昨夜、香港で開催された「アジアの50ベストレストラン(Asia’s 50 Best Restaurants)」の授賞式。そこで、バンコクの「バーン・テパ(Baan Tepa)」が、今年の「サステナブル・レストラン賞(Sustainable Restaurant Award)」に輝くという素晴らしいニュースが飛び込んできました!なぜ彼らがこの名誉ある賞にふさわしいのか、その圧倒的な取り組みの内容をご紹介します。

バンコクのバンカピ地区に位置するバーン・テパの根底にあるのは、タイの文化と伝統への深い敬意です。ここでは、その土地固有の食材を、全く新しい発想で再構築した料理が提供されています。しかし、彼らの素晴らしさは皿の上だけにとどまりません。

彼らが掲げるのは、単に「環境への悪影響を減らす」という受動的なサステナビリティではなく、自然環境をより良い状態へと回復させる**「環境再生型(リジェネラティブ)」**モデルへの転換です。環境、生産者、そして地域の人々に積極的に価値を還元する仕組みをデザインすることで、バーン・テパは「ファインダイニング(高級料理)は責任ある形で成立する」ということを証明しています。

授賞にあたり、サステナブル・レストラン協会(SRA)のCEO、ジュリアン・カイエット=ノーブル氏は次のように称賛の言葉を贈りました。

「バーン・テパのチームの皆さん、本当におめでとうございます!小規模生産者を実質的な形で支援し、地域の生物多様性とコミュニティを支える伝統的な食材の市場を創出している彼らの姿勢は、極めて模範的です。また、あらゆる業務から『無駄』を排除する循環型の仕組みへの挑戦にも、私たちは深い感銘を受けました。ファインダイニングに、浪費は必要ないのです」

それでは、彼らの具体的な取り組みについて詳しく見ていきましょう。


1. 責任ある調達:地域と生物多様性を守る

バーン・テパの調達戦略は、レストランがいかにして地域コミュニティを支援し、伝統的な農業技術や先住民の知恵を未来へと繋いでいけるかを示しています。

  • 直接取引の拡大: タイ国内36県、70以上の小規模生産者と直接提携。仲介業者への依存を減らし、生産者に適正な利益が渡るようにしています。

  • 予約注文による安定: 季節ごとの事前発注計画により、生産者に安定した需要を提供し、過剰生産のプレッシャーを軽減しています。

  • 国産率95%: 輸入食材はキャビアとオーストラリア産和牛の2点のみ。それらもメインではなく少量使用にとどめることで、輸送に伴う二酸化炭素排出量(カーボンフットプリント)を抑え、国内生産者を優先しています。

  • 希少品種の価値向上: 在来種の米や野生のハーブ、タイ北部の伝統的な発酵食品である**「トゥア・ナオ(Tua Nao)」**(※タイ版の納豆のようなもの)など、市場に出回りにくい食材を積極的にメニューに取り入れ、生物多様性に市場価値を与えています。

  • 独自の食材マップ: 200種類以上のタイの食材を、産地、旬、生産者ごとに追跡するシステムを構築。これにより、旬に合わせた最適なメニュー構成を可能にしています。


2. 社会的サステナビリティ:知識のプラットフォームとして

バーン・テパは、単に食事をする場所ではなく、知識の交換やコミュニティの繋がりの場として機能しています。

  • 生産者との交流: 毎月「Meet the Producers」セッションを開催。農家や漁師を店に招き、全スタッフに向けて食材や生産方法をプレゼンしてもらいます。これにより、スタッフの知識が深まるだけでなく、作り手と使い手の間に直接的な絆が生まれます。

  • 徹底したスタッフ教育: 全スタッフに毎週少なくとも4時間の研修を実施。キッチン、庭、サービスの役割をローテーションで経験することで、フードシステム全体の理解を深めます。

  • 地域貢献: 少なくとも年1回、全社を挙げたボランティアデーを実施しています。


3. 環境負荷の低減:ゴミを「デザイン」で解決する

「高級キッチンのゴミ問題」に対して、バーン・テパは非常にクリエイティブなアプローチをとっています。

  • 100%オンサイト処理: 有機廃棄物の100%を敷地内で処理する、完全なインハウス循環システムを構築。

  • 廃棄物専門のR&D(研究開発)担当: 驚くべきことに、彼らは「発酵担当」と「余剰食材R&D担当」という専門ポストを設けています。

    • 果物の皮 → 酢やコンブチャ(発酵茶)へ

    • ハーブの茎 → オイルやパウダーへ

    • ネギの端材 → 調味料へ

    • 魚介の殻 → ストック(出汁)へ
      このように、従来「ゴミ」とされていたものを「新しい食材のストリーム(流れ)」へと変えています。

  • スタッフミールの改革: 以前はスタッフの食べ残しが課題でしたが、ビュッフェ形式から「適切なポーションの提供」に切り替えることで、満足度は維持したまま廃棄量を劇的に減らしました。

  • リサイクルをスタッフの福利厚生に: 非有機廃棄物を10カテゴリーに分別。リサイクル業者への売却で得た収益は、スタッフの福利厚生費に充てられます。これにより、分別の徹底が自分たちの利益に直結し、チーム全体のモチベーションを高めています。


バーン・テパのチームによる今回の受賞は、まさに努力の賜物です。彼らの取り組みは、タイの、そして世界のレストラン業界にとっての輝ける道標となるでしょう。

本当におめでとうございます!

参照サイト:https://thesra.org/news-insights/news/why-baan-tepa-won-the-sustainability-award-at-asia-s-50-best-restaurants/