CREATIVE CHEFS BOX 2030 Vol.3「ファイナリストレシピ」

今年は、予告期間が短く応募総数は多くはなかったものの、
21名の方からご応募いただき、
その中でも特に優れたファイナリストを11名選出させていただきました。

遠藤 泰希 さん(ザ・キャピトルホテル東急)

そば粉100%のフルーツガレット

輸入品に頼り失われつつある地産地消文化。意識して国産や地元の食材を使用される方は限られていると思います。

近年、食品ロス問題でまだ食べれるのに捨てられてしまう現状があり、それを変えていきたいと考えるようになりました。

私は国産、地元の食材を使用して2030年に少しでも地産地消に目を向ける人を増やすためにレシピを考案させていただきました。この料理は地元の食材のそばを捨てる部分をなくす意識で考えていて、そば殻を出さないように全粒粉100%を使用することで捨てるとこをなくし、ヴィーガンにも食べていただけるようにしました。

今回使用しているりんごの皮を活用してコンポートにする際にミルサーで撹拌して一緒に煮詰めることで赤く染めました。捨てられてしまいがちですが洗えば食べられます。

完熟をすぎたフルーツや売れ残ってしまった食品ロスの現状を知ってもらいたいという想いを乗せた一皿です。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

輸入品に頼った日本人たち。2030年に名産品残せるのか?

材料リスト

3人分

<A>
紅玉りんご3個(630g)
きび砂糖(りんごの重量の30%→189g)
白ワイン10g(ミルサーがまわる程度の分量)
レモン汁10g

<B>
秦野産のピーナッツ63g
きび砂糖15g
グレープシードオイル13g
塩2gB有機豆乳40g

<C>
秦野産のそば100%のそば粉100g
水250g
塩2g

<D>
完熟をすぎたいちご4個
Aのコンポートで使用したシロップ

<E>
レモンバーム10g
パセリ20g
レモン汁10g
塩1g
水100g

<F>
キサンタンガム2g

<G>
ブルーベリー4個

<H>
サラダ油1g

<I>
有機豆乳100g
きび砂糖15g

<J>
完熟をすぎたいちじく3個

<K>ミント3枚

調理手順

①Aのりんごを八つ切りにして重さを量り、その30%のきび砂糖を用意。皮をむきながらりんごにきび砂糖をまぶし、鍋に敷き詰めていく。このときにレモン汁を加える。皮を刻み白ワインを加え、ミルサーで撹拌する。弱火で火をつけて水分がたっぷり出たところで皮を加え、アクを取り除き落とし蓋をして強火で煮る。煮上がったら、一晩このまま置いておく。

②Bのピーナッツを150℃のオーブンで12分ローストする。ローストした物をミルサーで撹拌してきび砂糖、塩、グレープシードオイルを加える。ミルサーから取り出した物を有機豆乳で伸ばす。

③Cをボウルでダマがなくなるまで混ぜ合わせてこし、一晩冷蔵庫で寝かせる。

④Aのシロップといちごを火にかけてゴムベラでつぶしながら煮詰めてソースにする。

⑤レモンバーム以外のEをミキサーに入れて撹拌する。最後にレモンバームの葉を入れて撹拌する。ボウルに取り出してキサンタンガムでとろみをつける。

⑥Iをボウルに入れてホイッパーでツノが立つまで泡立てます。

⑦テフロンのフライパンにペーパーで油をぬり、弱火で加熱する。70ccレードルでCを流して薄く広げて両面に焼き色をつける。折りたたみ①のコンポートをスライスして乗せ、150℃のオーブンに10分入れる。②をディッシャーで抜いて6分の1カットのいちじく4個とブルーベリーを4個乗せ、⑥を少々真ん中に乗せてミントで飾る。④と⑤のソースで点を描く。

審査員コメント

まず、日本人の消費傾向について問いを見出すストーリー性の面白さを評価し、ビーガンという少し難しい料理法にチャレンジされたことが素敵だと思います。

植物性の料理の難しさは、どのようにして香りとコクを出して味わいを作るかなのですが、ピーナッツや完熟を過ぎたフルーツで味わいを出されたと思います。是非、食べてみたかったです。

自然農法のフルーツなどの廃棄品を使うなどの心意気は、料理人(パティシエ?)としてとても素晴らしいです。アドバイスとしては、キサンタンガムの他にも、別のものでとろみをつけた方が断然おいしくなるでしょう。

吉川 琴晴 さん(ザ・キャピトルホテル東急)

プッチィーニカボチャのウニリゾット
~スープ仕立て~

キャベツウニという言葉を耳にしたことはありますか?

近年、温暖化による磯焼けで大量発生したムラサキウニが海藻を食い荒らしたことが問題になりました。餌不足で身入りが悪く食用に適さない為、地元神奈川でも駆除されていましが、三浦特産のキャベツを与えた所甘みが増し身入りの良い「キャベツウニ」が誕生しました。
ウニの餌は端材や規格外野菜を使い食品ロスに貢献しています。

磯焼けの解消×食品ロスの一石二鳥であるウニと、同じ三浦で採れた規格外の南瓜を組み合わせ地産地消を意識したレシピを考案しました。

濃厚なリゾットに香ばしくとろっと溶けたチーズ、柔らかく煮込んだ南瓜を丸ごと崩しながら野菜スープと共に楽しめる季節感のある家庭でも作りやすい一皿に仕上げました。

この一皿が海洋問題の解消や食品ロス・地産地消の推奨になると私は考えます。藻場は生命のゆりかごともいえる神秘の場。私達の料理がこの場所を守る一助となる事を願って。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

海を取り巻く問題は2030年どうなっているだろうか

材料リスト

4人分

<器に使うプッチィーニカボチャ>
直径9㎝程度のもの4つ(計320g)

<野菜ブイヨン>
くり抜いた南瓜の種・ワタ 玉ねぎ 1/2
皮ごと使った人参 1/4
キャベツの葉 1/6
水 800cc
紅芯大根 1/8
塩 適量

<リゾット>
玄米-よく洗い水に1日浸しておく 2合(360㏄)
玄米を炊く時の水 450cc
野菜ブイヨン 280cc
南瓜(くり抜いた中身) 160g
キャベツウニ 80g
カチョカヴァロ‐削っておく 80g
オリーブオイル 大さじ1
塩・胡椒 適量

<リゾット仕上げ>
カチョカヴァロ‐削っておく(以下チーズ)60g
キャベツウニ 20g
青ミカン 適量

<最後の仕上げ>
野菜ブイヨン 360cc(1人前90cc)

調理手順

<下準備>南瓜
①よく洗い軽く水気を切ってラップする
②スチームコンベクションで100℃20分加熱。串がスッと通り軽く指が入る程度が目安
③蓋になる部分をカットし中身をくり抜き、種とワタはブイヨンに、中身はリゾット用に分ける

<野菜ブイヨン>
①スライスした野菜と南瓜の種・ワタ、水を手鍋に入れ蓋をして中火にかける
②野菜に火が入り、紅芯大根から色が出たらシノワで濾す
③味を見て塩を加え再度火にかけ沸かす

<南瓜火入れ>
①小鍋に南瓜と浸るくらいの野菜ブイヨンを入れ中火にかけ、沸いたら火を弱め3分煮る
②皮が柔らかくなったら、冷めるときに味が染みていくので鍋ごと冷ます

<リゾット>(下準備)玄米を炊く‐
①玄米をザルにあげ水気をしっかり切り、鍋に玄米と水を入れ中火にかける
②沸騰したら塩を加えひと混ぜして3分加熱、蓋をし弱火で30分炊き火を止めて30分蒸らす

<リゾット>
①玄米と野菜ブイヨンを手鍋に入れ中火にかける
②玄米をほぐし水分を飛ばす 焦げないよう常に混ぜる
③8割水分が飛んだら塩・胡椒・オリーブオイルを入れ、南瓜を食感が残るよう軽く潰し入れる
④火から離しウニとチーズを入れ、再度火にかけチーズの粘りが出るようしっかり混ぜる
⑤くり抜いた南瓜に90gリゾットを詰める             〔仕上げ〕①リゾットにチーズを乗せサラマンダーで焼き目をつけ、ウニもバーナーで軽く炙り飾る    ②青ミカンを削り乗せ、皿に移して温かいブイヨンをかける。

審査員コメント

キャベツウニ素晴らしいと思います。藻場を守る取り組みに美味しさでアプローチできることが本当に食卓と環境を近い場所にする気がします。未来は藻類にもあると言えます。

素晴らしい気づきを料理からご提案してくださり、ありがとうございます。

リゾットの作り方は、リゾットと言うなら本格的に出来たらもっと素晴らしかった。

芦田 美貴 さん(ザ・キャピトルホテル東急)

鮎と東京野菜のテリーヌ

昔多摩川で、たくさんの鮎がとれていた時代があるのを知っていますか?

多摩川の鮎は1960年代水質汚濁により激減しましたが自治体や生産者が水質改善に取り組んできた結果、少量ではありますが市場に流通するようになってきました。

北大路魯山人の料亭【星ヶ丘】を継承するホテルで働いている私は、そこで提供されていた鮎の塩焼きを現代のスタイルに再構築し野菜と共にテリーヌに仕立てました。

野菜は地産地消にこだわり東京産を使用し、鮎の頭、骨は出汁やパウダーに内臓はブランダードに野菜の端材は出汁やソースに使用し食品ロスを無くすようにしました。

今はまだ多摩川の鮎の流通は少ないですが地産地消食材の積極的な使用、食品ロスの軽減などを考慮したレシピを考え確実に実行していくことが、私達料理人が生産者と共に持続可能な社会を構築していく第一歩に繋がるのではないでしょうか

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

持続可能な社会の為に料理人が出来る事は?

材料リスト

10人分(30×10㎝のテリーヌ型を使用)

・鮎10尾(鮎の頭、内臓を取り除き三枚に卸す) →身には0.8%の塩、内臓には1%の塩をする
・小松菜8束
・葱6本
・胡瓜5本(野菜は洗浄、掃除する)
・じゃがいも200g(スチームコンベクションで加熱)
・玉葱3個(薄くスライス)
・板ゼラチン50g
・水2.5
・サラダ油200ml
・オリーブオイル200ml
・塩 胡椒適量
・タイム 3本
・ニンニク 2片

調理手順

<鮎のコンフィ>
①卸した身にサラダ油、オリーブオイル、タイム、ニンニクと共に真空パックする、内臓も同様にパックし85℃スチームコンベクションで1時間加熱

<ブランダード>
①玉葱をコンフィで使用した油で飴色になるまでソテーする
②コンフィにした鮎とジャガイモを混ぜ合わせ重量に対して5%のゼラチンを加える
③コンフィにした内臓を加えミキサーで細かくし塩で味を調える

<鮎と野菜のブイヨン>
①鮎の頭と骨を200℃のオーブンで5分焼きパウダーで使う骨3本は別にする
②骨と野菜2の水で出汁をひく、下処理した野菜の端材も加える
③約20分加熱しシノアで濾し3分の2量まで煮詰める

<テリーヌ>
①小松菜、胡瓜はカットし3%の塩のお湯でブランシールし氷水で冷やし、葱は上記のブイヨンで柔らかくなるまで煮てしっかり水気をとる
②ソースで使用する200を除いた800の重量に対し5%のゼラチンを加え塩で味を調える
③型にラップを敷きブランダード、胡瓜、葱、小松菜の順で重ね、間にゼリーを流していく
④皮目を焼いた鮎を並べていき上にゼリーを流し平らになる様に重しを乗せて冷蔵庫で固める

<野菜のソース>
火入れしたテリーヌ野菜の端材とブイヨンを合わせてミキサーにかけ、塩、レモンで味を調える

<骨のパウダー>
焼いた骨をミキサーで細かくし乾燥させる

<盛り付け>
テリーヌを3㎝にカットしソースを流し骨のパウダーとオリーブオイルを飾り完成

審査員コメント
東京の身近な現実と環境を掘り下げたレシピは、私達東京に住むものにとっても非常に興味深く、
今までずっと続いてきたものも、あたり前ではなく、急に無くなる日も来るのだということを感じさせます。

このようなこれからの私達の生活に密接に関わる考え方を是非、身の回りのことから始めて、広めてください。素敵なお皿でした。

白井 翔太郎 さん(株式会社ひらまつ レストランひらまつ高台寺)

京都府産のお野菜を使った
古代米のお茶漬け

ある日、畑の前を通りかかった際に出荷用に綺麗に陳列されたたくさんのお野菜やお米の稲などの隣に形が悪い物や少し傷がついた物などが置いてあるのを見て疑問に思いました。

市場やスーパーに並ぶ野菜類の価格は近年、高騰している中で農業内で廃棄する物があることを知り、野菜を多く取り入れた料理を作ろうと考えました。
また、漁業に関しては水揚げしたが市場に出せない「未利用魚」の存在を漁業関係者の方に聞き、そのような一般に出回っていないものではありますが命に変わりはなく廃棄することはいけないと思い、身と骨やアラを使える料理を考えました。

さらに食材全体の価格高騰が問題視されていることから、地産地消という点にこだわる事で遠方からの配送にかかる送料やその際に発生する汚染ガスを抑える事ができないだろうかと考え、京都府産の食材を使ったレシピを作成しました。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

地産地消を活用し農業漁業の抱える廃棄率問題を解決できないか?

材料リスト

6人分

<A>
人参60g
蕪60g
バターナッツ60g
じゃがいも60g ※上記は皮付きの状態

・黒枝豆30粒分
・古代米15g
・大麦35g
・お水500cc
・未利用魚60g
・魚の骨やアラ50~75g
・宇治煎茶 茶殻(乾燥)適量
・宇治煎茶茶殻(生)40g

<B>
水50cc
砂糖15g
醤油20~25g
味醂15g

調理手順

①野菜(A)の皮を剥き、皮は捨てずに自然乾燥させておく。

②皮を剥いた野菜(A)を0.5cm角に切り揃える。

③黒枝豆は塩1%のお湯で7~8分茹で、冷水に落とす。黒枝豆は粗熱が取れたら外の皮、薄皮まで剥く。

④お魚を3枚に卸し、アラは血合いを綺麗に洗い流水にかけておく。身は薄く切ったものを3切用意し、盛り付け前にお出汁でしゃぶしゃぶにする。

⑤鍋に水と乾燥させた野菜の皮、魚のアラを入れ中火にかける。沸いてきたら灰汁を丁寧に取り弱火で10~12分旨みを抽出する。旨みが抽出できれば細かい濾し器で濾して塩のみで調味する。

⑥大麦と古代米「朝紫」、1.2倍の調味したお出汁を入れ炊いておく。

⑦宇治煎茶の茶殻で乾燥させたものはミルサーでパウダー状にする。生の茶殻は佃煮にする。浅い鍋に調味料(B)を全て入れ軽く煮立て、茶殻を入れる。水分がほぼ無くなるまで煮詰めて完成。

⑧切り揃えた野菜(A)を調味したお出汁で1.5~2分程、茹でて火入れする。火入れ出来れば野菜のみを取り出して、出汁は野菜の旨みがさらに加わっている為そのまま使う。

⑨大麦と古代米を深鍋に入れ、20ccほどのお出汁を加えて水分を飛ばしながら温め直す。

⑩お皿にセルクルを置いて大麦と古代米、野菜類、魚の順番で積み重ねていき、セルクルを抜く。お魚の上に茶殻の佃煮を添える。周りに茶殻パウダーを振る。お出汁を温めて注いで完成。

審査員コメント

食材廃棄をテーマに、地産地消はとても良いアクションだと言えます。食材の選び方にもこだわりを感じるのと、在来の素材を誇りを持って使っているところが素晴らしいです。

これからも料理人として、そのような活動を広めてほしいと思います。シンプルですが美しい盛り付けです。

北澤 孝騎 さん(ザ・キャピトルホテル東急)

東京野菜を使った
飛龍頭スピルリナあん

プラントベースが近年注目されているなかで、日本の食文化を守りつつ、サステナブル食材を使った新しくも、懐かしい食を考え、私は、日本人が古くから食べてきた豆腐と近年栄養価が高く注目されつつあるスピルリナに目を付けました。

スピルリナは今はまだマイナーな食材なうえ危険なイメージや見た目等で嫌悪感をもたれています。
豆腐もまた、味が無く触感も独特なものであまり海外からの反応が良くなく、ベジタリアン、ヴィーガンのための食べ物と言ったイメージがあると海外のつながり等で知りました。

その事実を知った私は、勿体無いと思い豆腐はこんなにも変幻自在で美味しく食べれる物であると少しでも多くの人に知ってもらいたいと思い、伝統的な豆腐料理である飛龍頭をアレンジしたこのレシピを考えました。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

日本食文化にサスティナブル食材を取り入れた需要の拡大

材料リスト

2人分

木綿豆腐300g
人参100g
蓮根30g
占地10g
丸十50g
長ネギ20g
もって菊2g
昆布10g
大和芋50g
スピルリナ2g
水1000cc
片栗粉10g
薄口醤油38cc+5cc、味醂38cc+5cc 

調理手順

①水に昆布を入れ一日つけおき火にかけ沸く直前に取り出し出汁をとる

②昆布出汁720㏄に薄口38cc、味醂38ccを入れ合わせ地を作る

③人参を紅葉型に4個抜き、蓮根、丸十を四枚ずつスライスし丸十を銀杏型に抜き、それぞれの残りは小角に切る

④スライス蓮根は片栗粉を打ち150℃の油で揚げる、銀杏丸十は150℃の油で揚げる

⑤占地はほぐして、先ほどの合わせ地で紅葉人参と共に炊く

⑥小角に切った人参、蓮根、丸十を茹でておく

⑦長葱を開いて細く切り、もって菊とまぜる

⑧木綿豆腐は茹でてからガーゼに包み重しをして1日置いておく

⑨大和芋の皮を剥きすりおろし、先ほどの木綿豆腐とフードプロセッサーにかけ生地を作る、できた生地に小角に切って茹でた野菜、細切りにした出汁を取った昆布を混ぜ合わせ、40gに小分けする、160℃の油で小分け生地を成形しながら上げる(手に油をつけながら成形)

⑩ 揚げた飛龍頭を先ほどの合わせ地で炊いておく

⑪残った昆布出汁180ccに薄口5cc、味醂5ccで味付けをして片栗粉でとろみをつけ、スピルリナを加えあんを作る

⑫器にスピルリナあんを敷き、飛龍頭を盛り付け、炊いた人参、占地、揚げた蓮根、丸十を盛り付け、白髪ネギもって菊をのせて完成

審査員コメント

豆腐料理の研究でたくさんの気づきを発見されたことは、良い経験となったのではないでしょうか?

また、日本の大豆の生産量をもっと伸ばせるようになると、未来の自給率も上がり海外からの関心も増えるのではないでしょうか。

神谷 剛 さん(ザ・キャピトルホテル東急)

東京湾の鱸を使った昆布締めの
カルパッチョとプレッセ

現在日本の漁獲量は急激に減少しつつある。
原因として、乱獲が挙げられる。この問題が続けば遠くない未来で、今食べている魚が食べれなくなるかもしれない。それを防ぐ為には
MEL認証 やASC/MSC認証などの魚を認知し積極的に摂取していくべきだと考える。

今回使用した鱸は東京湾の海光物産で獲れたMEL認証のものだ。この漁港では産卵を控えるメスを海に戻すこと、「いつ」「どこで」「どれくらい」獲れたのかを記録して定量的水産資源管理が行われている。

このような取り組みをもっと多くの人に知ってもらい食べてほしいと思いこの鱸をメインにした料理を考えた。

都内、東京近郊の野菜を合わせて鱸の上品な旨味を活かした和テイストなフレンチの冷菜にした。 低温で火入れしたプレッセと昆布締めした生の鱸2つのテクスチャを食べ比べてもらいたい。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

遠くない未来で今ある魚を食べて続けて行くために認知すべきこと

材料リスト

7人分

<昆布締め>
瞬〆すずき280g(半身分)
昆布2枚
日本酒10g
塩3.08g(1.1%)

<ピクルス>
大根30g
紅芯大根50g
塩2g
a きび砂糖20g
有機リンゴ酢40g
水60g
蕪35g
花セルフィーユ少々

<プレッセ>
瞬〆すずき350g (半身分)
塩3.5g(1%)
胡椒
昆布パウダー(昆布締めで使ったものを加工)7g

<ディクセル>
椎茸の軸(営業でロスになるもの)50g
梅肉15g

<蕪の葉チュイル>
蕪の葉と茎30g
水10g
米粉25g 塩少々

<蕪ソース>
蕪5玉
生クリーム100g
塩胡椒

<梅ソース>
紫蘇梅肉30g
ハチミツ10g
水10g程度

<皮せんべい>
鱸の皮(昆布締めの際ひいたもの)
ライスペーパー1/2枚
塩少々 赤からしみずな30g

調理手順

<昆布締めのカルパッチョ>
①鱸の皮をひき1.1%の塩をうち1時間おいて脱水
②昆布を日本酒で拭き鱸を昆布でサンドし真空パックして7時間寝かせる。※皮も一緒にパックする ③1人前約40gになるよう6枚から8枚スライスして少し重なるように並べてシート状にする
④aを鍋で沸かして粗熱が取れたら5mm角に切った大根2種をそれぞれつけてピクルスにする
⑤蕪は1cm角にカットし塩で揉む
⑥③に花と香草と④⑤を乗っけて丸く包む 昆布パウダー 昆布締めで使用した昆布を110℃のオーブンで約1時間加熱し乾燥させミルサーでパウダーにする

<プレッセ>
①塩を1%鱸にうち昆布パウダーでマリネする
②椎茸の軸をディグセルにして梅肉と合わせたものを中に挟み皮目が上と下来るようにプレスする ③バプールで55℃の芯温52℃で火入れし粗熱を取ってから重石をして冷やす(約50分位かかる)
④冷えたら2cm幅でカット

<蕪のソース>
①蕪は皮ごと火入れ、ピューレにして生クリームを入れ味を整える

<蕪の葉のチュイル>
①蕪の葉と茎をピューレにし米粉を合わせる
②蝶の型にナッペし150℃のオーブンで10分焼き1度オーブンから出しチュイルが柔らかいうちに型から取り外し、2分焼き塩を強めにする

<梅のソース>
梅肉を水とハチミツでミルサーで回す

<皮せんべい>
昆布の味をつけた皮にライスペーパーを貼り付け少量の油で皮目からソテー

審査員コメント

乱獲は本当に今の日本の問題点であり、その解決方法を見出すための料理と発信を是非、続けてほしいです。

今の日本人の消費の仕組みも是非調べて追及しながら、クリエイティブな料理を作り続けていただきたいです。食材の研究と追求を評価したいです。

中島 美咲 さん(辻調理師専門学校)

食べる味噌汁

皆さんは自分の住む土地の郷土料理を知っていますか。 特に私たち学生は、すぐに答えることができる人は少ないのではないでしょうか。

私は和食の文化と共に衰退しつつある「郷土料理」という文化に若者にも触れてもらうため、食べる味噌汁を提案します。

ご飯は、出身地である愛知県の菜飯を現在住んでいる大阪府の大阪漬けを用いて作り、大阪府の花のさくらそうをイメージして盛り付けました。
味噌は、愛知県の八丁味噌を使って大阪で一般的な合わせ味噌を再現し、地域活性化を図った商品を使用することで郷土料理や特産品を知ってもらえるよう努めました。
味噌は冷凍保存しておけば、忙しい朝でもお湯でとくだけで簡単に栄養や水分が取れ、若者の朝食欠食率の改善に役立てると思います。

この料理を実際に食べて、今まで捨てていた食材や知らなかった調理法に触れることで、これらの問題へ興味を持つきっかけになってほしいです。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

若者にも郷土料理の文化を知ってもらうにはどうしたら良いか

材料リスト

1人分

<ご飯>
ご飯 80g
大根の葉 10g
大根の皮 10g
塩少々
にんじんの皮5g

<味噌玉>
八丁味噌 大さじ2分の1
鮭節 1g
油揚げ 10g
ゴマ 適量
白味噌 大さじ2分の1
鮭節 1g
オクラ 1本
塩 少々
生姜煎餅 1個
お湯 200ml

調理手順

<ご飯>
 ①大根の葉は細かく切って塩茹でする。
②にんじんの皮、大根の皮は細かく切って茹でる。
③1と2に塩をふり、冷蔵庫で1時間ほど置く。
④ご飯に3を混ぜる。
⑤5個に分けて丸める。

<味噌玉>
①油揚げは油抜きして一口台に切る。
②八丁味噌、鮭節、油揚げを混ぜて丸める
③オクラは塩もみ、塩茹でして水にとり、3mm幅くらいで切る。
④白味噌、鮭節を混ぜて丸める。
⑤2と4を合わせて丸め、胡麻とオクラをつける。

<盛り付け>
①器にご飯を花がたにのせ、味噌玉、生姜煎餅を乗せる。
②お湯を注ぐ。

審査員コメント

土地の郷土料理と生産物を文化的な遺産とすることで日本ならではの”スロー風土”となり、次世代につなげていける食の文化を守っていくことは重要です。

そんな気づきを若者をターゲットに考えたことを評価します。

椨木 侑眞 さん(ザ・キャピトルホテル東急)

東京宮保猪肉

2030年も食肉の需要はあると考えます。食肉文化を尊重しつつ、東京都の農業の未来を守る、サステナブルな中国料理を考案しました。

東京都の農業は獣害の被害が深刻であり、奥多摩の方では猪により農作物が被害を受けております。そこで、駆除した猪を食用に回すことで獣害の被害を減らし、農作物も守ることができるのではないかと考えました。

中国伝統の調理技法『宮保』(ピリ辛甘酢炒め)で調理することにより、酸味、辛味によりジビエの臭みを抑えつつ美味しく食べられます。猪により特に被害を受け、秋が旬のさつま芋使い、付け合わせに府中市で生産されている分葱を薬味として添えることで味、香りとともにアクセントになります。東京都で最近生産が復活した江戸前野菜の内藤唐辛子を使用し辛味をだします。

2030年の東京でジビエの普及、東京都の農業発展、エシカル消費で環境に配慮できる食肉文化が根付くよう願いを込めた一品です。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

食肉を続けつつ獣害による農作物のフードロスを減らすには

材料リスト

4人分

猪肩ロース160g
さつま芋100g
分葱40g
内藤唐辛子12本

醤油40cc
醸造酢40cc
日本酒40cc
上白糖40g
鶏がらスープ40cc
片栗粉20g
胡麻油1g
塩21g
生姜5g
胡椒少々
サラダ油200cc

調理手順

①塩分濃度10%の塩水を2リットル作る。ボウルに猪肉を入れ塩水で3回に分けて洗い、血を抜く。

②血抜きした猪とさつま芋を幅1.5cm長さ6センチの長さの棒状にカットする。分葱を長さ5cmの千切りにする。

③猪の肉ペーパーで水気を取り塩1g、胡椒少々、生姜5gで下味を付ける。

④130℃の油にさつま芋を入れて3分加熱する。3分かけて油の温度を150℃に上げる。

⑤下味を入れた猪肉に片栗粉10gをまぶし、150℃の油に2分油通しする。

⑥大さじ1の油をフライパンに入れ、内藤唐辛子を入れ加熱する。唐辛子が鮮やかな赤色に膨らみ辛味と香りを油に移す。

⑦フライパンに日本酒、上白糖、醸造酢、醤油を入れ油と乳化させる。

⑧乳化したタレに油通しした猪肉、さつま芋を入れ炒める。水溶き片栗粉を入れタレを纏わせる。

⑨細切りにした分葱と共に器に盛り付ける。

審査員コメント

害獣の被害はなぜ生まれたかも根本的に考えて、この料理をコンセプチュアルに作ったら、ガストロノミーなお皿ができそうな予感がします。

盛り付け、調理法は非常に美しい。食材の追求も素晴らしい。

田中 摂 さん(ヴェッキオ・トラム)

tortellini in brodo

地元の食材でレシピを作る上で身近にいる酪農の生産者との繋がりを思いつきました。

荒井ファームの乳牛(ホルスタイン)の経産牛を使用することはこれからの時代に適した食材であると考えました。

荒井ファームの乳牛は輸入の餌を使用せずに地元のお米や麦、わらなどをブレンドした準国産の餌でサステナブルを意識した牛の飼育を心がけています。そう言ったところからこの食材にクローズアップし考えたメニューです。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

食材に対して当たり前にあるものだと思っていること

材料リスト

1人分

経産牛のコンソメ180ml
ラグー50g
パスタ20g

調理手順

①高根沢産経産牛のひき肉、高根沢産の玉葱と人参(ブリュノワーズ)と卵白を混ぜる。

②キンキンの氷水の入った鍋に先ほどの挽肉を入れ中でバラバラにほぐす。卵白を入れてることによりひき肉などが固まり澄んだ色の出汁が取れる。

③ローリエを入れて煮詰めていく。

④ラビオリの中身は高根沢産の経産牛のももを赤ワインで煮込み玉葱とプロセッサーでペースト状にし、パルミジャーノ、塩、胡椒で味を整える。

⑤パスタは高根沢の加藤養鶏所の卵を使用して作る。その生地でラグーを包みスープに乗せて完成。

審査員コメント

経産牛を美味しく使うアイディアとしては素晴らしいのだが、クリエイティブさがあったほうがメッセージ性を感じられると思った。

調理方法などどのようにしてサスティナビリティさを打ち出しながら、地域を活性化させられるのか期待しています。

鄭 大羽 さん(フリーランス料理人)

宮崎県産食材のタルタル

料理人として活動していく過程で2030年問題は非常に身近な問題だと考えています。

私はフリーランスの料理人として全国を回り生産者を訪問しながらその食材を使って料理をしています。

今回の料理で使われている食材は100%宮崎県産の食材です。なぜ宮崎県の食材を使うことになったのかというと、宮崎県は食料自給率の生産量ベースで全国1位になっています。

今回の問いに対して宮崎県は日本全国の見本になる地域だと思いその土地の食材を使うことにしました。またオーガニックビレッジ宣言をした町もあり、2030年問題に県として取り組んでいる素晴らしい地域です。

今回のレシピは宮崎県の素晴らしい食材を地産地消し、それらの食材を作られている力強く温かい生産者さんに寄り添える優しい料理に仕上げることにしました。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

2030年に向け日本が食料自給率を上げるためのお手本?

材料リスト

2人分

<ゼリーシート>
まいたけ50g
椎茸5個
廃棄される野菜の皮やくず(玉ねぎ、長ネギ、大根、にんじん等50g)
水500ml
板ゼラチン4g
塩 適量

<タルタル>
サクラマス100g
つきみいくら大さじ1
イシマル製茶園てん茶3g
イシマル製茶園抹茶パウダー小さじ1
マヨネーズ大さじ1
へべす果汁大さじ1/2
へべすゼスト適量

<玉ねぎの醤油漬け>
玉ねぎ30g
醤油30ml
水20ml
砂糖10g
お酢10ml

<バターミルク>
松浦ミルク200ml
レモン汁大さじ1

<抹茶オイル>
イシマル製茶園抹茶1g
太白胡麻油 10g

調理手順

①鍋に水、まいたけ、椎茸、野菜くずを入れ弱火で100mlになるまで煮詰める。 煮詰め濾したものに、塩、水で戻した板ゼラチンを入れ、薄いバットに流し入れ冷やし固める。固まったらセルクルなどで丸く抜く。

②サクラマスの半量はたたき滑らかにし、もう半量は0.5mmのダイスカット。

③玉ねぎの醤油漬けは、醤油、水、砂糖、お酢を鍋に入れ一度沸騰させる。そこにざく切りにした玉ねぎを入れ冷やす。冷えたら玉ねぎをみじん切りにする。

④[タルタル]に入る食材を全て混ぜ合わせる。

⑤常温にした松浦ミルクにレモン汁を入れ軽く混ぜ合わせ、15分放置。その後濾して冷やしておく。

⑥太白胡麻油と、抹茶パウダーを混ぜ合わせ抹茶オイルを作る。

⑦お皿の真ん中にタルタルを乗せ、その上にゼリーシート、へべすのゼストをかける。仕上げにバターミルクと抹茶オイルをかける。

審査員コメント

生産者に寄り添える優しい料理、というコンセプトはとても響いた。自給率の問いもとても素晴らしいと思う。

料理人として社会に気づきと思いやりを伝えられることはずっと続けてほしい。盛り付けも魅力的。

宮澤 斗和 さん(オップラ!ダ・ジターリア)

練馬野菜のランバシッチ
経産牛のスーゴと練馬産ミルクのソース

日本の中心である東京。

外からはたくさんの食材が入ってくるのが当たり前の様に感じていた。けれど東京都内にだって沢山の農地があり、野菜や酪農が行われている。

その事をもっと多くの方に知ってもらう事で、近くで手に入り、美味しく、そして低コスト。物流も余り使わないので環境にも配慮したまさに地産地消を普及していく事が可能だと考えました。

なので今回メニューに使用した食材は練馬産を中心に使用。
ランバシッチに仕立てたのは、土地の素晴らしさをひとつにまとめるという事を表現したかった為です。

ソースには経産牛の筋と調理の際にでる野菜の皮や端の部分を使用。廃棄率にも注意して作成いたしました。仕上げの火入れには釜の余熱を使い、エネルギーの点でも配慮を行いました。

2030年に向けた環境・社会・経済の課題に対しての「問い」

食料自給率全国最下位の東京。このパーセンテージを上げるには?

材料リスト

4人分

練馬産キャベツ160 g(大きい葉を4枚)
練馬大根 50 g
練馬産ブロッコリーの軸 30 g
練馬産じゃがいも 150 g
モルタデッラ 40 g
パルミジャーノ 30 g
塩胡椒 適量
経産牛すじ 150 g
水500 g
玉ねぎ皮10 g
にんじん皮 10 g
今回の調理出た野菜の皮や端 全て
ローリエ1枚
黒胡椒5粒
塩 10 g
練馬産牛乳 50 g
生クリーム 50 g
パルミジャーノ皮 20 g

調理手順

①蒸し器でじゃがいもを皮付きで柔らかくなるまで蒸す。皮を外し、マッシャーで潰す。
②ブロッコリーと大根は皮剥き、3ミリ角に切り軽く水にさらす。
③モルタデッラはフードプロセッサーで細かくすり潰す。
④①~③までの食材をボウルで合わせ、パプリカパウダー、パルミジャーノ、塩胡椒で味を整える。
⑤キャベツは蒸し器で火を通し、氷水で急冷。
⑥ラップを敷いたところにキャベツ1枚、4等分にしたタネを俵形にし巻く。
⑦蒸し器で10分蒸す。
⑧ラップから外しパルミジャーノをふりかけ、釜の余熱で焦げ目をつける。

<ソース>
①牛すじを釜の余熱で火にかけこんがり色をつける。
②水に野菜と牛すじを加え2時間炊いてこす。
③牛乳と生クリームと合わせ半分まで煮詰めて完成。

<仕上げ>
ソースを盛り、ランバシッチを乗せ、パルミジャーノをけずる

審査員コメント

東京の未来の料理はかなり難しいテーマではあると思うが、挑戦を評価したい。

窯の余熱は本当に良い調理法だと思うので、たくさん研究したら面白いと思う。

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