Creative Chefs Box
2030
「未来のレシピ」発表
10月16日は「世界食料デー」。
分岐点といわれる2030年の食のあり方をテーマに、
39歳以下のシェフ・調理師専門学校の生徒を対象に「未来のレシピ」を募集しました。

最優秀賞
前田真吾さん(haishop cafe)
未利用魚とお野菜のお寿司

日本の文化食であるお寿司をテーマに、2030年に向けたレシピを考案しました。
お魚は、日本の水産資源と向き合い、定置網漁法で水揚げされたが、様々な理由から市場に出せない未利用魚を使用。
お米は玄米で、さらに、農薬や化学肥料を使わずそこに暮らす様々な生物の力を借りる自然に寄り添った生産を行なっている物を選択。そうする事で持続可能な「日本人の主食」であるお米の生産と生物多様性の未来を考えました。
お野菜の調達は横浜市から半径80km以内の調達。地産地消で旬のお野菜をより多く使用する事で、カーボンフットプリントの削減、お野菜を全て使用する事で本当の美味しさの表現と、食品ロスが出ない調理・提供となっています。
基本条件
食料の無駄をなくす(食品ロス削減)
材料リスト
6人分
(a)・酢:50cc ・きび糖:55g ・塩:14g
(b)・米油を使用した国産大豆の油揚げ:1枚・水:50cc ・煮切り調理酒:50cc・きび糖:50g ・濃口醤油(フンドーキン有機丸大豆醤油):60cc・味醂:10cc
(c)・まめアジ:3匹分
(d)・(c)のまめアジの頭、骨:3匹分・調理酒:20cc ・塩:1.5g
(e)・(d)のまめアジ:3匹分・水:1300cc ・調理酒:50cc
(f)・昆布:20g ・干し椎茸:20g・水:600cc
(g)・(f)の昆布出し殻:10g ・塩:10g
(h)・生姜:10g ・レンコン:25g ・長葱※根元(千葉県/柏市):25g ・長葱※葉先:25g・レンコン:25g ・人参:25g・(f)の昆布出し殻:15g ・(f)干し椎茸出し殻:25g・(f)の出汁:200cc ・(e)の出汁:1100cc・濃口醤油:50cc ・塩:5g
(i) ・食用菊:少々
(j)・(c)のまめアジの上身(1切れ20g×12切れ):200g ・塩:2g
(k)・(j)のまめアジ上身(1切れ20g×6切れ):100g・酢:40cc
(l)・青ゆずスライス:1個分・(h)の端材の人参※おろし:20g
(m)・(h)の端材の蓮根:50g ・濃口醤油 :12cc ・味醂:12cc・(f)の出汁:100cc
(n) ・白味噌:20g ・長葱※根元:20g・生姜※おろし:2g
(o)・蕪:1個 ・塩:少々
(p)・柿:1/2個
(q)・茄子:2個 ・片栗粉:5g ・ごま油:15cc
(r)・調理酒:12g ・味醂:12g ・きび糖:12g ・濃口醤油:12g
(s)・粉山椒:0.1g ・白ごま:5g
(t)・木の芽:15枚
(u)・シルクスイート:30g ・(q)の茄子のヘタ:10g ・オリーブオイル:5g ・塩:1g
(v)・オーサワ大豆ミート(もどし):50g ・ごま油:2g
(w)・赤味噌:4g ・濃口醤油:2g・きび糖:1g ・八味:0.1g
(x)・(f)干し椎茸出し殻:30g ・味醂:10g ・きび糖:5g ・濃口醤油:10g ・調理酒:10g
(y)・青梗菜:6枚
(z)・玄米(6時間浸水後を使用):2合・水:480cc
調理手順
(a)を鍋で加熱しシャリ酢を作る
(b)を鍋で加熱し稲荷を作る
(c)を三枚おろしにしアラと上身に分ける
(d)を混ぜ合わせオーブン170℃で狐色に焼く
(e)を鍋で出汁をとり出し殻は捨てる
(f)を鍋で出汁をとる
(g)の昆布を乾燥させ粉末に塩と混ぜる
(h)の野菜を全て長さ5cmの糸状に切り材料を鍋で加熱し吸い物を作る
(j)の鯵の上身に塩をふる
(k)を紙に包み酢をかけ5分酢〆、水洗いする
(m)の蓮根を粗みじんにし鍋に入れ炊く
(n)の長葱をみじん切りにし材料を合わせ葱味噌を作る
(o)の蕪の葉を刻み、実は薄く切り別に塩をふる
(p)の柿の皮を薄く剥き170℃のオーブンに入れチップスにする。実は薄く櫛切りにする
(q)の茄子の蔕を取り身を縦三等分に切り片栗粉を打ちフライパンに米油をしき焼く
(r)の材料を合わせ(q)に入れ蒲焼きにし(s)をふる
(u)のシルクスイートと茄子の蔕を小さいサイコロ状に切り材料を合わせオーブン170℃で5分焼く
(v)をフライパンで炒め(w)の合わせ調味料を入れ炒める
(x)を鍋で加熱する
(y)を茹でる
(z)を炊飯器で炊き(a)を入れシャリを作り5等分に分ける
1/5のシャリに(m)を混ぜ(k)を乗せ(l)を乗せ皿に盛る。横に(g)を添える
1/5のシャリに(t)を5枚混ぜ(j)、(n)の順に乗せ皿に盛る
1/5のシャリに(o)の葉を混ぜ(o)、(p)の実を重ね乗せる。(b)の稲荷をひも状に切り巻き皿に盛りpの皮を散らす
1/5のシャリにuを混ぜ(q)を乗せ(t)の残りを乗せ皿に盛る
1/5のシャリに(x)を混ぜ(y)で巻き(v)を乗せ皿に盛る
(h)をお椀にはり(i)を散らし完成
審査員コメント
漁獲する際に、名前がなく、市場に出回らないお魚は価値のないお魚として海に捨てられている現状があります。
こうした市場に出る前に発生するフードロスも環境や生態系に大きな影響を与えており、そこで未利用魚をお寿司にするという着眼点が評価されました。
【審査員からのコメント】
今一番問題とされている水産資源の持続可能性について、未利用魚の活用はみんながやらないといけないこと。そうした問題提議をしている点が素晴らしいです。
10年後にそのまま残っている料理だと思えた点、またシンプルに一番食べたいと感じた点で選びました。
醤油にいたるまで素材の背景を伝えているということも重要なポイントです。

IDEAS FOR GOOD賞
江口弘展さん(PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO)
里山の恵みと知恵

古来から日本では山と人里を分ける里山が存在していました。
里山はかつて野生動物と人間の境界線の役目を果たしていました。燃料になる薪や家畜の餌となる芝や野草、季節の恵みである山菜などを人間は頂戴し、里山の管理も当然のように行われ野生動物が近づきづらい環境を自然と形成していました。ところが戦後、農業はトラクターなどを用いた機械化が進み、電気、水道などのライフラインの整備、商店などの普及により人間の暮らしは豊かになり、里山の手入れが次第に無くなり野生動物が里山への進出を果たします。里山でのドングリなどの木の実が不作になると人里へと下りてきてしまう現在の悪循環が生まれてしまったのです。それは年間200億円もの被害をもたらす害獣となってしまったのです。
今回は広島の繋がりのあるジビエセンターの猪肉を使います。一般家庭には馴染みのないお肉ですが今回のテーマでもある2030年の家庭の食卓に当たり前のように並んでいたら、害獣被害も少なくなり、ハンターの方の地位もあがり、昔のように野生動物と人間のバランスを取り戻すことに繋がるのではないかと考えました。当店はピッツェリアですので薪窯の余熱で猪肉に火入れをします。わざわざお肉を焼くために違うエネルギーは使いません。合わせる食材は私の地元でもある新潟魚沼の乾燥青豆を使います。乾物は長期保存が可能であり先人の大切な知恵です。
他には、猪肉の端材とお店の営業で出る野菜の端材を使ったブロード(出汁)にイタリア・シチリア島で生まれたお気に入りのワインをイギリスまで持ち帰りたい商人が蒸留酒をワインに混ぜて長期保存を可能にし誕生したと言われるマルサラ酒を合わせます。他に季節のカブ、里芋、アクセントにクレソンを使います。塩は手間暇かけた自然製法で作る長崎・五島列島の矢堅目の塩。オリーブオイルはイタリア・シチリア島でいち早く無農薬栽培を始めたティトーネ社のオイルです。
盛り付けるお皿は愛媛の砥部焼を使います。このお皿には当店で出た薪窯の灰を釉薬として使用したオリジナルのサステナブルプレートです。
基本条件
食料の無駄をなくす(食品ロス削減)
材料リスト
2人分
・猪ロース肉200g
・猪肉マリネ用塩(1.2%)3g
・猪肉の端材 あるだけ
・野菜の端材 あるだけ
・猪と野菜のブロードをとる水 2ℓ
・ブロード用ローリエ 2枚
・乾燥青豆 80g
・豆を戻す水 300g
・マルサラ酒 50g
・カブ1ケ
・里芋2ケ
・クレソン30g
・シチリア島のオリーブオイル10g
・五島列島の海塩 適量
調理手順
①猪肉は表面の筋張っているところや余計な脂部分は包丁で削いで200gになる様に厚めにスライスし、塩1,2%を全体に振り馴染ませる。(猪の端材はブロードの為に取っておく)
②猪肉から水分が出てきたらキッチンペーパーなどでふき取る。
③普段の営業で出る野菜の端材を集めて置き、猪の端材と一緒に大きめのIH対応鍋で分量の水分とローリエと塩3gを入れて沸かしていく。
④一度沸騰してアクが出てきたら取り除いて、そこからはIHを弱火に沸かさないように中身が適度に対流するような加減で1時間ほどかけて水分量が3分の2程度になるまで煮詰めていく。
⑤、④のブロードはシノワを使い濾して液体だけにしたら急冷して保存します。
⑥乾燥青豆は調理日の前日夜に分量の水に入れて戻しておき、当日はIH鍋に戻した豆を入れてそこに塩5gも一緒に入れ1時間ほどコトコトさせながら火入れをします。
⑦、⑥を温かいうちにジューサーに入れて、ゆで汁30g、オリーブオイル15gも一緒に入れピューレ状になるまで混ぜ、塩味を整えて青豆ピューレの完成。
⑧付け合わせのカブ、里芋は耐熱のストーブに入れて少し水を張り、薪窯の余熱を利用し竹串を指してスッと通るくらいまでじっくりと加熱する。
⑨猪と野菜のブロード100gをIHの小鍋に入れ、沸騰したらマルサラ酒50gを入れ半分量になるくらいまで詰めて塩で味を調えて猪のソースが完成。
⑩マリネした猪肉は耐熱フライパンに入れてピッツァ窯の余熱を利用して火入れしていく。窯から出し入れをしながら焼き色と中心温度が75度になるまで休ませながら火入れをし、75度に到達したら、15分ほど温かい場所で休ませるたあと5ミリ幅くらいでスライスする。
⑪お皿に温めた青豆ピューレを敷き、その上に火入れした猪肉のスライスを盛り込む。周りには火入れした里芋、カブ、水でさっと洗ったクレソンをバランスよく配置し、猪肉のソースを回しかけ、最後にオリーブオイルを振りかけたら完成です。
審査員コメント
お皿の裏側にある食材にまつわるストーリーと、お皿に乗せた料理人の熱い想いが紹介文から感じられるレシピでした。フードロスだけでなく、エネルギー資源の節約や、里山文化の保全なども加点できるポイントがあることが評価されました。
【IDEAS FOR GOODからのコメント】
1日3回の食事は、自然とつながるきっかけとなります。山と人を分け、かつて循環型の暮らしを生んでいた里山が失われつつある。そうした問題提起から「ベターミート」と言われるジビエを使い、「害獣被害」「ハンターの地位」などについても考えるきっかけをくれる一品だと思いました。また、調理方法でCO2削減にまで配慮している点が素晴らしかったです。食べながら、人は自然の一部であることを感じれる。そんな大切なことを教えてくれるお料理だと思い、選ばせていただきました。

macaroni賞
榊原光咲さん(ボッテガブルー)
秋野菜ギュッ
〜モンブランのおかずキッシュ〜

“モンブランのおかずキッシュ”
見た目はモンブランスイーツに見えますが、中を見ると、秋の旬の野菜がギュッと詰まったおかずキッシュになってます。
旬の野菜を取り入れることで、より栄養価が得れ、その時期の野菜の育ちやすさから栽培時の負担が軽減されます。
さらにヴィーガンにすることで、秋野菜本来の甘味やコクがより深く味わえると同時に環境保護にも繋がってます。
そして、なによりも食材ロスがないよう、野菜の皮、種はベジブロスや最後の飾りとして使用しました。
基本条件
より多くの野菜を使用(プラントベース)
材料リスト
8人分
ベジブロス
・水100ml
・玉ねぎ(皮や根の部分)
・にんにく(皮や根の部分)
・きのこ類(石づき)
・インゲン豆(ヘタ部分)
・塩:適量
タルト生地
・米粉:60g
・片栗粉:20g
・おから:15g
・ごぼう:40g
・白ゴマ:10g
・塩:ひとつまみ
・きび砂糖:小さじ1
・おろし生姜:小さじ1
・みそ:小さじ1
・ココナッツオイル:50g
米粉のベシャメルと具
・オリーブオイル:大さじ3
・にんにく:1片
・玉ねぎ:1/2個
・米粉15g
・豆乳:150g
・ローリエ:1枚
・塩:少々
・ナツメグ:少々
・白味噌:小さじ1
・ブラックペッパー:少々
・ロロンかぼちゃ:50g
・インゲン豆:30g
モンブランクリーム
・安納芋:150g
・ベジブロス:大さじ1
・豆乳:65g
・塩:少々
秋の旬野菜ソテー
・オリーブオイル:大さじ1
・にんにく:1片
・マッシュルーム:30g
・椎茸:60g
・舞茸:30g
・蓮根:20g
・銀杏:20g
・塩:少々
・醤油:小さじ2
・ナツメグ:少々
飾り
・タイム:適量
・ごぼうの皮:適量
・かぼちゃの種:適量
調理手順
○安納芋は180℃に予熱したオーブンでじっくり50分焼く。
○ 銀杏は殻を剥き、5分ほど湯掻いておく。
①タルト生地
ごぼうは皮を剥き、微塵切りにする。材料を全て混ぜ合わせ、ひとまとめにする。型に敷き込み、フォークで穴を刺し、180°cに予熱したオーブンで20分空焼きする。
②米粉のベシャメルと具
かぼちゃは薄く切り湯掻く。インゲン豆は湯掻いて先端部分を切り落とす。にんにく、玉ねぎは微塵切りにする。フライパンにオリーブオイルをひき、にんにくを炒め香りが出たら玉ねぎを加え、狐色になるまで炒める。米粉を加え、粉気がなくなったら、豆乳で伸ばしていく。ローリエを加え煮詰め、調味料を加える。ベシャメル、インゲン豆、かぼちゃ、ベシャメルの順に型に敷き込み、160°cに予熱したオーブンで15分焼く。
③ベジブロス
鍋に水、野菜のクズを入れて煮詰め、塩で味付けしておく。
④飾り
ごぼうの皮、かぼちゃの種をオリーブオイルでカリッとするまで揚げ焼きにする。
⑤秋の旬野菜ソテー
蓮根を皮ごとすりおろし、他の野菜は全て微塵切りにする。オリーブオイルでにんにくを炒め香りが出たら、材料を全て加え炒め、味付けをする。
⑥②に⑤を山形になるよう乗せる。
⑦サツマイモクリーム
安納芋を皮ごと適当な大きさに切り、豆乳、③のベジブロスを加え、ブレンダーで滑らかにして、濾し、塩で味を整える。⑥の上にモンブランのように絞り、④とタイムを飾って完成。
※外見はモンブランスイーツに見えるようにそして、断面を見た時、アッと驚くように盛り付けるのがコツ。
審査員コメント
スィーツのような心が躍るビジュアルに対して、秋の魅力が詰まったお野菜という点が素晴らしく、見た目・クリエイティビティの面から特に高く評価されました。動物性の食材は使わない、ヴィーガンで仕上げたことも、時代にあったレシピだと言えます。
【macaroniからのコメント】
食メディアのmacaroniとして、食を楽しむ要素のクリエイティビティ、見た目を重視して選びました。
モンブランの見た目にやはり驚きを隠せませんでしたし、野菜とのマリアージュがとても気になりサステナビリティの要素に加えて非常に創作性の高いレシピで感動しました!
協賛団体
後援団体

農林水産省
企画協力
会場提供・関連イベント開催

会場提供

企画アドバイザー
薬師神 陸
企画アドバイザー
杉浦 仁志
企画アドバイザー
横尾 祐介
企画アドバイザー
キムラ カズヒロ