SRA「Food Made Good スタンダード」2027年版を発表

SRA「Food Made Good スタンダード」2027年版を発表

ホスピタリティ業界における世界有数のサステナビリティ評価「Food Made Good スタンダード」の重要なアップデート

ロンドン、2026年10月5日:The Sustainable Restaurant Association(The SRA)は、ホスピタリティ業界向けの主力サステナビリティ認証「Food Made Good スタンダード」の新版を発表しました。

今回の新版は、スタンダードの大規模な見直しを経たものです。EUの新たなグリーンウォッシュ規制であるECGT指令への準拠の確保、世界50人の専門家の意見を取り入れた設問の改善、スコアリング方法の更新などが含まれます。これらの変更は、ホスピタリティ業界が2027年に向かう中で、Food Made Goodが厳格かつ時代に即した、目的に適うものであり続け、世界中の事業者のサステナビリティの歩みを引き続き支えられるようにすることを目的としています。

SRAが創設し、2010年から運用されているFood Made Good スタンダードは、世界的に認められたサステナビリティ認証です。ファインダイニングやグローバルホテルブランドから、地域の居心地の良いパブ、カジュアルな飲食店、空港ラウンジ、鉄道網、カフェ、ケータリング、映画館まで、あらゆる規模・業態のホスピタリティ事業者が対象です。現在、世界50の国と地域の事業者が利用しており、飲食事業者が自らのサステナビリティの取り組みを測定し、改善できるよう設計されています。意図よりも行動を重視し、厳格な裏付け資料を求め、透明性を推進することで、業界全体にポジティブな変化をもたらしています。

なぜアップデートするのか?

Food Made Goodは、サステナビリティはゴールではなく旅である、という考えに基づいて生まれました。スタンダードは16年以上にわたり飲食業界の行動を後押ししてきており、2023年には初のグローバル版が発表されました。スタンダードが有効に機能し続けている理由は、常に進化し続けていることにあります。SRAは3年ごとにFood Made Good スタンダードを大規模に見直し、最新の社会・環境研究、政策や規制、そして多様でグローバルなホスピタリティ業界のニーズと実情を反映させています。

EUが、曖昧または誤解を招く環境・社会的な主張から消費者を守るための「グリーン移行に向けた消費者のエンパワーメント指令」(ECGTまたは「EmpCo」とも呼ばれる)を導入したことからも、今回のアップデートは時宜を得たものでした。今回の改訂により、スタンダードは認証制度としてのECGTの要件を満たし、飲食事業者にとって実践的な支えであり続けることができます。

SRAのCEO、ジュリアン・カイユエット・ノーブルは次のように述べています。「飲食事業者が日々行う選択は、自らの事業の枠をはるかに超えて影響を及ぼします。グローバルなサプライチェーンを形づくり、食べ物がどのように育てられ、獲られ、生産されるかに影響し、そのシステム全体で働く人々にも影響を与え、自然界への影響を左右します。業界への期待も変化しています。ごく地域的な食文化の保護を軸にラグジュアリーを再定義しようとする声から、チームを大切にすることの基準を大きく引き上げる大規模事業者まで。そして、慣習に挑み、より良い働き方を切り開いている事業者がいるなら、スタンダードはその進歩も評価しなければなりません。

「この1年間、SRAは世界中のさまざまな分野の専門家を集め、Food Made Good フレームワークに疑問を投げかけ、磨き上げてきました。現場で起きていること、そして事業者が次に取り組むべきことを反映させるためです。私たちの役割は、その知見を事業者が使えるものに変えることです。適切な問いを投げかけ、業態や規模にかかわらず、地域に即した実行可能なアクションを提示する。そうやって個々の行動が集団としての影響力となり、最終的にはより広い変化につながっていくのです」

専門家の知見

過去18か月間にわたり、フレームワーク、設問、スコアリング方法は世界中のさまざまな専門家によって徹底的に見直され、Food Made Goodが飲食業界のゴールドスタンダードとなる認証であり続けることが確認されました。

この意見聴取には、幅広い国や文化の視点が反映されており、世界中から50人以上の専門家が参加しました。参加者には、持続可能なフードシステム、ホスピタリティ、公正な取引慣行と労使関係、環境影響を専門とする研究者、主要NGO、業界の専門家、ほかのサステナビリティプログラムや認証制度、そしてSRAのグローバルパートナーが含まれます。特に、Green Dining Guide(台湾)、SRA-Japan、Circular Hospitality Australiaが参加しました。

このように幅広い参加者が関わったことで、Food Made Goodは包括的で厳格なだけでなく、世界の多様な文化や背景からの視点と知見を取り入れたものになりました。これによりバイアスや見落としを避けつつ、さまざまな地域、ビジネスモデル、事業規模において、フレームワークが最大限機能するようになっています。

Coffee Watchのディレクター、エテル・イゴネ氏は意見聴取について次のように語っています。「このようなサステナビリティ・スタンダードは、レストランをはじめとするホスピタリティの主要なプレーヤーにとって大きな価値があると考え、参加しました。レストランの経営は非常に大変です。コーヒーを倫理的なものにするといった難しい問題について、忙しい業界の人々が迅速かつ明確な指針を得られることは大きな助けになります。ホスピタリティ業界で、森林破壊や児童労働に関わるコーヒーを出したい人などいません。しかし、正しい行動を具体的にどう取るかは複雑です。SRAがそこを支援できるのは素晴らしいことです」

Smartfish ACのコラボレーション&パートナーシップ・リード、クリスティーナ・リベラーティ氏は次のように述べています。「改訂版スタンダードの意見聴取に協力するよう依頼されたことを光栄に思います。メキシコの小規模漁業コミュニティと直接現場で活動する私たちの組織の視点を共有することができました。サステナビリティ向上を意図していても、スタンダードはしばしば職人的・小規模な生産者に不利になったり、彼らを排除したりしがちです。Food Made Goodが公平性を重視し、フードサプライチェーンに関わるすべての人を考慮していることを称賛します」

Zero Foodprint Asiaのパートナーシップ・ディレクター、ジョエル・トーマス氏は次のように述べています。「栄養があり責任を持って生産された食べ物をより身近にするという同じ目標に向かう、志を同じくする組織と連携することは重要だと考えています。農家とシェフは本質的につながっており、Food Made Goodのようなスタンダードは、ホスピタリティ事業者が食べ物の出どころをより深く理解し、情報に基づいたより良い選択をする助けになります」

スコアリングと評価方法

スタンダードが扱うテーマに大きな変更はありませんが、今回の専門家による意見聴取は、更新されたスコアリング方法の改善と検証に役立ち、ホスピタリティ事業者にとって最も重要な課題をより重視するものになりました。また、さまざまな業態や規模の事業者により適したものになるよう設問とスコアリングが調整され、特定の重点分野における卓越した取り組みと業界でのリーダーシップを評価する新たなラベル「Highly Commended」も設けられました。

すべてのFMG申請は、体系的な審査プロセスを経ます。EUの事業者については、第三者監査パートナーであるIntertekによる追加の書類審査を導入します。EU事業者の認証の判断(認証取得の可否とスコア)は、SRAのチームではなく監査機関が行います。これにより、第三者検証に関するECGTの要件を満たす認証プロセスとなります。

利用体験の向上

SRAのチームは、Food Made Good スタンダードの申請体験全体を向上させるための改善も行いました。たとえば、事業者がポジティブな影響を生み出す道筋は数多くあることを踏まえ、設問全体に新たな選択肢を加え、世界中の現場で行われている多様な行動や取り組みをより的確に把握できるようにしました。

Food Made Goodのオンラインプラットフォームも全面的にリニューアル中で、申請プロセスが大幅に使いやすく直感的になります。1月以降、すべてのアカウントが新プラットフォームに移行します。

Food Made Good Global V2は2027年1月から適用されます。EUの事業者については、ECGT要件への準拠を支援するため、2026年9月末から新しい設問が導入されています。現在有効なFood Made Good認証を保有するすべての事業者は、次回の審査サイクルで新しい設問に基づいて評価されます。

ホスピタリティ業界を通じてサステナビリティを推進する

SRAは引き続き、環境を再生し社会を前進させる方針や取り組みを、先進的な事業者にとってより実現しやすいものにし、世界中で活力があり、レジリエントで、未来に適したホスピタリティ業界づくりを支援していきます。

Food Made Goodのような、確かな根拠に基づき行動を重視したフレームワークは、明確さ、運用上の指針、外部への説明責任、そして共通言語を提供し、法的要件を満たすと同時に、事業者が単なる法令遵守を超えて進むことを後押しします。今回のFood Made Good スタンダードの新版により、スタンダードは世界中のホスピタリティ事業者にとって引き続き有用なツールとなり、説明責任、透明性、意味のある行動がより求められる新たな時代へと進む業界を支えていきます。


本記事は、The Sustainable Restaurant Association(英国)の記事「Announcing the New 2027 Edition of The SRA’s Food Made Good Standard」(2026年10月5日、Jocelyn Doyle著)を翻訳したものです。

         

         

 

【インタビュー】あか牛を提供することで、阿蘇の草原の生態系と、この地で暮らす人の営みを未来へつなぐ ーアンティカ・ロカンダ・ミヤモト

【インタビュー】あか牛を提供することで、阿蘇の草原の生態系と、この地で暮らす人の営みを未来へつなぐ ーアンティカ・ロカンダ・ミヤモト

日本サステイナブル・レストラン協会は、日本の加盟店のすぐれた取り組みを、英国のThe Sustainable Restaurant Association (The SRA) と連携し、The SRAのウエブサイトやソーシャルメディアを通じて、業界のみなさまに共有しています。

2026年9月のテーマは、More Plants, Better Meat (より多くの野菜とベターミートの使用)について、SRAジャパン加盟店、アンティカ・ロカンダ・ミヤモト(熊本県熊本市)の、宮本シェフに話を伺いました。取材の全文を日本語で紹介します。

熊本市に店を構えるアンティカ・ロカンダ・ミヤモトの宮本けんしんシェフ。

宮本シェフが生産者とともに育てた牛肉を、薪火や炭を使って焼きあげるステーキを求めて全国からゲストが訪れる。

宮本シェフは、自身が考えるサステナビリティの意味についてこう語る。

私たちが取り組んでいるのは、食を通じて阿蘇の草原と人の営みを守り、次の世代につなげていくことです。

日本最大の草原、阿蘇で放牧される「あか牛」

阿蘇は、約22,000ヘクタールの面積を誇る日本一の広さを持つ大草原で、世界農業遺産や国立公園にも認定されています。野焼きや放牧、採草といった1,000年以上続く人間の営みによって、森林化が防がれ、雄大な草原の景観と独自の生態系が守られてきました。

野焼きは、毎年2-4月に行われ、5月に新しい草が芽吹きます。草原は、地上部全体で光合成が行われ、水は地下に浸透して貯水されます。

阿蘇には、500を超える種類の草が生えると言われており、牛が繁殖力の強い草を食べることによって、絶滅危惧種の草が復活する。牛がいることで生態系が保たれているのです。

また、野焼きをすることで環境が再生される効果もあります。 

また、一般的に、牛肉1kgを生産するためには、約15,000リットルの水が必要で、水資源の枯渇が問題視されます。ところが、阿蘇は、草原があることで貯水効果が高まり、九州を代表する多くの一級河川の水源になっています。「九州の水がめ」といわれているほどで、隣県の宮崎、大分の農業をも支えているといわれています。アンティカ・ロカンダ・ミヤモトが使う牛肉は、この阿蘇で放牧されているあか牛。

宮本シェフが使用するあか牛は、いまでは手がける人も少なくなった放牧で、阿蘇に自生する野草を飼料に育ちます。牧草ではなく、野草を使うのが阿蘇の伝統。

草原は、守るだけでは減っていく。 野草という自然資源を生かすこと。料理人があか牛をおいしく料理することで食べる人が増えると、さらに規模を拡大して放牧ができ、草原が活かすことができる。ボランティアや補助金などで草原を保全するということではない。おいしい牛を放牧で育てることで、一般の消費者にこの草原のしくみを伝えていく。

日本では、独自に配合した飼料を与え人の手で作り上げた、「サシ」の多い肉が、柔らかく美味しいと評価され、高値がつく。草だけを食べる放牧牛をおいしく提供するために、宮本さんは、大学や生産者と共同で放牧の方法や、補助的な飼料の与え方、独自の熟成方法などを研究しています。肉の味を高め、おいしく食べてもらうことで、放牧のあか牛の需要が途切れないようにするための努力です。

肉を食べることで草原と有明海の生態系が守られている

昔の人は環境のためではなく、田畑を耕す「暮らし」のために牛を飼い、その結果として阿蘇の美しい草原が維持されてきました。しかし、農業が機械化され、牛が農耕に使われなくなった現在では、食べるための牛を放牧し、その肉を料理人が美味しく料理することが必要です

また草原は、放牧牛がそのまま食べるだけでなく、干し草に加工したり、バイオマスの資源になったり、堆肥にしたり、今では少なくなった茅葺き屋根の茅として、伝統の建築を守るなど、多くの用途に活用されています。また、阿蘇に降った大量の雨は、火山灰や溶岩の地層でゆっくりとろ過され、カルシウムやマグネシウム、シリカなどの豊富なミネラルを含んだ湧水や地下水となります。その肥沃な水が白川や筑後川などの1級河川を通じて有明海に流れ込み、植物プランクトンや海苔の生育に欠かせない栄養をもたらしています。 

雄大な草原の自然・命の循環をコースに込めて

宮本シェフのコース料理に表現されるのは、阿蘇の千年の伝統である「野焼き」や、雄大な草原から海への命の循環を表現したストーリー。前菜からメインまで、その季節に熊本で旬を迎える野菜や食材が随所に登場します。

またコースには、宮本シェフ自身の記憶も重なります。子どもの頃に食べた祖母の手料理。有明海で放課後に友達と採りに行った貝や魚。故郷の風景。それらが確実に失われつつある風景にも心を痛め、積極的に伝統漁法の漁師さんから買い付けを行い、お皿で表現し、ゲストに訴えます。

地域の自然や伝統という大きな物語と、ひとりの料理人のパーソナルな記憶、その両方がコースのなかに織り込まれ、ただおいしく食べるだけではない、アンティカ・ロカンダ・ミヤモトならではの特別な体験をゲストに提供しています。

ベターミートを選ぶには

サステナビリティを考える時、牛肉はどうしても環境面での負荷が問題になり、使うことがためらわれます。そこでベタミートである放牧牛を調達しようとしても、その流通量は少なく、調達は簡単ではありません。ベターミートの選び方について、肉の専門家である宮本シェフはこう答えます。

 流通量の95%を占める和牛の中には、放牧牛ではありませんが、生産者が家族のように愛情を込めて大切に育てており、アニマルウェルフェアに配慮された、より良く育てられた牛を見つけることができます。またJGAP認証を取得している生産者もいます。このような生産者や認証の肉を使うことも一つの選択肢といえると思います

FOOD MADE GOOD Japan Awards2024 BEST調達賞受賞

アンティカ・ロカンダ・ミヤモトは、2024年に日本サステナブル・レストラン協会に加盟しました。しかし宮本氏は、それまで自分たちの活動を特別にサステナビリティを意識してきたわけではなかったといいます。

私たちは、何か特別にサステナビリティに取り組んできたという感覚ではありませんでした。地元で、昔ながらの方法で誠実に食材を育てている人たちから仕入れる。そういう当たり前のことを続けてきただけなのです

その取り組みをFOOD MADE GOODスタンダードによって客観的に見直した結果、最高評価となる3つ星を獲得。さらに「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2024」では、「BEST調達賞」を受賞しました。

メディアやお客様から好意的な反応をいただきました。でも、何よりうれしかったのは、私たちの仲間である生産者の皆さんが受賞を誇りに思い、一緒に喜んでくれたことです

すでに取り組んでいる店にこそ、FOOD MADE GOODスタンダードを

すでにサステナビリティに関する取り組みを行っているレストランは、すぐにでもスタンダードを始めることをお勧めすると、シェフはアドバイスする。

 自分たちの取り組みが客観的にサステナビリティに値すると高く評価されるかもしれません。また、自分たちになにが足りないのか、具体的に知ることができ、次に何を行うべきか方向性を見出すことができます

シェフ:
宮本けんしん Kenshin Miyamoto

19歳で渡伊。
イタリアの名店「ラ・テンダ・ロッサ」、「ラ・シリオラ」「ヴィッラ・ロンカッリ」などで修行。
27歳で帰国後、実家の「イタリー亭」に勤務。
31歳で「リストランテ・ミヤモト」開店。

2011年
農水省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ブロンズ賞を受賞。

2012年
熊本県農業コンクール「農業貢献賞」。
熊日新聞創立70周年記念「熊本グランドデザイン論文」にて優秀賞。
アサヒビール『九州情熱人』にて「熊本で最も熱い人大賞」。
熊本県食農ネットワーク運営委員。
「食の大地・くまもと」世界農業遺産推進研究会代表。
阿蘇地域世界農業遺産推進協議会委員。

2013年
熊本県観光審議会委員就任。
「食の大地・くまもと」親善大使へ就任。
阿蘇地域世界農業遺産協会 顧問就任。
阿蘇地域世界農業遺産認定の立役者となる。

2014年
日本政府より「2015年 ミラノ国際博覧会日本館サポーター」就任を委嘱される。
社会活動支援機構より社会活動大賞受賞。
熊本県知事より「世界農業遺産・阿蘇」認定に尽力したとして、感謝状を授与される。

2015年10月
イタリアミラノで開催されたミラノ国際博覧会にて、熊本県と阿蘇をPRする。
料理のデモンストレーションを行う。

2016年
熊本地震においての支援活動や東京でのチャリティーイベントなどを精力的にプロデュース。

2017年
JAL国内線ファーストクラスの機内食の監修。

2019年
農林水産省「料理マスターズ」シルバー賞受賞。

2020年
老舗料亭「なだ万」全店での「熊本フェア」のアドバイザー就任。

2021年
高島屋百貨店の熊本食材を活用したお中元をプロデュース。

2024年
FOOD MADE GOOD Japan Awards BEST調達賞受賞。

アンティカ・ロカンダ・ミヤモト
熊本県熊本市中央区新屋敷1丁目9−15
https://al-miyamoto.com/

FOOD MADE GOODスタンダードは、世界中で使われている、ホスピタリティ産業(飲食業、ホテル)のサステナビリティの推進度合いをはかることのできる、グローバルスタンダードです。日本サステイナブル・レストラン協会加盟店の正会員店舗は無料で参加することができます。自店のサステナビリティの推進度合いの客観的評価を得られるとともに、どこを改善したらよいのか等のアドバイスが得られます。詳しくは、日本サステイナブル・レストラン協会加盟店にお問い合わせください。

【レポート】FOOD MADE GOOD フィールドワーク in いすみ

【レポート】FOOD MADE GOOD フィールドワーク in いすみ

SRAジャパンが取り組む千葉県いすみ市の自然栽培の田んぼ「FOOD MADE GOOD Regenerative Ricefield(SRA田んぼ)」が、初めての実りの時を迎えました。

そこで、2026年8月24日(月)、SRAジャパンメンバーと、加盟店のスタッフと共同での初めての収穫作業となる「FOOD MADE GOOD フィールドワーク in いすみ」を開催しました。

千葉県は前日の大雨で、電車が運休になっており、無事に辿り着けるのか直前までやきもきしましたが、当日は驚くような晴天と暑さ! 東京、神奈川、埼玉、長野、大阪といった各地からメンバーが集結。まずは、このプログラムをご指導をいただいている、つるかめ農園の鶴渕真一さんより、段取りの説明がありました。日差しが強く、聞いているそばから背中を汗が流るほど気温も高まってきます。

みんなで歩いて田んぼに向かいます。持っているのは、大量の水やお茶。熱中症が心配されるほどの暑さ。農家さんの過酷さを作業が始まる前から感じます。

ついに到着しました、SRA田んぼです。無肥料、無農薬、何も追加することなく自然由来の力だけで米を育てる自然栽培米です。じっくり自分の力で育つ分、稲は虫や病気の影響を受けにくくたくましく育つと言われています。

いよいよ段取りを確認して、作業です!

田んぼの畦に生えている葦が、田んぼの中に入り込んでいるものをカマで刈り取ります。このままにしておくと、コンバインをかけた時に詰まってしまうため、取り除く必要があるそうです。簡単そうな作業に思いましたが、腰をかがめてカマを使うのは結構重労働。今回は大人数で取り組みましたが、これが一人や二人で行うとなると、なんと大変な作業でしょうか。

ある程度下準備のできたところで、鶴渕さんのコンバインが出動。稲はあっというまに刈り倒され、稲わらが短く切断されて落ちてきます。稲わらは貴重な有機質資源です。土に漉き込まれることで、土壌微生物が増えて土が豊かになるそうです。

今回のプログラムは、単なる「稲刈り体験」ではなく、生産現場を訪れ、プロの農家さんの実際の作業の現場を見るという目的があるため、機械で行うところはしっかり機械で行います。

稲刈りが済んだら、脱穀です。みるみるうちに軽トラックに籾が積み上がっていきます。

途中、コンバインが詰まり、鶴渕さんが手作業で詰まりを改善。作業が少し中断しましたが、時間通りに終了。
すっきり晴れやかな気持ちになります。

稲刈り、脱穀のあとは乾燥です。母屋に戻り、軽トラックから直接連結されたのは、巨大な穀物専用乾燥機。収穫したばかりの籾は、水分が多くふくまれているので、このまま保管するとカビが生えてしまいますので、すぐに乾燥機にかけられます。

午前の作業のあとは、鶴渕さんを囲んだお話の時間。

鶴渕さんからは、なぜ自然栽培に取り組むのかといった経緯につながるお話から、今の農家や農業全体が直面する課題、自然災害、米の価格の決定など、多岐にわたるお話をうかがいました。

 

お世話になった、つるかめ農園の鶴渕さん。

今回、鶴渕さんのお話を伺い感じたことは、米農家がかかえる課題が多岐にわたるということです。なかでも、特に大きいと感じたのが、経営の不安定さです。

米の価格は買い取り時になるまでわからず、生産者自身が自由に値付けできるわけではありません。また、かつては多くの人手を必要とする労働集約型の産業でしたが、現在は少人数で農作業を担うため、農業機械などへの多額の設備投資が欠かせません。資材や燃料などのコストもかかります。

これだけの時間と労力、費用をかけて米をつくっても、最後に農家の手元に残る利益がいかに少ないか。その現実を直接耳にすることができました。

では、消費者に直接販売すればよいのかというと、それも簡単ではありません。販売、発送、顧客対応といった付随業務に加え、情報発信やブランディング、マーケティングなど、生産とは異なるスキルが必要になります。当然、そこにも時間とコストがかかります。

そのほか、今回、鶴渕さんのお話を伺って特に印象に残った言葉があります。

「この美しい日本の里山の風景を守りたい。」

それは、農家が担っているのは、単に「米を生産すること」だけではないということです。在来種の種をつなぐこと。美しい水田を維持すること。農地が耕作放棄地になることを防ぎ、里山の景観を守ること。そして、地域の自然や文化を次の世代へつないでいくこと。農薬や化学肥料に頼らない農法に取り組む農家であれば、生産活動そのものが環境への負荷を抑え、水田を取り巻く生態系や地域環境を守ることにもつながっています。

つまり私たちが農家から受け取っているものは、「お米」だけではないということです。

景観、生物多様性、地域文化、農地の維持、そして次世代へつながる種や農業の知恵。
鶴渕さんは、米づくりを通してこれらを未来に繋げたいとお話されました。

こうした、いわば地域のインフラを支える役割まで農家が担っているにもかかわらず、その価値への対価が、現在の米の価格に十分に含まれているとは言い難いのではないでしょうか。

だからこそ、こうした米づくりを続ける農家に対して、飲食業だからこそできることを整理してみたいと思います。

まず考えたいのが、適正な価格で継続的に購入することです。

単発で「応援のために買う」のではなく、年間を通じて必要な量を伝え、できるだけ安定した価格で、単年でなく、継続的に購入する。いつどのくらいの量を購入するかということは、在庫を農家が持つか、飲食店が持つかということであり、とても難しいポイントになると思いますが、検討はできるのではないでしょうか。

さらに、米そのものだけではなく、農家が生み出している環境価値にも目を向け、その価値を価格や取引のなかで評価することができると良いと思います。

そして飲食店には、もう一つ大きな役割があります。

それは、農家の取り組みや米づくりの背景を、料理を通して消費者に伝えることです。

「誰がつくった米なのか」だけではなく、その田んぼが地域の環境や景観をどのように支えているのか。なぜこの米を選び、この価格で提供しているのか。料理人やサービススタッフが自分たちの言葉で伝えることで、消費者が米の本当の価値を知るきっかけをつくることができます。だからこそ、料理人と農家が直接つながり、対話を重ねることで見えてくるものがあるように思えます。

「米を卸業者から仕入れる」から、「顔の見える農家から米を買う」という関係に。そして、「農家とともに、地域の農業や環境を支える」というパートナーになることができないでしょうか。

今回の訪問をきっかけに、農家と飲食業がどのような関係を築くことができるのか、具体的なアクションを考え、提案していければとあらためて思いました。田んぼの活動に関心のある飲食関係の方は、ご一緒しませんか?いつでもSRAジャパンにご連絡ください。お待ちしております。

つるかめ農園

千葉県いすみ市深谷348
https://www.tsurukamefarm.com/