乱獲や気候変動の影響など、水産資源を取り巻く状況は年々深刻さを増しています。
その一方で、環境や社会に配慮した「サステナブル・スーフード」の取り組みも広がっています。

そこでSRAジャパンは、次世代を担う30歳以下の調理師・製菓衛生師養成施設の学生・調理師・料理研究家を対象に、
「サステナブル・シーフード」をテーマとしたレシピコンテストを実施しました。

コンテストと連動したセミナーもあり、例年にも増して深い学びと創意工夫が伝わる、レベルが高いレシピが出揃いました。
SRAジャパンの関係者と6名の特別審査員が審査にあたりましたが、どれも熱意が込められており、甲乙がつけ難いものでした。

そんな接戦を制した受賞者は、11月18日(月)のFOOD MADE GOOD JAPAN AWARD 2024で発表されました。
ぜひ彼らのクリエイションを讃え、一緒に未来を変えていきましょう。

最優秀賞

橋本元輝さん(d’ici)

黒鯛のナージュ仕立て
牡蠣の温製

近年、海水温の上昇により冬でも活動が活発なった黒鯛。その黒鯛が養殖海苔の食害として千葉や徳島で問題になっている。

また海苔の養殖に牡蠣の殻の中で成長させることから、黒鯛、牡蠣、海苔と私が大学生活の4年間を過ごした徳島の豊かな食材を使いサステナブルな一皿に仕上げた。

また、火入れはSDGsの観点から炭火のみを使用し環境にも配慮した調理工程となっている。

この一皿を通じて、徳島の豊富な食材と天然の水産資源の減少だけではない海の問題を知っていただきたい。

使用したシーフードについて

黒鯛
・定置網/漁獲海域:播磨灘/天然/1kg未満の黒鯛は低利用魚として扱われる。養殖海苔の食害として問題視されている。

岩牡蠣
・漁獲海域:徳島県海陽町/天然/海苔の養殖の際に牡蠣の殻の中で成長させる。

材料リスト

下準備
・昆布/8g(北海道産)**
・黒鯛/80g(兵庫県産)**豊洲で直接買い付け。1kg未満の低利用のもの。
・岩牡蠣/25g(徳島県海陽町産)**豊洲で直接買い付け。
・大根/20g(徳島県産)**規格外のもの。皮はブイヨンに使用。
・和梨/6g(徳島県産)**規格外のもの。皮はブイヨンに使用。

すだち胡椒バター
・すだちこしょう/25g(店舗内自家製産)**店舗内自家製のもの。
・セロリの葉/30g(東京都産)ブイヨンをとったセロリの残った葉。
・バター/450g(フランス産)

レンコンの絞りカス
・レンコン/450g(徳島県産)**
・鶏のブイヨン/180g(店舗内自家製産)**

海苔のチュイル
・水/100g(産)**
・薄力粉/10g(奈良県奈良市産)**無添加100%、無農薬。
・濃口醤油/10g(徳島県鳴門市産)**無添加無着色。
・黒バラ海苔/5g(東京都神津島産)**油、食塩不使用。
・オリーブオイル/10g(スペイン産)**オーガニック。

仕上げ
・マヨネーズ/10g(店舗自家製で通常営業で使用しているもの産)**
・すだち入り甘酢/50g(店舗自家製産)**
・黒バラ海苔/1g(産)**
・アリウムスター/0.2g(産)**
・フヌイユの葉/0.3g(産)**
・花穂/0.2g(産)**

調理手順

下準備
・昆布:8g水50gと昆布を入れ一晩水につけておく。本来、火にかける昆布を水出し昆布出汁として使用する。
・黒鯛:80g黒鯛を3枚おろしにし、80gポーションに切り分け串を刺す。
・岩牡蠣:25g岩牡蠣の殻を開け、身を取り出す。殻はしっかり洗い自然乾燥させる。ジュは紙漉しし、取り置く。
・大根:20g大根は切り出し、マンドリーヌで薄くスライスする。すだち甘酢に漬けておく。
・和梨:6g皮を剥き、くりぬき器で抜いておく。

すだち胡椒バター
・セロリの葉:30gセロリの葉は水洗いしすだち胡椒と共にロボクープへ入れる。
・すだちこしょう:25gポマード状にしたバターを4回に分けて加えて回しバットに広げ冷凍しておく。

レンコンの絞りカス
・レンコン:450gレンコンは皮を剥き、薄くスライスする。
・鶏のブイヨン:180g鶏のブイヨンと合わせて真空し90℃のスチコンで1時間火を入れサラシで絞りながら濾す。溜まったレンコンのジュは通常営業のパーツとして使用している。(スチコン90℃1時間)

海苔のチュイル
・全ての材料を合わせてよく混ぜる。
・フライパンの中火でパリパリになるまで焼き上げ、自然乾燥させておく。(ガスコンロ中火10分)

黒鯛の出汁
・炭を起こし、黒鯛の骨を炭でこんがりと焼く。炭火強火20分ここから、食材の火入れは炭のみで行う。
・牡蠣の殻に、水出し昆布出汁、焼いた骨、牡蠣の身を入れ墨の上に直置き蓋をしておく。5分
・湯気が出てきたら、牡蠣の身を上げて牡蠣のジュにつけて温かいところで保温しておく。出汁はさらに5分炭の上で取る。5分
・黒バラ海苔:1g牡蠣の殻に黒バラ海苔を入れておく。20分

黒鯛の火入れソースの仕上げ
・串に刺した黒鯛に塩を振り、皮目から焼いていく。皮目は近火で焼き、身側は遠火で、焼いたジュが牡蠣の殻の中に落ちるよう下に置いておく。20分
・レンコン:魚を焼いている間にレンコンの搾りかすをミルで回す。
・マヨネーズ:自家製マヨネーズと合わせてレンコンマヨネーズとする。

盛り付け
・甘酢大根を水気を切り、お皿の12時の方向に盛る。
・焼いた黒鯛を手前に盛り海苔のチュイルに花穂を飾り、黒鯛の上に置く。
・牡蠣の殻のソースを黒鯛の一皿に注ぎ入れ殻は一度回収し炭火の網に置き、保温しておいた牡蠣の身にすだち胡椒バターを塗り、くり抜いた梨、レンコンマヨネーズ、アリウムスター、フヌイユの葉を飾る。

Myエコものさし 食品エコ指標
地球温暖化 指標(GHG):偏差値41

原材料生産・調理などの各活動から排出される各種温室効果ガス量をCO2相当に換算した値

生物多様性 指標:偏差値48

各活動が与える環境影響の結果として絶滅しうる生物種の絶滅種数の期待値

1次生産 指標:偏差値40

土地利用などの人間活動が自然のエネルギー生産量をどれだけ減少させているかを、有機物の量(生物や植物などの乾燥重量)で評価

環境負荷分析チームコメント

未・低利用魚である黒鯛をメインとした点では、環境への負荷を抑えることに寄与。一方で、畜産物かつ海外からの輸入のために環境負荷の高いバターを多く使用していること等を理由に全体では環境への負荷が相対的に重くなってしまっている。

審査コメント

調達から調理まで地球環境と向かい合った、誠意のこもった良い料理。

徳島と千葉での共通の問題と向き合い火入れに対して自然の熱源を使い調理工程でもクロダイの焼いた汁を利用して一体感を作り出していることに技術の高さも見えました。牡蠣殻の活用を取り入れたプレゼンテーションも、楽しみを増幅させ非常に魅力的です。
黒鯛、牡蠣、海苔という不良好な関係性を一皿に取り込み、ストーリーとして伝えています。おいしさと共に食べ手の記憶の中に紡がれていってほしいと感じました。

例えば『この料理は養殖海苔の生産者を訪問した際に得たインスピレーションから生まれました』など、生産現場の具体的なエピソードが加わると、より説得力が増します。 これからも生産者のもとに積極的に足を運んでいただき、新しい挑戦とさらなる成長を期待しています!

審査員特別賞

薬師神シェフ賞・冨成シェフ賞

橋本元輝さん(d’ici)

薬師神 陸氏unis(ユニ)エグゼクティブシェフ

薬師神氏 コメント

食材からの問題解決する「黒鯛」と「海苔」それぞれを最大限活かし、火入れも環境への配慮ができており大変よかった。

冨成 寿明氏
日本料理 富成(とみなり)

冨成氏 コメント

一番たべてみたいレシピ。ストーリー性も素晴らしいです。

生江シェフ賞

山内透子さん(辻󠄀調理師専門学校)

Un plat pour l’avenir
〜未来へつなぐバトン〜

今夏のセミナーを通じて、 限られた資源に依存しないように漁獲の管理や未利用魚の活用等が「漁獲」の期待される点であるならば、「持続力の拡大」として環境を保全しつつ、魚を安定して供給するシステムを広げていくのが「養殖」に期待される点であると考えた。

私の一皿は調理師としての使用量や革新的な技術としては微力ながらも、発信を通じて養殖における「より良く」を広げられたらと切に願う。

現状はいち学生であり、小さな声に過ぎないが、受賞をすることで同学の今後を担う調理師の卵への意識づけは勿論、持続に関心のある方々に「空地や地元の地下水の活用や海を汚さずに魚を育てようという意識」、「持続性を高める養殖のあり方」に着目して頂き、共感してもらうことが「変える力」になり、より発展することを目的としている。

養殖はおいしい魚を安定的に食べるだけではなく、生態系を守り、食文化を繋げていく重要な柱であるという事を伝えたい。

使用したシーフードについて

ヒラメ
・漁獲海域:滋賀県草津市/養殖(陸上養殖)/滋賀県にあるアクアステージでは、ヒラメをはじめとする魚介類を廃校舎で養殖している。これにより施設のコストを軽減するだけでなく、空地に価値を与えている。

バナメイエビ
・漁獲海域:岐阜県瑞浪市/養殖(陸上養殖)/岐阜県瑞浪市は、エビの閉鎖循環式陸上養殖を行っている。岐阜県には海がないものの、栄養を多分に含んだ瑞浪市の地下水、川の水を使用することで、エビの健やかな生育を可能にしているという。

牡蠣
・漁獲海域:広島県/養殖(海面養殖)/広島県では、波が穏やかであることや、太田川からの栄養分が豊富にあることが理由として牡蠣の海面養殖が盛んである。一方で牡蠣の排泄物が海底に堆積し、蓋をするようになっていることが問題になっている。そこで、定期的な海底耕うんにより海底をひっくり返し、水中に栄養素を放出させている。また、牡蠣の殻を焼成して砕き海にまくことで、海底のヘドロからの硫化水素発生を抑える取り組みもなされているという。

材料リスト

メイン
・ヒラメ-五枚おろしにする/1尾分(600g)(滋賀県草津市産)**滋賀県産、室内養殖されたもの
・天日塩/2g(兵庫県淡路市産)海水 兵庫県淡路市産 100% 海に囲まれながらも自給率11%に留まる国産の塩をあえて使用
・胡椒/少量(栃木県足利市)胡椒の実 マレーシア産 100%
・きゅうり-薄くスライスし塩・ローズマリーにつける/1本(80g)(京都府京都市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・ズッキーニ-薄くスライスし、塩・ローズマリーにつける/1本(100g)(京都府京都市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・天日塩/2g(兵庫県淡路市)海水 兵庫県淡路市産 100%
・ローズマリー/2g(辻󠄀調理師専門学校産)**学校で栽培
・バナメイエビ-細かく刻む/120g(岐阜県瑞浪市産)**岐阜県産「きよらえび」使用
・背脂-細かく刻む/30g(大阪府堺市産)**流通面での環境保全を踏まえ、関西圏での生産や加工物を開拓
・筍水煮-細切りにする/75g(京都府京都市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・葱油/12g(大阪府堺市)玉葱・ラード 大阪府堺市産 100%
・片栗粉/10g(北海道北見市)馬鈴薯 北海道北見市産 100%
・天日塩/3g(兵庫県淡路市)海水 兵庫県淡路市産 100%
・砂糖/2g(北海道北見市)てん菜 北海道北見市産 100%
・醤油/1g(和歌山県有田郡)黒大豆 兵庫県丹波篠山市 100% 塩 長崎県五島市産 100% 小麦粉 北海道産 100%
・胡椒/少量(栃木県足利市)胡椒の実 マレーシア産 100%
・ゴマペースト/1g(大阪府八尾市)鹿児島県喜界島産
・ごま油/1.5g(大阪府八尾市)鹿児島県喜界島産

盛り付け
・ブロッコリースプラウト/少量(広島県広島市産)**村上農園のマイクロハーブ
・アマランサス/少量(広島県広島市産)**村上農園のマイクロハーブ
・ローズマリーの花/少量(辻󠄀調理師専門学校)**学校で栽培

ソース
・バナメイエビの殻/150g(岐阜県瑞浪市産)**エビ餡のエビから剥いたものも使用
・ヒラメの骨/1尾分(滋賀県草津市産)**メインのヒラメから出たもの
・レッドオニオン-薄切りにする/1個(160g)(京都府京都市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・トマト/60g(京都府京都市産)地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・天日塩/2g(兵庫県淡路市産)海水 兵庫県淡路市産 100%
・胡椒/少量(栃木県足利市)胡椒の実 マレーシア産 100%
・生クリーム/10g(大阪府堺市産)
・薄力粉/4g(北海道富良野市産)小麦 北海道富良野市産 100%
・バター/4g(北海道富良野市産)乳 北海道産 100%

付け合わせ
・牡蠣/4個(広島県廿日市産)**広島県産、MEL認証のもの
・葱-細切りにする/0.5本分(40g)(大阪府堺市産)**地元北嵯峨の無人販売で購入したもの
・ピーナッツ油/15g(千葉県八街市産)ピーナッツ 千葉県八街市産 100%
・鶏ガラスープ/20g(大阪府堺市産)鶏ガラ 大阪府堺市産 100%
・醤油/2g(和歌山県有田郡)黒大豆 兵庫県丹波篠山市 100% 塩 長崎県五島市産 100% 小麦粉 北海道産 100%
・しょっつる/3g(秋田県男鹿市産)はたはた 秋田県産 100%
・砂糖/少量(北海道北見市産)てん菜 北海道北見市産 100%

調理手順

ソース
・バナメイエビの殻・150g/レッドオニオン‐薄切りにする・160g:
バナメイエビの殻、ヒラメの骨、レッドオニオンの薄切りを220℃のスチームコンベクションオーブンで香ばしい香りがするまで加熱する。(スチームコンベクションオーブン5kW10分)加熱時間を減らすために殻はよく水気を切って置く
・レッドオニオン‐薄切りにする:
160g 魚介類の殻、骨は全てメインの下処理からでたものを使用する
・トマト:
60g 焼いたバナメイエビ~レッドオニオンとトマトと水200gを合わせてミキサーにかける。(ミキサー300W 0.5分)事前にミキサーで食材を粉砕し、より早く液体に味が出るようにし、加熱時間を減らす
水分が約1/2(煮汁が200g)になるまで煮詰める。(ガスコンロ弱火10分)ーA
・薄力粉・4g/バター・4g:
バターを火にかけて溶かし、薄力粉を加えて熱し、ブール・マニエを作る(ガスコンロ弱火0.5分)
・天日塩・2g/胡椒・少量/生クリーム・10g:
Aの煮汁を裏ごして火にかけ、塩・胡椒・生クリームを加え、ブール・マニエを加えて濃度つける(ガスコンロ弱火1分)

エビ餡
・バナメイエビ-小さく刻む・120g/塩・3g:
バナメイエビをボウルに入れ、塩を加えて粘りが出るまで混ぜる
・ヒラメ-五枚おろしにする・30g/筍水煮-細切りにする・75g/砂糖・2g/醤油・1g/胡椒・少量/ゴマペースト・1g/ごま油・1.5g/葱油・12g/片栗粉・10g:
粘りがでたエビに記載の残りの材料、調味料を混ぜ合わせる

メイン
・きゅうり-薄くスライスし塩・ローズマリーにつける・80g/ズッキーニ- 薄くスライスし、塩・ローズマリーにつける・100g:
きゅうり、ズッキーニは水気をよく取り、12cm×5mm幅に切り、格子状に組み合わせる
・ヒラメ・300g/天日塩・2g/胡椒・少量:
ヒラメは皮を剥ぎ、表面の縞模様が保たれるようにして開き、塩・胡椒で下味をつける
・エビ餡を円柱状に成形し、ヒラメを巻き付けて、ラップで巻いて両口を結ぶ
・スチームコンベクションオーブン(スチーム)で6分間蒸す(スチームコンベクションオーブン5kW 6分)スチームコンベクションオーブンで蒸すことで、食材そのものの味を残しつつ低カーボンになるようにした
・蒸したヒラメに格子状のきゅうり・ズッキーニを巻き付け、さらに2分蒸す(スチームコンベクションオーブン5kW 2分)ーB

付け合わせ
・牡蠣:
4個 牡蠣は2分蒸して殻を開ける(スチームコンベクションオーブン5kW 2分)Bのヒラメと一緒に蒸すことで加熱時間を減らす
・葱-細切りにする・40g/ピーナッツ油・15g:
牡蠣の上に細切りにした葱を乗せ、高温に熱したピーナッツ油を上からかける(ガスコンロ強火0.5分)ーC
・鶏ガラスープ・20g/醤油・2g/しょっつる・3g/砂糖・少量:
ピーナッツ油を熱した鍋に鶏ガラスープ・醤油・しょっつる・砂糖を合わせたものを加えて余熱で温める、牡蠣にかける。Cのフライパンをそのまま使用し、余熱で温めることでガスの使用時間を短縮している

盛り付け
・ブロッコリースプラウト・少量/アマランサス・少量/ローズマリーの花・少量:
皿の上に牡蠣を乗せ、中央やや手前にソースを配置し、その上にヒラメを乗せる。ヒラメの上にブロッコリースプラウト、アマランサス、ローズマリーの花を乗せる

Myエコものさし 食品エコ指標
地球温暖化 指標(GHG):偏差値45

原材料生産・調理などの各活動から排出される各種温室効果ガス量をCO2相当に換算した値

生物多様性 指標:偏差値47

各活動が与える環境影響の結果として絶滅しうる生物種の絶滅種数の期待値

1次生産 指標:偏差値51

土地利用などの人間活動が自然のエネルギー生産量をどれだけ減少させているかを、有機物の量(生物や植物などの乾燥重量)で評価

環境負荷分析チームコメント

国産食材にこだわっている点で輸送由来の負荷削減に寄与。一方、メインに据えたヒラメ、パナメイエビ、牡蠣に関し、養殖のものを活用していることは持続可能な漁業の観点では評価されるべきものである一方、特に陸上養殖食材(ヒラメ、パナメイエビ)は、GHG排出等の観点では一定の環境負荷をかけてしまっている点は考慮する必要がある。

生江 史伸氏レフェルヴェソンス エグゼクティブシェフ

生江氏 コメント

謙虚な姿勢ながら、チャレンジする姿勢をしっかりと感じられる良い一品への取り組みに感動しました。

調達〜調理〜提供まで、気を抜かないこだわりと執念を感じ、できればすぐにうちの厨房で働いて欲しいと思ったくらいです。希望の星!

岩澤シェフ賞

及川健一さん(XEX東京 Salvatore Cuomo Bros.)

いすみ産鮑の冷製タルトラ ~千葉の食材とその循環~

千葉県いすみ市で陸上養殖されている鮑。いすみ市はもともとマダカアワビの産地として知られていましたが、現在では漁獲量もほぼゼロになり絶滅の危機にあります。 「アワビの街」を復興させるべく海水の品質管理や海に近い環境を作りストレスなく育てられる鮑は、一部を海に放流して自然界での成長を促し排水はノリの養殖に活用しています。

ノリが浄化装置の役割を果たし綺麗になった水が鮑の水槽へ戻る独自の循環型システムはサステナブルであり、千葉県出身である料理人として地元の素晴らしい食材や文化、それを繋ぐ人々の想いを広めたいと思いメイン食材に選びました。

鮑は素材を活かしてじっくり蒸し上げ、その肝とノリ、幼い頃から食べていた地元の卵やヨーグルトで作った冷製のタルトラ(茶碗蒸し)。野菜は地元の農園からその時期のおすすめを頂きお浸しに。

ヨーグルトから出たホエーとミントマリーゴールドの爽やかな泡を添えて海と陸の循環をイメージしました。 限りある水産資源を守る人々の取り組みを料理人の力で一皿に変え、その想いを発信し、やがて日本の水産資源が回復する事を願います。

使用したシーフードについて


・陸上養殖(アクアポニックス)/漁獲海域:千葉県いすみ市/養殖/品質管理した海水を使用し海に近い環境で鮑を養殖することで、ストレスがかからず死亡率を減らすことでより多くの成貝の出荷に成功。また一部の稚貝を海に放流し、自然界での成長促進を目指している。

スジ海苔(粉末)
・陸上養殖(アクアポニックス)/漁獲海域:千葉県いすみ市/養殖/水産養殖と水耕栽培を同じシステムで行う”アクアポニックス”を活用している。鮑養殖の排水を利用してノリの養殖することでノリが浄化装置の役割を果たし、きれいになった水が再び鮑の水槽に戻る。汚水が出ずに生産性は向上し、コスト削減にも繋がる独自の養殖システムを実現。

材料リスト

貝昆布出汁
・水/500g(産)**
・羅臼昆布/7.5g(北海道産)**
・干し貝柱/15g(北海道産)**

水切りヨーグルト(作りやすい分量)
・ヨーグルト/200g(千葉県成田市産)**酪農発祥の地ともいわれる千葉県。明治20年から牛乳を作り続けている。(成田ゆめ牧場)

タルトラ(作りやすい分量)
・貝昆布出汁/120g(産)上記の自家製加工品
・鶏卵/1個(千葉県匝瑳市産)地元近くで鶏糞を使用して育てた飼料米をエサにし、食の循環を実現している。(九十九里ファーム)
・水切りヨーグルト/40g(産)原材料4を半日水切りしたもの
・鮑の肝、ひも/1個(千葉県いすみ市産)いすみ市大原で陸上養殖されたもの。海水かけ流し方式によりストレスフリーで育つ鮑の肝は臭みが全くない。(A’Culture)
・塩/2g(沖縄県産)
・鮎魚醬/3g(大分県日田市産)
・スジ青のり粉末/1g(千葉県いすみ市産)**鮑養殖時の排水を利用して養殖(アクアポニックス)されたスジ青のり(A’Culture)

お浸し(作りやすい分量)
・太オクラ/1個(千葉県山武市産)地元近くでストレスなく育った野菜。その時期のおすすめを直送して頂いた中から使用。(サンバファーム)
・甘長唐辛子/1本(千葉県山武市産)地元近くでストレスなく育った野菜。その時期のおすすめを直送して頂いた中から使用。(サンバファーム)
・貝昆布出汁/100g(産)
・鮎魚醬/10g(大分県日田市産)

ミントマリーゴールドの泡(作りやすい分量)
・貝昆布出汁/100g(産)**
・ヨーグルトのホエー/100g(産)原材料7の後に残ったものヨーグルトを水切りした際に出たものをベースにした泡状のアクセントで千葉の海と食材の循環をイメージ。
・ミントマリーゴールド/4g(千葉県山武市産)**地元近くでストレスなく育った野菜。その時期のおすすめを直送して頂いた中から使用。(サンバファーム)
・シュクロエミュル/3.6g(日本産)ショ糖脂肪酸エステル100%


・鮑/12g(千葉県いすみ市産)**いすみ市大原で陸上養殖(アクアポニックス)されたもの。海水かけ流し方式によりストレスなく海に近い環境で育てられた鮑。(A’Culture)

仕上げ
・エクストラバージンオリーブオイル/2g(イタリア プーリア州産)ペランザーナ種100%

調理手順

貝昆布出汁
・耐熱容器に水、羅臼昆布、干し貝柱を入れ一晩おいておく。加熱時間を減らすために常温で一晩おく。
・スチームコンベクション70℃で45分煮出す。シノワにリードペーパーをかまし、パッセする。

水切りヨーグルト
・ボウルにザル、布巾をセットしヨーグルトを入れる。布巾で包み上から重石をして半日水を切る。水切りヨーグルトとする。

鮑ヴァポーレ
・鮑の表面をよく洗いスチームコンベクション98℃で90分火入する。殻から取り出し肝、ひも、嘴をとる。肝は漉し、ひもは刻む。

タルトラ
・ボウルに貝昆布出汁、鶏卵、水切りヨーグルト、漉した鮑の肝、塩、鮎魚醬、スジ青のり粉末を入れバーミックスでしっかり攪拌する。
・上記をパッセしお皿に30g流す。刻んだ鮑のひもを具として入れる。
・上記をスチームコンベクション82℃で10分火入れし、しっかりと冷やす。

お浸し
・太オクラは沸いた湯で4分茹で丘上げする。(ガスコンロ中火10分 湯沸かし時間含む)ーA
・甘長唐辛子は串で数か所穴をあける。180℃の油で10秒ほど揚げ、薄皮が白くなったら取り出す。薄皮を剝く。ーB
・貝昆布出汁を火にかけ沸騰したら火を消し鮎魚醬を加える。0号缶にA、Bを入れ液体を流し冷ます。(ガスコンロ中火1分)

ミントマリーゴールドの泡
・貝昆布出汁を火にかけ沸騰したら火を消しミントマリーゴールドを加え、ミキサーで攪拌する。シノワでパッセする。ガスコンロ中火1分加熱時間を減らすため10の際に貝昆布出汁を一緒に加熱する。
・水切りヨーグルトで出たホエー、シュクロエミュルを上記に加えバーミックスで攪拌する。

盛り付け準備
・鮑ヴァポーレの鮑を厚みを持たせカットする。お浸しにした太オクラは5mm角、甘長唐辛子は3mm幅にカットする。

盛り付け
・冷やしたタルトラの上半分にカットした太オクラ6g、甘長唐辛子をのせ、中心に鮑をのせる。エクストラバージンオリーブオイルをかける。
・ミントマリーゴールドの泡をバーミックスの刃が半分浸かるくらいの角度で攪拌し泡を立て、空いたスペースに盛り完成。

Myエコものさし 食品エコ指標
地球温暖化 指標(GHG):偏差値44

原材料生産・調理などの各活動から排出される各種温室効果ガス量をCO2相当に換算した値

生物多様性 指標:偏差値41

各活動が与える環境影響の結果として絶滅しうる生物種の絶滅種数の期待値

1次生産 指標:偏差値47

土地利用などの人間活動が自然のエネルギー生産量をどれだけ減少させているかを、有機物の量(生物や植物などの乾燥重量)で評価

環境負荷分析チームコメント

野菜や卵、ヨーグルト等、地産地消の食材を利用している点で、環境負荷削減に貢献。一方、メインの鮑に関し、陸上養殖のものを活用していることは持続可能な漁業の観点では評価されるべきものである一方、GHG排出等の観点では一定の環境負荷をかけてしまっている点は考慮する必要がある。

岩澤  正和 氏
PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO オーナーシェフ

岩澤氏 コメント

地元千葉いすみの事をよく理解し、未来を描く一皿になっている素晴らしい一皿だと思います。ホエーをチョイスしたのも産業廃棄物問題や更に手間を加えた商品開発が進む現状、シンプルに使うことは共感と挑戦が見えました。技術もある一皿で、鮎醬も最高の調味料。世界が必要とするUMAMIも理解し実践していて海と陸の香りが今にも伝わってきます。レストランの一皿としてはほぼ無駄がなく完ぺきといった一皿。

その中でも、さらにメッセージが欲しかった点は、果たしてこのお皿の食材バランスが水産資源を回復する上ベストだったのか。恐らく海藻の量をもっと増やさないと海の問題は解決しないと思います。そしてシュクロエミュルが本当に必要だったか。 熱源については、ガスコンロで営業するかと思いますが、今回大気中の温室効果ガスの事を踏まえ、工程をガスから再生可能エネルギーを用いてIHにできたら完璧だなと思いました。

佐川シェフ賞

増田梨乃さん(KOTOWA 奈良公園 Premium View)

11種の野菜のプレッセ 酢橘鰤花

みょうがの爽やかなソースマヨネーズ

近年、若者の野菜離れが加速しています。 効率性を重視した食生活により、成人の野菜不足の割合は約80%。魚においては魚離れという言葉もよく耳にします。 手軽さを求め、野菜を食べない、また魚も調理するのが面倒だという問題です。

ファストフードが主流となりうる現代社会で、本来の素材の味を見逃している方がいるかもしれません。 私は地元で採れた伝統野菜と食べ馴染みのある野菜、果皮を食べる鰤をテーマとして掲げ、余すことなく調理する料理を考案いたしました。

魚は酢橘鰤。酢橘鰤は果物の果皮を使用するため、本来破棄されるものが魚の栄養となります。さらに 型の中でプレスすることで素材の旨味を圧縮。ジュレを使用せず押し固めるため、その旨みをダイレクトに感じることが出来ます。 ソースにはプレスした際のジュを加えマヨネーズソースへ。食べ馴染みあるソースに。

食とは切っても切っても切り離せないもの。 限りある素材を大事に、無駄を極力減らす。互いに助け合う、だからこそ人々の生活を豊かになる。 多くの方にこの料理が伝わることを願って。

使用したシーフードについて

酢橘鰤
・巻き網/漁獲海域:徳島県鳴門市/養殖/本来破棄されがちな果皮を魚の餌に混ぜ込むことで食品のロスを減らす、またそのような消費ルートがあると農家、生産者、消費者共に良い関係性になる。また果皮を使用したからといい、魚自体に香りが移るのではなく、血合いの色が褐変しにくく、味もさっぱりとなり、臭みも軽減されているという利点がある。飼育方法は通常の鰤とは変わらず特殊なことはされていない。

材料リスト

プレッセ部分
・大和真菜/309g(奈良県大和高田市産)**県内の伝統野菜
・花みょうが/40g(奈良県五條市産)**県内の伝統野菜
・大和丸ナス/240g(奈良県奈良市産)**県内の伝統野菜
・人参/80g(奈良県大和高田市産)**自然栽培
・パプリカ 赤/160g(規格外商品今回は宮城県栗原市産)**温暖化で規格外となったパプリカ
・パプリカ 黄/170g(規格外商品今回は宮城県栗原市産)**温暖化で規格外となったパプリカ
・カリフラワー/91g(淡路島産)**茎まで使用
・ブロッコリー/120g(淡路島産)**茎まで使用
・大根/189g(淡路島産)**自然栽培、なるべく近い農家から仕入れ
・牛蒡/120g(淡路島産)**自然栽培、なるべく近い農家から仕入れ
・水菜/118g(奈良県宇陀市産)**規格外有機野菜
・酢橘ブリ/280g(徳島県鳴門市産)**破棄回されがちな果皮を餌に混ぜ込み養殖された魚。通常の鰤とは違い血合いの部分が変色しにくい

野菜パウダー
・上記野菜の端材/19g(奈良県奈良市産)自家製加工品自然光で乾燥させる

ピューレ
・ブロッコリー茎、カリフラワー茎/320g(奈良県奈良市産)自家製加工品野菜を掃除した際の茎をピュレとする

マヨネーズ
・卵黄/20g(奈良県五條市産)自家製加工品ウインドレス鶏舎の飼育
・白ワインビネガー/10g(山梨県甲州市産)**国産品を使用
・オリーブオイル/90g(香川県小豆島産)**無農薬で、無添加の有機オリーブオイル
・プレッセのジュ/20g(奈良県奈良市産)自家製加工品プレスした際のジュを旨みとしてソースへ還元させる、無駄のない調理法
・塩/2g(淡路島産)**天然の塩

調理手順

下準備
・大和真菜:312g以下野菜をボイルする5%の塩水を沸かし、同時に氷水を用意。大和真菜はよく洗い、葉と茎で分ける。茎は少し芯の残る状態まで柔らかくボイルし、氷水。葉はさっとボイルし氷水。ガスコンロ中火2分ボイルする各食材はテリーヌ型サイズに切り出し、使用する分のみ加熱。また大きめのソトワで全て同時に加熱を行い、火が通った順に引き上げていく。これによりガスの使用時間を減らす。
・花みょうが:40g芯を含めすべてをマヨネーズ用にアッシェし、水にさらしておき、フレッシュで使用する
・大和丸ナス:180g網の上で直火焼きし、熱いうちに皮をむく。(ガスコンロ中火6分)
・人参:80g皮をむき、テリーヌ型に合わせて縦1/4にカット、クタクタに柔らかくなるまでボイルし、氷水。皮は野菜パウダー用として鉄板に並べておく。(ガスコンロ中火13分)
・パプリカ 赤:120gよく洗い丸ごと網の上で直火焼きし、熱いうちに皮をむく。(ガスコンロ強火5分)網の上で焼くものは各種一緒に行う。またこまめにひっくり返さず、面をしっかり焼き入れる、何度も返すより最短の時間で仕上げられ、ガスの使用時間削減に繋げる
・パプリカ 黄:89gよく洗い丸ごと網の上で直火焼きし、熱いうちに皮をむく。(ガスコンロ強火5分)
・カリフラワー:89g子房に分け、芯まで柔らかくボイルし、氷水。余った端材は2mm程度のエマンセにし、ピューレ用とする。(ガスコンロ中火3分)
・ブロッコリー:110g子房に分け、芯まで柔らかくボイルし、氷水。余った端材は2mm程度のエマンセにし、ピューレ用とする。(ガスコンロ中火2分)
・大根:180g皮をむき、テリーヌ型に合わせて縦1/6にカット、金串がすっと通るほどクタクタに柔らかくなるまでボイルし、氷水。皮は野菜パウダー用として鉄板に並べておく。(ガスコンロ中火12分)
・牛蒡:120gよく洗い、テリーヌ型に合わせてカット、芯まで柔らかくボイル。(ガスコンロ中火11分)
・水菜:109gよく洗い、茎の部分からボイルし、茎に少し食感が残る程度に火入れし、氷水。(ガスコンロ中火2分)

野菜パウダー
・上記野菜の端材:2g人参の皮、大根の皮は天日干しで約1日乾燥させ、その後ミルサーにかけ天然塩で調味。ミルサー*太陽光を利用して食材の乾燥を行う

ピュレ
・ブロッコリー茎、カリフラワー茎:120gテリーヌで使用しなかった茎、端材をオリーブオイルを少量加えた鍋で蓋をしてじっくりスゥエし、野菜の持つ水分で先ずは火入れしていく。その後食材に対して半量の水を加えてクタクタに煮たのち、ミキサーで回る程度の水分を加えながらミキシングし、パッセ後、塩で調味。ガスコンロ中火20分*茎を余すことなく使用、食品ロスを減らす

マヨネーズ
・卵黄:20gボウルに卵黄をよく溶く。フエ、ボウル20分プレスした際に出た野菜の水分と旨味を余すことなくソースへ還元し、食材のロスも減らす。
・白ワインビネガー:4g上記に加える(マヨネーズ)
・プレッセのジュ:4g上記に加える(マヨネーズ)*
・オリーブオイル:80g上記とオリーブオイルをフエで撹拌しながら、乳化させていく(マヨネーズ)*
・塩:2g上記に加え味をととのえる(マヨネーズ)*

魚の処理
・酢橘ブリ:400gテリーヌ型に合うようシート状に切り出す。12%の塩水に30分漬けた後、ピチッとシートで1時間脱水。テリーヌ型に入れる際は柵上に切り出し詰めていく*

プレッセ組み立て
・大和真菜の葉を重なりを極力少なくつつ綿棒を上から転がし繋ぎ合わせ、シートを作成、テリーヌ型にぴったりと貼り付ける。食材の色のバランスを見ながらシュミゼしていく、加工した酢橘鰤もバランス良く配置。テリーヌ型に対して上部が2cmほど食材があふれてきたら大和真菜の葉で包む。上からテリーヌ型に合わせた発泡スチロールの型(または固めの段ボールなど)を乗せ、下にはプレスしたジュを受け止めるよう、鉄板を置く。型の上から10kgほどの重しを乗せる(今回はホテルパンを使用)。型と重しの鉄板の隙間個所に竹串で全体を数か所穴を開け、水分の逃げ道をつくる。2時間後一度ラップを開け、偏りを直し包みなおす。先ほど同様重しを乗せ、さらに竹串で追加で穴を開ける。そのまま冷蔵庫で12時間以上プレス。12時間後プレスしたジュはボウルに取り置き、マヨネーズソースに使用する*

Myエコものさし 食品エコ指標
地球温暖化 指標(GHG):偏差値57

原材料生産・調理などの各活動から排出される各種温室効果ガス量をCO2相当に換算した値

生物多様性 指標:偏差値52

各活動が与える環境影響の結果として絶滅しうる生物種の絶滅種数の期待値

1次生産 指標:偏差値49

土地利用などの人間活動が自然のエネルギー生産量をどれだけ減少させているかを、有機物の量(生物や植物などの乾燥重量)で評価

環境負荷分析チームコメント

鰤をメインとしつつも、それと合わせる野菜をふんだんに使っていること、また、その野菜は地産地消や自然栽培、規格外、(可食部だけでなく)粗食部まで含めた調理、といった環境負荷をおさえる多くの工夫を取り入れている点で貢献度が高い。また、通常、海外の輸入に依存することの多いオリーブオイルやビネガー、塩といった調味料も国産にこだわっており、輸送の環境負荷削減を徹底している点でも貢献度が高くなっている。

佐川 優 氏
HughMorgan(ヒューモルガン)シェフパティシエ

佐川氏 コメント

総合的にみて意識が高いな、と純粋に心が動かされました。すだち鰤は捨てられる果皮などを餌として使いそれを食べる事で味にもプラスに影響しそこに住む人々も繋いでいて徳島出身の私でもそこまで考えていなかったです。素晴らしい食材なんだ、と気付かされました。

サステイナビリティにおいても野菜にしてもプレッセしたジュにしても全てを無駄なく料理に生かしていて、食材が喜んでいるように感じました。サスティナブルシーフードの事もメインで伝えつつ、今の食生活の課題、フードロス、食材の繋がりで人と人が繋がる事、地産地消、沢山の課題をギュッとまとめていて、更に鮮やかで華やかな魅力的な見た目で、純粋に食べてみたいな美味しそうだな、と強く感じました。

このコンクールだから考えた、というよりかは常に増田さんの心の中に感じながら食と向き合っているのかな、と思いました。作り手、食べ手、どちらもが増田さんのように思いやりを持って食と関わっていく事で未来は少しでも明るくなっていく事に期待いたします!

田中シェフ賞

田村征也さん(ザ・キャピトルホテル東急)Premium View)

アイゴの香草バター焼き
みかん風味のグラスフッェドバターソース

今回私が使用するアイゴという魚は温暖化により海藻を食べる量が増え磯焼けの食害をおこしています又身と内臓は独特な臭いがある事とヒレに毒をもっている為、現状はほぼ流通していません、現在野菜の端を使い臭いを抑える養殖方法も進められていますが、まだまだ市場に出回る状況ではありません。

そんな食材を使用する事で磯焼けによる食害の解消、未利用魚の使用によりフードロスの削減にも貢献できると考え国産の地場野菜と組み合わせた料理を考えました。

独特な臭いには香草とナッツを合わせたバターを使用する事で風味高くし骨と頭は廃棄される野菜の端材と共に出汁をとり、うま藻の旨味を加えフュメドポワソンにしました。又作業工程を、出来る限りシンプルにする事で調理時間を減らしCO₂の削減に努めました。

この料理を通してサスティナブルシーフードに対して理解を深め日々の業務に取り入れていき海洋環境の改善とSDGsに貢献出来ればと考えます。

使用したシーフードについて

アイゴ
・刺網漁/漁獲海域:神奈川県小田原/天然/刺網漁は網の大きさによって狙う魚の種類や大きさを限定できる為、乱獲を防ぐことができ海底と接地する面積が小さい為、海底環境への影響が小さい漁法です

材料リスト


・アイゴ/70g(神奈川県小田原市産)**小田原の刺し網漁で獲れた規格外の魚
・茄子/10g(神奈川県小田原市産)**規格外野菜使用
・プチトマト/10g(神奈川県小田原市産)**規格外野菜使用
・蕪/10g(神奈川県愛川町産)**無農薬野菜使用

香草ナッツバター
・パン粉/15g(東京都千代田区産)**弊社で作成したパンの端材を使用
・イタリアンパセリ/5g(神奈川県横浜市産)**無農薬野菜使用
・タイム/1g(神奈川県横浜市産)**無農薬野菜、化学肥料無使用
・セルフィーユ/2g(神奈川県産産)**無農薬野菜使用
・にんにく/3g(神奈川県横浜市産)**無農薬野菜使用
・チモシー(国産ハードチーズ)/10g(北海道大樹町産)**北海道大樹町産で牛乳が原料のハードチーズ
・北海道産グラスフェットバター/50g(北海道西興部村産)**無農薬で育てた牧草を飼料とし放し飼いで育てた乳牛の乳から作られている
・落花生/10g(千葉県八街市産)**八街産落花生は地域ブランドとして商標登録されています

フュメドポワソン
・アイゴの骨、アラ/600g(神奈川県小田原市産)**アイゴを卸した時にでたものを使用
・野菜の端材/50g(神奈川県産産)**リゾット、アイゴに使う野菜の皮、葉、ヘタ、香草の軸などを使用
・うま藻/0.5g(沖縄県産)マングローブの葉の裏で育った藻と泡盛製造の副産物の泡盛粕から作られた自然食材
・水/1L(産)

野菜のリゾット
・押麦/30g(神奈川県横浜市産)*国産大麦100%*有機米使用
・オリーブオイル/3g(香川県小豆郡産)**有機JAS認定オーガニックオイル使用
・フュメドポワソン/100ml(産)上記の自家製加工品アイゴを卸した時の骨とアラ、野菜の端材を使用
・チモシー(国産ハードチーズ)/5g(北海道大樹町産)**北海道大樹町産で牛乳が原料のハードチーズ
・蕪の葉/10g(神奈川県横浜市産)**規格外野菜使用
・ニンジン/10g(神奈川県愛川町産)**無農薬野菜

ソース
・北海道産グラスフェットバター/5g(北海道西興部村産)**無農薬で育てた牧草を飼料とし放し飼いの乳牛の乳から作られている
・みかんジュース/100ml(神奈川県小田原市産)*有機栽培された温州ミカンが原料のジュースを使用
・藻塩/適量(愛媛県淡路島産)**ホンダワラなどの海藻から作られたミネラル豊富な塩
・ホワイトペッパー/適量(産)*スリランカ産胡椒100%*環境に配慮した有機JAS認証のスパイス

調理手順

下準備
・アイゴ:1kgアイゴを軽く流水で洗い、ヒレをハサミで切り内臓を取り出し三枚におろす
・アイゴの骨、アラ:600g頭、骨は血合いを掃除し、流水で汚れをとる。身は皮を引き塩をして脱水シートで脱水する脱水シートを使用することで短時間で一夜干しの効果を得られ、アイゴをソテーする調理工程を省くことができる
・落花生:20g刻んでおき、バターは室温に置き柔らかくしておく
・北海道産グラスフェットバター:50g
・蕪:10g半分にカットし、茄子とプチトマトを2~3ミリにスライスし軽く塩をしておく
・茄子:10g
・プチトマト:10g

フュメドポワソン
・アイゴの骨、アラ:600g皮、骨、頭はサラマンダーでしっかりと表裏を焼く。サラマンダー強火10分一度焼くことで短時間で旨味を抽出できる
・水:1ℓ鍋に焼いたアラと水を加え沸騰したら灰汁をひき、野菜、香草の軸を入れ中火にかける。(IH中火15分)
・野菜の端材:50g*
・うま藻:0.5gシノワで濾して軽く煮詰め、うま藻で旨味を足してフュメドポワソンとする。(IH中火5分)

香草ナッツバター
・パン粉:15gパンの端材、にんにく、香草をロボクープに入れ回し、バターと合わせる。(ロボクープ1分)
・イタリアンパセリ:5g
・タイム:1g
・セルフィーユ:2g
・にんにく:3g
・チモシー(国産ハードチーズ):5g
・香草バターをクッキングシートに薄く伸ばし、冷蔵庫で冷やし固める

リゾット
・ニンジン:10g人参をオリーブオイルでソテーし、押し麦を加えフュメドポワソンを注ぎ炊き上げる。(IH中火20分)
・押麦:28g
・フュメドポワソン:100㎖
・オリーブオイル:3g
・蕪の葉:10g水を加えながら麦がアルデンテくらいになるまで火を入れ、仕上げに蕪の葉、藻塩、ペッパー、チーズを加えリゾットとする
・藻塩:適量
・ホワイトペッパー:適量
・チモシー(国産ハードチーズ):5g

アイゴ
・香草ナッツバターをアイゴの大きさにカットしておく
・アイゴ:70g軽く塩胡椒し、アイゴ、スライス野菜、アイゴの順に重ね、バターを塗った鍋に並べ、香草バターを上にのせる
・茄子:10g
・蕪:10g
・プチトマト:10g
・コンベクションで火入れし、アイゴは別に取りおく。(コンベクション200℃3分)

ソース
・みかんジュース:100㎖アイゴを焼いた鍋にみかんジュースを加え1/2の量まで煮詰める。(IH強火3分)一つの鍋で調理することで作業時間を短縮できる
・北海道産グラスフェットバター:5gモンテし、藻塩とペッパーで味を整える。(IH中火1分)
・藻塩:適量
・ホワイトペッパー:適量

盛り付け
・皿にセルクルでリゾットを盛り、バーナーで焼き色を付けたアイゴを盛る
・ソースを流して仕上げとする。25㏄

Myエコものさし 食品エコ指標
地球温暖化 指標(GHG):偏差値45

原材料生産・調理などの各活動から排出される各種温室効果ガス量をCO2相当に換算した値

生物多様性 指標:偏差値56

各活動が与える環境影響の結果として絶滅しうる生物種の絶滅種数の期待値

1次生産 指標:偏差値46

土地利用などの人間活動が自然のエネルギー生産量をどれだけ減少させているかを、有機物の量(生物や植物などの乾燥重量)で評価

環境負荷分析チームコメント

メインには規格外魚としてアイゴを利用している点、合わせる野菜も規格外や無農薬の食材を使っている点で、環境負荷を抑えることに寄与。一方で、調理やソース利用のために、チーズやバターといった畜産物を多く利用していることから、国産とは言えど、一定の環境負荷を高める要因となってしまっている。

田中 佑樹 氏伊勢すえよし 店主

田中氏 コメント

香り、食感、旨み、彩りが調和し、とても美味しそうで、ぜひ食べてみたいと感じました。アイゴの独特な臭みを、香草とナッツを使ったバターで風味豊かに仕上げた点も素晴らしいです。さらに、メッセージ性がしっかり伝わってくるところも高く評価しています。

生産現場をよく理解されている印象ですが、もし実際に訪問されているなら、そのエピソードを加えるとより説得力が増します。また、プレゼンテーションにもう一工夫加え、器やソースの提供方法により、感動を与える仕立てができると完璧です。

田村さんの感性と表現力は素晴らしいので、これからも生産者のもとに積極的に足を運び、その学びを料理に活かし、さらなる成長を期待しています!

学生部門賞

橋本夏帆さん(島食の寺子屋)

ムロ鯵の砧巻き
海月の梅水晶添え

海士町の漁港で活用方法が悩まれている未利用魚、厄介者とされるクラゲ(日本海沿岸大量発生し、海士町の定置網が行われている漁港でも、魚と一緒に大量のクラゲが水揚げされ、定網網を破壊する等の被害が出ている)、地元のミカン農家さんの摘果作業を手伝った際に、多くは捨ててしまうとお話されていた摘果ミカンなど、通常は廃棄されている現状にについて、興味を持って頂き、美味しく食べられると知ってもらえるきっかけを作りたいと思いレシピを考案しました。

食材のロスが出ないよう、野菜の皮、魚のあらはダシとして使用し、料理の食材は海士町産のみ(調味料以外)の食材を使用を地産地消を心がけています。 離島キッチン海士で、海士町の地酒のお供として、楽しんでいただきたいです。

使用したシーフードについて

ムロ鯵(未利用魚)
・定置網漁/漁獲海域:海士町/天然/定置網漁は魚が自由に出入りできる仕組みになっており、最近網を大きくしたため回遊する魚を取りすぎず、出荷されない小魚は入らないような工夫をしている。それでも一定数ある未利用魚の小魚や収量が少ない魚を利用しました。

材料リスト

★海月の梅水晶
・クラゲ/50g(海士町産)**定置網漁で魚と一緒に水揚げされたクラゲ。通常は廃棄されている。島食の寺子屋から徒歩10分圏内の漁港大敷から仕入れ。(海士町崎地区 大敷)
・梅干し/蘇婆訶梅(そわかうめ)/10g(海士町産)**農薬も肥料も一切使わない自然栽培の梅を使用。(海士町崎産:梅農家丹後さん)
・茗荷/15g(海士町産)**島食の寺子屋から徒歩15分圏内の竹藪で収穫。
・甘酢/50cc(海士町産)**島食の寺子屋にて調合。

★ムロ鯵の砧巻き
・ムロ鯵(未利用魚)/150g(海士町産)**定置網漁で水揚げされた規格外の小魚。(海士町崎地区 大敷)
・摘果みかん(崎みかん)/60g(海士町産)海士町のみかん生産者産の摘果のお手伝いの際に仕入れた摘果みかん。(海士町崎産:みかん農家白石さん)
・紫蘇/15g(海士町産)自家栽培
・じゃがいも/150g(海士町産)有機JAS認証農園のムラーズファームさんから仕入れ。湧水にも恵まれた土地で農薬や化学肥料を使わず野菜栽培を行っている農園。
・ビーツ/100g(海士町産)有機JAS認証農園のムラーズファームさんから仕入れ。湧水にも恵まれた土地で農薬や化学肥料を使わない農園。
・卵/50g(海士町産)有機JAS認証農園のムラーズファームさんから仕入れ。平飼い卵。
・豆腐(亀田豆腐)/50g(海士町産)地元商店「亀田商店」の手作り豆腐。
・魚野菜ダシ/30cc(海士町産)
・油/500cc
・薄口醤油/10cc
・味醂/10cc
・酒/15cc
・片栗粉/5g
・海士の塩/3g(海士町産)**海士町の塩

調理手順

★海月の梅水晶
・クラゲを塩水につける。クラゲを熱湯でさっと茹でる。幅5mmほどで細切りする。(ガスコンロ強火1分)
・しっかりと水で洗い、血抜きをする。塩をあて、30分ほど置いておき、しっかりと水で洗う。エラを熱湯でさっと茹でる。5mmほどに切っておく。(ガスコンロ強火1分)
・梅をたたいておく。
・茗荷を薄く輪切りし、甘酢につけておく。
・クラゲを甘酢に漬けておく。
・すべての具材をまぜ、甘酢につけておく。

★砧巻き①
・桂剥きし、水にさらす。1.5%の塩水につけておく。
・鯵を三枚おろしし、身に塩をあて臭みをとる。甘酢に漬けておく。
・紫蘇を千切りしておく。
・摘果蜜柑の皮をむき、薄く輪切りにスライスしておく。
・じゃがいもを熱湯でさっと茹でる。(ガスコンロ強火1分)
・巻きすの上にラップを敷き、じゃがいもの桂剥きを敷く。鯵、摘果蜜柑、紫蘇の順番に置き、丸めていく。30分ほど置いておく。

★砧巻き②
・一晩、水切りしておく。
・ムロ鯵を三枚おろしにし、皮を剥いでおく。魚の皮、あらは出汁用にとっておく。
・魚の皮、あらを焼く。鍋に水を入れ、あら、野菜の皮、酒、昆布を入れて煮出し、出汁をとる。(ガスコンロ強火30分)桂剥きした野菜、あらを出汁に使用。
・ムロ鯵をなめらかになるまでフードプロセッサーする。ビーツを1センチ角のサイコロ状に切っておく。その中に、酒、味醂、薄口醤油、片栗粉、豆腐、卵黄を入れてフードプロセッサーする。真丈を出汁で耳たぶくらいの硬さに調節する。(フードプロセッサー10分)
・真丈に角切りのビーツを入れ混ぜ、ラップで細長く筒状にし、巻きすで巻く。スチームで100℃、10分蒸す。(スチコン100℃15分)
・巻きすにラップを敷き、じゃがいもの桂剥き、紫蘇、真丈の順にのせて巻く。30分ほど置いておく。

Myエコものさし 食品エコ指標
地球温暖化 指標(GHG):偏差値48

原材料生産・調理などの各活動から排出される各種温室効果ガス量をCO2相当に換算した値

生物多様性 指標:偏差値39

各活動が与える環境影響の結果として絶滅しうる生物種の絶滅種数の期待値

1次生産 指標:偏差値40

土地利用などの人間活動が自然のエネルギー生産量をどれだけ減少させているかを、有機物の量(生物や植物などの乾燥重量)で評価

環境負荷分析チームコメント

メインや和え物に規格外魚のむろ鯵や通常廃棄されるクラゲを利用している点、その他の食材も地産地消にこだわり輸送にかかる環境負荷を削減している点で、評価が高い。一方、調理上に多量の油を使用している点で、環境負荷が重くなってしまっている。

SRAジャパン コメント

魚だけでなくフードロスや地産地消、有機の食材をしようするなど配慮の幅が広い、現場でよく観察されており、街の風景が目に浮かぶ海士町に行きたくなるような一皿。梅と合わせて食欲をそそり調理法もシンプルで毎日食べられる気がします。そして伝統調理法の砧巻きチョイスが素晴らしい。一方で味見のできないコンテストであるがゆえに「なぜジャガイモとビーツなのか」といった細かなメッセージをもう少し説明に加えられるとよりメッセージ性の強い料理になると思います。「厄介もの」を素晴らしいかたちでおいしいものに落とし込めていることは、未来に明るい光を照らしてくれているような一品です。
素材の調達には制約が厳しくかかればかかるほど、自分の料理の技術や経験は磨かれて行きます。同時に広い視野ももちつつ、いろいろな世界と触れ合っていって欲しいと思います。

Myエコものさし 食品エコ指標提供

ロゴ:よろづや いっかく

特別協賛

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協賛

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協働

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後援

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学校法人 糸菊学園
名古屋調理師専門学校

*この企画は、地球環境基金の助成金を受けて開催しております。

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