くしてしまう事もないでしょう!)。

すべてのワインは、もともと野生酵母を使い、添加物もない「自然なもの」でした。ブドウの木は不安定で、気温や雨の状態に敏感な生き物として知られています。ですから、世界の気候、つまり私たちがブドウを栽培できる気候を考慮し、進歩が見られるところではそれを支持することが重要です。

サステナブル・ワイン・ソリューションズは、主にフランス産のワインを、オーガニックまたは低農薬で、バルクで提供するB2Bの業者です。ワインは生産者から再利用可能な樽で届き、リサイクルされた再利用可能なボトルに注がれ、頑丈なプラスチック製の木箱で再び流通・回収されるというものです。それぞれのボトルは洗浄され、再充填された後、最大30回の使用で寿命を迎えます。ボトルのラベルの裏にはチョークの筆跡があり、水溶性接着剤で貼り付けられるなど、システム全体が循環を意識してデザインされています。 輸入した瓶詰めのワインも、同じシステムに戻されるのです。ホスピタリティ業界の廃棄物のうち、ボトルの廃棄物は重量比で大きな割合を占めることを考えると、これはすでに大きな一歩といえるでしょう。

会場には、スピリッツの世界で躍進するもう一つの企業もありました。サステナブル・スピリット社のエコ・スピリットです。ウォッカ、ジン、ホワイトラム、ダークラム、そしてナチュラル・プロセッコを、同社が独自に考案した再利用可能なエコ・パウチに入れて提供しているのです。ポリラミネート製(高い強度をもつクラフト紙に、ポリエチレンラミネート加工を施したもの)のパウチは、詰め替えれば「一生モノのボトル」として使用できる。このシステムにより、2019年以降、30万本以上のボトルを捨てずにすむようになったとしています。

このように飲料の世界では進歩が続いていますが、持ち帰るボトルのメッセージは、私たちは変化に対応しなければならず、その変化はエコパウチや樽詰ワインの形でやってくるかもしれないということです。結局のところ、大切なのは中身なのです。

「飲食店・レストランのSDGsとは?」

「飲食店・レストランのSDGsとは?」

2023年1月18日(水)「飲食店・レストランのSDGsとは?」 と題して、福岡のリアル会場とオンラインでのハイブリッド・セミナーを開催いたしました。

昨今、グローバルな行動目標として国連が進める「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みの推進の重要性が叫ばれており、飲食・レストランでも認識され始めています。そして飲食店・レストランにおいても、食品ロスの削減や使い捨てプラスチックを使用しないことなど、様々な行動が開始されていますが、実際にどのように推進していけばよいのかお困りの方もいらっしゃるのではないかと思います。

そこで、今回は飲食・レストランでの「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みに関して、何を実施したらよいのか、その行動を始めるきっかけとなるトークショーを開催いたしました。

まず、SRA-J下田屋より、SRAが推進するSDGs/サステナビリティのフレームワーク、そして飲食店・レストランがSDGsを推進するための実践例としてSRA-Jの福岡の加盟店舗である「久原本家 御料理 茅乃舎」から、レストランで具体的にSDGsの取り組みとして近隣の農家さんと取り組みをしているのかなどについてお話いただきました。

そしてSRA-Jの企業パートナーでもあり、サーキュラーエコノミーを推進するニッコー株式会社の伊藤健史氏からは、陶磁器メーカーのお客様である飲食店やホテルの皆さんとともに進めるSDGsに関する取り組みとして「ボナースや「sarasub(サラサブ)」などの取り組みについてお話いただきました。

そして最後に、SRA-JのFMGリードアンバサダーでもある一般社団法人スマイリージャパン代表理事で 料理研究家のスマイリー氏からSDGs/サステナビリティの観点から「どんな食材を調達して、どのような料理を提供すればいいの?」という飲食店の疑問にお答えすべく、環境や社会に配慮された食材の調達とともに、SDGsに配慮した一皿(One Planet Plate)をどのように考えて、サステナブルな一皿として調理・提供すると良いのかについてお話しいただきました。

詳しくは動画をご覧ください!

バック・トゥ・ザ・フューチャー。2023年「アジアのベストレストラン50」の開催地はシンガポールに決定

バック・トゥ・ザ・フューチャー。2023年「アジアのベストレストラン50」の開催地はシンガポールに決定

*この記事は世界のベスト 50 レストランを翻訳し抜粋したものです。

毎年恒例の「アジアのベストレストラン50」が3月28日にライオンシティ(シンガポール)に戻り、10周年を記念してユニークなダイニングプログラムが追加されました。

2013年3月、アジア大陸から期待されているシェフやレストラン関係者、豪華なグルメ、好奇心旺盛なフードライターがシンガポールに集まり、第1回「アジアのベストレストラン50」が開催されました。

シンガポールという場所は、今ではすっかり定着したこの授賞式が行われた第1回目の場所というだけでなく、「世界のベストレストラン50」の制作チームが初めて発表した地域別リストでもありました。50ベストのラインナップはその後、多少増えましたが、当初の目的は今日でも変わっていません:アジア地域の豊かで多様な美食の喜びに光を当てることで、優れたレストラン、偉大なシェフ、アジア全体の料理の素晴らしさを称えることです。

10年後の今、「アジアのベストレストラン50」は、パンデミック後の大都市シンガポールに再び戻り、これまで以上に大規模なガラ・アワードを3月28日に開催し、年間ランキングを発表します。今年も第1回目の時のように「アジアのベストレストラン50」は、開催地であるシンガポール政府観光局とメインスポンサーである「サンペレグリノ&アクアパンナ」の多大なる協力のもと開催されます。

「アジアのベストレストラン50」が2023年、シンガポールに戻ります。

この10周年記念版が特別なのは、2020年から2022年までの過去3回が、オンラインのみで、国別の様々な同時開催イベントで実施されてきたことです。今年は、昨今の中国本土、香港、マカオへの渡航制限の緩和も後押しし、2019年以来、アジアの美食界の人々が一堂に会します。

これを記念して、イベントプログラムには、世界中のシェフが地元の才能ある人々とチームを組んで行うコラボレーションダイニングシリーズ「50ベストシグニチャーセッション」というアジア初の試みが含まれています。この一夜限りの特別企画は、食の関心が高いシンガポールの人々や、3月25日から29日の期間にシンガポールを訪れるグルメな旅行者に開放されます。50 Bestのソーシャルメディア・チャンネルをフォローすれば、誰がどこで料理をするのか、また50 Bestシグネチャー・セッションの予約がいつ開始されるのかが分かります。

アジア各地から一流の料理人が集まり、料理や飲み物、物語、仲間意識を共有する伝統的な「シェフの饗宴」では、世界的に有名なアジアの屋台料理が紹介されます。3月28日の夜には、「アジアのベストレストラン50」が発表されます。また、「ベロニア アジア最優秀ソムリエ賞」「フロール・デ・カーニャ サステイナブル・レストラン賞」、「アジアのベストレストラン賞」など、数々の特別賞の受賞者が発表され、最高の瞬間となる「アジアのベストレストラン」の栄冠を手にします。

2022年アジアベストレストランに選ばれた「傳」を代表して、長谷川在佑シェフがトロフィーを受け取りました。

昨年、東京で人気の「傳」が、2021年にトップになった香港の「チェアマン」の後を継いで、初めてNo.1に選出されました。アジアに広がる300人以上の匿名のレストラン専門家の投票の結果、東京の「NARISAWA」(2013年)、バンコクの「ナーム」(2014年)、バンコクのガガンアナンド(2015~2018年)、シンガポールの「オデット」(2019~2020年)など、設立から10年間で合計6つの施設が「アジアのベストレストラン50」の頂点を極めました。

この間、多くの優秀で多様なレストランがランキングに加わり、現在では51-100のリストも追加されました。また、専門家が認めた飲食店のデータベース「50ベストディスカバリー」に、アジアの数百のレストランが掲載されるようになりました。

庄司夏子シェフ、Jeong Kwan、Eat and Cookは昨年の事前発表の受賞者

今後数週間のうちに、「アジア最優秀女性シェフ賞」「アイコン賞」「アメリカン・エキスプレス ワントゥワッチ」の2023年の受賞者が発表される予定です。3月28日の授賞式でランキングの結果が発表されます。アジアのベストレストラン50 Facebookと50ベストレストランYouTubeチャンネルでライブ配信される予定です。この記念すべき祭典に参加し、今年、そしてこれからの10年間、目標とする究極のダイニングスポットをチェックしてください。

こちらは昨年バンコクで開催された「アジアのベストレストラン50 2022」の映像です。

サンペレグリノ&アクアパンナがスポンサーを務める「アジアのベストレストラン50」2023の発表をお楽しみに!

保護中: 〈会員の皆様へ〉新年のご挨拶と2023年の活動について

新年のご挨拶と2023年の活動について

新年明けましておめでとうございます!

2022年は、コロナ禍からウイズコロナへと移行し、グローバルまた日本においてもコロナの制限が緩和され、海外からのインバウンド/訪日外国人旅行者が増加しました。そのような中、訪日外国人旅行者がヴィーガン食を含むサステナビリティの推進を実施している店舗を好む傾向があり、飲食店・レストランにおいてサステナビリティの推進をしている店舗が選ばれる状況へと変化してきています。皆さんの店舗での取り組みの重要性が理解されてきているのではないかと思います。

 

昨年2022年は、SRA-Jにおいて、とても有益なご講演を有識者の方々からいただきました。その中で、特に2つの講演から日本が置かれている食に関する危機的な状況があることを認識しました。その1つ目は、1月に実施した「農業消滅」の講演です。鈴木宣弘先生から、「日本の農業が危機的な状況にあり、近い将来的に消滅して日本人が飢餓に直面する恐れがある」ということをお伝えいただきました。海外・特に米国からの安い農作物にはワケがあり、それら安全ではないが安い農作物を日本の消費者が選択してきたこと。そして食料自給率が37%と約半減し、近い将来日本人が飢える状況が起こり得ることを理解し、今、食料自給率を引き上げる努力が必要であること。また安全・安心の国産の農畜産物を食べることが日本人の健康リスクを低減し、長期的には安上がりにもなることを理解することをお伝えいただきました。

2つ目としては、10月に印鑰智哉さんから「遺伝子組み換え食品、またゲノム編集を考える講演」をいただきました。ゲノム編集作物には、挿入遺伝子の残存の可能性があり、ゲノム編集畜産物は発がんの可能性が増大すること、種子と農薬市場は世界のわずか数社の遺伝子組み換え企業に独占され、世界の農業に支配力を行使しようとしていること、2023年4月1日から、食材の遺伝子組み換えの有無を示す「遺伝子組換え表示制度」の一部が改正され、実質的に遺伝子組み換え食品の表示ができなくなるために、その代替案として「OKシードマーク」を広げる活動が重要となることをお伝えいただきました。

(※2つの講演の要点をこの挨拶の後に箇条書きでお伝えいたしますので是非ご確認ください)

また、2022年からSRA-Jは日本オーガニック会議の実行委員として参画、有機農業など持続可能な農業やオーガニック市場の拡大を目的として、緑の食料システム戦略を始めとする政策提言についてもその中で実施し、日本における行動変容を創り出す活動に貢献してまいりました。

 

2023年は、上記の鈴木宣弘先生、そして印鑰智哉さんからの警鐘をSRA-Jとして受け止めOKシードマークの推進などの行動を起こしていくとともに、SRA-Jでは、世界を取り巻く食の環境を理解し、日本独自の課題についての対応を進めるため、日本オーガニック会議の一員として、農水省が推進する「みどりの食料システム戦略」を良い方向へ進めより良い影響を与えていくことを考えています。またSRA-J単体としても、飲食店・レストランと、有機栽培・自然栽培を行う農家さん、持続可能な漁獲に取り組む漁師さんなどとの橋渡しや連携もできるように働きかけをしていくことを考えています。

 

そしてSRA-Jは、2023年も、皆さんのサステナビリティの推進を後押しする様々な活動を行っていく予定しており、日本でのFOOD MADE GOODのムーブメントを進めるための活動を行ってまいります。そのうちの一つとして、現在SRAのグローバルなキャンペーンとして、既に英国・香港・シンガポールで実施されているOne Planet Plateを日本においても推進いたします。サステナビリティの1皿を皆様からご提出いただき、東京・丸の内、そして日本に広げていくことを考えています。

また、各種イベントへの参画、地方でのセミナーからもFOOD MADE GOODのムーブメントを広げることを考えていますので、ご協力の程よろしくお願いいたします。

(※「2023年1月~3月の活動の詳細」は、このページの一番下に掲載をしていますので、是非ご確認ください)

 

さらに2023年は、今まで2年間に渡って開催してきたFOOD MADE GOOD Japan Awards の開催を含めさらにFOOD MADE GOODの食のサステナビリティのムーブメントを起こしていくことを考えています。

英国SRAと香港、またその他の世界のFOOD MADE GOODの活動を推進する仲間と連携を行うとともに、このムーブメントを日本全国に拡散し、我々SRA-Jの活動を日本の多くの飲食店・レストランが知り、そして実際のサステナビリティの行動を起こす店舗をさらに増やしていくことができればと考えていますので、引き続きご関心の程よろしくお願いいたします。

 

一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会

代表理事 下田屋毅

 

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<2022年講演の要点>

1.「農業消滅」の講演 鈴木宣弘先生

・海外からの安い農作物には必ずワケがあり、日本人が飢える状況が起こり得ることを認識し、食料自給率を引き上げる努力が必要である。安全・安心の国産を食べることは健康リスクを低減し、長期的には安上がりにもなる。

・欧米各国の食料自給率は軒並み100%超えなのに日本は37%で、半世紀で半減しているという事実がある。

・米国の日本占領政策の目的は日本の農業を弱体化して米国に依存させ、米国の余剰作物を日本に買わせること。日本の農業をズタズタにし、米国産に依存する構造をつくれば、日本を完全にコントロールできる。米国が日本の農政をゆがめているというのは陰謀論ではなく、陰謀そのもの。

・日本の主要穀物の自給率は小麦15%、大豆6%、トウモロコシ0%。食料を十分に自前で調達できない日本の最後の頼みの綱がお米。しかしお米も確保できなくなってきている。

・日本の戦後農政は、国民の命よりもアメリカの国益、企業の利益を優先させてきた。日本は、海外のグローバル種子企業、化学企業のはけ口となってしまっており、これら企業の営利が第一で、日本国民の安全は二の次となっている。これは遺伝子組み換え(GM) 食品、ゲノム編集食品、グリホサート、成長ホルモンなど安全が確かめられていない食品や農薬、飼料などに対して各国が規制を強めるなか、日本は規制が緩和されていることに表れている。

・米国から突き付けられた農薬や添加物の基準緩和を求める要求リストは膨大で、日本は順次緩和を進めている状況。国内では認可されていないものが、輸入品に対しては理由を付けて使用が可能となっている。海外(特に米国)からの危ない食品、海外(米国)では食べない農薬や添加物が入った危険な食品が、日本に輸出されている。

・たとえ米国の意向で危険な食品が輸入されても、私たち消費者がそれらを購入しないという選択ができればよいが、日本の消費者は「とにかく値段が安ければいい」と安くて危ない食品を買い続け、輸入食品に依存してきた。その日本の消費者が選択した結果として、日本においては危険な食品があふれ、食料自給率が下がり、飢餓に直面するリスクが高まっている。

・日本に強い農業を育成するためには、少し高くとも国産品を買うという消費者意識の醸成が必要。「生産者の顔が見える」地産地消の取り組みは必須。

・今こそ「発想の転換」が必要。安くて危ない食品を食べ続けて病気になる確率が上がるなら、これほど高くつくものはない。日々の買物で安くて危ない食品を避け、少し高くとも地元の安心・安全な食品を買うこと、それをするだけで変わってくる。

・私たち一人一人が〝国産の安全・安心なものしか買わないと強く行動を起こす必要がある。

 

2.「遺伝子組み換え食品、またゲノム編集を考える講演」印鑰智哉様

・世界の土壌が失われてきている。土壌細菌と腸内細菌はその役割がきわめて似ており、 世界の土壌が傷つき失われるのと同時に人びとの腸も傷ついている。

・遺伝子組み換え、その最新バージョンの「ゲノム編集」を使えば、品種改良はより迅速に効率的にできると宣伝がされているが、科学的事実は違い、遺伝子操作では品種改良はうまくいかない。

・農薬耐性遺伝子組み換え 害虫耐性遺伝子組み換え作物を作っても、農薬が効かないスーパー雑草が出現、殺虫タンパクが効かないスーパー害虫が出現することになってきている。これにより遺伝子組み換え作物のメリットは消え失せ、さらに強力な多くの農薬が必要になるという悪循環がうみだされている。

・遺伝子組み換えは自然の変異では生まれないものを創り出す技術であり、健康や環境に影響を与えている。

・遺伝子組み換え食品は、従来の食品は同じではなく、今まで実施してこられた品種改良とは違うものである。遺伝子を比較すると多数の変異があり、抗生物質耐性タンパク、や有害な農薬残留の存在があり、糖尿病やがん、神経症など慢性疾患の激増とその関連が指摘されている。

・生産性を上げる遺伝子組み換えは成功したものがない。米国科学アカデミーも遺伝子組み換え技術は生産性の向上には貢献していないと認めている。食のシステムを独占するための技術で、実際の食料保障や栄養の確保のためには役立たない。

・「ゲノム編集」生物は機能欠損品種で、特定の機能を失った生物。成長を抑制する能力を失う(=高収穫、巨大化)特定のタンパクを作れなくする (ジャガイモの芽、菌病耐性など)そして、本来の性質を失わせる(高密度での飼育可能)。実際にゲノム編集された生物を食べさせた安全を検証する実験はされていない。

・ゲノム編集作物には、挿入遺伝子の残存の可能性(腸内細菌が抗生物質耐性菌に変わる可能性)があり、ゲノム編集畜産物は発がんの可能性が増大する。

・細胞培養肉が出てきているが、自然の循環から離れたものであり、非常に問題を多く含んでおり推進するのは、コスト、安全性、動物愛護、環境破壊の観点から疑問である。 

・種子と農薬市場は世界のわずか数社の遺伝子組み換え企業に独占されている。世界の農業に支配力を行使しようとしている。

・気候危機と食料危機が進行中。気候変動、環境激動の中で遺伝的多様性の重要性が世界で認識されている。独占によって種苗の多様性は過去100年で、世界の7割~9割激減しており、在来種を守る運動が世界で起こっている。

・2023年4月1日から、食材の遺伝子組み換えの有無を示す「遺伝子組換え表示制度」の一部が改正され、実質的に遺伝子組み換え食品表示ができなくなる。そこで代替案が必要となり、OKシードマークを広げる活動を行っている。

 

<2023年1月~3月の活動の詳細>
(1)One Planet Plate
1月には、グローバル・キャンペーンで英国・香港・シンガポールで実施されているOne Planet Plateを実施いたします。多くの店舗からサステナビリティの1皿をご提出いただき、その輪を日本に広げていくことを考えています。そして日本でのFOOD MADE GOODのムーブメントの足掛かりを作っていきます。

 

(2)「1/12開催ワークショップ:2023年にnomaが京都/日本に来る意味とは?」

新たにSRA-Jのアドバイザーに1/1から就任いただいた、デンマーク在住のニールセン北村朋子氏を迎えて1/12に「2023年にnomaが京都/日本に来る意味とは? ~未来のレストランのあり方を考えるワークショップ~」を開催いたします。世界のベストレストラン50、2021年1位のデンマークのnoma。このnomaが何故日本を何度も訪れて、発酵に関する本の出版もするなど日本に注目しているのか、その背景を皆さんと探るワークショップを開催いたします。その中で日本の食における優れた部分を見出し、日本の食を通して推進するサステナビリティについて探っていきたいと思います。

 

(3)1/18 福岡開催トークショー「飲食店・レストランのSDGsとは?」

1/18には福岡で「飲食店・レストランのSDGsとは?」と題して福岡でのトークイベントの開催を予定しています。ここでは福岡のSRA-J加盟店である御料理 茅乃舎の浦岡浩二支配人、またニッコー株式会社様、SRA-Jのリードアンバサダーである料理研究家のスマイリー氏とともに福岡でのサステナビリティの取り組みの重要性を伝え、FOOD MADE GOODのムーブメントを福岡においても広げてまいります。


(4)国際ホテルレストランショー

2/7~10に東京ビッグサイトでの国際ホテルレストランショーに参画いたします。こちらでは、主催者であり企業パートナーである日本能率協会様との協働で、食のトレンドレポートを発行しています。またこの場でSRA-J加盟店のザ・キャピトルホテル東急内ORIGAMIを含むザ・キャピトルホテル東急の曽我部俊典総料理長様と登壇をする予定としています。またブースを設けてSRA-Jの活動を拡散する予定です。

 

(5)SB国際会議 東京・丸の内

2/14-15に、SB国際会議 東京・丸の内2023ではSRA-JはSB国際会議のフードサステナビリティパートナーに就任しており、One Planet Plateの推進を東京・丸の内で働きかけを行うとともに2つのセッションで登壇し、レストランのサステナビリティを発信いたします。

 

(6)名古屋セミナー

2/28に名古屋において、フェアトレード名古屋ネットワーク、ニッコー株式会社様、またSRA-J加盟店であるビストロイナシュヴェ酒井シェフとの協働でセミナーを開催し名古屋でのFOOD MADE GOODの活動の足掛かりを作ってまいります。

(7)FOODEX 2023

3月には、3/7~10に東京ビッグサイトでのFOODEX 2023に参画いたします。英国SRAのMDのジュリアン・カイウエット・ノーブル氏(Juliane Caillouette Noble)、英国3つ星シェフのシャンテル・ニコルソン氏(Chantelle Nicholson)、FOOD MADE GOOD香港MDのハイディ・ユ・スパーレル氏(Heidi Spurrell)、香港3つ星シェフのリチャード・エッケバス氏(Richard Ekkebus)、その他8人の香港のシェフと関係者が招へいされ、登壇とパネルディスカッションを開催する予定としており、日本からはFMG Japan awards 2022大賞のBOTTEGA BLU.の大島シェフがパネルディスカッションに登壇いたします。このFOODEXでは、食のサステナビリティの国際動向とSRAの国際的な活動について日本のステークホルダーに理解していただき、日本のおけるムーブメントがグローバルな動きと連動していることを認識していただく良い機会となると思います。またこれらの英国や香港のシェフの方々とサステナビリティについて話をするなどネットワーキングの機会も設ける予定としていますので、是非参加をご検討ください。

 

以上