【英国SRA】サステナブルな一口ニュース(和訳):2023年7月19日発行版

【英国SRA】サステナブルな一口ニュース(和訳):2023年7月19日発行版

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英国SRAでは、グローバルに、食品、サステナビリティ、ホスピタリティに関する「一口ニュース」を隔週でお届けしています。

  • 本日のアミューズ
    ● 地球の丸焼きで記録的な高温となる1週間
  • ● 英国のホスピタリティ業界に緊急対策を求める新たな報告書
    ● グリーンウォッシュはついに時代遅れになった?
    ● 2030年までのEU食品廃棄物目標
    ● 消費者の選択にレストランが影響を与えるという新たな研究結果
    ● 持続可能なプラスチックの代替品の可能性

そして、メインディッシュは・・・

地球の丸焼きで記録的な高温となる1週間

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、世界の平均気温を非公式に分析した結果、7月5日(水)までの7日間がこれまでの記録で最も暑い週であったことが分かり「気候変動は制御不能である」と発言しました。

メイン大学の Climate Reanalyzerによると、この1週間の平均気温は、過去44年間の記録を0.04℃上回り、最も気温が高い週となりました。

世界気象機関、気候局ディレクターのクリストファー・ヒューイット教授は、「我々は未知の領域におり、エルニーニョがさらに発達して、これらの影響が2024年まで続くのであれば、これまでの記録がさらに更新されると思われます。これは地球にとって懸念すべきニュースです」と発言しました。

この気候変動の危機を食い止めるには、あらゆる分野で思い切った行動を取ることが必要であり、私たちに残された時間は少なくなってきています。6月末に開催された 気候イノベーション・フォーラム で、ロンドン市長のサディク・カーン氏は、地球温暖化を1.5℃以内に抑えるまでに、あと6年と24日しかないことを警告する象徴として、気候時計のスイッチを入れました。このニュースレターをお届けしている時点では、あと6年と2日に迫っています。

先週、ウィンザー城でナイトの称号を授与されたCOP26前議長のアロック・シャルマ卿は、世界は気温上昇を抑制する方向には進んでいないと強調しました。「現実問題として、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑えるためには、我々はもっと多くのことをしなければなりません。また、各国はすでに約束した取り組みをさらに加速させなければなりません。」

これから6年と2日の間に、私たちがいかに行動するかによって、今生きているすべての人間、そしてこれから生まれてくるすべての人間にとって、将来の生活がどうなるかが決まります。今こそ、すべての政府、政策立案者、 産業界 が立ち上がる時です。それに関連して、このようなニュースもあります・・・


英国のホスピタリティ業界はネットゼロの未来のために緊急対応をすべき

新たに出された業界レポート、 Race to Net Zeroによると英国のホスピタリティ業界は、低炭素経済への移行に向けて早急に対応をしなければなりません。企業、政府、投資家のすべてが、この変化を加速するために早急に行動する必要があります。

英国の温室効果ガス排出量のうち、ホスピタリティ業界からのものは最大15%と言われていますが、コロナ禍や英国のEU離脱の影響、高インフレ、エネルギー価格の上昇、生活費高騰など、ネットゼロへの道のりは多くの障害に直面しています。

Net Zero NowとClarasysがスポンサーとなり、ホスピタリティ企業が共同で資金提供して作成されたこのレポートは、このセクターが取り組むべき主な優先事項を特定しています:ネットゼロの商業的事例をよりよく理解すること、ネットゼロの投資にもっと多くの資本を配分すること、バリューチェーン全体の協力体制を改善することです。

また、エネルギー効率や廃棄物削減のような、小規模でも成果がすぐに見える取り組み実施することで、かなりの量の排出削減が達成できることを強調し、我々サステナブル・レストラン協会や、ゼロ・カーボン・フォーラム、ネットゼロ・ホスピタリティ・イニシアティブなどが、レストランが簡単に入手できる資料を紹介しています。

このレポートは、事業者、政府、業界団体、サプライヤー、投資家に対し、具体的な行動を呼びかけています。ホスピタリティ事業者に求められる行動は以下の通りです:
● チームやステークホルダーとともにネットゼロ目標を設定すること。
● 各課題を解決する最適な方法を見つけるために、協力し、ベストプラクティスを共有すること。

Peach Pubsの創設者であり、Race to Net Zero共同グループの立役者であるヘイミッシュ・ストッダートはこのように言いました。「私が1店目のパブをオープンしたのは、気候変動は人為的なものであると世界の科学者が結論づけた直後でした。それから20年、排出量は増え続けています。英国政府は2050年のネットゼロ目標を掲げており、論点は、ホスピタリティ業界がネットゼロを実現するかどうかではなく、いつ実現するかということになっています。大胆に前進をしているホスピタリティ企業がいくつかありますが、私たちはさらに迅速に行動しなくてはなりません。 これは業界にとって、コスト削減、顧客の取り込み、将来の規制から身を守るためのビジネスチャンスです。 私たちはそのチャンスをつかまなければいけません。」

Net Zero Now のエグゼクティブ・ディレクターであるサイモン・ヘプナーは、次のように言っています。 「英国のパブ、バー、レストランは、私たちのコミュニティや交流の中心であり、私たち全員がより持続可能な経済への道を歩む上で、非常に大きな影響力を持っています。 Net Zero Nowは、コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズやペルノ・リカールとともに、ネット・ゼロ・ホスピタリティ・イニシアチブを立ち上げ、このセクターのすべての事業者が気候変動に取り組み、結果的にビジネスの成功に繋げることができる支援を提供しています。私たちは、各企業がこの取り組みに参加することを強く求めます。」

 

グリーンウォッシュはついに時代遅れになった?

欧州委員会が提案した「グリーンクレーム指令 」(「環境にやさしい」、「エコ」、「自然」といった誤解を招くような企業の主張、さらにはカーボンオフセット制度のみに基づく環境訴求を禁止する新たなルール)により、グリーンウォッシュは急速に過去のものとなりつつあります。 

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス&ポリティカル・サイエンスにおける、気候変動と環境に関する研究機関、グランサム・リサーチ・インスティテュートの 新しい研究報告 によると、企業に対するクライメートウォッシュ(気候変動に配慮しているように見せかける表面だけのアピール)訴訟の増加によって、この状況はさらに悪化しています。著者のジョアナ・セッツァーとケイト・ハイアムは、ここ数年、このような訴訟が爆発的に増加していると説明し「近年発生しているクライメートウォッシュ訴訟の中で最も顕著なものは、企業の気候変動に関するコミットメントが適切な計画や方針に裏付けられていない場合、その真実性を争うものになっています。」

これまでずっと気候危機は、口先だけの言葉ではなく、実際的な行動を必要としてきました。意思決定をする際に、持続可能性がかつてないほど重要な要素となっている今、消費者も同じことを求めています。あらゆる業界において、企業が現実的、具体的かつ測定可能 な取り組みを行い、そのことがオープンで透明性のある形で報告される必要があります。

 

2030年までのEU食品廃棄物目標

持続可能な開発目標12.3に対するEUの進展を加速させるため、欧州委員会は、「廃棄物枠組み指令の改訂案」 の中で、加盟国が2030年までに達成すべき法的拘束力のある食品廃棄物削減目標を提案しています。

具体的には、加盟国は2030年末までに食品廃棄物を削減するために必要な措置を講じることが求められています:
● 加工および製造において10%の削減
● 小売と消費において合算で30%の削減(人口一人当たり)。ここでいう「消費」には、一般家庭だけでなく、レストランなどの外食産業も含まれる。
このことは、英国においても同様の目標を実施するよう圧力がかかりそうです。

この提案は、2027年末までに加盟国の進捗状況を公式にレビューすることを定めており、EUがさらに高い目標を設定できることが証拠で示されれば、目標を引き上げる可能性もあります。この新たな目標であっても、まだSDGs12.3で規定されている50%削減には届かない状況であることを考えると、これは取り組む意味があります。

もしあなたのレストランが食品廃棄物の測定と削減に取り組んでいないのであれば、今こそ始める時です。この法律が施行されれば、あなたのお店は時代をリードすることができるだけでなく、食品廃棄物を削減することで、注文や廃棄にかかるコストを節約し、厨房の創造性が高まり、環境意識の高い消費者へのセールスポイントになるなど、ビジネスにも実益をもたらすことができます。

今こそ、メニューに変化をもたらすべき時

「選択の錯覚: あなたが昼食に食べるものはすでに誰かが決めている」というタイトルの新しいレポート では、消費習慣が個人の選択によるものではなく、食環境によるものであることを強調しています。

Eurogroup for Animals、欧州消費者機構(BEUC)、European Public Health Alliance が参加する「Put Change on the Menu(メニューに変化を)」と名付けたプロジェクトの一環として作成したこの報告書は、食環境が消費者の選択に多大な影響を及ぼしていることを示しています。特に、現在の食環境によって、消費者は不健康で持続可能でない食品を消費する方向に押しやられていると指摘し、政策立案者に対し、植物由来の食材を多く使い、肉は「より少なく、より良い品質のもの」を使う健康的な食生活を、消費者がもっと簡単に選択できるようにするよう求めました。

ここ数週間で発表された、複数の報告書や研究結果では、食品業界が消費者の選択に及ぼす影響力について、そして、世界の食生活がより健康的で持続可能ものになるよう良い変化をもたらすために、この影響力をどう活用できるかが強調されています。 さらに多くのホスピタリティ企業がこの影響力を認識していけば、次に考えるべき問題は、それをどのように行使するかということです。先週の記事でも議論したように、力とは責任をもつことです。私たちは、レストランやあらゆるタイプの食環境において、美味しく、栄養があり、環境的に持続可能な料理をメニューの中で優先する必要があります。

締めのデザート

持続可能なプラスチックの代替品の可能性

香港中文大学(CUHK)の科学者チームが、バクテリアが生成する有機化合物であるバクテリアセルロースを利用して、食べても無害で生分解可能な新素材を開発しました。チームによれば、これはプラスチック包装の代替となる可能性があるということです。

この研究の責任著者であるCUHK 化学科のトー・ガイ教授の説明によると、 バクテリアセルロースはその高い汎用性により、プラスチック包装の代替素材になる可能性があるとのことです。この素材は、水に対する安定性、透明性、耐油性があることが示されました。また、このフィルムは1~2ヶ月で完全に生分解可能なことも分かりました。これは、他のバイオプラスチックよりもはるかに早く、しかも処置は不要です。

植物由来のセルロースとは異なり、バクテリア・セルロースは作物を収穫しなくても製造できるため、より持続可能性が高くなります。「この製造方法は森林伐採や生息地の減少などを引き起こさないため、バクテリア・セルロースは植物セルロースに代わる、より持続可能で環境に優しい素材となります。この素材は食べても無害であり、ウミガメやその他の海獣が摂取しても安全であり、海洋に水生毒性をもたらすことはありません」 とガイ教授は説明しています。

 

 

 

 

 

 

 

飲食店から紙パックのリサイクルを広げるプロジェクト 「Food Made Good紙パック50アクション」

飲食店から紙パックのリサイクルを広げるプロジェクト 「Food Made Good紙パック50アクション」

リサイクル率を現状の40%から、50%達成を目指して!

飲食店から紙パックのリサイクルを広げるプロジェクト

「Food Made Good紙パック50アクション」

7月31日より開催

日本サステイナブル・レストラン協会 加盟店10店舗が参加!

一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会(本社:東京都渋谷区、代表理事:下田屋 毅、以下SRAジャパン)が、全国牛乳容器環境協議会(以下 容環協)と共催で、2023年731日(月)から830日(水)までの間、紙パックを通じて、持続可能な社会づくりに貢献するため、飲食店を中心とした紙パックのリサイクルを広げるプロジェクト「Food Made Good紙パック50アクション」を実施いたします。

Food Made Good紙パック50アクション 概要

Food Made Good紙パック50アクション」は、紙パックを通じて、持続可能な社会づくりに貢献するため、飲食店で燃えるゴミとして捨てられてしまうことが多い紙パックを、優良な資源であると認識していただく啓発活動、および、紙パックの回収、およびその定着へ結び付けた活動を行うものです。上質な資源である紙パックのリサイクル率を、現状の40%から50%にひき上げることで、CO2を削減し、資源循環を増やすことを長期的な目標とし、プロジェクト実施期間に、飲食店が地域のハブとなり、実際に回収を行い、継続的な回収につながる調査、支援体制を確立させることを目指します。 

 

開催概要

プロジェクト名称     :「Food Made Good紙パック50アクション」
開催期間           2023731日(月)から830日(水)
実施エリア:兵庫県芦屋市、大阪府東大阪市、東京都練馬区・千代田区、神奈川県厚木市・茅ヶ崎市、愛知県名古屋市)

Food Made Good紙パック50アクション 実施飲食店一覧

兵庫県芦屋市

ボッデガブルー

兵庫県芦屋市

BAR芦屋日記

大阪府東大阪市

お野菜料理 ふれんちん

東京都千代田区

サンス・エ・サヴール

神奈川県厚木市

フィーコディンディア

神奈川県茅ヶ崎市

ル・ニコ・ア・オーミナミ

愛知県名古屋市

ビストロ イナシュヴェ

プロジェクト開始に先立ち、イベントで紙パックの回収およびリサイクルについてのアンケートを実施

Food Made Good紙パック50アクション」に先立ち、東京都練馬区で開催されましたイベント、「PLAY!高架下」に、SRAジャパンが出展し、紙パックの回収と、紙パックのリサイクルに関するアンケートを実施しました。

 

Food Made Good紙パック50アクション」@PLAY!高架下

開催日時:202378日(土)10時から15

開催場所:西武鉄道池袋線 石神井公園駅と大泉学園駅間の高架下

『高架下の小さな広場』 (石神井公園駅から徒歩約7)

イベント主催:株式会社西武リアルティソリューションズ(本社:東京都豊島区、代表取締役社長:齊藤 朝秀)

プロジェクト期間中にも、回収イベントを実施

Food Made Good紙パック50アクション」開催期間中の820日(日)は、ル・ニコ・ア・オーミナミ(神奈川県茅ヶ崎市)におきまして、「ル・ニコの夏祭り」が開催されます。「ル・ニコの夏祭り」では、少し昭和のノスタルジーを感じるいろんな露店、ル・ニコやその他ご協力いただく近隣の飲食店の協力による様々なジャンルのお料理をリーズナブルにお楽しみいただける、1日限りのフードコートが出現します。世代を問わず、たくさんの人達に楽しんでいただけるお祭りです。こちらの会場で、飲食店、また一般の方からの紙パックの持ち込みを受け付けています。

 

ル・ニコの夏祭り

開催日時:2023820日(日)1130分から2130

会場:ル・ニコ・ア・オーミナミ(神奈川県茅ヶ崎市柳島2-9-17

紙パックの持ち込みについて:洗って開いて乾かした紙パック6枚(6L分)と、トイレットペーパー1個を交換いたします。会場の回収ボックスの担当にお声がけの上、回収ボックスに紙パックを入れてください。

主催:ル・ニコ・ア・オーミナミ

紙パック回収協力:SRAジャパン

参加飲食店は、Food Made Goodアワード2023にノミネート

Food Made Good紙パック50アクション」参加店舗は、Food Made Good Awardsの特別賞「ベストリサイクル賞」にノミネートされます。

Food Made Good Awardsとは、サステナビリティを推進してきたSRAジャパン加盟レストランの成功を祝い、継続的な変化を求めることを目的として実施します。飲食産業の持続可能性を向上させるためのリーダーシップ、イニシアチブと革新的なアイデアを表彰します。

 

開催概要

開催日時:20231120日(月)

アワードの種類:大賞 / 部門賞 調達・社会・環境 / ベストリサイクル賞、他

エントリー対象:SRAジャパン加盟レストラン(20237月現在50店舗)

全国牛乳容器環境協議会について

全国乳容器環境協議会(略称:容環協))は、紙パックのリサイクルを促進している事業者団体で、乳業メーカーや紙パックメーカー、再生紙メーカー、古紙問屋、業界団体など約140社・組織から構成されている組織です。

容環協の取組内容

  1. 紙パックリサイクルの現状把握、ステークホルダーとのコミュニケーション
  2. 回収率向上のための啓発
  3. 紙パックの回収・再生インフラの整備支援
  4. 次世代を担う子どもたちの環境マインド向上
  5. 活動への理解促進、活動の公表と評価

【問い合わせ】 info@yokankyo.jp

「FoodMadeGood紙パック50アクション」について

【お問い合わせ】

一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会 info@foodmadegood.jp 

 プレスリリースダウンロード

千年農業をめざす「ちとせアグリベース」八ヶ岳を訪問して

千年農業をめざす「ちとせアグリベース」八ヶ岳を訪問して

日本サステイナブル・レストラン協会(SRAジャパン)では、生産者の現場で飲食店レストラン・企業パートナー様と共に学びあう機会とつながりを大切にしています。今回は、農業と畜産業におけるサステナブルな取り組みについて理解を深めるため、2023711日(火)にSRAジャパン加盟店のザ・キャピトルホテル東急の、「オールディダイニングORIGAMI」「日本料理 水簾」、企業パートナーのニッコー株式会社、その他、関係・ご支援をいただいている会社の方々とともに、長野県茅野市八ヶ岳の麓で農業と畜産業を運営するちとせグループの「ちとせアグリベース」を訪問いたしました。

訪問先のちとせアグリベース代表の三本さんより、世界のバイオ企業である「ちとせグループの概要」、全国の農業畜産大学の総本山・八ヶ岳中央農業実践大学校との連携と共に2023年4月29日(土)に開業された「ちとせアグリベース」の概要をご説明頂いた後、農場と畜産場をまわりながら解説頂きました。

ちとせグループは微生物をはじめ生き物の力を活用したバイオテクノロジーの可能性を追求することで、医薬品、食品、化学品、農業、エネルギーなど、化石資源を基点に構築されている産業構造において、光合成を基点に組み上げ、循環型の社会に近づけるための研究開発・事業開発を行っています。特に、藻類培養においては、陸上植物と比較し、オイル収量・タンパク質収量に優れ、かつCO2削減に貢献することから、スーパーフード及びバイオ燃料として期待されています。
農業分野については、2015年からマレーシアにおいて、いちごやトマトなどの栽培をはじめておられます。

日本においても、千年先まで生き物たちが豊かに暮らせる「千年農業」を実践・確立すべく、今回訪問した八ヶ岳アグリベースが試験場基地としてはじまりました。経済合理性を成立させながら、技術を社会に展開し、千年農業を実践できる人材を輩出することも目的としておられます。

森林を含む約260haを誇る広大な敷地内にある、①農園エリア ②放牧畜産エリア ③飼育エリア・加工所・直売所 ④新型堆肥化プラント 計4か所の一部を視察しました。

出典:ちとせグループ

 

① 農園エリア
将来的には農業体験エリアとなる15haの一部・9haの農園では、標高高低差100mもあり肥料が上流から下流に流れる難しさもありながら、さつまいも・ブロッコリー・コーン・じゃがいも・すいかが植えられていました。日本における定義があいまいな部分も多い「オーガニック」にはこだわらず、収量を優先し、現時点では化学肥料にも一部頼らざるを得ないこともあるとのことでした。ただし、除草剤は使用せず、草の菌を活用した緑肥や園内からでる牛糞たい肥を基本利用しています。

写真:奥:標高高低差 左:マルチを利用した直播コーン 右:マルチ無し

  • ② 放牧畜産エリア

放牧乳牛と放牧養鶏を拝見しました。(養豚場は山間部にあり視察不可)

放牧乳牛は、ホルスタイン60頭、ジャージーが10頭、今は贅沢にも2種類ミックスの牛乳を直売所で販売。視察時は、2歳ぐらいまでの若い牛たちが、放牧に慣れてもらうためのトレーニング中とのことで、ゆったりと過ごしていました。エサ代などが高騰している関係で、採算が合わず牛一頭1000円の価値にしかならない現状や課題も伺いました。

放牧養鶏エリアでは、山梨県甲斐市の山懐・黒富士農場さんの飼養技術等を用い、共同で産業動物福祉を念頭においた持続可能な放牧養鶏を実践されていらっしゃいます。1万羽のボリスブラウン(鶏の品種)が、定期的に外に出られる仕組み、地元廃材を利用した発酵飼料を使用しているなどの説明を伺いました。

また、卵の集積及び管理所の仕組みも工夫があり、直売所で無洗卵も購入することができます。無洗卵は産み落とされてから洗われていないものを指します。産卵直後の殻には、クチクラ層という層があり、孵化するまでの間、細菌の進入を防ぐ役割があります。一般的な卵は、洗浄とともにクチクラ層も失われてしまいます。無洗卵の場合は、本来のバリア機能が備わっているため、一般の卵より日持ちします。一方で、衛生管理は必要となります。

③飼育エリア・加工所・直売所 

飼育エリアでは、ヤギ・ポニーなどがおり観光農場の雰囲気で、訪れたファミリーやリピーターさんにとって看板娘・息子のような役割になっているとのこと。将来、農園における除草の役割としてヤギの活用は検討するそうです。

近くには、搾りたて牛乳を活用した牛乳・チーズ・ヨーグルト・アイスクリームを製造する工房と販売する直売所、青々とした芝生広場もあり、高原らしいさわやかな風が訪れた人を癒してくれます。

工房においては、現在のところ、稼働すると採算が合わない課題をかかえています。例えば、牛乳1本製造するには500/1ℓかかりますが、現状275/1ℓで販売。7-10%はジャージー乳が入るため破格の値段で提供、これまでのファンを考慮され、お値段据え置きでやっておられます。

上段が無洗卵

④ 新型堆肥化プラント

 最後に、循環型農業を牽引する姿勢のひとつとして、新型堆肥化プラント「ちとせバイオマス変換プラント」の設置エリア。校内の飼育動物から回収される糞尿やもみ殻を有機肥料として加工。特徴的な樽型デザインや、内部のバイオマス変換の状態をリアルタイムで表示する仕掛けもあり、可視化が難しい微生物の世界の一部が分かりやすく展示されています。

今回訪問させていただき、農業と畜産業における高齢化をはじめ慣行農法と飼育の限界と課題について、微生物をはじめ生命の相互扶助作用を活用し、コントロールからマネージメントの概念を用いた循環型環境社会へと導く技術と人材の開発を、経済性の両立と共に進められる点において、日本の農業を支えてくださる会社の一つであり、今後も引き続き皆様と共に訪問し、サステナビリティの理解を深めてまいりたいと考えております。

今回の視察に際し、ちとせグループ様、またちとせアグリベース代表の三本さん、徳竹さんをはじめ関係者の皆様のご準備、ご対応に心から感謝申し上げます。