今年は、全国の若手シェフや調理師・製菓衛生師養成施設の学生から、
「サステナブル・シーフード」をテーマに未来のレシピ31件のご応募いただき、
その中でも特に優れたファイナリストを10名選出させていただきました。
榊原萌花さん(学校法人 糸菊学園 名古屋調理師専門学校)
スズキのポレンタ
私は、魚を3枚卸にした後の骨を見て、身がついているのに捨ててしまうのはもったいないな、と思っていました。そこで、通常なら捨てられてしまう部分を活用できるメニューを考えました。
スズキは私の好きな魚でレシピ考案のために調べていると、「透明度が高く一見きれいな水域であっても工場排水などが流れ出る汚染水域で捕獲したものは内臓を食べることを避けた方が無難・魚肉であっても継続的な摂取は避ける方が無難」との記事を見て大変ショックを受けました。
スズキは本来アラ、肝臓・心臓・腸・皮・骨まで捨てる部分がほとんどなく無駄なく食べられるはずの魚なのに、人間の出している汚染水の影響で魚だけでなく巡り巡って人間に悪影響を及ぼしているのです。
また、日本人には欠かせない“のり”などの海産資源が温暖化の影響を受けて収穫量が減っているなどの問題があることを知り、身近な資源を通して少しでも多くの方にこの問題を知っていただきたいと思います。
使用したシーフードについて
スズキ(アラ)
・小型底引き網/漁獲海域:伊勢湾/天然/『あいちの四季の魚』として秋の魚のひとつに選ばれており、大きいものでは全長1mくらいにもなる伊勢湾で最も大きい魚。漁獲量は全国第3位で旬の秋からは価格も安くなり親しみやすい魚。
黒のり
・漁獲海域:愛知県知多半島/養殖/木曽三川からの真水と海水がうまく調和ができており、品質及び味等において優れた製品が生産される地域での養殖。
材料リスト
アラのコンフィ(※)
・スズキのアラ/400g(愛知県知多郡南知多町産)**身を撮った後の、廃棄部位
・オリーブオイル/100g(愛知県常滑市産)**「知多半島オリーブ」使用
・タイム/1g(自家栽培(学校庭園))**育てやすいハーブを自家栽培をすることにより、使いたい時に使う量だけ収穫でき無駄がない。
・ニンニク/5g(愛知県碧南市産)**ファーマーズ マーケット
ポレンタ
・アラから取ったスズキの身(※)/150g(愛知県知多郡南知多町産)*上記のアラから取り分けたもの*
・ポレンタ粉/100g(北海道産)**国産のトウモロコシから作られたもの
・水/500ml(名古屋市産)**
・コンフィ後のオリーブオイル(※)/50g(産)*上記の自家製加工品*
・黒のリ/3g(愛知県知多半島産)**県の取り組みである地産地消ネットワーク会員・立石海苔店/知多鬼崎産使用
ブイヤベースソース
・コンフィ後のアラ/骨等(※)/150g(愛知県知多郡南知多町産)*上記の身を取り分けた残り*
・人参/30g(愛知県碧南市産)**ファーマーズ マーケット / 調理過程で出た破棄する部分を使用
・玉葱/30g(愛知県碧南市産)**ファーマーズ マーケット / 調理過程で出た破棄する部分を使用
・セロリ/10g(愛知県碧南市産)**ファーマーズ マーケット / 調理過程で出た破棄する部分を使用
・パセリの軸/10g(自家栽培(学校庭園))**育てやすいハーブを自家栽培をすることにより、使いたい時に使う量だけ収穫でき無駄がない。
・エシャロット/40g(北海道産産)**
・ローリエ/0.5g(自家栽培(学校庭園))**育てやすいハーブを自家栽培をすることにより、使いたい時に使う量だけ収穫でき無駄がない。
・水/600ml(名古屋市産)**
・サフラン/0.1g(大分県産)**
・トマトペースト/5.5g(イタリア産)**
・片栗粉/10g(愛知県碧南市産)**県内で近い加工地
・マイクロハーブ(各種)/8g(三重県四日市市産)**無駄なエネルギー消費を抑制し環境負荷の低減を目指している「村上農園」のハーブ
・バター/15g(北海道産)**
共有食材
・塩/10g(愛知県知多半島産)**自然塩「美浜の塩」使用
・胡椒/2g(カンボジア産産)**自然農法・オーガニック・フェアトレード精神を貫く県内の会社「クラタペッパー」使用
調理手順
下準備
・スズキのアラを掃除し、頭は半割りにし、骨は3等分ほどにカットして水気を拭き取っておく。
・ソースに使う野菜(人参、セロリ、エシャロット、玉葱)をスライスする。
アラのコンフィ(※)
・掃除したアラに塩を振ってしばらく置き、水気をペーパーでしっかりと拭き取る。
・真空袋にアラとオリーブオイル、タイム、半割にしたニンニクを入れて真空にし、湯煎で火を通す。(ガスコンロ弱火20分)湯煎のお湯の量は、真空袋が浸かる程度の量にして、加熱の際の熱量を極力抑えた。
・身、骨、皮などの廃棄部位、オイルに分ける。
ポレンタ
・水とポレンタ粉を鍋に合わせて練りながら加熱する。(ガスコンロ強火3分)
・練り上げながら、コンフィ後のオリーブオイル、塩を加え味を調える。(ガスコンロ弱火20分)
・アラから取ったスズキの身(※)、黒のリを混ぜ合わせる。
・バターを塗った型に詰めて、氷水で冷やし固める。流水で粗熱を取った後、氷水を使用
・固まったら1人分に切り分ける。
・コンフィ後のオリーブオイル、バターを使って全面焼き色がつくようにフライパンで焼く。(ガスコンロ中火5分)
ブイヤベースソース
・ニンニク、人参、セロリ、エシャロット、玉ねぎ、パセリの軸を鍋で炒める。(ガスコンロ弱火3分)
・コンフィ後のアラ(※)も加えて炒める。(ガスコンロ中火3分)
・水、ローリエを加えて煮込み、トマトペーストを加えて、濾す。(ガスコンロ中火10分)
・半量になるまで煮詰め、塩、胡椒で味を調えて水溶き片栗粉を加えて濃度調整をする。(ガスコンロ中火5分)
仕上げ
・器にポレンタを置き、上にマイクロハーブを添え、周りにソースを流しオリーブオイルを配置する。
及川健一さん(XEX東京 Salvatore Cuomo Bros.)
いすみ産鮑の冷製タルトラ ~千葉の食材とその循環~
千葉県いすみ市で陸上養殖されている鮑。いすみ市はもともとマダカアワビの産地として知られていましたが、現在では漁獲量もほぼゼロになり絶滅の危機にあります。 「アワビの街」を復興させるべく海水の品質管理や海に近い環境を作りストレスなく育てられる鮑は、一部を海に放流して自然界での成長を促し排水はノリの養殖に活用しています。
ノリが浄化装置の役割を果たし綺麗になった水が鮑の水槽へ戻る独自の循環型システムはサステナブルであり、千葉県出身である料理人として地元の素晴らしい食材や文化、それを繋ぐ人々の想いを広めたいと思いメイン食材に選びました。
鮑は素材を活かしてじっくり蒸し上げ、その肝とノリ、幼い頃から食べていた地元の卵やヨーグルトで作った冷製のタルトラ(茶碗蒸し)。野菜は地元の農園からその時期のおすすめを頂きお浸しに。
ヨーグルトから出たホエーとミントマリーゴールドの爽やかな泡を添えて海と陸の循環をイメージしました。 限りある水産資源を守る人々の取り組みを料理人の力で一皿に変え、その想いを発信し、やがて日本の水産資源が回復する事を願います。
使用したシーフードについて
鮑
・陸上養殖(アクアポニックス)/漁獲海域:千葉県いすみ市/養殖/品質管理した海水を使用し海に近い環境で鮑を養殖することで、ストレスがかからず死亡率を減らすことでより多くの成貝の出荷に成功。また一部の稚貝を海に放流し、自然界での成長促進を目指している。
スジ海苔(粉末)
・陸上養殖(アクアポニックス)/漁獲海域:千葉県いすみ市/養殖/水産養殖と水耕栽培を同じシステムで行う”アクアポニックス”を活用している。鮑養殖の排水を利用してノリの養殖することでノリが浄化装置の役割を果たし、きれいになった水が再び鮑の水槽に戻る。汚水が出ずに生産性は向上し、コスト削減にも繋がる独自の養殖システムを実現。
材料リスト
貝昆布出汁
・水/500g(産)**
・羅臼昆布/7.5g(北海道産)**
・干し貝柱/15g(北海道産)**
水切りヨーグルト(作りやすい分量)
・ヨーグルト/200g(千葉県成田市産)**酪農発祥の地ともいわれる千葉県。明治20年から牛乳を作り続けている。(成田ゆめ牧場)
タルトラ(作りやすい分量)
・貝昆布出汁/120g(産)上記の自家製加工品
・鶏卵/1個(千葉県匝瑳市産)地元近くで鶏糞を使用して育てた飼料米をエサにし、食の循環を実現している。(九十九里ファーム)
・水切りヨーグルト/40g(産)原材料4を半日水切りしたもの
・鮑の肝、ひも/1個(千葉県いすみ市産)いすみ市大原で陸上養殖されたもの。海水かけ流し方式によりストレスフリーで育つ鮑の肝は臭みが全くない。(A’Culture)
・塩/2g(沖縄県産)
・鮎魚醬/3g(大分県日田市産)
・スジ青のり粉末/1g(千葉県いすみ市産)**鮑養殖時の排水を利用して養殖(アクアポニックス)されたスジ青のり(A’Culture)
お浸し(作りやすい分量)
・太オクラ/1個(千葉県山武市産)地元近くでストレスなく育った野菜。その時期のおすすめを直送して頂いた中から使用。(サンバファーム)
・甘長唐辛子/1本(千葉県山武市産)地元近くでストレスなく育った野菜。その時期のおすすめを直送して頂いた中から使用。(サンバファーム)
・貝昆布出汁/100g(産)
・鮎魚醬/10g(大分県日田市産)
ミントマリーゴールドの泡(作りやすい分量)
・貝昆布出汁/100g(産)**
・ヨーグルトのホエー/100g(産)原材料7の後に残ったものヨーグルトを水切りした際に出たものをベースにした泡状のアクセントで千葉の海と食材の循環をイメージ。
・ミントマリーゴールド/4g(千葉県山武市産)**地元近くでストレスなく育った野菜。その時期のおすすめを直送して頂いた中から使用。(サンバファーム)
・シュクロエミュル/3.6g(日本産)ショ糖脂肪酸エステル100%
鮑
・鮑/12g(千葉県いすみ市産)**いすみ市大原で陸上養殖(アクアポニックス)されたもの。海水かけ流し方式によりストレスなく海に近い環境で育てられた鮑。(A’Culture)
仕上げ
・エクストラバージンオリーブオイル/2g(イタリア プーリア州産)ペランザーナ種100%
調理手順
貝昆布出汁
・耐熱容器に水、羅臼昆布、干し貝柱を入れ一晩おいておく。加熱時間を減らすために常温で一晩おく。
・スチームコンベクション70℃で45分煮出す。シノワにリードペーパーをかまし、パッセする。
水切りヨーグルト
・ボウルにザル、布巾をセットしヨーグルトを入れる。布巾で包み上から重石をして半日水を切る。水切りヨーグルトとする。
鮑ヴァポーレ
・鮑の表面をよく洗いスチームコンベクション98℃で90分火入する。殻から取り出し肝、ひも、嘴をとる。肝は漉し、ひもは刻む。
タルトラ
・ボウルに貝昆布出汁、鶏卵、水切りヨーグルト、漉した鮑の肝、塩、鮎魚醬、スジ青のり粉末を入れバーミックスでしっかり攪拌する。
・上記をパッセしお皿に30g流す。刻んだ鮑のひもを具として入れる。
・上記をスチームコンベクション82℃で10分火入れし、しっかりと冷やす。
お浸し
・太オクラは沸いた湯で4分茹で丘上げする。(ガスコンロ中火10分 湯沸かし時間含む)ーA
・甘長唐辛子は串で数か所穴をあける。180℃の油で10秒ほど揚げ、薄皮が白くなったら取り出す。薄皮を剝く。ーB
・貝昆布出汁を火にかけ沸騰したら火を消し鮎魚醬を加える。0号缶にA、Bを入れ液体を流し冷ます。(ガスコンロ中火1分)
ミントマリーゴールドの泡
・貝昆布出汁を火にかけ沸騰したら火を消しミントマリーゴールドを加え、ミキサーで攪拌する。シノワでパッセする。ガスコンロ中火1分加熱時間を減らすため10の際に貝昆布出汁を一緒に加熱する。
・水切りヨーグルトで出たホエー、シュクロエミュルを上記に加えバーミックスで攪拌する。
盛り付け準備
・鮑ヴァポーレの鮑を厚みを持たせカットする。お浸しにした太オクラは5mm角、甘長唐辛子は3mm幅にカットする。
盛り付け
・冷やしたタルトラの上半分にカットした太オクラ6g、甘長唐辛子をのせ、中心に鮑をのせる。エクストラバージンオリーブオイルをかける。
・ミントマリーゴールドの泡をバーミックスの刃が半分浸かるくらいの角度で攪拌し泡を立て、空いたスペースに盛り完成。
ペーターライト・ニコラスさん(辻調理師専門学校)
鯉の熟成刺身 酢橘味噌 あしらい一式
昔から「川魚の王様」と称されている鯉は現在人気が低く、保存や調理上の困難などの理由の上ほとんど流通されていない。しかし、海洋水産資源の危機を背景に海の天然や養殖の魚より、鯉の養殖が非常にサステナブルだと言われる。雑食の魚として、天然魚由来の餌を使う必要がなく、環境への影響が基本的に低い。きれいな真水さえあればどこでも、おいしくて栄養豊富なタンパク質を作ることができる。
海水魚の代わりに鯉を食べることで、水産資源の減少や海面養殖業による環境負担の解決に貢献できる。 鯉の身が腐れやすいので、神経締め、血抜きで日持ちを長くし、「切りかけそぎ切り」で身に入っている骨を細かく切り、食べやすくする。
それで新たな加工や調理方法を使って、問題点を解決し「活〆熟成鯉」として新たなアピールが需要と生産の再復活とつながる。 鯉の刺身にパリパリ素揚げにした鱗と鯉の旬である秋~冬のあしらいを添えって、酢橘味噌で提供する。
使用したシーフードについて
鯉(ヤマトゴイ)
・漁獲海域:宮崎県/養殖/鯉は淡水魚なのに、鯉を食べることで海の水産資源の保護に貢献することができる。鯉は雑食・草食なので養殖にはフィッシュ・ミールなど天然漁由来の餌を使う必要がなく、養殖法によって餌をほとんど使わずに育てることも可能である。そのため、一般的に天然魚類を餌に使って養殖されているブリ類、真鯛などよりも、天然海洋資源への圧力を下げることができる。完全養殖が可能なので、鰻と違って養殖は天然鯉の資源量と関係がない。また、養殖システムによって異なるが環境への影響が基本的に低い。(※)
鯉は淡水魚なので、海から遠く離れている地方だっても養殖が可能で地元産の魚で運輸による二酸化炭素の排出を減らすことができる。現在は茨城県、福島県、宮崎県は収穫量の第1~3位で、東北地方と九州は養殖の中心となり、ほとんどの都道府県では行われていない。鯉が養殖されている県では地産地消として、鯉を更にアピールすることも大切だが、生産量の多い5県の人口を合わせても850万人しかいなく、首都圏の4分の1もない。日本全国の食の持続可能性にポジティブな影響を与えたいのであれば、都会の食生活を変えないといけない。そのため、このレシピで特に東北の生産地に近い東京都で鯉をアピールしたい。
今度の鯉は大阪市木津市場で、滋賀県にある淡水魚の店から注文したものである。滋賀県であっても鯉の養殖は行われていなく、鯉は九州と東北の生産地から仕入れる。料理写真の鯉は宮崎県のものである。大阪市で鯉を仕入れるとサプライチェーンが長く運輸による二酸化炭素の排出量は考えるべき。現在の産地が遠いが、70年前まで大阪府の高槻市で鯉の養殖がおこなわれ(写真)、もし鯉料理の再復活が成功すれば、また様々なところで鯉が育てられ、将来に向けてサプライチェーンの短縮もこのレシピの目的である。
※ 調べてみた結果日本語での鯉の持続可能性についての情報がネット上で見つからないが、英語と特にドイツ語では情報が豊富で、鯉養殖のサステナビリティを保証できる。(Gesa Biermann, Juergen Geis (2020)『Life cycle assessment of common carp (Cyprinus carpio L.) – A comparison of the environmental impacts of conventional and organic carp aquaculture in Germany』. In: Aquaculture, Volume 524, pp 735273; WWF Fischratgeber (WWF魚ガイド):『Karpfen』 (鯉) URL:https://fischratgeber.wwf.de/species/cyprinus-carpio/)ただ、日本での養殖は海外に比べてどのぐらいサステナブルのかについては情報がなく、専門家じゃないと判断しずらい状況である。
材料リスト
刺身
・鯉/1匹(1kg)(宮崎県産)**泳ぎ、1匹で約8~10人前の量がとられる>レシピは8人前
酢橘味噌
・日本酒/100ml(愛知県産)**
・味醂/30ml(日本産)**
・白味噌/200g(京都府産)「有機 京都の味 白味噌」 喜右衛門の有機味噌
・卵黄/2個(和歌山県産)和歌山県有田郡にある蒼生舎の平飼いたまご
・砂糖/30g(日本産)
・酢橘/4個※(徳島産)
・米酢/適量(日本産)**
・煮切り酒/適量(日本産)**
あしらい
・白ネギ/2本(鳥取県産)**
・青ネギ/2本(香川県産)**
・つるむらさきの花/27本(徳島産)**
・人参/1/3本(和歌山県産)**
・酢橘/上記(産)**
・鯉の皮/上記(産)**
・昆布塩/少量(産)**
*鯉に対するイメージは「泥臭い」「美味しくない」「骨が多い」といったもので、全体的に悪い。自分の経験の上でも、バイト先である魚屋さんでも、「えっ?それ食べれる?」という反応があるほどあまり好まれてない。その上、生きているまま使用するのは基本だと言われており、身にY形の抜けない骨が多く入っているので、普通のレストランや家庭で扱うのは困難である。
その結果、2022年の鯉の養殖収穫量は2027トンで、絶滅危惧種である鰻が大半を占める内水面養殖漁獲量の約6%に過ぎず、海面養殖業収穫量に比べてその0,86%しかない。(MAFF 2024「令和4年漁業・養殖業生産統計」)
鯉のイメージや扱い方の困難を解決して、消費量を上げるため、このレシピで色々工夫した。鯉は「死ぬと臭くなる」と言われ、腐敗が速い魚である。特に生で使う場合は「洗い」という、切り身を氷水で洗ってしめるという方法が利用され、締めてからすぐ加工しないと洗いにはならない。レストランで提供する直前締めて加工するのはほとんどの場合効率的ではないため、その代わりに近年に海水魚の場合主流になった「活〆」で締める上、特別なな「血ぬき」の方法を利用する。血のほとんどを身から洗い流すことで、切り身の日持ちを上げることができ、洗いに似っている効果がある。その結果1℃前後に保存すれば、48時間問題なく生で食べることができ(12時間~36時間が最もおいしい)、洗いにせず身がよりしまっている臭みが少ない状態になる。(写真を参考)12時間以上熟成することでうまみ成分のイノシン酸が増えて、よりおいしくなる効果もある。魚の身柔らかくするので、「切りかけそぎつ切り」で通常の「薄造り」より食感を保ちながら、骨を細かく切ることができる(写真参考)。
調理手順
〆
・鯉は泳ぎで仕入れ(※)、締めるところから作業が始まる。鯉は頭を出刃包丁のみねで殴られて気絶し、包丁で脳天締めにする。エラを切り、尻尾から4cmぐらいのところに背骨を切って、針で神経を抜く。ホースをエラ蓋から入れて、口とエラ蓋の隙間を手で閉じながら、水道の水圧で血を抜く。*※現在は「神経締め血抜き」の鯉は仕入れできないが、このレシピは鯉を飲食店で使いやすいように魚屋さんにしてもらうことができる用に考えられている。
捌き
・尻尾を切り落とし、鱗とらずに、背から包丁を入れ背骨まで身を切り外す。尻尾の方の身を完全に切り落として皮だけを残す。はらぼねの付け根を切り外して魚を開く。頭を落とし、内臓を取る。上身を腹鰭の上から切り落とす。腹鰭を切り落とす。裏身から背骨を切り外す。はらぼねを切り落として、皮をひく(※)。水分をよく取り紙に包んで、ビニール袋に入れて空気を抜く。速く1℃前後に冷やす。*※通常の魚を熟成する場合は皮や骨をできるだけつけたまま熟成するのは基本だが、鯉の場合は熟成できる期間が短く、皮や骨が臭みの原因になるので、身だけにする方が良い。
玉味噌仕込み
・日本酒とみりんを火にかけ、アルコールを飛ばす。IH中火5分IHを使うことでエネルギーの無駄が少なく、国の電気の再生エネルギーの割合によって、二酸化炭素の排出量が少ない。
・その間にボウルで味噌、砂糖、卵黄を合わせていく。ダマになることを防ぐため、味噌に対して砂糖、卵黄の順に加えて混ぜる。
・酒とみりんのアルコール分が飛んだら(火をつけて確認)、少しずつボウルに加え、ダマにならないようによく混ぜる。*
・鍋に移し中火にかけ、ヘラで練る。泡立たない程度に火加減を調整しつつ、黄身にしっかり火を通す。味噌の表面に光沢が出たら、練り上がった印。IH中火10分*
酢橘味噌仕込み
・すだちの真ん中から1mmのスライスを1枚ずつ切り除いて、置いておく。*
・皮をすりおろして、味噌に加えて混ぜる。酢橘の汁を絞る。*
・酢橘の皮の緑色がなくならないように、刺身を仕上げる直前に、酢橘のしぼり汁を味噌に加える。酢橘のサイズなどによって酸味が異なるので、米酢で酸味を調整する。必要であれば、煮切り酒でのばして、食べやすいように濃度を調整する。*
あしらい仕込み
・白ネギと青ネギの白色と緑色の部分を切り分け、4cm長さに切る。縦に切れ込みを入れてネギを開く。開いたネギを薄刃包丁で縦に細かく千切りにして、水にさらす。*
・鍋で少量の水を沸かし、塩を加える。つるむらさきの花をざるに入れ火が通るぐらいさっと湯がく。氷水に落として、水分を取る。IH強火4分*
・薄刃包丁で人参の皮をできるだけ薄くむく。20cmぐらいを1mmの桂むきにして、斜め8cm長さに切り、箸でより人参にして水にさらす。*
・前に残した、すだちのスライス4枚を種の残りを取ってから十字に4分に切りわける。*
・鯉の皮を洗って、水分をよくふく。ハサミ2cm幅にきり、半分に切り分ける。少量の油(鍋底から1cmぐらい)で、泡がなくなるまで素揚げにする。少量の昆布塩をふる。IH中火10分*少量の油を使うことで揚げ油が無駄にならない。
刺身仕上げ
・背身が均一の幅になるように、背と腹を切り分ける。皮を下に、頭の方から60度の角度で、0.5~1mm幅骨がギリギリ切れているまで切り込みを2つ入れてから、一枚を切り落とす(写真参考)。腹のみは3~4等分に切る。*※鯉は背の身だけに抜けないY形の骨が入っているので、骨を細かく切る必要がある。熟成した鯉は身が柔らかく薄刺身したら食感がなくなるので、「切りかけそぎ切り」にする。
盛り付け
・器にネギを青右、白左きれいに丸くなるように盛り付ける。その前、刺身5枚重ね盛りで高くなるように盛る。鯉の揚げた皮、つるむらさきの花、すだちのスライスを右前に、より人参を刺身の上に盛る。すだち酢味噌を器に入れる右にそろえる。盛付けのポイントは刺身をきれいに巻いて、高くなるように重ねること、また、あしらいの色合いのバランス。食べ終わると器の底に描かれた鯉の絵が現れる(写真)。*
増田梨乃さん(KOTOWA 奈良公園 Premium View)
11種の野菜のプレッセ 酢橘鰤花
みょうがの爽やかなソースマヨネーズ
近年、若者の野菜離れが加速しています。 効率性を重視した食生活により、成人の野菜不足の割合は約80%。魚においては魚離れという言葉もよく耳にします。 手軽さを求め、野菜を食べない、また魚も調理するのが面倒だという問題です。
ファストフードが主流となりうる現代社会で、本来の素材の味を見逃している方がいるかもしれません。 私は地元で採れた伝統野菜と食べ馴染みのある野菜、果皮を食べる鰤をテーマとして掲げ、余すことなく調理する料理を考案いたしました。
魚は酢橘鰤。酢橘鰤は果物の果皮を使用するため、本来破棄されるものが魚の栄養となります。さらに 型の中でプレスすることで素材の旨味を圧縮。ジュレを使用せず押し固めるため、その旨みをダイレクトに感じることが出来ます。 ソースにはプレスした際のジュを加えマヨネーズソースへ。食べ馴染みあるソースに。
食とは切っても切っても切り離せないもの。 限りある素材を大事に、無駄を極力減らす。互いに助け合う、だからこそ人々の生活を豊かになる。 多くの方にこの料理が伝わることを願って。
使用したシーフードについて
酢橘鰤
・巻き網/漁獲海域:徳島県鳴門市/養殖/本来破棄されがちな果皮を魚の餌に混ぜ込むことで食品のロスを減らす、またそのような消費ルートがあると農家、生産者、消費者共に良い関係性になる。また果皮を使用したからといい、魚自体に香りが移るのではなく、血合いの色が褐変しにくく、味もさっぱりとなり、臭みも軽減されているという利点がある。飼育方法は通常の鰤とは変わらず特殊なことはされていない。
材料リスト
プレッセ部分
・大和真菜/309g(奈良県大和高田市産)**県内の伝統野菜
・花みょうが/40g(奈良県五條市産)**県内の伝統野菜
・大和丸ナス/240g(奈良県奈良市産)**県内の伝統野菜
・人参/80g(奈良県大和高田市産)**自然栽培
・パプリカ 赤/160g(規格外商品今回は宮城県栗原市産)**温暖化で規格外となったパプリカ
・パプリカ 黄/170g(規格外商品今回は宮城県栗原市産)**温暖化で規格外となったパプリカ
・カリフラワー/91g(淡路島産)**茎まで使用
・ブロッコリー/120g(淡路島産)**茎まで使用
・大根/189g(淡路島産)**自然栽培、なるべく近い農家から仕入れ
・牛蒡/120g(淡路島産)**自然栽培、なるべく近い農家から仕入れ
・水菜/118g(奈良県宇陀市産)**規格外有機野菜
・酢橘ブリ/280g(徳島県鳴門市産)**破棄回されがちな果皮を餌に混ぜ込み養殖された魚。通常の鰤とは違い血合いの部分が変色しにくい
野菜パウダー
・上記野菜の端材/19g(奈良県奈良市産)自家製加工品自然光で乾燥させる
ピューレ
・ブロッコリー茎、カリフラワー茎/320g(奈良県奈良市産)自家製加工品野菜を掃除した際の茎をピュレとする
マヨネーズ
・卵黄/20g(奈良県五條市産)自家製加工品ウインドレス鶏舎の飼育
・白ワインビネガー/10g(山梨県甲州市産)**国産品を使用
・オリーブオイル/90g(香川県小豆島産)**無農薬で、無添加の有機オリーブオイル
・プレッセのジュ/20g(奈良県奈良市産)自家製加工品プレスした際のジュを旨みとしてソースへ還元させる、無駄のない調理法
・塩/2g(淡路島産)**天然の塩
調理手順
下準備
・大和真菜:312g以下野菜をボイルする5%の塩水を沸かし、同時に氷水を用意。大和真菜はよく洗い、葉と茎で分ける。茎は少し芯の残る状態まで柔らかくボイルし、氷水。葉はさっとボイルし氷水。ガスコンロ中火2分ボイルする各食材はテリーヌ型サイズに切り出し、使用する分のみ加熱。また大きめのソトワで全て同時に加熱を行い、火が通った順に引き上げていく。これによりガスの使用時間を減らす。
・花みょうが:40g芯を含めすべてをマヨネーズ用にアッシェし、水にさらしておき、フレッシュで使用する
・大和丸ナス:180g網の上で直火焼きし、熱いうちに皮をむく。(ガスコンロ中火6分)
・人参:80g皮をむき、テリーヌ型に合わせて縦1/4にカット、クタクタに柔らかくなるまでボイルし、氷水。皮は野菜パウダー用として鉄板に並べておく。(ガスコンロ中火13分)
・パプリカ 赤:120gよく洗い丸ごと網の上で直火焼きし、熱いうちに皮をむく。(ガスコンロ強火5分)網の上で焼くものは各種一緒に行う。またこまめにひっくり返さず、面をしっかり焼き入れる、何度も返すより最短の時間で仕上げられ、ガスの使用時間削減に繋げる
・パプリカ 黄:89gよく洗い丸ごと網の上で直火焼きし、熱いうちに皮をむく。(ガスコンロ強火5分)
・カリフラワー:89g子房に分け、芯まで柔らかくボイルし、氷水。余った端材は2mm程度のエマンセにし、ピューレ用とする。(ガスコンロ中火3分)
・ブロッコリー:110g子房に分け、芯まで柔らかくボイルし、氷水。余った端材は2mm程度のエマンセにし、ピューレ用とする。(ガスコンロ中火2分)
・大根:180g皮をむき、テリーヌ型に合わせて縦1/6にカット、金串がすっと通るほどクタクタに柔らかくなるまでボイルし、氷水。皮は野菜パウダー用として鉄板に並べておく。(ガスコンロ中火12分)
・牛蒡:120gよく洗い、テリーヌ型に合わせてカット、芯まで柔らかくボイル。(ガスコンロ中火11分)
・水菜:109gよく洗い、茎の部分からボイルし、茎に少し食感が残る程度に火入れし、氷水。(ガスコンロ中火2分)
野菜パウダー
・上記野菜の端材:2g人参の皮、大根の皮は天日干しで約1日乾燥させ、その後ミルサーにかけ天然塩で調味。ミルサー*太陽光を利用して食材の乾燥を行う
ピュレ
・ブロッコリー茎、カリフラワー茎:120gテリーヌで使用しなかった茎、端材をオリーブオイルを少量加えた鍋で蓋をしてじっくりスゥエし、野菜の持つ水分で先ずは火入れしていく。その後食材に対して半量の水を加えてクタクタに煮たのち、ミキサーで回る程度の水分を加えながらミキシングし、パッセ後、塩で調味。ガスコンロ中火20分*茎を余すことなく使用、食品ロスを減らす
マヨネーズ
・卵黄:20gボウルに卵黄をよく溶く。フエ、ボウル20分プレスした際に出た野菜の水分と旨味を余すことなくソースへ還元し、食材のロスも減らす。
・白ワインビネガー:4g上記に加える(マヨネーズ)
・プレッセのジュ:4g上記に加える(マヨネーズ)*
・オリーブオイル:80g上記とオリーブオイルをフエで撹拌しながら、乳化させていく(マヨネーズ)*
・塩:2g上記に加え味をととのえる(マヨネーズ)*
魚の処理
・酢橘ブリ:400gテリーヌ型に合うようシート状に切り出す。12%の塩水に30分漬けた後、ピチッとシートで1時間脱水。テリーヌ型に入れる際は柵上に切り出し詰めていく*
プレッセ組み立て
・大和真菜の葉を重なりを極力少なくつつ綿棒を上から転がし繋ぎ合わせ、シートを作成、テリーヌ型にぴったりと貼り付ける。食材の色のバランスを見ながらシュミゼしていく、加工した酢橘鰤もバランス良く配置。テリーヌ型に対して上部が2cmほど食材があふれてきたら大和真菜の葉で包む。上からテリーヌ型に合わせた発泡スチロールの型(または固めの段ボールなど)を乗せ、下にはプレスしたジュを受け止めるよう、鉄板を置く。型の上から10kgほどの重しを乗せる(今回はホテルパンを使用)。型と重しの鉄板の隙間個所に竹串で全体を数か所穴を開け、水分の逃げ道をつくる。2時間後一度ラップを開け、偏りを直し包みなおす。先ほど同様重しを乗せ、さらに竹串で追加で穴を開ける。そのまま冷蔵庫で12時間以上プレス。12時間後プレスしたジュはボウルに取り置き、マヨネーズソースに使用する*
橋本元輝さん(d’ici)
黒鯛のナージュ仕立て
牡蠣の温製
使用したシーフードについて
黒鯛
・定置網/漁獲海域:播磨灘/天然/1kg未満の黒鯛は低利用魚として扱われる。養殖海苔の食害として問題視されている。
岩牡蠣
・漁獲海域:徳島県海陽町/天然/海苔の養殖の際に牡蠣の殻の中で成長させる。
材料リスト
下準備
・昆布/8g(北海道産)**
・黒鯛/80g(兵庫県産)**豊洲で直接買い付け。1kg未満の低利用のもの。
・岩牡蠣/25g(徳島県海陽町産)**豊洲で直接買い付け。
・大根/20g(徳島県産)**規格外のもの。皮はブイヨンに使用。
・和梨/6g(徳島県産)**規格外のもの。皮はブイヨンに使用。
すだち胡椒バター
・すだちこしょう/25g(店舗内自家製産)**店舗内自家製のもの。
・セロリの葉/30g(東京都産)ブイヨンをとったセロリの残った葉。
・バター/450g(フランス産)
レンコンの絞りカス
・レンコン/450g(徳島県産)**
・鶏のブイヨン/180g(店舗内自家製産)**
海苔のチュイル
・水/100g(産)**
・薄力粉/10g(奈良県奈良市産)**無添加100%、無農薬。
・濃口醤油/10g(徳島県鳴門市産)**無添加無着色。
・黒バラ海苔/5g(東京都神津島産)**油、食塩不使用。
・オリーブオイル/10g(スペイン産)**オーガニック。
仕上げ
・マヨネーズ/10g(店舗自家製で通常営業で使用しているもの産)**
・すだち入り甘酢/50g(店舗自家製産)**
・黒バラ海苔/1g(産)**
・アリウムスター/0.2g(産)**
・フヌイユの葉/0.3g(産)**
・花穂/0.2g(産)**
調理手順
下準備
・昆布:8g水50gと昆布を入れ一晩水につけておく。本来、火にかける昆布を水出し昆布出汁として使用する。
・黒鯛:80g黒鯛を3枚おろしにし、80gポーションに切り分け串を刺す。
・岩牡蠣:25g岩牡蠣の殻を開け、身を取り出す。殻はしっかり洗い自然乾燥させる。ジュは紙漉しし、取り置く。
・大根:20g大根は切り出し、マンドリーヌで薄くスライスする。すだち甘酢に漬けておく。
・和梨:6g皮を剥き、くりぬき器で抜いておく。
すだち胡椒バター
・セロリの葉:30gセロリの葉は水洗いしすだち胡椒と共にロボクープへ入れる。
・すだちこしょう:25gポマード状にしたバターを4回に分けて加えて回しバットに広げ冷凍しておく。
レンコンの絞りカス
・レンコン:450gレンコンは皮を剥き、薄くスライスする。
・鶏のブイヨン:180g鶏のブイヨンと合わせて真空し90℃のスチコンで1時間火を入れサラシで絞りながら濾す。溜まったレンコンのジュは通常営業のパーツとして使用している。(スチコン90℃1時間)
海苔のチュイル
・全ての材料を合わせてよく混ぜる。
・フライパンの中火でパリパリになるまで焼き上げ、自然乾燥させておく。(ガスコンロ中火10分)
黒鯛の出汁
・炭を起こし、黒鯛の骨を炭でこんがりと焼く。炭火強火20分ここから、食材の火入れは炭のみで行う。
・牡蠣の殻に、水出し昆布出汁、焼いた骨、牡蠣の身を入れ墨の上に直置き蓋をしておく。5分
・湯気が出てきたら、牡蠣の身を上げて牡蠣のジュにつけて温かいところで保温しておく。出汁はさらに5分炭の上で取る。5分
・黒バラ海苔:1g牡蠣の殻に黒バラ海苔を入れておく。20分
黒鯛の火入れソースの仕上げ
・串に刺した黒鯛に塩を振り、皮目から焼いていく。皮目は近火で焼き、身側は遠火で、焼いたジュが牡蠣の殻の中に落ちるよう下に置いておく。20分
・レンコン:魚を焼いている間にレンコンの搾りかすをミルで回す。
・マヨネーズ:自家製マヨネーズと合わせてレンコンマヨネーズとする。
盛り付け
・甘酢大根を水気を切り、お皿の12時の方向に盛る。
・焼いた黒鯛を手前に盛り海苔のチュイルに花穂を飾り、黒鯛の上に置く。
・牡蠣の殻のソースを黒鯛の一皿に注ぎ入れ殻は一度回収し炭火の網に置き、保温しておいた牡蠣の身にすだち胡椒バターを塗り、くり抜いた梨、レンコンマヨネーズ、アリウムスター、フヌイユの葉を飾る。
高木菜摘さん(ザ・キャピトルホテル東急)
黒鯛の手巻きロール
~秋野菜のスープ仕立て~
私の故郷の千葉県木更津の海では昔から海苔の養殖が盛んでした、しかしここ数年海水温上昇と共に黒鯛が住み着き海苔を食い荒らす食害で海苔養殖は危機的な状態になっています。
その黒鯛の身はくせがあり食用には人気が無く市場では流通する事が少ない未利用魚です。 そんな黒鯛を使用する事で少しでも海苔養殖の食害を減らし持続可能な海洋環境の構築に貢献すると共に食品ロスを減らす事が出来ればと考えこの料理を作りました。
木更津産養殖海苔の新品種「千葉の輝き」と木更津産の規格外秋野菜を使い野菜の甘みをしっかりと染み込ませた炊き込みご飯と香ばしい海苔とで巻き上げた黒鯛をクロモジ茶を使い優しい香りのすだちが効いたスープで親子一緒に召し上がっていただきたいです。
そしてこの一皿で私の故郷である木更津の水産業と農業の未来を次世代の子供達に届けたいと願っています。
使用したシーフードについて
黒鯛
・定置網/漁獲海域:千葉県木更津市 天然/木更津市場の生け簀にひっくり返った黒鯛が泳いでいて売れずに残っていました。黒鯛は見た目が黒々しく、真鯛に比べて食用には人気がなく、低価格でも売れ残り、市場の鮮魚店では処分するか豊洲で無料で引き取ってもらう時もあると打ち明けてくれました。
材料リスト
黒鯛ルーロー
・黒鯛の身/400g(千葉県木更津市産)**黒鯛の身はくせがあり食用には人気がなく市場では流通することが少ない未利用魚です。(輸送距離36㎞)
・極製焼のり慈海/2枚(千葉県木更津市産)*木更津産100%*不安定な海況の中でも従来品種より生長が優れ、収量性が高い新品種『ちばの輝き』は海苔養殖の生産枚数の増大と安定に寄与することが期待される。(輸送距離41㎞)
・炊き込みご飯/200g(木更津産)(玄米、野菜)
炊き込みご飯
・玄米/150g(千葉県木更津市産)**持続可能な「日本人の主食」である栄養価が高い有機玄米を使用。(輸送距離44㎞)
・人参/30g(千葉県木更津市産)**無農薬野菜、皮まで使用。無農薬野菜なら皮ごとでも安心して食べられる。(輸送距離44㎞)
・さつま芋/40g(千葉県木更津市産)**無農薬野菜、皮まで使用。さつま芋の甘みで砂糖を使わずに代用可能であることを伝えるため、今回は砂糖を使用していない。(輸送距離44㎞)
・茄子/30g(千葉県木更津市産)**木更津で採れた規格外の茄子。見た目に難があっても味は変わらず、安価で手に入るため利用した。(輸送距離44㎞)
・万能ねぎ/6g(千葉県香取市産)**無農薬野菜。(輸送距離65㎞)
・牛蒡/30g(千葉県木更津市産)**無農薬野菜、皮まで使用。(輸送距離44㎞)
・山芋/30g(千葉県木更津市産)**無農薬野菜、皮まで使用。(輸送距離44㎞)
・黒鯛の出し汁/225ml(木更津産)
・イリダイ白醤油/10ml(千葉県香取市産)**JAS認証有機丸大豆(輸送距離78㎞)
・味醂/10ml(千葉県香取市産)**醸造用糖類不使用(輸送距離72㎞)
黒鯛の出し汁
・黒鯛の頭、骨/300g(千葉県木更津市産)**
・山武の海の塩/1g(千葉県九十九里産)*九十九里産100%*地元の間伐材や廃材を薪に使って手作りで生産された塩。(輸送距離66km)
・すだち/2個(千葉県木更津市産)**木更津で採れた規格外のすだち。(輸送距離44㎞)
・日本酒/50ml(埼玉県蓮田市産)米千葉県産100%有機栽培(輸送距離36㎞)
・水/600ml(産)
・なたね油/5g(千葉県香取市産)*千葉県産国産菜種100%*化学農薬、化学肥料不使用(輸送距離63㎞)
・黒鯛の皮/8g(産)上記の自家製加工品
クロモジ茶スープ
・黒鯛の出し汁/100ml(産)**
・人参/6g(千葉県木更津市産)**無農薬野菜、皮まで使用。(輸送距離44㎞)
・さつま芋/6g(千葉県木更津市産)**無農薬野菜、皮まで使用。さつま芋の甘みで砂糖を使わず代用。(輸送距離44㎞)
・山芋/6g(千葉県木更津市産)**無農薬野菜、皮まで使用。(輸送距離44㎞)
・イリダイ白醤油/5ml(千葉県香取市産)上記に記載済JAS認証有機丸大豆(輸送距離78㎞)
・クロモジ茶/1パック(千葉県木更津市産)**有機栽培(輸送距離37㎞)
調理手順
下準備
・黒鯛の身:400g 黒鯛は三枚に卸して身の中骨を抜く。出汁で使用する頭、骨、皮は流水で汚れを落としておく。飾り用すだちを2枚スライスする。
・玄米は水に1日浸す。人参、さつま芋、牛蒡、茄子、山芋は炊き込みご飯、飾り用で1㎝角程度にカットする。万能ねぎは0.5㎜にカットする。*玄米を一日浸すことで、ガスの消費量を節約できる
黒鯛の出し汁
・すだち:2個 深鍋にお湯を沸かし残りのすだち、日本酒を加えた所に、汚れを落とした黒鯛の頭、骨、皮、山武の海の塩を入れ、強火で沸かし灰汁をひく。(IH強火5分)
・日本酒:50ml 弱火で15分煮出し、目の細かいシノワで濾す。(IH弱火15分)
・水:600ml(IH中火1分)
・黒鯛の頭、骨:300g
・山武の海の塩:1g
炊き込みご飯
・玄米:150g ザルにあげ水気をしっかり切り、鍋に玄米、黒鯛の出汁、人参、牛蒡、茄子、さつま芋、山芋を入れ火にかける。IH強火3分厚手のストーブココットを使用することで短時間で炊き上がる
・牛蒡:30g 沸騰してきたら、白醤油、味醂を加え、ひと混ぜし3分加熱し、蓋をしてオーブンレンジ200℃で15分加熱する。(IH・オーブン強火・オーブン200℃20分)
・人参:30g オーブンから出し30分蒸らす。炊き上がったご飯に万能ねぎを入れ混ぜ平らにし、冷ましておく。
・茄子:30g
・山芋:30g
・さつま芋:40g
・万能ねぎ:6g
・黒鯛の出し汁:225g
・イリダイ白醤油:5g
・味醂:5g
黒鯛の皮
・黒鯛の皮:8g 菜種油をひいたフライパンに水気を取った皮を押しつけ、クリスピーにして水分を飛ばし、その後包丁で刻む。
・なたね油:5g
クロモジ茶スープ
・黒鯛の出し汁:100g 炊き込みご飯で使用し残った出汁100gを沸かし、クロモジ茶を入れたら火を落とす。(IH強火20秒)
・白醤油:5g 1分間蒸らしたらクロモジ茶を取り出し、白醤油で味を決める。その後、冷却し冷製スープとする。
・クロモジ茶:1パック
黒鯛ルーロー
・黒鯛:400g 黒鯛の身を開き、厚さ1cmにして、クリスピーに刻んだ皮をふりかける。
・海苔:2枚 黒鯛、海苔、炊き込みご飯の順番でのせてラップで、厚さ5cmで巻いていく。
・炊き込みご飯:200g 蒸し器で中火15分火入れをする。(IH中火15分)
・黒鯛の皮:8g
盛り付け
・すだち:8枚 黒鯛ルーローを2cmの厚さに切り、側面をガスバーナーで軽く炙る。
・さつま芋:40g クロモジ茶スープを25g注ぐ。
・人参:40g 黒鯛を盛った皿に人参、さつま芋、山芋、スライスしたすだちを2枚飾り、スープを入れる。
・山芋:40g 飾り用に下処理をしたそれぞれの野菜を食感が残る程度にブランシェして、その後、クロモジ茶スープに浸す
・クロモジ茶スープ:40g 味を含ませ盛り付ける。
田村征也さん(ザ・キャピトルホテル東急)
アイゴの香草バター焼き
みかん風味のグラスフッェドバターソース
今回私が使用するアイゴという魚は温暖化により海藻を食べる量が増え磯焼けの食害をおこしています又身と内臓は独特な臭いがある事とヒレに毒をもっている為、現状はほぼ流通していません、現在野菜の端を使い臭いを抑える養殖方法も進められていますが、まだまだ市場に出回る状況ではありません。
そんな食材を使用する事で磯焼けによる食害の解消、未利用魚の使用によりフードロスの削減にも貢献できると考え国産の地場野菜と組み合わせた料理を考えました。
独特な臭いには香草とナッツを合わせたバターを使用する事で風味高くし骨と頭は廃棄される野菜の端材と共に出汁をとり、うま藻の旨味を加えフュメドポワソンにしました。又作業工程を、出来る限りシンプルにする事で調理時間を減らしCO₂の削減に努めました。
この料理を通してサスティナブルシーフードに対して理解を深め日々の業務に取り入れていき海洋環境の改善とSDGsに貢献出来ればと考えます。
使用したシーフードについて
アイゴ
・刺網漁/漁獲海域:神奈川県小田原/天然/刺網漁は網の大きさによって狙う魚の種類や大きさを限定できる為、乱獲を防ぐことができ海底と接地する面積が小さい為、海底環境への影響が小さい漁法です
材料リスト
魚
・アイゴ/70g(神奈川県小田原市産)**小田原の刺し網漁で獲れた規格外の魚
・茄子/10g(神奈川県小田原市産)**規格外野菜使用
・プチトマト/10g(神奈川県小田原市産)**規格外野菜使用
・蕪/10g(神奈川県愛川町産)**無農薬野菜使用
香草ナッツバター
・パン粉/15g(東京都千代田区産)**弊社で作成したパンの端材を使用
・イタリアンパセリ/5g(神奈川県横浜市産)**無農薬野菜使用
・タイム/1g(神奈川県横浜市産)**無農薬野菜、化学肥料無使用
・セルフィーユ/2g(神奈川県産産)**無農薬野菜使用
・にんにく/3g(神奈川県横浜市産)**無農薬野菜使用
・チモシー(国産ハードチーズ)/10g(北海道大樹町産)**北海道大樹町産で牛乳が原料のハードチーズ
・北海道産グラスフェットバター/50g(北海道西興部村産)**無農薬で育てた牧草を飼料とし放し飼いで育てた乳牛の乳から作られている
・落花生/10g(千葉県八街市産)**八街産落花生は地域ブランドとして商標登録されています
フュメドポワソン
・アイゴの骨、アラ/600g(神奈川県小田原市産)**アイゴを卸した時にでたものを使用
・野菜の端材/50g(神奈川県産産)**リゾット、アイゴに使う野菜の皮、葉、ヘタ、香草の軸などを使用
・うま藻/0.5g(沖縄県産)マングローブの葉の裏で育った藻と泡盛製造の副産物の泡盛粕から作られた自然食材
・水/1L(産)
野菜のリゾット
・押麦/30g(神奈川県横浜市産)*国産大麦100%*有機米使用
・オリーブオイル/3g(香川県小豆郡産)**有機JAS認定オーガニックオイル使用
・フュメドポワソン/100ml(産)上記の自家製加工品アイゴを卸した時の骨とアラ、野菜の端材を使用
・チモシー(国産ハードチーズ)/5g(北海道大樹町産)**北海道大樹町産で牛乳が原料のハードチーズ
・蕪の葉/10g(神奈川県横浜市産)**規格外野菜使用
・ニンジン/10g(神奈川県愛川町産)**無農薬野菜
ソース
・北海道産グラスフェットバター/5g(北海道西興部村産)**無農薬で育てた牧草を飼料とし放し飼いの乳牛の乳から作られている
・みかんジュース/100ml(神奈川県小田原市産)*有機栽培された温州ミカンが原料のジュースを使用
・藻塩/適量(愛媛県淡路島産)**ホンダワラなどの海藻から作られたミネラル豊富な塩
・ホワイトペッパー/適量(産)*スリランカ産胡椒100%*環境に配慮した有機JAS認証のスパイス
調理手順
下準備
・アイゴ:1kgアイゴを軽く流水で洗い、ヒレをハサミで切り内臓を取り出し三枚におろす
・アイゴの骨、アラ:600g頭、骨は血合いを掃除し、流水で汚れをとる。身は皮を引き塩をして脱水シートで脱水する脱水シートを使用することで短時間で一夜干しの効果を得られ、アイゴをソテーする調理工程を省くことができる
・落花生:20g刻んでおき、バターは室温に置き柔らかくしておく
・北海道産グラスフェットバター:50g
・蕪:10g半分にカットし、茄子とプチトマトを2~3ミリにスライスし軽く塩をしておく
・茄子:10g
・プチトマト:10g
フュメドポワソン
・アイゴの骨、アラ:600g皮、骨、頭はサラマンダーでしっかりと表裏を焼く。サラマンダー強火10分一度焼くことで短時間で旨味を抽出できる
・水:1ℓ鍋に焼いたアラと水を加え沸騰したら灰汁をひき、野菜、香草の軸を入れ中火にかける。(IH中火15分)
・野菜の端材:50g*
・うま藻:0.5gシノワで濾して軽く煮詰め、うま藻で旨味を足してフュメドポワソンとする。(IH中火5分)
香草ナッツバター
・パン粉:15gパンの端材、にんにく、香草をロボクープに入れ回し、バターと合わせる。(ロボクープ1分)
・イタリアンパセリ:5g
・タイム:1g
・セルフィーユ:2g
・にんにく:3g
・チモシー(国産ハードチーズ):5g
・香草バターをクッキングシートに薄く伸ばし、冷蔵庫で冷やし固める
リゾット
・ニンジン:10g人参をオリーブオイルでソテーし、押し麦を加えフュメドポワソンを注ぎ炊き上げる。(IH中火20分)
・押麦:28g
・フュメドポワソン:100㎖
・オリーブオイル:3g
・蕪の葉:10g水を加えながら麦がアルデンテくらいになるまで火を入れ、仕上げに蕪の葉、藻塩、ペッパー、チーズを加えリゾットとする
・藻塩:適量
・ホワイトペッパー:適量
・チモシー(国産ハードチーズ):5g
アイゴ
・香草ナッツバターをアイゴの大きさにカットしておく
・アイゴ:70g軽く塩胡椒し、アイゴ、スライス野菜、アイゴの順に重ね、バターを塗った鍋に並べ、香草バターを上にのせる
・茄子:10g
・蕪:10g
・プチトマト:10g
・コンベクションで火入れし、アイゴは別に取りおく。(コンベクション200℃3分)
ソース
・みかんジュース:100㎖アイゴを焼いた鍋にみかんジュースを加え1/2の量まで煮詰める。(IH強火3分)一つの鍋で調理することで作業時間を短縮できる
・北海道産グラスフェットバター:5gモンテし、藻塩とペッパーで味を整える。(IH中火1分)
・藻塩:適量
・ホワイトペッパー:適量
盛り付け
・皿にセルクルでリゾットを盛り、バーナーで焼き色を付けたアイゴを盛る
・ソースを流して仕上げとする。25㏄
橋本夏帆さん(島食の寺子屋)
ムロ鯵の砧巻き
海月の梅水晶添え
海士町の漁港で活用方法が悩まれている未利用魚、厄介者とされるクラゲ(日本海沿岸大量発生し、海士町の定置網が行われている漁港でも、魚と一緒に大量のクラゲが水揚げされ、定網網を破壊する等の被害が出ている)、地元のミカン農家さんの摘果作業を手伝った際に、多くは捨ててしまうとお話されていた摘果ミカンなど、通常は廃棄されている現状にについて、興味を持って頂き、美味しく食べられると知ってもらえるきっかけを作りたいと思いレシピを考案しました。
食材のロスが出ないよう、野菜の皮、魚のあらはダシとして使用し、料理の食材は海士町産のみ(調味料以外)の食材を使用を地産地消を心がけています。 離島キッチン海士で、海士町の地酒のお供として、楽しんでいただきたいです。
使用したシーフードについて
ムロ鯵(未利用魚)
・定置網漁/漁獲海域:海士町/天然/定置網漁は魚が自由に出入りできる仕組みになっており、最近網を大きくしたため回遊する魚を取りすぎず、出荷されない小魚は入らないような工夫をしている。それでも一定数ある未利用魚の小魚や収量が少ない魚を利用しました。
材料リスト
★海月の梅水晶
・クラゲ/50g(海士町産)**定置網漁で魚と一緒に水揚げされたクラゲ。通常は廃棄されている。島食の寺子屋から徒歩10分圏内の漁港大敷から仕入れ。(海士町崎地区 大敷)
・梅干し/蘇婆訶梅(そわかうめ)/10g(海士町産)**農薬も肥料も一切使わない自然栽培の梅を使用。(海士町崎産:梅農家丹後さん)
・茗荷/15g(海士町産)**島食の寺子屋から徒歩15分圏内の竹藪で収穫。
・甘酢/50cc(海士町産)**島食の寺子屋にて調合。
★ムロ鯵の砧巻き
・ムロ鯵(未利用魚)/150g(海士町産)**定置網漁で水揚げされた規格外の小魚。(海士町崎地区 大敷)
・摘果みかん(崎みかん)/60g(海士町産)海士町のみかん生産者産の摘果のお手伝いの際に仕入れた摘果みかん。(海士町崎産:みかん農家白石さん)
・紫蘇/15g(海士町産)自家栽培
・じゃがいも/150g(海士町産)有機JAS認証農園のムラーズファームさんから仕入れ。湧水にも恵まれた土地で農薬や化学肥料を使わず野菜栽培を行っている農園。
・ビーツ/100g(海士町産)有機JAS認証農園のムラーズファームさんから仕入れ。湧水にも恵まれた土地で農薬や化学肥料を使わない農園。
・卵/50g(海士町産)有機JAS認証農園のムラーズファームさんから仕入れ。平飼い卵。
・豆腐(亀田豆腐)/50g(海士町産)地元商店「亀田商店」の手作り豆腐。
・魚野菜ダシ/30cc(海士町産)
・油/500cc
・薄口醤油/10cc
・味醂/10cc
・酒/15cc
・片栗粉/5g
・海士の塩/3g(海士町産)**海士町の塩
調理手順
★海月の梅水晶
・クラゲを塩水につける。クラゲを熱湯でさっと茹でる。幅5mmほどで細切りする。(ガスコンロ強火1分)
・しっかりと水で洗い、血抜きをする。塩をあて、30分ほど置いておき、しっかりと水で洗う。エラを熱湯でさっと茹でる。5mmほどに切っておく。(ガスコンロ強火1分)
・梅をたたいておく。
・茗荷を薄く輪切りし、甘酢につけておく。
・クラゲを甘酢に漬けておく。
・すべての具材をまぜ、甘酢につけておく。
★砧巻き①
・桂剥きし、水にさらす。1.5%の塩水につけておく。
・鯵を三枚おろしし、身に塩をあて臭みをとる。甘酢に漬けておく。
・紫蘇を千切りしておく。
・摘果蜜柑の皮をむき、薄く輪切りにスライスしておく。
・じゃがいもを熱湯でさっと茹でる。(ガスコンロ強火1分)
・巻きすの上にラップを敷き、じゃがいもの桂剥きを敷く。鯵、摘果蜜柑、紫蘇の順番に置き、丸めていく。30分ほど置いておく。
★砧巻き②
・一晩、水切りしておく。
・ムロ鯵を三枚おろしにし、皮を剥いでおく。魚の皮、あらは出汁用にとっておく。
・魚の皮、あらを焼く。鍋に水を入れ、あら、野菜の皮、酒、昆布を入れて煮出し、出汁をとる。(ガスコンロ強火30分)桂剥きした野菜、あらを出汁に使用。
・ムロ鯵をなめらかになるまでフードプロセッサーする。ビーツを1センチ角のサイコロ状に切っておく。その中に、酒、味醂、薄口醤油、片栗粉、豆腐、卵黄を入れてフードプロセッサーする。真丈を出汁で耳たぶくらいの硬さに調節する。(フードプロセッサー10分)
・真丈に角切りのビーツを入れ混ぜ、ラップで細長く筒状にし、巻きすで巻く。スチームで100℃、10分蒸す。(スチコン100℃15分)
・巻きすにラップを敷き、じゃがいもの桂剥き、紫蘇、真丈の順にのせて巻く。30分ほど置いておく。
小澤萌佳さん(島食の寺子屋)
島の吹き寄せ焼き
季節の南蛮漬け
食糧難が嘆かれる一方で飽食状態が続いている近年、価格の高さや調理・ごみの処理が面倒・骨があり食べにくいなどの理由で、子供から若者だけでなくシニア層まで魚離れが進んでいる。
そこで、調理時間が短く、魚を捌く必要も、ロスもほとんど出ない圧力調理を活用し、誰もが骨を気にせず、安心して食べられるレシピを考案した。
生産現場から島の食材と向き合っていると、日々の忙しさや食べ物に溢れる昨今、忘れられがちな”旬”や”命の有り難さ”を感じることが多い。食べる事は生きる事。今こそ食を通して、一人ひとりが大切な命をいただいて生きているという意識を持つことが、より一層大事だと考える。
島で獲れた食材のみを使用して、季節の彩りを感じ、栄養も余す事なく食べられる一品に仕上げた。圧力鍋を活用した調理で、誰もが魚を気軽に手に取り、食卓を彩る機会が増えることを願って。
使用したシーフードについて
マサバ/丸アジ/ムロアジ/イワシ
・定置網漁/漁獲海域:海士町/天然/定置網漁は魚が自由に出入りできる仕組みになっており、最近網を大きくしたため回遊する魚を取りすぎず、出荷されない小魚は入らないような工夫をしている。それでも一定数ある未利用魚の小魚や収量が少ない魚を利用しました。
材料リスト
水煮
・未利用魚/200g(島根県隠岐郡海士町産)徒歩5分圏内の漁港から調達。内臓・目玉以外使用。
・水/1.2L
・酒/100cc(京都府京都市産)**
・酢/30cc(広島県広島市産)**
寄せ焼き
・卵/3個(島根県隠岐郡海士町産)**
・木綿豆腐/水切り後100g(島根県隠岐郡海士町産)島の商店で作られたもの(一晩水切りする)
・白味噌/50g(島根県隠岐郡海士町産)
・片栗粉/10g(熊本県熊本市産)**
・砂糖/10g(兵庫県神戸市産)**
・濃口醤油/小さじ1(6g)(兵庫県たつの市産)**
・みりん/大さじ1(18g)(京都府京都市産)**
・かぼちゃ/50g(島根県隠岐郡海士町産)**
・ビーツ/40g(島根県隠岐郡海士町産)**島でドイツの方が作られているオーガニック野菜
・剥き栗刻み(加熱済)/50g(島根県隠岐郡海士町産)**島の栗林から調達して、皮剥き、加熱後刻み冷凍保存していたもの
南蛮漬け
・糸瓜/200g(島根県隠岐郡海士町産)**
・赤玉ねぎ/50g(島根県隠岐郡海士町産)**
・摘果みかん/100g(島根県隠岐郡海士町産)島のみかん農家さんの摘果作業を手伝い頂いたもの
・水煮の出汁/180cc
・薄口醤油/30cc(兵庫県たつの市産)**
・砂糖/20g(兵庫県神戸市産)**
・酢/60cc(広島県広島市産)**
・海士の塩/1g(島根県隠岐郡海士町産)**
・鷹の爪/1本(島根県隠岐郡海士町産)**
調理手順
下準備
・未利用魚:200g 鱗、内臓を除き水洗いし、霜降り後圧力鍋に入れる。水、酒、酢を入れて蓋を閉め、沸騰から40分加圧。(ガスコンロ中火〜弱火17分〜40分)圧力調理で短時間で骨まで柔らかく。煮汁も使用。
・木綿豆腐:200g 水切りする。フードプロセッサー
・ビーツ:50g スライス・型抜きして、周りの部分を粗みじんにする。生地と飾り用に半分に分ける。
・かぼちゃ:50g スライス・型抜きして、周りの部分を粗みじんにする。生地と飾り用に半分に分ける。
・糸瓜:200g 皮剥き後、沸騰したお湯でほぐれるまで茹で、冷水に取り水気を絞る
・赤玉ねぎ:100g スライス後、水にさらす
・摘果みかん:100g よく水洗いして皮を剥き、果肉部分を切り取る。皮の綺麗な部分は飾りに使用する
寄せ焼き
・スチームコンベンション、コンビ180℃で20分予熱する。スチコン
・水煮の身と水切りした豆腐をプロセッサーにかけなめらかになったら、卵、白味噌、片栗粉、砂糖、濃口醤油、みりんを加えて更に回す。
・流し缶に生地を流し込み、刻んだ栗、かぼちゃ、ビーツを散らして加熱。10分程加熱したら、アルミホイルを被せて残り10分加熱する。(スチコン20分)
南蛮漬け
・水煮の出汁:180cc 水煮の出汁と薄口醤油、砂糖、酢、塩を小鍋に合わせ、一煮立ちさせて急冷する。(ガスコンロ中火5分)
・加熱した糸瓜、摘果みかん、炙った鷹の爪を漬ける*
・赤玉ねぎは変色しないよう、盛り付け前に混ぜ合わせる*
山内透子さん(辻󠄀調理師専門学校)
Un plat pour l’avenir
〜未来へつなぐバトン〜
今夏のセミナーを通じて、 限られた資源に依存しないように漁獲の管理や未利用魚の活用等が「漁獲」の期待される点であるならば、「持続力の拡大」として環境を保全しつつ、魚を安定して供給するシステムを広げていくのが「養殖」に期待される点であると考えた。
私の一皿は調理師としての使用量や革新的な技術としては微力ながらも、発信を通じて養殖における「より良く」を広げられたらと切に願う。
現状はいち学生であり、小さな声に過ぎないが、受賞をすることで同学の今後を担う調理師の卵への意識づけは勿論、持続に関心のある方々に「空地や地元の地下水の活用や海を汚さずに魚を育てようという意識」、「持続性を高める養殖のあり方」に着目して頂き、共感してもらうことが「変える力」になり、より発展することを目的としている。
養殖はおいしい魚を安定的に食べるだけではなく、生態系を守り、食文化を繋げていく重要な柱であるという事を伝えたい。
使用したシーフードについて
ヒラメ
・漁獲海域:滋賀県草津市/養殖(陸上養殖)/滋賀県にあるアクアステージでは、ヒラメをはじめとする魚介類を廃校舎で養殖している。これにより施設のコストを軽減するだけでなく、空地に価値を与えている。
バナメイエビ
・漁獲海域:岐阜県瑞浪市/養殖(陸上養殖)/岐阜県瑞浪市は、エビの閉鎖循環式陸上養殖を行っている。岐阜県には海がないものの、栄養を多分に含んだ瑞浪市の地下水、川の水を使用することで、エビの健やかな生育を可能にしているという。
牡蠣
・漁獲海域:広島県/養殖(海面養殖)/広島県では、波が穏やかであることや、太田川からの栄養分が豊富にあることが理由として牡蠣の海面養殖が盛んである。一方で牡蠣の排泄物が海底に堆積し、蓋をするようになっていることが問題になっている。そこで、定期的な海底耕うんにより海底をひっくり返し、水中に栄養素を放出させている。また、牡蠣の殻を焼成して砕き海にまくことで、海底のヘドロからの硫化水素発生を抑える取り組みもなされているという。
材料リスト
メイン
・ヒラメ-五枚おろしにする/1尾分(600g)(滋賀県草津市産)**滋賀県産、室内養殖されたもの
・天日塩/2g(兵庫県淡路市産)海水 兵庫県淡路市産 100% 海に囲まれながらも自給率11%に留まる国産の塩をあえて使用
・胡椒/少量(栃木県足利市)胡椒の実 マレーシア産 100%
・きゅうり-薄くスライスし塩・ローズマリーにつける/1本(80g)(京都府京都市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・ズッキーニ-薄くスライスし、塩・ローズマリーにつける/1本(100g)(京都府京都市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・天日塩/2g(兵庫県淡路市)海水 兵庫県淡路市産 100%
・ローズマリー/2g(辻󠄀調理師専門学校産)**学校で栽培
・バナメイエビ-細かく刻む/120g(岐阜県瑞浪市産)**岐阜県産「きよらえび」使用
・背脂-細かく刻む/30g(大阪府堺市産)**流通面での環境保全を踏まえ、関西圏での生産や加工物を開拓
・筍水煮-細切りにする/75g(京都府京都市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・葱油/12g(大阪府堺市)玉葱・ラード 大阪府堺市産 100%
・片栗粉/10g(北海道北見市)馬鈴薯 北海道北見市産 100%
・天日塩/3g(兵庫県淡路市)海水 兵庫県淡路市産 100%
・砂糖/2g(北海道北見市)てん菜 北海道北見市産 100%
・醤油/1g(和歌山県有田郡)黒大豆 兵庫県丹波篠山市 100% 塩 長崎県五島市産 100% 小麦粉 北海道産 100%
・胡椒/少量(栃木県足利市)胡椒の実 マレーシア産 100%
・ゴマペースト/1g(大阪府八尾市)鹿児島県喜界島産
・ごま油/1.5g(大阪府八尾市)鹿児島県喜界島産
盛り付け
・ブロッコリースプラウト/少量(広島県広島市産)**村上農園のマイクロハーブ
・アマランサス/少量(広島県広島市産)**村上農園のマイクロハーブ
・ローズマリーの花/少量(辻󠄀調理師専門学校)**学校で栽培
ソース
・バナメイエビの殻/150g(岐阜県瑞浪市産)**エビ餡のエビから剥いたものも使用
・ヒラメの骨/1尾分(滋賀県草津市産)**メインのヒラメから出たもの
・レッドオニオン-薄切りにする/1個(160g)(京都府京都市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・トマト/60g(京都府京都市産)地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・天日塩/2g(兵庫県淡路市産)海水 兵庫県淡路市産 100%
・胡椒/少量(栃木県足利市)胡椒の実 マレーシア産 100%
・生クリーム/10g(大阪府堺市産)
・薄力粉/4g(北海道富良野市産)小麦 北海道富良野市産 100%
・バター/4g(北海道富良野市産)乳 北海道産 100%
付け合わせ
・牡蠣/4個(広島県廿日市産)**広島県産、MEL認証のもの
・葱-細切りにする/0.5本分(40g)(大阪府堺市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・ピーナッツ油/15g(千葉県八街市産)ピーナッツ 千葉県八街市産 100%
・鶏ガラスープ/20g(大阪府堺市産)鶏ガラ 大阪府堺市産 100%
・醤油/2g(和歌山県有田郡)黒大豆 兵庫県丹波篠山市 100% 塩 長崎県五島市産 100% 小麦粉 北海道産 100%
・しょっつる/3g(秋田県男鹿市産)はたはた 秋田県産 100%
・砂糖/少量(北海道北見市産)てん菜 北海道北見市産 100%
調理手順
ソース
・バナメイエビの殻・150g/レッドオニオン‐薄切りにする・160g:
バナメイエビの殻、ヒラメの骨、レッドオニオンの薄切りを220℃のスチームコンベクションオーブンで香ばしい香りがするまで加熱する。(スチームコンベクションオーブン5kW10分)加熱時間を減らすために殻はよく水気を切って置く
・レッドオニオン‐薄切りにする:
160g 魚介類の殻、骨は全てメインの下処理からでたものを使用する
・トマト:
60g 焼いたバナメイエビ~レッドオニオンとトマトと水200gを合わせてミキサーにかける。(ミキサー300W 0.5分)事前にミキサーで食材を粉砕し、より早く液体に味が出るようにし、加熱時間を減らす
水分が約1/2(煮汁が200g)になるまで煮詰める。(ガスコンロ弱火10分)ーA
・薄力粉・4g/バター・4g:
バターを火にかけて溶かし、薄力粉を加えて熱し、ブール・マニエを作る(ガスコンロ弱火0.5分)
・天日塩・2g/胡椒・少量/生クリーム・10g:
Aの煮汁を裏ごして火にかけ、塩・胡椒・生クリームを加え、ブール・マニエを加えて濃度つける(ガスコンロ弱火1分)
エビ餡
・バナメイエビ-小さく刻む・120g/塩・3g:
バナメイエビをボウルに入れ、塩を加えて粘りが出るまで混ぜる
・ヒラメ-五枚おろしにする・30g/筍水煮-細切りにする・75g/砂糖・2g/醤油・1g/胡椒・少量/ゴマペースト・1g/ごま油・1.5g/葱油・12g/片栗粉・10g:
粘りがでたエビに記載の残りの材料、調味料を混ぜ合わせる
メイン
・きゅうり-薄くスライスし塩・ローズマリーにつける・80g/ズッキーニ- 薄くスライスし、塩・ローズマリーにつける・100g:
きゅうり、ズッキーニは水気をよく取り、12cm×5mm幅に切り、格子状に組み合わせる
・ヒラメ・300g/天日塩・2g/胡椒・少量:
ヒラメは皮を剥ぎ、表面の縞模様が保たれるようにして開き、塩・胡椒で下味をつける
・エビ餡を円柱状に成形し、ヒラメを巻き付けて、ラップで巻いて両口を結ぶ
・スチームコンベクションオーブン(スチーム)で6分間蒸す(スチームコンベクションオーブン5kW 6分)スチームコンベクションオーブンで蒸すことで、食材そのものの味を残しつつ低カーボンになるようにした
・蒸したヒラメに格子状のきゅうり・ズッキーニを巻き付け、さらに2分蒸す(スチームコンベクションオーブン5kW 2分)ーB
付け合わせ
・牡蠣:
4個 牡蠣は2分蒸して殻を開ける(スチームコンベクションオーブン5kW 2分)Bのヒラメと一緒に蒸すことで加熱時間を減らす
・葱-細切りにする・40g/ピーナッツ油・15g:
牡蠣の上に細切りにした葱を乗せ、高温に熱したピーナッツ油を上からかける(ガスコンロ強火0.5分)ーC
・鶏ガラスープ・20g/醤油・2g/しょっつる・3g/砂糖・少量:
ピーナッツ油を熱した鍋に鶏ガラスープ・醤油・しょっつる・砂糖を合わせたものを加えて余熱で温める、牡蠣にかける。Cのフライパンをそのまま使用し、余熱で温めることでガスの使用時間を短縮している
盛り付け
・ブロッコリースプラウト・少量/アマランサス・少量/ローズマリーの花・少量:
皿の上に牡蠣を乗せ、中央やや手前にソースを配置し、その上にヒラメを乗せる。ヒラメの上にブロッコリースプラウト、アマランサス、ローズマリーの花を乗せる