Creative Chefs Box 2030
VOL.2

「未来のレシピ」受賞発表

第2回「Creative Chefs Box 2030」は、料理人としての「問い」から、
ミレニアル世代以下のシェフ・調理師専門学校の生徒を対象に「未来のレシピ」を募集しました。
応募総数50名の素晴らしいプレートの中から、受賞したレシピを発表。
厳正なる審査の結果、最優秀賞受賞者が、2名の特別審査員から特別審査員賞に選ばれました。

最優秀賞

特別審査員賞

小鉢ひろかさん(社会派料理コンサルタント)

緑茶で食べる 玄米グラノーラ

CO2排出量: 0.28kg-CO2e/1人前

朝、輸入された原料のグラノーラとミルクを習慣にする人々を見て違和感を覚えました。簡易で健康を追い求めるあまり、私たちは大事な『歴史や文化』を消し去っていっているのではないだろうか、と。
私の祖父母は静岡県川根町でお茶農家をしていました。茶畑の緑が美しい大事な故郷は、高齢化と担い手不足により茶畑が荒れ果て、かつての美しさを失っててきています。これは産地の問題だけでなく、私たちが「緑茶を急須で飲む」文化を失い市場を衰退させているのも原因の一つです。ペットボトルでも抹茶味でもない日本の緑茶を残すために、伝統を無理に受け継ぐのではなく、持続可能に続く文化として時代に合わせて進化し続けてほしいと願いを込め、緑茶に合うグラノーラを組み立てました。小豆の和菓子感、玄米の香ばしさが緑茶の必然性を出し、冬に熱々の緑茶を入れて食べたい味に仕上げています。小麦の消費量が伸びる中、国産米の消費量向上に貢献したいと想い、米×緑茶×朝ごはんの新しい提案ができるよう努力しました。2030年も、川根町に美しい緑の光景が続くよう願いを込めて。

食の未来に向けた「問い」

グローバル化により衰退する日本文化。2030年も急須で緑茶を飲む習慣を残し、米の消費量を高めるにはどうしたらいいだろうか?

材料リスト

6人分

A玄米 150g
A玄米パフ 30g
ABのみかんの煮汁 48g
A大井川産しょうゆ 3g

B摘果みかん 小4個(200g)
Bしょうがの皮 5g
Bきび砂糖 30g
B水 80ml

C小豆(乾燥) 60g
C掛川産よこすかしろ(甘蔗糖) 66g
C川根温泉の塩 少々

D完熟をすぎたいちじく 3個

E芽の出たさつまいも 40g
E米油 適量

緑茶 6g
熱湯(80度)350ml

調理手順

①A玄米は一晩水に浸す。水を切り、鍋でごく弱火で15分全体が茶色に色づき、カリッと噛めるまで炒める。みかんの煮汁、しょうゆ、玄米パフ(玄米をポン菓子機で加圧したもの)を加えて味を馴染ませる。
②摘果みかんはよく洗い、7mm厚に切る。bの煮汁に入れて中火で
10分煮込み、そのまま一晩寝かせる。煮汁から取り出し、天日干しにする(目安6時間〜2日間)
③小豆は鍋に水を入れて弱火でシワが伸びるまで10分煮込む。途中でビックリ水をする。一度ゆでこぼし、新たらしい水で弱火で15分〜、ふっくら柔らかくなるまで煮込み、よこすかしろ、塩を加えて蓋をし、そのまま一晩蒸らす。豆を取り出して、水気がなくなるまで煮詰めて豆を戻し入れ、よく絡めて天日干しにする。
④いちじくはかわごと1/6カットにし、天日干しにする
⑤さつまいもは芽は取り除き、皮付きのまま5mmの角切りにする。油で揚げる。
⑥器に1、3、6を入れて混ぜ、2と5を飾る。緑茶に1回目は80度の熱湯を注ぎ数分蒸らして器にかける。

特別審査員賞:選出者からのコメント

unis(ユニ)エグゼクティブシェフ
薬師神陸氏

最終的に低カーボンであり、フードマイレージが少なく、地産地消であることと、「続けられるか」「キッカケになるか」が一番大切なような気がした「こうしたい」という考え方を記載している応募者が多い中「できそう」と思わせるレシピがプロ・アマ関係なく一番評価した点です

FARO(ファロ)エグゼクティブシェフ
能田耕太郎氏

総合的に見て1番バランスの取れたレシピだと思いました。 作った方のこだわりや未来に向けたメッセージが良いです。コンセプトも素晴らしいと思いました。 プラントベースで日本の新しい朝食を演出した点も評価しました。

特別審査員賞

佐々木綾子さん(サステナブル料理家)

ギルトフリーステーキ

CO2排出量: 1.92kg-CO2e/1人前

環境負荷の可視化が進んだミライでは。例えるならカロリー管理をするように…お肉を食べながらでも…1日の食事の環境負荷を管理し、減らしてゆくことが可能になりそうです。(一皿の環境負荷を抑える以外にも、コース全体でバランスを取ったり、一日の食事のなかでバランスをとる方法が可能です)
今回は、一皿のお肉料理としての低カーボンフットプリント化を目指し、カーボンフットプリントの低いダチョウ肉(広く風通しの良い環境で、地元の旬野菜などを食べてのびのびと育てられている埼玉県 美里オーストリッチファームのもの)を使用。アッサリしてミネラル感のあるお肉に、醤油の搾りかすで旨味を補強し、香りを纏わせて仕上げました。
また、廃棄されがちですが利用価値の高い食材に茶殻があります。今回は廃棄されがちなもので料理の香りをアップすることをテーマに、茶殻を天日干しして瞬間燻製に使いました。
自家栽培のメリットのひとつに、根が手に入ることがあります。カリカリの食感に、噛むと野菜の香りがするところが楽しいです。
調理の際は、フライパンや低温調理器の余熱を活用することでエネルギー消費量を抑えました。

食の未来に向けた「問い」

肉料理とともに築くサステナブルなミライとは

材料リスト

2人分

■ステーキ
ダチョウフィレ 130g  *広く風通しの良い環境で、地元の旬野菜などを食べてのびのびと育てられている(埼玉県 美里オーストリッチファーム)
醤油の搾りかす 10g
赤ワイン 15ml
塩、こしょう
竹炭パウダー 少々
バター

■赤ワインソース
エシャロット(みじん切り) 12g
赤ワイン125ml
ドライトマト戻し汁 全量(30ml程度)
塩、こしょう
バター 10g

■黒にんにくマスタード
エシャロット(赤ワインソースの漉した残りかす) 全量
ドライトマト(戻して水気を絞る) 乾燥状態で3g
黒にんにく 1片
フレンチマスタード 20g

■スモークポムピュレ
じゃがいも(メークイン) 60g
茶殻 お茶1杯分
バター 10g
牛乳 20ml
塩、こしょう

■野菜
黒舞茸 20g
オリーブオイル 少々

バター 3g
マッシュルーム 1個

生マッシュルーム 1/2個

いちじく 1/6個
赤砂糖 少々

規格外ほうれん草(ドライ) 4枚
揚げ油

あさつきの根
薄力粉 少々

あさつき 少々
花山椒マイクロハーブ 4枚

調理手順

1. ダチョウフィレを57℃で低温調理する。
ボウルに醤油の搾りかすをほぐし入れ、赤ワインを加え混ぜておく。(A)
肉に火が入ったら、表面の水気をとって、Aをまぶしつけて1時間休ませる。

2. 赤ワインソースをつくる。
エシャロットと赤ワインを火にかけ、煮詰まればドライトマトの戻し汁を加え再び煮詰める。
漉す(具はとっておく)
塩、こしょうで味をととのえ、温めてバターモンテする。

3. 黒にんにくマスタードの材料を攪拌する

4. じゃがいもは厚みのある鍋で余熱も利用して蒸し煮し皮をむき、1cm厚の輪切りにして茶殻で瞬間燻製する。
じゃがいもの皮と牛乳を火にかけ、沸く前に火をとめフタをして10分おき、漉す(B)
じゃがいもを裏漉しし、Bとバターを加え混ぜ、塩、こしょうで味をととのえる。

5. 黒舞茸はところどころにオリーブオイルをスプレーして2分グリルし、塩をふる。
マッシュルームは1個を半割りにして断面を下にフライパンで素焼きした後、バターを加えてフタをしサッと色付け、火を切って余熱で火を入れる。塩をふる。
生で飾るマッシュルームはスライスしておく。
いちじくは赤砂糖をのせてバーナーで軽く炙る。

6. 規格外ほうれん草(ドライ)は130℃の油で揚げて塩をふる。
あさつきの根は薄力粉をはたいて160℃の油で揚げて塩をふる。
飾り用のあさつきは小口切りにしておく。

7. ダチョウ肉の表面をきれいに拭き取り、塩、こしょうと竹炭パウダーを振りかけてバターでサッと焼く。
食べやすい厚みに切る。

8.スモークポムピュレの周りに野菜を飾る。
黒にんにくマスタードを少量ずつ散らし、あさつきの小口切りと花山椒マイクロハーブを飾る。
ダチョウのステーキを盛り、赤ワインソースをかける。

特別審査員賞:選出者からのコメント

日本料理 富成(とみなり)オーナーシェフ
冨成寿明氏

サステナビリティの取り組みをしていると、それじゃなきゃいけないと極端になってしまいがちです。そんな中で、ギルトフリーという美味しくて罪悪感なく食べることができる料理というのは今後のトレンドになっていくと思っております。食材選びやレシピも素晴らしいです。 そういった意味で、佐々木さんの作品が最もクリエイティビティではないかと思います。

MATSURI賞

「藻を基盤とした社会」を構築する「MATSURI」プロジェクトを運営する、ちとせグループ創業者 兼 CEOで、内閣官房バイオ戦略有識者でもある藤田 朋宏氏を審査員に迎え、「MATSURIが考える未来のレシピ」を選んでいただきました。

城田一基さん(KITCHEN MANE)

神奈川県産アフタヌーンティーセット 〜昆布茶、昆布アイス、昆布ジンジャークッキー〜

CO2排出量: 4.47kg-CO2e/1人前

水産資源と生態系の保全の中で、未利用魚はよく聞きますが
ウニやアワビなど藻食動物が海藻を食べ尽くし砂漠化してしまう「磯焼け」に目を向けました。
砂漠化してしまった海で昆布の養殖を行うことで、餌となるプランクトンを増やすことができ、生態系が循環を取り戻し、海の環境が豊かになります。
環境を保全するだけではなく、リジェネラティブな循環の仕組みを作れる
生昆布を使い、日本人に親しみある昆布茶に海外で親しみのある「アイス・クッキー」との掛け橋になるよう作りました。
また、小麦や茶葉も地産地消に拘り、神奈川県横須賀市で無農薬栽培された横須賀小麦
茶葉は、農薬不使用栽培「いしい茶園」さんの、やどりぎ水源林のお茶(お茶の木に負担のかかる二、三番茶をつまない茶葉)を使用しました。

食の未来に向けた「問い」

環境を守るだけではなく、再生する。リジェネラティブな循環の仕組み。

材料リスト

1人分

【昆布ペースト】
「A」
生昆布 50g
水 500g

【昆布茶】
「B」
昆布ペースト 20g
茶葉 0.5g
お湯 200g

【昆布アイス】
「C」
オーツミルク 265g
きび砂糖 22g
水飴 17g
米油 17g
塩 4g
昆布ペースト 50g

【茶葉ガラのチュイル】
「D」
小麦粉 10g
アーモンドプードル 10g
きび砂糖 20g

「E」
米油 15g
オーツミルク 10g
茶葉ガラ 5g

【昆布ジンジャークッキー】
「F」
「小麦粉 125g
ベーキングパウダー 2.5g
きび砂糖 35g
塩 4g 」

「G」 米油 40g

「H」
オーツミルク 22.5g
昆布ペースト 30g
すりおろし生姜(皮ごとすりおろす) 15g

【飾り】
「a」昆布茶
エディブルフラワー 0.5g
ミント 0.2g

「b」アイス
エディブルフラワー 0.2g

調理手順

【昆布ペースト】
1.Aをミキサーにかけペーストを作る

【昆布茶】
1.ポットにBを入れお茶を煮出す

【昆布アイス】
1.鍋にCを合わせ、重量の2割煮詰める
2.アイスメーカーで30分混ぜながら固める

【茶葉ガラのチュイル】
1.Eを混ぜ合わせ、乳化させる
2.1にDをふるい入れ粉っぽさがなくなるまで混ぜる
3.天板にシートを敷き、お好みのチュイルの形を作る
4.170℃のオーブンで8分焼く

【昆布ジンジャークッキー】
1.Fをふるい、Gを加えこすり合わせるように混ぜる
2.1にHを加え混ぜ、冷蔵庫で30分寝かせる
3.2を成形し、170℃のオーブンで20分焼く

【盛付け】
1.深めの器にアイスをのせ、チュイルを刺し飾りのbを添える
2.クッキーを別皿に盛る
3.ポットの昆布茶は、半分をアイスにかけアフォガードのように
残り半分は、食後のお茶として、ティーウォーマーで温める
4.ティーカップにaを入れ、お茶の香り付け

審査員からのコメント

ちとせグループ創業者 兼 CEO
MATSURIプロジェクト発起人
内閣官房バイオ戦略有識者
藤田朋弘氏

■MATSURI賞選定理由

受賞の決め手となったのは、リジェネラティブ思想と原材料に藻類を活用された事です。私たちが手掛けているMATSURIプロジェクトでは化石資源産業に変わる次世代の藻類産業構築を目指しており、原材料で利用された昆布も大型藻類に分類されます。私たちが活用しているのは微細藻類という古来より食された品種となりますが、城田様が考案されたレシピにも代用できると思います。一方で当社では再生型農業にも力を入れ土壌の改善、日本農業の在り方にも着目している点が当社ビジョンと合致しているので選定させていただきました。

 

■受賞者へのコメント

レシピ考案に「再生」、「藻類」とされた着眼点を高く評価しております。是非次は微細藻類を活用したレシピを期待しております。世界機関に認められている食材にも目を向けていただき微細藻類から作り出される代替肉や調味料などのご活用をいただき世界が注目するシェフを目指していただきたいです。
この度はMATSURI賞受賞おめでとうございます。

特別審査員による評価ポイントごとの審査結果

サステナビリティ

「変える力」

江口弘展さん

薬師神陸氏 選出

一番に評価をしようかと迷った一つ。「イタリアンにしなきゃいけない」がレシピから伝わった(マルサラ、アンチョビ、ケッパー、白ワインビネガーなど)ので、作り手としてのこだわりも活かしたいが、このレシピ審査についての考えはイタリアのスローフードの考えのまま「イタリアンにしない」日本にある代替えできる調味料で同じレシピができれば一番よかった。
お店で出た灰を使いキッチンツールにまで拝領している点も評価が高かった。 

城田一基さん

能田耕太郎氏 選出

食材の乱獲や、自然体系を無視した養殖による自然破壊を藻から発信しようとするアイデアが素敵だと思います。

山内透子さん

冨成寿明氏 選出

全ての作品においてのサステナビリティに関して甲乙つけがたいです。 そこで、サステナビリティの取り組みを広げるために必要だと感じている、「楽しさ」と「ハードルを下げること」を考慮して、家庭でも簡単にできるレシピを選ばせて頂きました。ご家庭でお子様と一緒に楽しくつくることで、サステナビリティに取り組むきっかけになるのではないでしょうか。

クリエイティビティ

「伝える力」

橋本匡史さん

薬師神陸氏 選出

すごくシンプルなレシピ。 しかし、生産者や造り手のストーリーと共に本質を伝えて、サスティナビリティーなマインドセットな感情になってもらうには、複雑さや奇を衒うことなく「味わう」ことの本質を強く感じた点がポイントが高い。 様々な食肉加工の工程の中で内臓類が手ででくるが、この鳥の内臓と塩で作った肉醤など熟成からくる「旨味」の要素がレシピにも反映されるとなおよかった。 食べ手に語る以上「美味しい」という以上に「心が動く」ことが大切。

小鉢ひろかさん

能田耕太郎氏 選出

地元愛、発想の柔軟性、未来へのメッセージが表に出ていて、食べる事だけでは無く伝えたい気持ちが現れています。

佐々木綾子さん

冨成寿明氏 選出

サステナビリティの取り組みをしていると、それじゃなきゃいけないと極端になってしまいがちです。そんな中で、ギルトフリーという美味しくて罪悪感なく食べることができる料理というのは今後のトレンドになっていくと思っております。ダチョウという食材やレシピも素晴らしいです。 そういった意味で、佐々木さんの作品が最もクリエイティビティではないかと思います。

見た目

「魅了する力」

佐々木綾子さん

薬師神陸氏 選出

レシピが一番美味しそうだった。 しかしながら、牛肉の料理をダチョウに代用しただけ。の印象なので、輸入肉ではなく国産鹿肉での提案であれば一番レシピ的には美味しそうだった。

橋本匡史さん

能田耕太郎氏 選出

ファインダイニングで出てきそうなお皿です。加瀬農園さんの風景が浮かんできそうです。日本の食材をうまく洋食風に作り上げています。

橋本匡史さん

冨成寿明氏 選出

畑から自分で収穫体験しながら食べるような楽しさがあり、生産者さんへの敬意が感じられる料理だと思います。シンプルに一番おいしそうだと感じました。

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