英国サステイナブル・レストラン協会がBONIVIRI(イタリア)とのパートナーシップを発表

英国サステイナブル・レストラン協会がBONIVIRI(イタリア)とのパートナーシップを発表

BONIVIRI は2020年に設立されたイタリアの公益法人です。彼らのミッションは、地元の小規模農家を支援して、彼らが生産から販売までのすべての段階で持続可能性に取り組むことができるように助け、また、シェフや卸売業者、消費者などの顧客が持続可能で健康に良く、最高品質の食品を探すことができるように支援することです。 BONIVIRI は、世界のベストレストラン50 によって、美食の分野で最も影響力のある世界的なイニシアチブの「50 Next」に選出されました。

BONIVIRIは、高品質の食品を開発するためにイタリアの小規模農家の企業14社のネットワークを構築しました。その一方で、持続可能で高品質の食材を探すレストランなどの顧客をサポートするコンサルティング業務を行なっています。また、企業の贈答品や福利厚生として、革新的で社会的価値の高いソリューションを作り出しています。

BONIVIRI のモットーは 「Eat well doing good(良いものを食べ、良いことをする)」です。これは、生活者が食品を購入するとき、それはただ栄養補給のためではなく、特定の経済やビジネスの方法に対して価値を配分している、というコンセプトを表現しています。BONIVIRIは、おいしく食べることが、食材の原産地や持続可能性、そしてその背景にある人々のストーリーに注意を向けることで、良いことができると信じています。 

英国サステイナブル・レストラン協会は、2023年6月にBONIVIRI をグローバル・パートナーとして迎えました。このパートナーシップの目的は、イタリア全土のレストラン経営者、食品飲料マネージャーやシェフがサステナビリティの取り組みを実施・改善できるように助け、食料システムの主要な問題を解決できるよう支援することと、Food Made Goodスタンダードをイタリアで広めることです。

参照記事:https://thesra.org/about-us/our-global-network/italy/

 

 

サステナブルシーフード:海光物産(瞬〆すずき)視察について

サステナブルシーフード:海光物産(瞬〆すずき)視察について

SRA-Japanでは、生産者と飲食店レストランとのつながりを大切にしています。サステナビリティに配慮した活動をされている生産者のストーリーを、レストランの店舗に食べに来られる消費者/生活者の方々に伝える啓発活動は、サステナビリティの切り口でその店舗が選ばれるためにも、とても重要なことだと考えています。

2023年5月8日(月)にSRA-Japan加盟店のザ・キャピトルホテル東急の「オールディダイニング ORIGAMI」「中国料理 星ヶ岡」「FARO」の方々とともに、千葉県船橋市にある瞬〆すずきの海光物産さんを訪問し、漁業に関するサステナビリティについて理解を深めました。

船橋の漁港の近くにある船橋市漁業協同組合の2階で、海光物産の社長で漁船「大傳丸」代表で漁師でもある大野さんからご説明いただきました。

人口64.6万人の船橋市において、1次産業従事者0.1%、うち漁業従事者は0.017%で極めて少ない状況。船橋は昔から築地が近いので420年前から江戸前として親しまれてきました。そして現在、今後の漁業の100年を考えた「100年漁業継続プロジェクト」を推進されているとのことです。

大野さんは「必要以上に漁獲され安く売られる魚をスーパーで見て、『これでは獲りすぎで魚がいなくなってしまう』」と危機感を募らせてきたといいます。

海光物産さんでは、現在の東京湾の水産資源を守り、未来につなげるために資源管理を徹底。産卵を迎えるメスについては、漁獲された網の中から選別して傷つけないように海へ放流しています。通常捕獲されたお魚は、そのまま売ればお金になるので、普通の漁師は短期的な視点から少しでもお金にすることを考えてしまうようですが、海光物産では将来を見据え、産卵を控えるメスを海へ戻すことはとても重要なこととして実践しています。
他の漁業関係者にも真似をして欲しいけれども、なかなかそのようになっていない実情もお話いただきました。

このように海からの恵みであるお魚の1匹1匹を大事に扱い、適正な価格で売るべきとし、魚を獲りすぎなくても事業が成り立つ努力をすること、そしてきちんと海洋資源を保護して、東京湾の恵みを未来につなげていくことを考えていらっしゃいます。

海光物産としては、「瞬〆すずき」のブランド化をすすめ、東京湾の海の恵みを未来につなげるために次の3つに取り組んでいます。

1.高鮮度の江戸前鮮魚を提供する

江戸前鮮魚のみに執着し、水揚げから出荷まで徹底した鮮度管理を行う。

2.魚の価値を引出すことで社会に貢献する

六次化に取り組み、魚が本来持っている価値を最大限に引き出す努力をすることで、魚食普及と食糧自給に貢献する。

3.東京湾の水産資源を次世代に残す

資源管理に立脚し、持続可能な江戸前漁業を実践することで、その伝統、文化を次世代に繋げる。

海光物産は2016年より日本初の「漁業改善プロジェクト」FIP(Fishery Improvement Project)に取り組んでいます。現在は、日本の漁業認証であるマリン・エコラベル・ジャパン(MEL)の認証について取得しています。

漁業協同組合での座学の後には、漁港と加工場についての視察をさせていただきました。

すずきを捕獲するための漁船、海光物産所属の「大傳丸」「中仙丸」を視察。

瞬〆すずきの加工場などを視察しました。

瞬〆されたすずきの細胞はそのまま生き続けているようで、解凍してすぐの段階では、硬直がなく、まるで生きているようにやわらかい状態ということで、使用されるシェフがびっくりされるようです。

納入に使用される容器は、100%バイオマス由来で、海水中でも生分解されるというもの。価格は少し高いが海洋プラスチック問題が深刻化している現状において、地球環境により配慮して使用しているといいます。


今回の視察に際し、海光物産の大野社長、宗形さんをはじめ関係者の皆様のご準備、ご対応に心より感謝申し上げます。
またこの度お取次ぎをいただいたUMITO Partners様にも深くお礼申し上げます。

SRA-Japanでは、FOOD MADE GOODのフレームワークに則り、今回の「サステナブルシーフード」を考える機会のようにサステナビリティの理解を深めるための活動として、これからも様々な視察を行ってまいります。

継続的改善の精神でアジアベストレストラン50に選ばれたTOYO EATERY

継続的改善の精神でアジアベストレストラン50に選ばれたTOYO EATERY

世界中のシェフやレストラン、特に影響力のある著名なシェフや有名店は、食の未来、ひいては地球の未来に対して、非常に重要な役割を担っています。

2023年のアジアのベストレストラン50は、まさにこのことを証明するものでした。 今年の受賞者であるマニラのTOYO EATERYは、自らの役割と責任を認識しているだけでなく、それに真正面から取り組み、フィリピンのみならず世界中のレストランに感銘を与えるような、前向きな変化をし続けるモデルを作り出しているからです。

環境を守ることはサステナビリティの重要な要素ですが、TOYO EATERYでは、それだけではなく、共に働く人々の伝統や文化、テロワール(風土特性)を尊重することを最も大切にしています。

TOYO EATERYは、フィリピン国内の良い影響を与えている人々との関係づくりを中心に事業を展開しています。特に、伝統食材や郷土食材に焦点を当て、サプライヤーや生産者をパートナーとして長期的な関係を築くことを大切にしています。

ジョーディ・ナバラ シェフ

この進歩的なレストランの理念の中で最も感銘を受ける要素のひとつは、可能な限り良い影響を与える食材を調達し提供するために、常に改善に取り組み続け、新たな方法を探し続けるひたむきな姿勢です。このことは、2022年の包括的なサステナビリティレポートに記載された彼らの発言によく表れています。

「私たちの店は世界で最もサステナブルなレストランではないかもしれませんが、今日が今までで最もサステナブルだと思います。これからも、私たちの価値観を守り、より良いものにしていき、世界がどんな変化に直面しても対応できるように成長し進化し続けていこうと計画しています。」

その例が、牛肉の転換です。彼らは2020年に輸入牛肉を使用しないという決断をしました。そして、その2年後の2022年には、メニューから牛肉を完全に無くしました。今では、テイスティングメニューの半分以上がベジタリアンかビーガンです。

改善し続けることへのコミットメントをさらに証明しているのが、「地元産」「オーガニック」「トレーサビリティ」の三原則に基づく透明な調達方針です。現在、原材料の90%が地元産、75%がオーガニック、同じく75%はトレーサビリティが確保されたものです。2025年にはそれぞれ95%、90%、90%にするという目標を掲げています。

 

マウンテン・バイオレット古代米という、その名の通り紫色(炊いても紫色)の米など、伝統的で土着の食材は彼らの食の哲学のまさに核心です。このような食材を調達し提供することで、生物多様性と職人的生産者のネットワークの両方を支援しています。

 

レストランは、その店の置かれた環境の中で運営しなければなりません。TOYO EATERY の場合、紅茶やコーヒー、砂糖といったハイリスクな食材の90%地元で調達し、しかも、そのほとんどをオーガニックにしたことが、彼らにとってプラスに働きました。

TOYO EATERY の看板メニュー、バハイクボ 

TOYO EATERY の精神を理解するためには、看板メニューのひとつである「バハイクボ」を見るのが一番でしょう。バハイクボは、18種類の野菜をさまざまな方法で調理したものです。この料理は、TOYO EATERY のパートナーである農家と築き上げ、これからも深めていく貴重な関係性を象徴しています。

農家との関係は、TOYO EATERYが女性農業者の協同組合であるGood Food Co,のために行った大規模な募金活動にも表れています。この活動を通して、農家の気候変動リスクへの適応や、リスクに対する生産者コミュニティの対策強化を支援しています。

店舗スタッフの健康も重要な優先事項です。毎年、店舗を休業して全従業員に休息とリフレッシュの時間を提供しています。

レストランの影響を全般的に改善するという目標は、調達にとどまりません。2年後を目標に、エネルギーと水の消費量を25%削減し、2024年末までに食品廃棄物ゼロを達成することを約束しています。

ジョーディ・ナバラシェフと彼のチームの受賞を祝福し、さらなる活躍を期待します。今後も彼らの活躍に注目していきたいと思います。

トム・タナー、サステナブルレストラン協会)