レストランにサステナビリティ認証が必要な理由とは?

レストランにサステナビリティ認証が必要な理由とは?

 

ホスピタリティ業界にとって、新たに改訂されたFood Made Goodスタンダードが、今まさに必要なものである理由を、英国サステイナブル・レストラン協会のマネージング・ディレクターのジュリアン・カイウエット・ノーブルが説明します。

気候変動が深刻な状況にある今、いたるところでサステナビリティに関する議論があり、環境マークや環境保護に関する賞の数は日々増えています。何か行動を起こさなければならないというプレッシャーが高まる中、何から手をつければいいのか分からないということもあるでしょう。そして、「なぜFood Made Goodのような認証が必要なのか?」と疑問に思うのも当然です。

そもそも、世の中のサステナビリティ認証の中には透明性のある基準に基づいていないもの多数存在するため、メニューにそのような認証の格付け評価を記載したとしても、必ずしも意味のある影響を及ぼしているとは言えません。シェフたち自身は素晴らしいことをしていたとしても、実際にどのような取り組みをしたのかについての透明性は全くありません。進捗状況を正確に測定する方法がなければ、このような認証は無意味です。透明性なくして持続可能性というものはありません。



採用の先駆者

 

 

 

 

業界そのものを理解することは非常に重要です。あらゆる業界に適用可能で、大局的なESG目標に焦点を当てた認証には、ホスピタリティの要素を欠いている場合が多くあります。レストランは非常に多忙で、あらゆる方向からプレッシャーがかかる環境の中で経営しています。彼らに必要なのは、「とにかく、あなたの店を脱炭素化せよ!」という、一見克服不可能に見える大きなミッションを、日々の業務に組み込める具体的な行動に落とし込むことです。脱炭素化は単なる一例ですが、エネルギー使用量の削減、食品廃棄物の管理、正しいメニューの選択といった小さなタスクに細分化すれば、より管理しやすくなります。

 もうひとつ考慮すべき重要な点は、測定すべき指標は炭素だけではないということです。誤解のないように言いますが、脱炭素化は極めて重要です。しかし、サステナビリティとはもっと幅広い話です。CO2のことだけでなく、全体的であらゆる角度からのアプローチに移行することは、より意味のある影響を与える方法であり、私たちが問題を先送りして、別の危機に見舞われるようなことにならないための基本的な方法です。私たちは、人類のことを第一に考え、将来にわたって安全かつ責任ある事業を展開するための、先進的で強靭なビジネスを構築する必要があります。

 もう一つ考えるべき非常に大きな側面は、私たちの業界の社会的影響です。環境問題に緊急性が集中するあまり(それは当然のことですが)、ESGの「S(社会)」は忘れられがちです。スタッフの待遇の悪さは、長い間、ホスピタリティ業界の知られたくない秘密でした。人と人柄で成り立つ業界であり、そして経済に大きな影響を持つこの業界で、ニューノーマルを定義することが極めて重要です。この点について、弁解の余地はありません。ダイバーシティと公平性、ワーク・ライフ・バランス、いじめやハラスメントを決して許さない、妥当な報酬というものは、どのレストランにおいてもサステナビリティの目標に含まれているべきです。レストランはまた、人々が集まり、その地域の文化を表現するのに役立つ場所として、地域社会でかけがえのない役割を果たしています。地域社会との関わりは、持続可能なレストランであるための重要な要素です。

 この状況が緊急であることは、議論の余地はありません。サステナビリティはもやは選択肢ではなく、必須事項です。今こそ変革の時です。このことを念頭に置き、サステイナブル・レストラン協会は、飲食店向けの総合的かつ実践的なサステイナビリティ認証であるFood Made Goodレーティングをスタンダードとしてリニューアルしました。

 新しいFood Made Good スタンダードは、世界中どこでも適用可能でアクセスしやすいものとなっており、世界中のレストランが登録して、実際にサステナビリティの取り組みへの具体的な一歩を踏み出すことができるようになりました。私たちは、レストラン経営者ができるだけ簡単に作業できるように、使いやすい新しいプラットフォームも用意しました。Food Made Goodスタンダードは、どんなレストランにとっても重要な進歩であり、その実践をより分かりやすく伝え、継続的な改善の手順に導くものです。

 世の中にはたくさんのソリューションがありますが、Food Made Good スタンダードは唯一、ホスピタリティ業界のニーズに特化して作られたものです。私たちは、レストランが現在どのような状況にあり、どこに向かうべきかを理解し、そこに到達するためのロードマップを提供することができます。高級レストランでもチェーン店であっても、 FMGスタンダードは、すべての人々にとって持続可能な未来を築くために、あなたのレストランが果たすことができる役割を、既存のオペレーションの中でどのように実践できるか、現実的で具体的な行動を提案することができるのです。 

  参照記事:https://thesra.org/news-insights/insights/why-restaurants-need-a-sustainability-accreditation-thats-just-for-them/

https://www.restaurantonline.co.uk/Article/2023/06/20/sustainability-accreditation-for-restaurants-juliane-caillouette-noble

 

 

英国サステイナブル・レストラン協会がBONIVIRI(イタリア)とのパートナーシップを発表

英国サステイナブル・レストラン協会がBONIVIRI(イタリア)とのパートナーシップを発表

BONIVIRI は2020年に設立されたイタリアの公益法人です。彼らのミッションは、地元の小規模農家を支援して、彼らが生産から販売までのすべての段階で持続可能性に取り組むことができるように助け、また、シェフや卸売業者、消費者などの顧客が持続可能で健康に良く、最高品質の食品を探すことができるように支援することです。 BONIVIRI は、世界のベストレストラン50 によって、美食の分野で最も影響力のある世界的なイニシアチブの「50 Next」に選出されました。

BONIVIRIは、高品質の食品を開発するためにイタリアの小規模農家の企業14社のネットワークを構築しました。その一方で、持続可能で高品質の食材を探すレストランなどの顧客をサポートするコンサルティング業務を行なっています。また、企業の贈答品や福利厚生として、革新的で社会的価値の高いソリューションを作り出しています。

BONIVIRI のモットーは 「Eat well doing good(良いものを食べ、良いことをする)」です。これは、生活者が食品を購入するとき、それはただ栄養補給のためではなく、特定の経済やビジネスの方法に対して価値を配分している、というコンセプトを表現しています。BONIVIRIは、おいしく食べることが、食材の原産地や持続可能性、そしてその背景にある人々のストーリーに注意を向けることで、良いことができると信じています。 

英国サステイナブル・レストラン協会は、2023年6月にBONIVIRI をグローバル・パートナーとして迎えました。このパートナーシップの目的は、イタリア全土のレストラン経営者、食品飲料マネージャーやシェフがサステナビリティの取り組みを実施・改善できるように助け、食料システムの主要な問題を解決できるよう支援することと、Food Made Goodスタンダードをイタリアで広めることです。

参照記事:https://thesra.org/about-us/our-global-network/italy/

 

 

サステナブルシーフード:海光物産(瞬〆すずき)視察について

サステナブルシーフード:海光物産(瞬〆すずき)視察について

SRA-Japanでは、生産者と飲食店レストランとのつながりを大切にしています。サステナビリティに配慮した活動をされている生産者のストーリーを、レストランの店舗に食べに来られる消費者/生活者の方々に伝える啓発活動は、サステナビリティの切り口でその店舗が選ばれるためにも、とても重要なことだと考えています。

2023年5月8日(月)にSRA-Japan加盟店のザ・キャピトルホテル東急の「オールディダイニング ORIGAMI」「中国料理 星ヶ岡」「FARO」の方々とともに、千葉県船橋市にある瞬〆すずきの海光物産さんを訪問し、漁業に関するサステナビリティについて理解を深めました。

船橋の漁港の近くにある船橋市漁業協同組合の2階で、海光物産の社長で漁船「大傳丸」代表で漁師でもある大野さんからご説明いただきました。

人口64.6万人の船橋市において、1次産業従事者0.1%、うち漁業従事者は0.017%で極めて少ない状況。船橋は昔から築地が近いので420年前から江戸前として親しまれてきました。そして現在、今後の漁業の100年を考えた「100年漁業継続プロジェクト」を推進されているとのことです。

大野さんは「必要以上に漁獲され安く売られる魚をスーパーで見て、『これでは獲りすぎで魚がいなくなってしまう』」と危機感を募らせてきたといいます。

海光物産さんでは、現在の東京湾の水産資源を守り、未来につなげるために資源管理を徹底。産卵を迎えるメスについては、漁獲された網の中から選別して傷つけないように海へ放流しています。通常捕獲されたお魚は、そのまま売ればお金になるので、普通の漁師は短期的な視点から少しでもお金にすることを考えてしまうようですが、海光物産では将来を見据え、産卵を控えるメスを海へ戻すことはとても重要なこととして実践しています。
他の漁業関係者にも真似をして欲しいけれども、なかなかそのようになっていない実情もお話いただきました。

このように海からの恵みであるお魚の1匹1匹を大事に扱い、適正な価格で売るべきとし、魚を獲りすぎなくても事業が成り立つ努力をすること、そしてきちんと海洋資源を保護して、東京湾の恵みを未来につなげていくことを考えていらっしゃいます。

海光物産としては、「瞬〆すずき」のブランド化をすすめ、東京湾の海の恵みを未来につなげるために次の3つに取り組んでいます。

1.高鮮度の江戸前鮮魚を提供する

江戸前鮮魚のみに執着し、水揚げから出荷まで徹底した鮮度管理を行う。

2.魚の価値を引出すことで社会に貢献する

六次化に取り組み、魚が本来持っている価値を最大限に引き出す努力をすることで、魚食普及と食糧自給に貢献する。

3.東京湾の水産資源を次世代に残す

資源管理に立脚し、持続可能な江戸前漁業を実践することで、その伝統、文化を次世代に繋げる。

海光物産は2016年より日本初の「漁業改善プロジェクト」FIP(Fishery Improvement Project)に取り組んでいます。現在は、日本の漁業認証であるマリン・エコラベル・ジャパン(MEL)の認証について取得しています。

漁業協同組合での座学の後には、漁港と加工場についての視察をさせていただきました。

すずきを捕獲するための漁船、海光物産所属の「大傳丸」「中仙丸」を視察。

瞬〆すずきの加工場などを視察しました。

瞬〆されたすずきの細胞はそのまま生き続けているようで、解凍してすぐの段階では、硬直がなく、まるで生きているようにやわらかい状態ということで、使用されるシェフがびっくりされるようです。

納入に使用される容器は、100%バイオマス由来で、海水中でも生分解されるというもの。価格は少し高いが海洋プラスチック問題が深刻化している現状において、地球環境により配慮して使用しているといいます。


今回の視察に際し、海光物産の大野社長、宗形さんをはじめ関係者の皆様のご準備、ご対応に心より感謝申し上げます。
またこの度お取次ぎをいただいたUMITO Partners様にも深くお礼申し上げます。

SRA-Japanでは、FOOD MADE GOODのフレームワークに則り、今回の「サステナブルシーフード」を考える機会のようにサステナビリティの理解を深めるための活動として、これからも様々な視察を行ってまいります。