30年先の農業の未来を考えた「みどりの食料システム戦略」とは?
現在、気候変動による異常気象、森林破壊、水資源の枯渇、農薬や化学肥料による土壌への悪影響、水産資源の減少、さらには海洋プラスチックなど、数多くの環境問題が発生しています。
このように地球環境が悪化している状況下で、EU、米国では食と生物多様性に関わる戦略が策定され、具体的な数値目標も提示しています。アメリカでは、2020年2月に、「農業イノベーションアジェンダ」を公表し、2030年までに食品ロスの50%削減、また2050年までの農業生産量の40%増加と環境フットプリント50%削減の同時達成などを目標に掲げています。
また、EUでは、2020年5月に「ファーム to フォーク」(農場から食卓まで)戦略を公表し、2030年を目標年と設定し、農薬の使用及びリスクの50%削減、一人当たり食品廃棄物を50%削減、化学肥料の使用を少なくとも20%削減、畜産及び養殖に使用される抗菌剤販売の50%削減、農地を少なくとも25%に有機農地へ転換などの目標を掲げる戦略を出しています。
このような世界の流れを受け、日本では2021年5月、農林水産省から、日本の農業が目指す姿を示した「みどりの食料システム戦略」が発表されました。
「みどりの食料システム戦略」とは、生産から消費までのサプライチェーンの各段階において、新たな技術体系の確率と、更なるイノベーションの創造によって、日本の食料安定供給、農林水産業の持続的発展と地球環境を両立させるために策定したものです。
中長期的な観点から戦略的に取り組むことを政策方針とし、2030年、2040年までと10年毎に取り組みが設定されて、最終的には30年後の2050年の目標が示されています。
その内容は以下の通りです。
1. 農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現
2.化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減
3.化学肥料の使用量を30%低減
4.耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万haに拡大
5.2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現
6.エリートツリー(従来のスギと比べて成長スピードが1.5倍となる上、花粉量は少ない木)等を林業用苗木の9割以上に拡大
7.ニホンウナギ、クロマグロ等の養殖において人工種苗比率100%を実現 等
例えば、有機農業については「2040 年までに、主要な品目について農業者の多くが取り組むことができるよう、次世代有機農業に関する技術を確立する」「2050 年までに、オーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万 ha)に拡大することを目指す」ことが掲げられています。
最近では、一般の消費者の環境意識が高まっているということもあり、今後有機食品の消費がさらに拡大していくことが予想されます。
さらに具体的な取り組みについては以下をご参考ください。
日本サステイナブル・レストラン協会も実行委員として参加している日本オーガニック会議では、このみどりの食料システム戦略についてのパブリックコメントで以下のポイントを提言しており、今後の改善を求めています。
① 公共調達における有機農産物の取り扱いを優先させる制度の作成
② 良質な堆肥生産のための技術開発とガイドラインの作成
③ みどり戦略の担い手確保対策
④ 2030年目標達成のために2025年に中間の見直しを実施
⑤ 環境負荷軽減のための技術指針の作成
⑥ 基盤確立事業の内容で、ゲノム編集による新品種の育成は、環境負荷軽減を目的として有機JAS規格へのゲノム編集導入と同一ではないことを明記するべき。
⑦ 地球温暖化対策として、土壌炭素貯留効果の一層の認知向上、また 生物多様性の保全効果として、「生物多様性保全に資する事業を支援すべき」と明記を追加すべき。
SRAのフレームワークの中の「調達」との関わりも大きい「みどりの食料システム戦略」。ぜひ今後の流れに注目してみてください。
詳しくはみどりの食料システム戦略トップページをご覧ください。
農林水産省ウェブサイト: https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/
みどりの食料システム戦略 説明動画:https://youtu.be/CSLH0QQGMLw
最近のコメント