参考記事:https://www.foodmadegood.org/conquer-your-fears-about-farmed-fish/

ロレイン・ギャラガー( Aquaculture Stewardship Council(水産養殖管理協議会)の英国とアイルランドの市場開発マネージャー)

ASCとはMSCのような天然の水産物だけでなく、養殖による水産物にも、MSCと同様に認証する仕組みがあります。「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)」は養殖版の認証制度です。

ホスピタリティ関係者(ホテルや旅館、レストランなどの飲食産業など)が養殖魚に対して抱く心配や誤解を解くことが、私たち養殖管理協議会(ASC)の使命です。 

国際的に水産物の養殖は、残念ながら過去に悪い評判がありました。しかし、責任ある養殖を実践している養殖場は世界中に何千とあり、一部の非倫理的な養殖業者のせいで、責任を持って業務を行なっている業者の仕事が妨げられてしまっています。私たちASC(水産養殖管理協議会)の仕事は、どういった養殖が良いのか、責任があるかの基準を常に設定し、評価を行いできるだけ多くの養殖場にその基準を目指して努力してもらい、私たちの認証を受けるよう奨励しています。

養殖の評判を上げるためには、「養殖」という言葉から恐怖心を取り除き、正しい基準を守っていけば、養殖魚は健康的でおいしく、責任ある選択になることを示す必要があります。今年の最もエキサイティングだったニュースは、現在30以上のスコットランドのサーモンの養殖場がASC規格に認証されているか、認証取得のための初期審査中であるということです。これは、英国のシェフが、責任を持って地元で生産されたサーモンを選ぶことができるということを意味します。
(SAR-J補足:日本においてASC認証を取得した養殖場は90あります。こちらから確認することができますので調達の際の参考になさってください。)

 

養殖は、世界中で食される魚介類の半分以上を生産しており、将来、急速に増加する世界の人口に健康的で安価なタンパク質を供給し、危機に瀕した野生資源を保護するために不可欠なものとなるでしょう。また、エネルギー、淡水、土地をあまり必要としない傾向にあるため、陸上の食肉に代わるタンパク源にもなっています。サーモンの需要は今後も衰えることはなく、養殖サーモンはその需要を満たすための唯一の選択肢となります。

グラフ:(ASC HPより引用)

 

多忙な外食産業従事者にとって、養殖魚に関する環境、倫理、動物福祉の基準をすべて把握し、どのように供給されているのかを監視し、何を質問すべきかを知ることは、非常に困難なことでしょう。そこで、私たち(ASC)は英国サステイナブル・レストラン協会と協力して、持続可能な養殖ガイドを作成していく予定です。(SRA-J補足:WWFジャパンからはお魚ハンドブックが発行されていますので是非参考になさってください。)

 

ASC認証養殖場の養殖魚は、環境要素だけでなく、動物福祉や社会的責任も含む、世界で最も厳しい基準をクリアしなければなりません。私たちが守っている基準の一部を簡単にご紹介します。

動物福祉

「海シラミ」の一種のサケジラミ(Lepeophtheirus salmonis)の管理:サケジラミはおそらく反養殖運動家が一番に口にする問題であり、重要な問題です。サケジラミは魚が密集しているサケの個体群に蔓延し、養殖サケの身体的な健康を損なうだけでなく、野生のサケの個体群にも広がる可能性があるのです。私たちの基準では、一般的および希少な海シラミのレベルを監視し、発生を最小限に抑えるために多くの対策を行なっていますが、これらを防ぐためには特定の薬のみ認可されているなどなど、非常に厳しい条件があります。生産者は、サケの生存率が上がるように、養殖場を管理する必要があります。

 

環境

汚染:ASC認証を受けたサーモン養殖場は、様々な水質パラメータ(リン、酸素濃度など)を定期的に測定し、設定された範囲内に収めることが要求されます。責任ある養殖は、(EU水枠組み指令などで)「良好」または「非常に良好」と分類された水域でのみ行うことができます。さらに、水域への銅の放出は最小限にとどめ、監視していかなければなりません。

 

社会

公正な労働: 私たちの認証は、国際労働機関(ILO)の基本原則に基づく厳しい要件を課しています。児童労働やあらゆる形態の強制労働が禁止されています。ASC認証養殖場はすべて、安全で公平な労働環境であり、従業員は適正な賃金を得て、決められた労働時間内で働ける環境となっています。また、生産者は地域社会と協議し、潜在的な健康リスクについて知らせ、重要な情報へのアクセスを提供する必要があるのです。