本質的な「良さ」- 第10回ナショナル・レストラン・アワード サステナビリティ賞 受賞者決定

本質的な「良さ」- 第10回ナショナル・レストラン・アワード サステナビリティ賞 受賞者決定

*この記事は英国SRAのニュースを翻訳し抜粋したものです。

今年で10年目を迎える英国のナショナル・レストラン・アワード(NRA)では、エストレラ・ダム(スペインのビール会社)がスポンサーを務めるサステナビリティ賞の受賞者を審査しています。NRAのサステナビリティ賞に関して、英国のサステナブル・レストラン協会(SRA)も協力しています。

過去10年の受賞者の中には、「The PIG:ザ・ピッグ」、「Grain Store:グレインストア(閉店)」、「Silo:サイロ」など、輝かしい多彩な顔ぶれが揃っています。
過去の受賞者はいずれも、説得力のあるサステナビリティ・ストーリーと、それを裏打ちする信頼性を備えていました。「ザ・ピッグ」は、地元産の農産物、それも自家栽培の農産物を推奨しています。ロンドンのキングスクロス地区にあるブルーノ・ルーベ氏の「グレインストア」は、野菜を主役にしながらも、肉や魚も楽しめるという、まさにプラントベース・フードのパイオニアと呼ぶにふさわしいレストランでした。昨年優勝した「サイロ」は、食品ロスをすることに「NO」を突きつけ、世界中のシェフに食品ロスをゼロにすることが、おいしい料理作りの障壁にならないことを示したことなどから、評価を得ています。

ハードルは高くなっています。2022年の優勝者は誰でしょうか?最終選考に残ったレストランは、過去12ヶ月間にインパクトのある新しい取り組みを導入したレストランです。ここには、本質的かつ包括的なサステナビリティに配慮した、新規オープンのレストランも含まれます。中には、シャンテル・ニコルソンの「Apricity:アプリシティ」、「Field by Fortnums:フォートナムによるフィールド」、そしてカーディフの「Kindle:キンドル」もノミネートされました。この3店舗と、「Where the Light Gets In:WTLGI」、スコットランドの農場レストラン「The Free Company:ザ・フリーカンパニー」を選び、専門家の審査員が各レストランのオーナーやシェフに詳細なインタビューを行い、彼らの新しい取り組みやサステナビリティの信憑性についてさらに深く掘り下げていきました。

このコンペティションは非常に接戦で、5店舗すべてが説得力のあるストーリーとそれを支える信用性を備えていました。しかし、勝者になれるのは一人だけです。食卓の向こう側を見つめ、スタッフ、顧客、サプライヤー、そしてより広いコミュニティを巻き込んで、食糧システムの問題に対する創造的かつ革新的な解決策を見出した「WTLGI」が、他のレストランを抑えて表彰台に上りました。

 

「WTLGI」(Where the Light Gets In)のチームは、レストランの運営、自社農場と屋上の栽培スペース「The Landing:ザ・ランディング」での作業、そして新しいベーカリー「Yellowhammer:イエローハンマー」のオープンに加え、今年から新しい取り組みとして「The Residencies:ザ・レジデンシー」を立ち上げました。

 

レストラン、ベーカリー、栽培スペース「ザ・ランディング」を横断するこの「レジデンシー」は、食と環境、そして経済や社会との関係について、議論や討論を巻き起こすことを目的とした一連のイベントです。このイベントは、食、農業、環境に関する問題を取り上げ、地元のコミュニティ、アーティスト、農家、生産者間のコラボレーションの機会を提供するために企画されています。

これらの「レジデンシー」の中心にあるのは、レストランの厨房から出る端材などを活用し、栽培スペースの「ランディング」や自社のベーカリー、その他のサプライヤーを通じて新しい命を与えることにより、食品ロスを最小限に抑えることの重要性です。

例えば、羊の毛は近年価格が大幅に下落しており、農家の収入源になるどころか、羊毛の生産にコストがかかってしまうため、市場は苦戦しています。そのため、豊富にある英国産の羊毛を使うのではなく、建物の断熱材などに使用する場合はメリノ種で出荷するのが一般的です。
そこで「WTLGI」はレジデンシー(イベント)の一環として、羊の生産者と協力し、羊の毛を糸に紡ぎ、織物の毛にし、レストランから出る生ゴミなどの自然素材を用いて染色する一連のワークショップを開催したのです。
また、「WTLGI」はこの羊毛を使って、冬の間、栽培スペースである「ランディング」の栽培用ベッドを断熱することで、寒さから植物を保護するための巨大なフリースブランケットを作ることに成功しました。

その他にも、「WTLGI」はFOOD MADE GOODに取り組んでいます。

肉:肉は一頭買いし、最後の一切れまで使い切る。

魚:地元の日帰り漁船から直接仕入れる

紅茶:「ランディング」で栽培されたもの

スタッフの福利厚生:週1回のヨガセッション、毎日の朝食、週3日の休日、7週間の休日

プラスチック: 石油由来のラップフィルムを使わず、堆肥化できる再利用可能真空フードシーラーバッグ( 例:Stasher)のみを使用。

お皿:廃棄された骨を使って地元で作られたもの。

サム・バックリィシェフ氏率いる「WTLGI」は、料理だけでなく業界をリードする取り組みをしているという点で、この賞の第10回目の受賞者にふさわしいチームです。来年に向け11人目の受賞者を探すのが楽しみです。

西武グリーンマルシェでの紙パックリサイクル・アクションの実施について

西武グリーンマルシェでの紙パックリサイクル・アクションの実施について

紙パックのリサイクル回収率は現在40%未満。牛乳やジュースなどの飲料容器に使われている1リットルサイズの紙パック6枚分で、トイレットペーパーが1ロール作れるほど上質な素材であるにもかかわらず、その半分以上がリサイクルされていないという状況です。

 

そこで、持続可能なフードシステムの構築を目指す『日本サステイナブル・レストラン協会(SRA-J)』は『全国牛乳容器環境協議会(容環協)』と協働で、7月15日(金)から8月14日(木)の期間中、SRA-J加盟店『PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO』のご協力のもと、練馬区石神井公園の近郊に立地する飲食店や地域と連携した紙パックリサイクルの実証実験を行います。

 

この一環として、7月23日(土)に西武グリーンマルシェ会場内で10時から15時までの時間、紙パックのリサイクル回収と、先着100名の方にクイズラリーを実施いたします。

紙パックのリサイクルのメリットとルール

クイズラリーについて(先着100名)

「PLAY! 高架下」プロジェクトイベント会場に掲出されたポスターから クイズの答えを見つけて、西武グリーンマルシェ会場で回答した方に、紙パックリサイクルでできたトイレットペーパーをプレゼントします。

ぜひこの機会に、紙パックリサイクルを一緒に推進しませんか?

紙パックリサイクルの実証実験を実施|兵庫県芦屋市のレポートと、今後の展開について

紙パックリサイクルの実証実験を実施|兵庫県芦屋市のレポートと、今後の展開について

2022年5月18日(水)から6月17日(金)の1ヶ月間、日本サステイナブル・レストラン協会はFOOD MADE GOODの評価項目にもある「リデュース・リユース・

リサイクルの推進」を推進するため、全国牛乳容器環境協議会 と協働で、飲食店や地域と連携した紙パックリサイクルの実証実験を、兵庫県芦屋市で実施いたしました。

 プロジェクト背景

紙パックのリサイクル回収率は現在40%未満。牛乳やジュースなどの飲料容器に使われている1リットルサイズの紙パック6枚分で、トイレットペーパーが1ロール作れるほど上質な素材であるにもかかわらず、その半分以上がリサイクルされていないという状況です。

リサイクルの回収ルートはさまざまですが、家庭などからの使用済み紙パックのうち、約半分はスーパーマーケットなどの店頭回収によるものです。集団回収や市町村回収でもリサイクルが推進されていますが、まだまだ取り組みの余地があるのが現状です。

また、事業系紙パックのリサイクルに関しては個々の事業者に委ねられてしまうこともあり、リサイクルを実施できていないという飲食店も少なくありません。

そこで、兵庫県芦屋市に所在するSRA-J加盟店「ボッテガ・ブルー」と、「BAR 芦屋日記」の企画協力のもと、芦屋市の行政と連携し、全国で初めて飲食店が中心となり紙パックのリサイクル回収を推進するプロジェクトを実施しました。

どんな結果が得られたのか

各拠点から回収された紙パックの枚数は、642枚におよび、トイレットペーパーにして107個分の資源を回収することができました。全国牛乳容器環境協議会からはプロジェクトに対して、紙パックをリサイクルして製造された100個のトイレットペーパーが届けられ、地域市民のために役立てられます。

プロジェクトに企画協力した「ボッテガ・ブルー」からは、

「自分たちの使用量が明確になり、今までゴミとして出していましたが、サステナブルレストランとして紙パックのリサイクル向上に貢献でき、お客様からさまざまな声を聞くことができました。今後も継続したいと思いました」

 といったコメントをいただきました!

 

 

今後の展開について

今回の実証実験をもとに、芦屋市では事業系紙パックのリサイクルに関する今後の推進方法を検討していただく予定です。自治体ごとのSDGsの取り組みが注目される中で、この実証実験が紙パックをはじめ、他の資源においても循環が進むきっかけの一つになることを願います。

また、本企画に賛同いただき、2022年SRA-J加盟店「GITALIA DA FILIPPO」(東京都練馬区)と「ふれんちん」(大阪府東大阪市)の企画協力のもと、地域と連携し紙パックリサイクルの実証実験を行う予定です。

詳細は後日こちらで発表させていただきます。

それぞれの地域で取り組みがどのように広がるか、引き続きご注目ください!

サステナブルな都市に住むシェフは、 気候変動問題に対してどのような料理をしているのか?

サステナブルな都市に住むシェフは、 気候変動問題に対してどのような料理をしているのか?

*この記事は英国SRAのニュースを翻訳し抜粋したものです。

SRA主催「ワン・プラネット・プレート」のキャンペーンマネージャー/
アビ・エングルフィールド氏談

英国イングランドの南東部に位置する都市ブライトンは、持続可能で環境に配慮した都市としてよく知られています。飲食店・レストランの食事客がより良い食の未来のために投票することができるグローバル・キャンペーン「ワン・プラネット・プレート」の一環として、この街でサステナビリティを公言する2つのレストラン、「ラッキービーチ」と「ピュレッザ」のシェフに、ワン・プラネット・プレートの料理などについて話を聞いてきました。

フィリッポ・ロサト氏:ブライトン、ホヴ、ブリストル、マンチェスター、ロンドンに展開する「ピュレッザ」のエグゼクティブシェフ

 

■なぜ、地元の食材や低炭素の食材を使うことが「ピュレッザ」にとって重要なのでしょうか?

2015年に「ピュレッザ」をスタートし、英国初のヴィーガン・ピッツェリアとなりました。サステナビリティは私たちのDNAであり、温室効果ガスを大量に排出する畜産由来の製品は一切使っていません。可能な限り地元の食材を使用し、レストランでもインテリアの大半をリサイクル・リノベーションするなど、メニューの他の要素に至るまでサステナビリティを貫いています。

 

■ワン・プラネット・プレート「The One with All The Seasons:四季を彩るもの」は、どのような思いで作られたのですか?

「The One with All The Seasons:四季を彩るもの」 は、四季折々のピザを植物性食品でアレンジしたものです。最も重要なのは、従来の生ハムの代わりに、私たちが開発したスモークビーツのカルパッチョを使用したことです。これは、伝統的なナポリ料理を尊重し、敬意を表しつつ、植物由来の新しい食材を使用するという、私たちの大きな目的につながるメニューです。そして、数年かけて開発したヴィーガンモッツァレラチーズは、私たちの最高傑作です。

■ナッツ類も排除した理由は何ですか?

ナッツを取り除いた理由は2つあります。第一に、主にナッツは地球の裏側から空輸されるため、環境的にサステナブルではありません。もう一つは、私たちは、食事に制限のある方など、あらゆる選択肢を持つ方を受け入れるレストランであることを誇りにしているからです。ナッツ類を取り除いたことで、アレルギーをお持ちの方にも、より多くのメニューを楽しんでいただけるようになりました。

 

■ワン・プラネット・プレート ピザには、どのプラントベースのカクテルが合いますか?

私たちのピザの中でも、「The One with All The Seasons:四季を彩るもの」は、最も伝統的なイタリアンレシピの一つです。ピュアッツァ・スプリッツは、クラシックなアペロール・スプリッツにフレッシュなエルダーフラワー・ジュースを加えたもので、まさにイタリアの伝統的なカクテルです。ブライトンの晴れた日に、ピザとこのカクテルで目を閉じれば、そこはもうナポリそのものです。

ルーク・ラーション氏:「ラッキービーチ」ヘッドシェフ

 

■サステナブルな食事は、メニューにどのように反映されていますか?

サステナブルな食事が、私たちのすべての行動の背景となっています。私たちは10年以上にわたってサプライヤーと長年の関係を築き、常に新鮮な地元産の食材を使ったメニューを提供できるようにしています。

 

■サステナブルな料理を作る際に、最も苦労することは何ですか?

価格設定に対する顧客の見方を克服しなければならないこと、市場ではニーズが低い肉や魚を使用すること、あまり知られていない野菜を勧めていくこと。

 

■ワン・プラネット・プレートを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

ビーチで旬のサバを見かけ、入手することができたので、ブライトン産のサバを使いクリスピーなサンピア、シーバックソーン、ナッツボーン産トマトのピクルスを添えました。

ラッキー・ビーチの季節のワンプラネット・プレート
ブライトン産サバ

 

■ラッキー・ビーチにいないとき、ブライトンでお気に入りのレストランはどこですか?

ブライトンの「マンジュ・トゥー」。フランス人が経営するレストランで、サステナブルをモットーにしています。

 

■他のシェフがワン・プラネット・プレートを作る際のアドバイスをお願いします。

地元のサプライヤーや農家を訪問すること。チームを巻き込んで、自分のビジネスがある地域で永続的な関係を築くことです。

■最後に、好きな季節は?

夏です。その土地で育つレタスをあらかじめ計画的に栽培しておくんです。