REAL TALKS:レジリエンスの構築と、課題をポジティブな変化へ変えること

REAL TALKS:レジリエンスの構築と、課題をポジティブな変化へ変えること

Summer Le は、ベトナム の Nén Da Nang および Nén Light Saigon、そして 日本 の Nén Tokyo の創業者兼エグゼクティブ・シェフです。これら3つのレストランはすべて、ベトナム の食、伝統、文化を意識的に讃える場として機能しています。

私たちの Managing Director である Juliane Caillouette Noble が Summer と対談し、レジリエンスと適応力がこれら3つのレストランすべての運営とメニューをどのように形作ってきたかについて話を伺いました。

Juliane Caillouette Noble (The Sustainable Restaurant Association):Summer、今日はお時間をいただきありがとうございます。これは、世界中のシェフやレストラン経営者とストーリーを共有し、私たちが直面しているさまざまな課題について語り合う「Real Talk」シリーズの一環です。まず最初に、読者の皆さんに自己紹介をお願いできますか?ご自身の出身地と、あなたの素晴らしいレストランについて少し教えてください。

Summer Le (Nén):お招きいただきありがとうございます。私の名前は Summer です。Nén の創業者兼エグゼクティブ・シェフを務めています。現在、Nén のレストランは3店舗あります。1つは創業の地である ダナン、1つは ホーチミン・シティ、そしてもう1つは3週間前に 日本 の 東京 にオープンしたばかりの新店舗です。

Juliane:おめでとうございます。

Summer:ありがとうございます。Nén Da Nang は、昨年2024年に ベトナム で初めて Michelin Green Star を受賞しました。

Juliane:素晴らしいですね。そのお話については、後ほど詳しく伺わせてください。一人のシェフとして、そして比較的新しいレストランとして、どのような経験だったのか興味があります。
レストランについての記述の中で、あなたのフィロソフィーは ダナン の人々の精神を体現しているとおっしゃっていますね。あなたはそれを、レジリエンス(回復力)があり、適応力に富み、自然の恵みに感謝する精神だと語っています。あなたが選んだこれらの言葉――レジリエンス、適応力、感謝――について、もう少し詳しく教えてください。また、それらが Nén で作る料理にどのような影響を与えているのでしょうか?

Summer:ご存知の通り、ベトナム は非常に細長い国です。Nén があるのはまさに中央部、ベトナム 中部 です。残念ながら、毎年台風が海岸線を直撃する地域でもあります。ダナン 出身の私は、幼い頃から自然災害に対して非常に敏感でした。このような地理的条件下で、生き残るだけでなく、いかに力強く成長していくか、つまりレジリエンスがいかに重要かを身をもって知っています。しかし同時に、そのおかげで非常に豊富な魚介類にも恵まれています。

レジリエンスとは、いわばライフスタイル、つまり私たちの生き方そのものです。適応力があるということは、自然が与えてくれるものを受け入れ、それを工夫して使うということです。夏には魚介類が豊富に獲れます。だからこそ、ベトナム の人々、特に 中部 の人々は夏に魚介類を使って 魚醤を作り、それを使って台風シーズンを乗り切るのです。これは自家栽培の野菜にも当てはまります。私たちは多くの野菜や新鮮なハーブを食べるので、自然が与えてくれるものに対して非常に高い適応力を持っています。

そして最後のキーワードは、自然への感謝です。北部や南部の人々に比べて多くの苦労を伴う環境で暮らしているため、私たちは手元にあるものに非常に感謝し、何も無駄にしないように努めています。ほんの少しの食べ物であっても、非常に困難な時期に家族を支える糧となるのです。

「レジリエンスとはライフスタイルのようなものです。私たちの生き方そのものです。適応力があるということは、自然が与えてくれるものを受け入れ、それを工夫して使うということです」

Juliane:その3つの言葉、とても素敵ですね。私たちがサステナブル・ホスピタリティについて語る際に考える精神を、実に見事に捉えていると思います。レジリエンスのあるレストランやホスピタリティ・ビジネスを構築すること、適応力を持ち、可能性や状況に対して柔軟であること。そして「感謝」を中心に据えるという考え方も素晴らしいです。

あなたは台風が身近にある環境で育ったとおっしゃいましたが、明らかに気候関連の影響――より強力な嵐や、より頻繁な嵐など――が増えているのを私たちは目にしています。しかし、レジリエンスについて語る時にもう一つ思い浮かぶのは、打ちのめされた時に立ち直る力です。ビジネスオーナーとして、レジリエンスが必要だと考える時、特にサステナビリティを核とするレストランを経営する今日の状況において、それはあなたにとって何を意味するのでしょうか?

Summer:レジリエンスがなければ、ホーチミン・シティ や トウキョウ にオープンするどころか、私たちはもうここにはいなかったでしょう。結局のところ、それは willpower(意志の力)に行き着きます。私たちは多くの困難を乗り越えてきたので、自分たちを本当に止めることができるものは何もないと知っています。あるとすれば、それは自分たちの心だけです。精神的に強くあり続け、集中し、自分自身に正直であり続け、心が命じることに従わなければなりません。

これまでのところ、最も困難だった課題は COVID でした。ダナン は最初からロックダウンされました。ベトナム で最初の COVID の症例は ダナン の病院で診断され、その後2年間、事実上都市を封鎖しなければなりませんでした。

Juliane:それは大変でしたね。その時はまだオープンしたばかりのレストランだったのですよね?

Summer:2017年にオープンしたので、まだ3年目でした。基本的には、その時に一度破産したような状態でした。活動を再開した時、ダナン はまだ準備が整っていないと判断し、ホーチミン・シティ への移転を決めました。それは極めて困難なことでした。チーム全員、レストラン全体、キッチン全体を移動させなければなりませんでした。トラックを1台借りて、すべてを積み込み、サイゴン まで運転していきました。もし私たちが ベトナム 中部 の人間でなく、レジリエンスが備わっていなければ、今の私たちはなかったかもしれません。

Juliane:そして、それ以来のあなたの活躍を見てください。今や 東京にもオープンしたのですから。その執念、立ち上がり続ける原動力は本当に力強いものです。

Summer:私の好きな言葉の一つに「grow or die(成長か死か)」というものがあります。特に ベトナム 中部 で生活しているとそうです。単に現状を維持するという選択肢はありません。いつ何が起こるか分からないからです。ですから、本当に grow or die なのです。

Juliane:それは、この業界全体、ひいては世界中で重要な教訓ですね。サステナビリティは、企業にとってその大きな部分を占めています。あなたの料理スタイルとレストランとしての目的は、すべて ベトナム 料理、特に hyper-local(超局所的)で、あまり知られていない食材に焦点を当てています。それについて少し教えてください。メニューデザインにとってそれは何を意味するのか、また、入手可能なものに基づいて、どのくらいの頻度でメニューを書き換えたり再考したりしなければならないのでしょうか?

Summer:私自身がとても好奇心旺盛なので、それはごく自然なことでした。ベトナム 中部 にはたくさんの農場があり、それは私たちの血に流れているものです。バナナの木のような植物を見た時、普通の人なら実しか食べません。でも、そこには実に多くのバリエーションがあるのです。私たちは葉を使います。では、花はどうでしょう?最近、バナナの木には食べられる根があり、それがかなり美味しいことを発見しました。バナナの木がある Nén Phong 出身の ベトナム 中部 の人間である私でさえ知らなかったのですから、その可能性は無限大です。毎日ワクワクしています。語るべき食材やストーリーは山ほどあります。私がメニューを変えるのは、調達の問題からではなく、より多くのストーリーを語りたいからです。

Juliane:所在地のおかげで、季節による安定性はありますか?

Summer:はい。ベトナム には乾季(sunny)と雨季(wet)の2つの季節しかありません。日本 や西洋ほどはっきりとは分かれていないので、季節ごとのメニュー変更という概念はここではあまりありません。しかし、地元の、時には非常に希少な食材を使っているため、自分たちで育てる必要があることも多いです。課題は季節的なものではなく、また別のところにあります。

「可能性は無限大です。毎日ワクワクしています。語るべき食材やストーリーは山ほどあります。私がメニューを変えるのは、調達の問題からではなく、より多くのストーリーを語りたいからです」

Juliane:あなたは自分のメニューを、創造性と zero waste(ゼロ・ウェイスト)を核とした「story menu(ストーリー・メニュー)」と呼んでいますね。卵の殻を麺に変えた料理も作ったことがあるとか。本当ですか?

Summer:はい。私はとても奇妙なアイデアを持っていますが、すべてはコンセプトに行き着きます。大きなアイデアから始めて、それを深く掘り下げていきます。その麺の料理は Story Menu No. 7 のもので、ジャパン で過ごした若かりし頃のストーリーを語ったものでした。

私が 日本 で学んだ最初の教訓の一つが mottainai(もったいない)――何かを無駄にすることへの悲しい気持ち――でした。それは私の心に深く響きました。ベトナム でも、私たちの歴史を考えれば、食べ物を無駄にすることは絶対に許されないことです。ですから、そのコンセプトをメニューに取り入れたいと思いました。他の8つのコースで残ったものに注目し、卵の殻、麺に練り込んだ海老の殻、chicken essence(鶏の出汁)と一緒に揚げた卵白など、すべてを1つの料理に詰め込みました。食感は少しザラついていますが、それは好奇心を刺激し、食べ続けさせるのに十分な程度です。

Juliane:現在のレストラン運営について教えてください。この8年間は、あなたをどのように試してきましたか?また、そこから何を学びましたか?

Summer:2017年にオープンしたので、8年以上が経ちました。ベトナム との関わりは非常に深まりました。最初はナイーブでした。ただ ベトナム 料理店を開きたいだけでした。食材や文化、あるいはサステナビリティについて深く考えてはいませんでした。時間が経つにつれて、ベトナム 人シェフとして、そしてファインダイニングのパイオニアとしての責任を自覚するようになりました。特に トウキョウ にオープンし、初めて私たちの文化を国際的な聴衆に披露するにあたって、ナラティブ(語り口)を洗練させ、自分自身のアイデンティティを真に理解しなければなりませんでした。

「時間が経つにつれて、ベトナム 人シェフとして、そしてファインダイニングのパイオニアとしての責任を自覚するようになりました。特に トウキョウ にオープンし、初めて私たちの文化を国際的な聴衆に披露するにあたって、ナラティブを洗練させ、自分自身のアイデンティティを真に理解しなければなりませんでした」

Juliane:責任という言葉が出ましたね。あなたは ベトナム で最初の Michelin Green Star 受賞者であり、ベトナム 人女性シェフであり、ビジネスオーナーであり、そして親でもあります。それは非常に多くの役割ですね。

Summer:私は Green Star を一つの責任として捉えています。人々は今、Nén を見て、ベトナム 料理の未来について問いかけています。私にとってサステナビリティとは多層的なものです。それは、自分たちのアイデンティティを失うことなく前進することを意味します。国際的な基準、特に ジャパン のパートナーとのバランスを取りながら、自分たちのルーツに忠実であり続けることは日々の挑戦です。システム自体は合理的ですが、盲目的に従うことは自分たちを見失うことを意味します。

Juliane:それはモチベーションになりますか、それとも圧倒されますか?

Summer:私は挑戦が大好きです。良いゲームというのは、難しいものです。Nén での私たちの使命は可能性を解き放つことであり、このブランドでどこまで行けるかを見極めたいと思っています。

Juliane:Nén の次のステップは何でしょうか?

Summer:最初の日から、私たちは単なるレストランではなく、ベトナム のファインダイニングというコンセプトのブランドを築きたいと考えていました。紹介すべきものはたくさんあります。コーヒー、食材、ベトナム 料理の中のサブカルチャーなど。私は製品にも興味があります。飲料やコーヒー、お茶などかもしれません。ベトナム の robusta は arabica の3倍の強さがあります。まるで lightning fuel(稲妻の燃料)のようです。

Juliane:最後に、未来を考えるとき、サステナビリティはどのように位置づけられるとお考えですか?

Summer:サステナビリティを考えるとき、私は「人」、つまり人々の考え方や精神(メンタリティ)について考えます。ベトナム の若いシェフやレストラン経営者の教育に貢献したいと願っています。私一人ができることは限られています。全員の力が必要です。私は早い時期に Dominique Crenn のようなシェフから刺激を受けました。彼女は2018年に Nén を訪れ、これが美食の未来だと言って、私たちを励ましてくれました。そのようなインスピレーションが、国全体の料理を変えることがあるのです。

Juliane:そして今、あなたは他の人々にとってのインスピレーションになりつつあります。Summer、本当にありがとうございました。あなたのストーリーを伺い、共有できることを嬉しく思います。

Summer:本当にありがとうございました。

参照サイト:REAL TALK: BUILDING RESILIENCE AND TURNING CHALLENGES INTO POSITIVE CHANGE

 

         

         

 

         

         

 

         

         

 

IUU漁業の「いま」と、飲食業にできること〜映画「ゴースト・フリート」パティマ・タンプチャヤクル氏 インタビュー

IUU漁業の「いま」と、飲食業にできること〜映画「ゴースト・フリート」パティマ・タンプチャヤクル氏 インタビュー

パティマ・タンプチャヤクル氏。LPN(Labor Protection Network:労働者保護ネットワーク)共同創始者。映画「ゴースト・フリート」におけるキーパーソン。(画像は、映画配給元のユナイテッドピープル様サイトより)

はじめに

一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会(以下、SRAジャパン)は、2023年に、IUU(違法・無報告・無規制)漁業の実態を描いたドキュメンタリー映画『ゴースト・フリート』の上映会を兵庫県芦屋市で開催しました。
本作でキーパーソンとして登場するのが、タイを拠点に漁業分野の人権問題に長年取り組んできたパティマ・タンプチャヤクル氏です。

上映会から3年が経過した現在、IUU漁業を取り巻く状況はどう変化しているのか。
そして、日々、魚介類を扱う飲食業には何ができるのか。
2026年1月19日、来日中のパティマ氏にお話を伺いました。

IUU漁業とは

“魚や貝、エビなど、世界のさまざまな水産資源は、近年減少の一途をたどっています。
その主な原因は、「乱獲」や「獲りすぎ」、すなわち水産資源の過剰な利用です。
この問題を解決するには、科学的根拠に従った実効性ある資源管理が必要です。
しかし、各国がそうした漁業管理を行なうための制度や法律を作っても、それが守られなければ意味がありません。

Illegal, Unreported and Unregulated漁業、つまり、「違法・無報告・無規制」で行なわれるIUU漁業は、こうした資源管理の実効性を脅かしている、大きな国際問題のひとつなのです。

  • 違法漁業(Illegal):国や漁業管理機関の許可なくまたは国内法や国際法に違反して行なう漁業
  • 無報告漁業(Unreported):法律や規則に違反し、報告が行われていない、または虚偽の報告を行なう漁業
  • 無規制漁業(Unregulated):無国籍または当事国以外の船舶が、規則および海洋資源の保全管理措置に従わずに行なう漁業

さらに、これらのIUU漁業においては、乗組員や漁業監視員(混獲や漁獲実態を調査報告するための調査員)の健康や生命を脅かすような人権問題も報告されるようになり、早急な対策強化が望まれています。”

 

出典:WWFジャパン 「IUU漁業について」 https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/282.html

聞き手:一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会 代表理事 下田屋 毅

「問題は今も続いている」――IUU漁業の現在地

――『ゴースト・フリート』公開から約9年、そして日本でのSRAジャパン主催の上映会から3年が経ちました。状況は改善しているのでしょうか。

この映画は公開以来、現在も世界中で上映され、LPNの活動を大きく後押ししています。
状況が劇的に変わったわけではありませんが、以前より人々が漁師の生活や問題を理解するようになりました。
映画は9年前の作品ですが、今もなお現在進行形の問題を描いていると感じています。

私は、この映画の上映のために、これまで20カ国以上を訪問してきました。映画と対話を通じて、多くの人がこの問題を理解し、「自分たちに何ができるか」と声をかけてくれます。

それでも残念ながら、問題はまだ終わる気配がありません。
現場では今もなお、賃金未払い、人身取引、暴力、薬物問題などが続いています。

またそれに伴い、父親に問題が起きると子どもたちがLPNに助けを求めてくるようになっています。

――現在、企業や行政との協働は進んでいますか。

企業の状況は、以前より多くの企業が人権デュー・ディリジェンスの実施の中で、人権のリスクを意識するようになり、監査や書類チェックは進んできています。
しかし、書類上は問題がなくても、実際には人権侵害が続いているケースが非常に多いです。
現地調査に入ると監視され、現場の担当者に自由に話を聞けないこともあります。

漁業の現場では、暴力や薬物問題が続いており、彼らは船の上では情報にアクセスできず、私たちは労働の実態を把握することができません。書類上は問題がなくても、実際には強制労働や暴力などの現代奴隷制が存在します。

LPNと企業との協働については、現在しっかりと実施・継続ができているのは、CPF(チャロン・ポカパン・フーズ グループ:総合的な農産物・食品事業を展開するタイ最大のアグリビジネス企業)だけです。LPNは、CPFと研修や予防活動を行っています。

企業は、水産物を購入する際、人権リスク(強制労働や人身取引)がないかを確認する必要があります。サプライチェーン上のリスクをチェックするという考え方です。それができている企業は現在(20261月)でもまだまだ少ないです。

政府機関とは、労働者保護の部署と連携し、通報があれば一緒に現場に入ります。ただし汚職の問題があり、問題を解決するには非常に難しい面もあります。そのため、メディアや中央政府との連携が不可欠となります。

 

――日本やヨーロッパ、アメリカの企業はLPNの活動に関心を持っていますか。

ヨーロッパ、アメリカ、日本の企業と協働できているかというと、関心は示していますが、対話の機会を持った上で「LPNと対話・連携している」とLPNの名前を使うだけにとどまり、実際の現場改善に結びついていないケースも多いです。またアイデアだけを持ち帰り、行動しない企業もあります。
書類チェックや監査だけで、漁業労働者の声が反映されていない場合もあります。

企業のCSR活動ではなく、実質的な変化を起こすことを考えなければなりません。

 

漁業労働者に話を聞く。「ゴースト・フリート」 インスタグラム@ghostfjp より

暴力や搾取のリスクにさらされる子どもたち

――LPNは個別ケースに対してどのような支援を行っていますか。

例えば、事故で片腕を失った漁師がいます。
母国に帰ることもできず、新たなスキルを身につけるための職業訓練が必要でした。
家族は借金を抱え、生活は非常に困難です。先月の現地調査でも、状況は依然として深刻で、薬物問題も拡大しています。

LPNは、法的助言、権利回復支援、シェルター提供(住居の確保)などを行っています。1つのケースに3年以上かかることも珍しくありません。

LPNは限られた資金の中で、こうした方に対しても長期支援を続けています。

法律は改善されたと言われますが、実際の現場では全く違うのです。

――私たちがすぐにできる支援があれば教えてください。

LPNが必要としているのは、必ずしも大きな資金には限りません。

例えば、「現地調査のための交通費」「子どもたちに配る文房具」「コミュニティの状況を把握するためのデータ収集の仕組みの支援」などです。

バンコクのインターナショナルスクールなどから寄付された文房具を配ると、子どもたちは本当に喜びます。
今後は、アプリなどを活用して、google mapのように、地域ごとの子どもの就学状況やリスクを可視化し、人身取引や強制労働の兆候を把握できる仕組みを作りたいと考えています。

漁業・水産業は非常に閉鎖的で、子どもたちは暴力や搾取のリスクにさらされています。しかし、その実態はコミュニティの外から把握することができず、記録もされていないので、支援が届かないケースが多くあります。

だからこそ、現場に入り、データを集め、社会に伝えることが不可欠なのです。

 

2023年2月19日(日)、日本サステイナブル・レストラン協会主催、WWFジャパンの後援により、「映画『ゴースト・フリート』上映とサステナブルなシーフードについて考えるトークショー」を開催。

飲食業が、できることとは

――この問題の解決のために、飲食業はどのように関わればよいか、お考えをお聞かせください。

レストランやホテル業界はサプライチェーンの最終地点(消費側)なので、原材料の背景を知ることがとても難しいです。
だからこそ、シェフや業界関係者の意識を高めることは重要です。
そのために、この問題があることを知り、映画上映会に参加すること、シェフ向けの対話やトレーニングはとても有効だと思います。

また、食事イベントやチャリティディナーを通じて、寄付金を送ることも有効です。その資金で、漁業コミュニティを支援することができます。

一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会 下田屋と、パティマ氏。2人が手にしているのは、困難な状況にある子どもたちが描いた絵がデザインされたTシャツ。暴力や搾取のリスクにさらされる農業・漁業労働者の家庭、戦争から逃れてきた子どもたちのことを知ってほしい。

インタビューを終えて

SRAジャパンとしては、2年ぶりのパティマ氏との再会となりました。変わらずエネルギッシュに問題に取り組んでいるお姿に心が動かされます。

IUU漁業の規模は、日本に輸入される水産物のうち24~36%(*)を占めているといいます。私たちも知らず知らずのうちに、こうしたIUU漁業由来のシーフードを口にしている可能性があるのです。(*https://www.wwf.or.jp/activities/data/20240209_sustainable01.pdf)

まずは、1人でも多くの方にこの現実を知っていただくことを続けていくことが必要だと、あらためて感じました。

画像をクリックしていただくとPeatix(イベント詳細と参加フォーム)にリンクします。

映画と対話を通して、食のサステナビリティを考える

SRAジャパンでは、映画と対話を通して食のサステナビリティを考えるイベント「FOOD MADE GOOD映画祭」を東京で定期開催しています。

このIUU漁業の実態をより多くの方に知っていただくため、次回の上映作品は、映画『ゴースト・フリート』を予定しています。

当日は、パティマ・タンプチャヤクル氏にも登壇いただき、特に飲食業に関わる皆さまとともに、
「私たちの食の選択」について考える場としたいと考えています。

またレストラン「レフェルヴェソンス」エグゼクティブシェフ、SRAジャパンの理事でもある、生江史伸氏をお招きします。生江氏は、IUU漁業に関心を持ち、タイの現場も訪れるなど、行動を起こしているシェフです。

そして、IUU漁業の撲滅に向けてグローバルに活動する、WWFジャパン様からは、滝本麻耶氏にご登壇いただき、IUU漁業の実態をデータとともに解説していただきます。

次回のFOOD MADE GOOD映画祭は、映画『ゴースト・フリート』上映とトークセッションは、2026年2月24日(火)開催です。
パティマ氏と直接対話ができる、大変貴重な機会になります。トークのあとは、サステナビリティに配慮され、トレーサビリティが確保された魚介類を使った軽食をお楽しみいただきながら、登壇者および参加のみなさま同士の交流のお時間を設けています。

詳しくはこちらをご覧ください。